Open App
8/15/2025, 9:33:29 AM

雪がちらちら降っている
あぁでもあの日は夏だった
木漏れ日ゆらゆら揺れている
あぁでもあの時は夜だった
星がきらきら瞬いている
あぁでもあの日は曇だった
景色くらくら回っている
あぁでもまだいき続いている

‹君が見た景色›

8/14/2025, 9:47:01 AM

それはことばのカタチをしていた
きっと優しくきっと暖かな
笑顔を生むようなことばだった
ソレを声にしたかった
口にして伝えたかった
優しく撫でて暖かく包むような
笑顔を見たいひとがいた
けれど

否定しか紡げないこんな口じゃ
肯定を出来ないこんな脳じゃ
ひとを笑顔に出来やしない
ひとを幸せに出来やしない

‹言葉にならないもの›


アスファルトで目玉焼きが作れそう、なんて
少し前まで比喩だった
朝の打ち水に涼むことも
少し前まで正しかった
簾に風鈴に団扇だけで
過ごせていたことも
気温に名の付く日が少なかったことも
少し前まで、ちょっと昔まで
本当に真実だったのにね

‹真夏の記憶›


白いクリームがとけている
黒い行列が並んでいる
茶色のコーンが転がって
無情に誰かが踏み潰す

白いクリームがとけている
赤いいちごが滴って
茶色のチョコと交わって
無為に無情に汚れてく

白いクリームがとけている
白い布地にとけている
白い肌にとけている
黒い  にとけている

‹こぼれたアイスクリーム›


どうせ離してしまうならば
はじめから手を伸ばさないで!!

‹やさしさなんて›

8/10/2025, 6:55:22 AM

ふわり髪が舞い上がる
青い空に羽が舞う
白い雲は足早に
山の向こうへ消えていく
ふわり花弁が舞い上がる
青い空に色が舞う
灰色の煙は幻のように
形残さず霧散する
空の手の中風が吹く
空っぽのまま風が吹く

‹風を感じて›


憧れていた街だった
並んで覗いた店先で
「夢みたい」と呟いた
「夢だよ」と目が覚めた

知りたかった本だった
並んで開いた頁の上
「夢みたい」と呟いた
「夢だよ」と目が覚めた

見たかった服だった
並んで歩いた絨毯に
「夢みたい」と呟いた
「夢だよ」と目が覚めた

暗く沈んだ部屋だった
向かい合えずに俯いた
「夢であって」と呟いた
声はしなくて目を閉じた

‹夢じゃない›


思いのままに心のままに
足の向くまま進んでいこう
その道中がどれほど酷く
ゴールがどれほど遠くとも
願うままに祈るように
瞳の向くまま進んでいこう
その年月がどれほど永く
生命をどれほど費やすとも
進むままに進むままに
選んだままに進んでいこう
其処に辿り着きたいなら
その姿を望むなら

‹心の羅針盤›


「いってきます」に「いってらっしゃい」が返ること
「ただいま」に「おかえり」が返ること
当然みたいな祈りであって
決して必ずの契約じゃない
「また明日」に「また来週」に
「また来年」に「またいつか」に
当たり前みたいな言葉が
さいごになる時があること
永遠も絶対もこの世に無ければ
希望も願いも形の無いこと

‹またね›

8/5/2025, 10:47:14 AM

人魚姫は羨ましいね、と君は言った。
愛されて愛されて、でも一番欲しい愛は貰えなくて。
誇りを失い痛みに耐え、それでも愛を得られなくて。
そうして泡に還っていく、何も残さず消えていく。
羨ましいね、と君は言った。
誰もに沢山に愛された君は言った。
外見も内面も、何一つ欠けること無い君は言った。
その意味を知ったのは、
稀代の宝石が如く飾り付けられ、
永遠に完全を祝福され、
誰も彼もが愛を捧げた、
君の骸を燃やそうと、決意した朝だった。

‹泡になりたい›

8/4/2025, 11:14:28 AM

玄関の開いた音がした
靴も人影も見当たらない
仕舞い込んでいたグラスを洗い
麦茶と悩んで冷水を注いだ
珍しさと懐かしさで買った
甘い香の煙が揺れる
風が鐘を鳴らすけど
残念暫く食事は素麺だけだった
「せっかちさんめ、帰りまで巻きでも知らないぞ」
グラスの水が減っている
漂う煙が薄れている
そういえばと振り返る
大事な事を言ってなかった
「おかえり、まってたよ」
ただの黒目には何も
何も見えていないけど

‹ただいま、夏。›

Next