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「かわいい」
「でしょ。一目惚れしちゃった」
深い夜色の爪先を、鍵盤の上に踊らせて。
無形の旋律は楽しげで、ひどくさみしいようだった。
「かえってこないの」
「ごめんね」
口と目は笑っていた、でもかなしいようにみえた。
空の楽譜がとじていく、その終わりも見届けず。
「あなたの味方でいる。それだけは誓えるわ」
「空の上のかみさまに?」
「あなたと過ごした夜の日に」
「そんなものに?」
「あら、あなたの隣以外で寝た事あったかしら?」
「無いけど」
夜の色が指を包む、薄明るい昼の部屋の中で。
そばにいてほしいと言いたかった、
でも好きだから言えなかった。

‹Midnight Blue›

8/23/2025, 8:27:23 AM