愛颯らのね

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5/4/2024, 11:08:55 AM

お題 耳を澄ますと


耳をすまして聞こえてくるのは、青春の詰まった音。

吹奏楽部の少しズレた音。
運動部の大きな声。
時々廊下を歩く生徒の楽しげな声。
怒鳴る顧問の声はあまり好きじゃないな。

こんな音の中に入れてないのが私。

私だけの屋上で空を見ながら耳を澄ます。

これがいつもの私。
世界に入れていない私。

屋上に登れることを知ってる人は極わずか。

知ったとしてもバレた時のことを考えると、のぼてくる人は
ほとんどいない。

そんな中、私ともう1人、のぼってくるやつがいる。

耳に届く階段を上ってくる音。

あぁ。また来たのか。

「また来たの?来ないでって言ってるでしょ。」

『そういう時の君の顔はいつも少し苦しそうだ。』

「だからそんなことないってば。勝手な勘違い。」

私は人と関わるのが苦手だ。
多分喋れなくはない。でもものすごく疲れる。
なんで関わらないといけないのかいつも疑問に思う。

いつもこんなことを話したあと、
彼は私の少し離れたところに寝転ぶ。

今日もそうなると思ってた。

『ねぇ。世界に入ってみない?』

は?
こいつは何を言い出すんだ。
私には無理だし嫌だ。

『少しくらい見てみたくない?君がいつも聞いてる世界を』

なんで私が世界を聞いてるって思ったんだろうか。

『そんな顔してるからだよ。』

全部お見通しってわけか。

確かにみんなが生きる世界について気になることはある。

なんでわざわざ人と関わるのか。
なんで汗を流してベトベトになりながら部活をするのか。
なんであんなに楽しそうに輝いて生きているのか。

そのことを少しでも知れるなら行ってみる価値はあるのかもしれない。

具体的なことは知らない
でもきっと、こいつが全部みせてくれるのだろう。
私は彼を信じてみる。

「いいよ。少しだけ入ってみる。みんなの生きてる世界に」

『よしのった。いくぞ。』

彼は立ち上がって、私の手をとった。

その横顔はすごく輝いて見えた。

これが私の人生を大きく変えるきっかけとなったのは
また別のお話。


5/3/2024, 12:42:30 PM

お題 2人だけの秘密


「好きなんだよ」

え、

「浮気者にしたい訳じゃないけどさ、まぁ、ね?」

そんなこと、今更言わないでよ。
私、彼氏いるもん、。
もう遅いじゃん。

こんなことを急に言ってきたのは、私が約2年間も片思いをして、諦めたばっかの純平という男だ。

ずっとずっと大好きで、一日中彼のことを考えていた。
夢でも見るほどだ。

でも、私の初恋は終わった。

彼には長く付き合っている彼女がいた。

その事を知った日は、大好きなチョコも味がなかった。

毎日が憂鬱で、辛くて辛くてたまらなかった。

クラスでひとりぼっちの私にとって
純平は私の最後の希望だった。

それがなくなった今、私の生きる意味って何?
そんなことを考えながらも、毎日しぶとく生きていた。

そんな時に声をかけてくれたのが、今の彼氏。

彼はとことん優しかった。でも、優しいだけだった。
その優しさも、今に私にはもう向けてくれない。

だから別れようと思ってたのは事実。

そんな中での告白。

私は迷った。
別れる予定とはいえ、まだ付き合っている彼氏がいる。

でも気の変わりやすい純平。
大好きだった。いや、きっとまだ好きな人。
きっと今しかない。

私は覚悟を決めた。

純平の目を真っ直ぐみる。
にこっと笑って、ずっと言いたかったセリフを言う。

「私も純平のことが好きだよ!」

あぁ言ってよかった。
悩んでいたとは思えないほどすんなりと
このときを待ってたように飛び出してきた。

純平はキツく私を抱きしめる。

彼特有の赤ちゃんのような甘い、優しい匂いが鼻腔を埋める

「ほんと可愛い好き。でも、まだみんなには内緒だからね」

これが私と彼の2人だけの秘密


そういえば、純平と純平の彼女さんはこの時
どんな関係だったのでしょう。

5/2/2024, 11:19:43 AM

お題 優しくしないで



もう、優しくしないで。

偽りの優しさなんていらない。

わかってるんだよ。みんなが本当は私の事嫌いだって。

だって、いつも言ってるじゃん。
みんながいない時は「死ね」とか「消えろ」とか。

なのに自分の評価ばっか気にして、今度は道具として使う。

みんなの前では、優しくしてくる。


その優しさが、だいきらい


優しくして欲しいって思うのに、優しさが大嫌いなんて。
私は壊れちゃったのかな。

壊れちゃったから、今こんなことしてるのかな。

首にはハンドタオルが結ばれてる。
あとは手すりにかけるだけ。

頭に何かが集中して集まる感覚がする。
息が吸えない。足の力は抜いている。

自分の体重全部が首にかかる。

人間、死ぬのは簡単だ。
ただ気持ちが決まらないだけ。

そんなことに今気づきながら死んでいく。
今更気づいても遅いかな

気づいた時には何も無かった。
天国も地獄もない。【無】

それでもいい。私には生きる勇気がなかっただけ。
天国に行きたかったんじゃなくて、地獄から逃げたかっただけ。ただそれだけの人生だった。

5/1/2024, 11:43:18 AM

お題 カラフル


人はみんな違う【色】を持っている。

それは、目には見えないけど、普通の色と同じもの。


自分と似た色を持つ人と混ざると、綺麗な関係でいられる

自分と反対の色を持つ人が隣にいると、お互いを
目立たせられる。

じゃぁ自分と合わない色の人だったらどうだろう。

お互い混ざるとくすんで、綺麗な色にはならない。

また、何個も何個も合わせると、黒に近づいていく。

黒の中では、自分の色は目立たせられない。


だから私は、学校が嫌いだ。


ひとつのパレットに、何個も何個も【色】を詰め込まれる。

混ざって、混ざって、自分の色がなくなってく。

元から『黒』に近い人だけが残る。

そんな自分が消される場所が嫌いだ。

もし、みんなが自分の色を出せたら、
絵の具で描いたような綺麗な世界ができるのにな、って。

4/30/2024, 11:40:13 AM

お題 楽園


「早く楽園に逝きたいな〜!」

これが口癖だった彼女はもういない。
彼女は望む場所に行っただけ。

別に悲しくは無いと思う。
きっと彼女もそれは同じ。

前々から望んでいた場所に行けたのだ。

嬉しくないはずがない。

彼女の両親は目を真っ赤にして涙を流していた。
クラスメイトも同様、壊れたように泣いていた。

それだけ彼女の存在は大切だったのだろう。

初めて彼女が僕に【いきたい】と言ってきたのは
1年前。

病室にいた幼なじみが言った。

昔から体が弱かったから、もっと色々なことをして
【生きている】を感じたいのだと思っていた。

でもそれは違った。
彼女はもう今世に期待をしていなかった。

なんで諦めるんだと言ってやりたかったが、
彼女だって簡単に諦めたわけじゃないだろうし
辛さは僕には分からないから、言えなかった。


逝きたい逝きたい言っていた彼女は行ってしまった

これはもう変えられない事実。
くだらない会話も、勉強を教えることも、
君の笑顔を見ることも、もうできない。

当たり前だった日常が崩れていく。

一つ一つの崩れた日常が僕に現実を見せる。

それでも僕は大丈夫。悲しくなんかない。


熱くなった目頭の招待を僕はまだ知らない。

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