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他者に愛される人になりたかった
頭が良ければ運動ができれば
センスがあって優しく朗らかで
そうすれば愛されると思っていた
けれど言葉を尽くしても
才を想いを尽くしても
決まって決まって誰かが言う
妬ましい鼻につく
ヒトデナシだ化物だ
それでも愛が欲しくって
尽くして尽くして尽くした日
ふと気が付いたふと理解した
ふとソレを手に取った

道々に赤が咲いている
黄色が覗いては黒く落ちる
白が鳴る音は祝福みたいで
私は初めて心から笑えた
誰も居ない世界でやっと
ヒト‹わたし›は私を愛せたから
唯一無二にとびっきりに
私は私を愛せたから

‹届かないのに›


思い出せないことがある
大事な約束事だった
脳を開いても電気を流しても
なぜだかとんと思い出せない
その日と同じ事をしてみてはどうか
年が変わったが同じ月
同じ日同じ曜日同じ天気
あの日と同じ買い物をして
あの日と同じものを食べ
あの日と同じ場所で眠り
……そしてあの日より早く起こされた
多いのだとその人は言う
帰れ帰れとその人は言う
一人で帰り道を行く
あの日とは違い一人で
僕を此処まで導いた
君の声は聞こえない
あの日共にいけなかった
君との約束が聞こえない

‹記憶の地図›

6/17/2025, 1:49:25 PM