脳裏に浮かんだ一瞬の感情を忘れずに、長い感情にしたい。
深く心に刻みたい。
『脳裏』
私は神様を信じていた。
良い事をすれば後でかえってくる。悪いことをしたあいつは後で酷い目にあう。
神様は見ている。無駄なことはない。
そうやって、私は私の中の神様を信じ続けた。
だが大人になるにつれて、そんなことはないと知った。理不尽だらけの世の中で、不公平で残酷なのが世の中なんだと知った。
だんだんと私の中の神様を疑うようになった。
神様なんて存在していない。救いなんて存在していない。
ただ私が存在しているだけ。
そう、疑ってしまった。
「あなたは何を信じ続けているの?」
『神様が舞い降りてきて、こう言った』
誰かのために、ゴミを拾ったり足りないものを補充したり、譲ったり、綺麗にしたり募金したり。
そういうことをしている自分を、いつもの醜くて愚かで、無価値なゴミよりましなものに思える。
そうやって汚い自分を誤魔化して、自分勝手で嫌われる側の人間を見て心の中で見下して嘲笑った。
そうやって自分をましな人間だと自分自身を騙し続けることに快感を感じてはまっていった。
ある日、その自分勝手で嫌われる側の人間をいつものように心の中で馬鹿にしていたら、そいつを救おうと、本当は優しい人間なんだと信じて疑わない奴がいきなり現れた。
そいつを救おうと、変えようと怒って信じているのを見て、どうしようもない自己嫌悪に襲われた。
鏡で見た自分は酷く歪んで腐っていた。
なんて醜いんだろう。絶望して視界がどんどん暗くなっていく。
ましなものになろうとすればするほど醜くなってゆく。
誰かのためになるならと行動するあいつを見れば見るほど堕ちていく。
誰かのためになるならばという言葉が、酷く遠く感じた。
『誰かのためになるならば』
あなたに心奪われたその日から、自分の心を鳥かごに入れて閉じ込めた。
また奪われないように、勝手に飛び去ってしまわないように、舞い上がってしまわないように。
鍵をかけて閉じ込めた。
どんどん錆びていく鳥かごに、今にも羽ばたいてどこか遠くに行きそうな心。
もう閉じ込めておくことはできないと本能的に悟った。
どこかに行ってしまうなら、傷ついてしまうなら。いっその事、私が壊してしまおうと思った。
重たい石で鳥かごごと潰した。鈍い音と飛び散った心の破片を最期に、静かになった。
私の心が鳥かごから解放された瞬間だった。
『鳥かご』
理想の友情は支え合い、受け止め合い、思いあって楽しくて。そんな宝箱に子供の純粋な夢をあるだけ詰めたようなものでした。
実際は嫉妬とマウントと意地のぶつかり合い、嘘と嘘の会話。2面どころか何面もある歪でどす黒い、汚い思考が交錯したものでした。
そんなギャップに苦しんでいる時、目に映る他の友情がとても眩しくて、体の内側から焼かれている感覚になりました。
羨ましくて羨ましくていっそ全部の友情がぐちゃぐちゃになってしまえばいいのにと思い、
それと同時に私はあれを手に入れることはできないと理解しました。
友情は私に不可能を与えてくれました。
『友情』