他者に愛される人になりたかった
頭が良ければ運動ができれば
センスがあって優しく朗らかで
そうすれば愛されると思っていた
けれど言葉を尽くしても
才を想いを尽くしても
決まって決まって誰かが言う
妬ましい鼻につく
ヒトデナシだ化物だ
それでも愛が欲しくって
尽くして尽くして尽くした日
ふと気が付いたふと理解した
ふとソレを手に取った
道々に赤が咲いている
黄色が覗いては黒く落ちる
白が鳴る音は祝福みたいで
私は初めて心から笑えた
誰も居ない世界でやっと
ヒト‹わたし›は私を愛せたから
唯一無二にとびっきりに
私は私を愛せたから
‹届かないのに›
思い出せないことがある
大事な約束事だった
脳を開いても電気を流しても
なぜだかとんと思い出せない
その日と同じ事をしてみてはどうか
年が変わったが同じ月
同じ日同じ曜日同じ天気
あの日と同じ買い物をして
あの日と同じものを食べ
あの日と同じ場所で眠り
……そしてあの日より早く起こされた
多いのだとその人は言う
帰れ帰れとその人は言う
一人で帰り道を行く
あの日とは違い一人で
僕を此処まで導いた
君の声は聞こえない
あの日共にいけなかった
君との約束が聞こえない
‹記憶の地図›
お揃いのマグカップ
セットで一つのマグカップ
関係を形にしたら証明になると思ったの?
感情を物品にしたら壊れないと思ったの?
ごめんなさいね身体の傷さえ
押し消して忘れてしまえるの
まだまだ綺麗なマグカップ
まだまだ使えるマグカップ
だけどねでもねごめんなさいね
想いの器にさえされなければ
もっと手元で愛でていたけど
全部揃って箱の中
全部揃われて箱の中
いつか誰かの幸せに
今度こそきっと幸せに
なれたらできたらよかったね
‹マグカップ›
もし君が此処に居なければ
きっとあの日は平和に終わり
もし君が此処に居なければ
きっと美味しいご飯を食べ
もし君が此処に居なければ
きっと寒さに震える夜は無く
もし君が此処に居なければ
きっと平穏に大人になれただろう
そして
もし僕が此処に居なければ
それは全て君のものだったはずで
もし僕が此処に居なければ
君と向かい合うこともなかった
だから
もし君も僕も此処に居なければ
もしそんな世界があったなら
天の国で二人並んで
笑い合うことも出来るだろうか
‹もしも君が›
もしも生涯に一度だけ
その人生をカタチにするのなら
きっと君が遺した記憶で
一つの曲を作るだろう
生まれた日に聞こえた音を
死に逝く日に聞こえた声を
はじめて目に映る歓声を
さいご眼裏に映る残心を
季節の香を飲み込んだ味を
触れた手に抱いた感情を
紡いで繋いで一つにして
一つの曲を作るだろう
君をさいごまで忘れぬように
君をさいごまで愛すために
‹君だけのメロディ›
私が愛してもいいですか
鮮やかに染まる光を
花開いていく成長を
私が愛してもいいですか
果遠く広がる世界を
夢に煌めく両の目を
私は愛してもいいですか
繋がりゆく命の願いを
灯し消える短な生命を
私も愛していいですか
祝福出来なかった君のこと
それでも愛したかった君のこと
‹I love›
さらさらと肌を流す流体が
やけに心地良かったのを覚えている
靄のように細やかな日も
礫のように激しい日も
砂に煙に犯された汚らしい流体が
そうと知っていても尚
ヒトの熱移す液体より
傘差し掛ける情感より
余程余程心地良く
生涯その音しか聞こえない
そんな場所を探している
‹雨音に包まれて›
子供の頃の話です
彼女は可愛くないと言われました
大人の思い通りにならないことを
可愛くないと言われました
彼女は随分幼くて
そして素直でしたから
己は可愛くないのだと
愚直に信じ込みました
暫く彼女が大きくなり
可愛いさに言及されなくなった頃
彼女はふと思いました
己が可愛くないというのは
つまり己は美しく
綺麗な格好いい系なのではと
彼女は随分素直が過ぎて
そして酷く愚直でしたから
言葉の裏の意味なんて
知っていたって認識しません
物語でも授業でもないのだから
言葉通りにしか汲みません
‹美しい›
ひとを傷付けてはいけません
でも逆らったら冤罪です
ひとを愛するのは素晴らしい
なのに狂い病み排される
よわきモノを慈しみなさい
けど虐げてアイと呼ぶ
正しきことは一つです
ダブスタの民は舌何枚?
‹どうしてこの世界は›