玄い闇を抜け出して
君は小さな指を握った
青い空を駆け出して
君は小さな手を取った
朱い陽射しに立ち向かい
君は小さく声綴じた
季節を重ねて時を経て
君が大きくなっていく
その道を寿ぎ見守って
いつか白い光の中
小さく小さくなった背を
抱いて天の国迎えるまで
君の瞳に映りゆく
全てが輝いているように
‹君と歩いた道›
砂糖にスパイス素敵な何か
そうして女の子できるなら
カエルかたつむり子犬の尾
そうして男の子できるなら
可愛い妹が欲しかった
頼れる兄が欲しかった
だから探して集め果て
ぎゅっとぎゅっとかためてみた
キャベツの中にも橋の下にも
コウノトリのお腹にもなかったから
ぎゅっとぎゅっとお願いごと
愛する家族が欲しかった
‹夢見る少女のように›
例えば君が誰も居ない
まさらの地に降り立つとき
君の白銀の一歩目を
私は確かに見送ろう
例えば君が命満つ
混沌の地に降り立つとき
君の黒影消えるまで
私は確かに見送ろう
例えば君が手を伸ばし
私をその地に招いても
留まる私は君の手が
力尽きるまで見守ろう
君がいつか還るとき
再び迷子にならぬよう
私は此処に留まろう
君のいく先見送ろう
‹さあ行こう›
水面は静かに凪いでいた
土砂に濁りながらも水面は
青い空を映し凪いでいた
水面は静かに揺れていた
汚泥に澱みながらも水面は
星々を散らし揺れていた
彼女は静かに揺蕩った
腹に心に何かを隠して
それでも彼女は美しく
静か静かに揺蕩った
‹水たまりに映る空›
あなたを思って作ったの
白い皿の上湯気が立つ
あなたが好きだから作ったの
黄色蕩けて赤いハート
どうか食べてどうぞ食べて
真っ二つ切られた楕円形
カラフル混ざる朱色の中
輝くばかりの白色は
‹恋か、愛か、それとも›
あの子の側に居たいなら
あの子の隣りに居たいなら
大事な大事な決まり事
あの子と笑い合いたいなら
あの子と共に在りたいなら
破っちゃいけないお約束
とっても簡単な決まり事
酷く難解なお約束
嘘をついたらいけません
優しさでも悪意でも
サプライズでも無意識でも
どんな意味がそこにあったとしても
嘘をついたらいけません
嘘をついたら本当に
針を千本拳骨万回
そんなで済む訳ないでしょう
‹約束だよ›
誰にも見られないおまじない
ジャノメの傘の帰り道
差し掛けたのは誰で
居たのは何か
見えてしまったらご愛嬌
見えなかったならお幸せ
真実知らずに目を閉じて
これにてお仕舞いまた来世
‹傘の中の秘密›
星が流れいく様を
美しいと君はわらった
水が流れいく様を
気持ち良いと君はわらった
血が流れいく様を
悲しいと君はわらった
時が流れいく様を
淋しいと君はわらった
天から全て流れ落ち
地の全てが流れ消え
君が流れいく様を
流れ落ちた音の意味を
何も無くカラ閉じた青に
正しさ一つ見つからない
‹雨上がり›
じゃんけんぽんで開いた手
七歩刻んで君から離れる
じゃんけんぽんで握った手
三歩刻んで君が遠のく
じゃんけんぽんで伸ばした指
六歩刻んで距離が離れる
じゃんけんぽんで隠された手
君が泣いて首を振る
離れ離れの爪の先
そうねそこには何も無い
‹勝ち負けなんて›
白紙のページを塗り潰せ
空白の行を塗り潰せ
空っぽのマスを塗り潰せ
裏も表も塗り潰せ
紙が減ろうと増えようと
時が減ろうと増えようと
果てまで潰せ 塗り潰せ
この一呼吸終わるまで
‹まだ続く物語›
一羽だけで飛ぶ鳥を
珍しいねと君が言う
大抵協力して渡るのだと
空のV字を指して言う
どうして渡るのと君に問う
行きやすい場所で生きる為に
図鑑を指して君は言う
ならば一羽が生きやすい
それだけだろうと思うけど
頁を捲る君の指
追いかける為に口噤む
‹渡り鳥›