お題 楽園
「早く楽園に逝きたいな〜!」
これが口癖だった彼女はもういない。
彼女は望む場所に行っただけ。
別に悲しくは無いと思う。
きっと彼女もそれは同じ。
前々から望んでいた場所に行けたのだ。
嬉しくないはずがない。
彼女の両親は目を真っ赤にして涙を流していた。
クラスメイトも同様、壊れたように泣いていた。
それだけ彼女の存在は大切だったのだろう。
初めて彼女が僕に【いきたい】と言ってきたのは
1年前。
病室にいた幼なじみが言った。
昔から体が弱かったから、もっと色々なことをして
【生きている】を感じたいのだと思っていた。
でもそれは違った。
彼女はもう今世に期待をしていなかった。
なんで諦めるんだと言ってやりたかったが、
彼女だって簡単に諦めたわけじゃないだろうし
辛さは僕には分からないから、言えなかった。
逝きたい逝きたい言っていた彼女は行ってしまった
これはもう変えられない事実。
くだらない会話も、勉強を教えることも、
君の笑顔を見ることも、もうできない。
当たり前だった日常が崩れていく。
一つ一つの崩れた日常が僕に現実を見せる。
それでも僕は大丈夫。悲しくなんかない。
熱くなった目頭の招待を僕はまだ知らない。
4/30/2024, 11:40:13 AM