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9/2/2025, 9:54:29 AM

「明日大丈夫?」
「大丈夫だいじょー……あ」
「あって言うな怖い」
「……絵日記忘れてた」
「最悪じゃん」
「い、いや印象的な日を2日分だけだからまだいけるまだいける」
「っても今年本当に何処にも行けなかったろ」
「山で沢山遊びましたの体にする!」
「いいのかそれで……ん?ならさ、日記に暗号仕込んでみないか。こう、コレとコレ合わせると文章出てくる的な」
「え、なにそれホラゲじゃん。やるわ。仕込むならやっぱこの辺にこう」
「天才じゃんね」
「でっしょ!」
「……気づいてくれると良いね」
「ね」

‹夏の忘れ物を探しに›


「おまたせー」
「お疲れ。聞いた?今年も残暑ヤバいらしいよ」
「聞いたー。もー、四季じゃなくて二季じゃない?」
「わっかる、春秋物着れるタイミングが秒過ぎる」
「ねー。はーぁ、夏終わるってまーじぃ?」
「本当、後半日したら学校とかマジで」
「12時間後ならまだワンチャン寝てない?」
「甘い甘い。準備と早寝が要るんだから、実質前夜からスタートよ」
「それはわからんでもなーい!」
「でしょ。で、どうする?」
「『来た』と『答え』は同じでしょー?」
「一応ね。ありがと」
「良いよー、お誘い嬉しかったもん」
「んふふ、じゃあ行こっか」

‹8月31日、午後5時›


ひとりで十全だと思いました
ふたりで満足だと思いました
さんにんよにんごにんろくにん
幸せだと思いました
ずっとそう思っていたかった
やがてひとりにかえるとき
惜しみ想うか想いを捨てるか
けれどひとりにかえったとき
きっと同じには思えない

‹ふたり›


心象風景はきっとそれは
最近よく見る夢の話
心象風景はきっとそれは
精魂尽くした作品の事
心象風景はきっとそれは
最も思い出深い光景
心象風景はきっとそれは
きっと、きっとそれは、
一番一番綺麗な素敵な
場所であると信じていたい

‹心の中の風景は›

8/28/2025, 1:50:49 PM

「なんかこう、美味しそうじゃない?」
「正気か?」
「枯れ葉だと水分吸われそうじゃん」
「それは比較対象が悪い」
濃い緑に色付いた葉をくるくる回す。
徐に口をもごつかせる、悩ましげな顔色を横目に
図鑑を捲った。
「うーん不味い」
「良かったな、コレも食え」
「ナニソレいじめか?」
「甘かったら即効毒だったぞ。
 一応中和しとけ」
「……まじで?」
「ほぅ、疑うか」

‹夏草›

8/28/2025, 9:10:12 AM

呼吸の度に心音がなる
痛いくらいに胸がなく
もういいよ もういいかな
細い思考の糸ゆれる
けど
胸打つ力が 吹き込む吐息が
此処に居てくれと願うから

‹ここにある›


冷えたコンクリートを駆け出して
熱い砂浜に歓声が上がる
潮に涼む子供たちへ
日陰のままに声を掛けた
隣に引っ繰り転がる体は
疲労困憊眠りについて
引っ掛かるだけのサンダルが
心無さげに揺れている

‹素足のままで›


ぎりり関節のきしむ音
それでもどうか、と手を伸ばす
ばきり表皮のわれる音
それでもどうか、と口を開ける
朝日を背に振り返った貴方は
待ち焦がれた様に腕を開いた
ばちり接続のゆがむ音
それでもどうか、と足を踏み出す
ぎちり接続のくるう音
それでもどうか、と足を踏み出す
貴方に証明したかった
伝えたいことがあったから
ばつり、頭にアラーム音
ばつり、視界の機能停止
それでもどうか、と足を踏み出す
それでもどうか、と足を踏み出す
貴方を抱き締めてそして
ずっとそばにいる約束を

 すると決めたから
警告音 警告音
機体の寿命は疾うの昔
それでも、それでも、どうか貴方に
ただひとつの約束を

‹もう一歩だけ、›


1枚の写真があった
何処かの国のお祭りのような
笑顔さざめく人並みの中
1人焦ったような顔があった
知っている顔の人だった
そんな場所にそんな時代に
居る筈の無い人だった
瞬く間にコマ送りの様に
人混みの奥へ消えていく
二度と相見えること無い人に
心底心底安堵して
お焚き上げの火へ放り込んだ

‹見知らぬ街›

8/24/2025, 9:14:20 AM

暗い空に光が走る
目を閉じて数を数えた
光と音の速度差を
意味もなく測っていた
君もまた
恐怖ではないと嘯いて
寧ろ楽しげに口噤む
きっと君も
一緒に同じ数を数えて

‹遠雷›

8/23/2025, 8:27:23 AM

「かわいい」
「でしょ。一目惚れしちゃった」
深い夜色の爪先を、鍵盤の上に踊らせて。
無形の旋律は楽しげで、ひどくさみしいようだった。
「かえってこないの」
「ごめんね」
口と目は笑っていた、でもかなしいようにみえた。
空の楽譜がとじていく、その終わりも見届けず。
「あなたの味方でいる。それだけは誓えるわ」
「空の上のかみさまに?」
「あなたと過ごした夜の日に」
「そんなものに?」
「あら、あなたの隣以外で寝た事あったかしら?」
「無いけど」
夜の色が指を包む、薄明るい昼の部屋の中で。
そばにいてほしいと言いたかった、
でも好きだから言えなかった。

‹Midnight Blue›

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