もし君が此処に居なければ
きっとあの日は平和に終わり
もし君が此処に居なければ
きっと美味しいご飯を食べ
もし君が此処に居なければ
きっと寒さに震える夜は無く
もし君が此処に居なければ
きっと平穏に大人になれただろう
そして
もし僕が此処に居なければ
それは全て君のものだったはずで
もし僕が此処に居なければ
君と向かい合うこともなかった
だから
もし君も僕も此処に居なければ
もしそんな世界があったなら
天の国で二人並んで
笑い合うことも出来るだろうか
‹もしも君が›
もしも生涯に一度だけ
その人生をカタチにするのなら
きっと君が遺した記憶で
一つの曲を作るだろう
生まれた日に聞こえた音を
死に逝く日に聞こえた声を
はじめて目に映る歓声を
さいご眼裏に映る残心を
季節の香を飲み込んだ味を
触れた手に抱いた感情を
紡いで繋いで一つにして
一つの曲を作るだろう
君をさいごまで忘れぬように
君をさいごまで愛すために
‹君だけのメロディ›
私が愛してもいいですか
鮮やかに染まる光を
花開いていく成長を
私が愛してもいいですか
果遠く広がる世界を
夢に煌めく両の目を
私は愛してもいいですか
繋がりゆく命の願いを
灯し消える短な生命を
私も愛していいですか
祝福出来なかった君のこと
それでも愛したかった君のこと
‹I love›
さらさらと肌を流す流体が
やけに心地良かったのを覚えている
靄のように細やかな日も
礫のように激しい日も
砂に煙に犯された汚らしい流体が
そうと知っていても尚
ヒトの熱移す液体より
傘差し掛ける情感より
余程余程心地良く
生涯その音しか聞こえない
そんな場所を探している
‹雨音に包まれて›
子供の頃の話です
彼女は可愛くないと言われました
大人の思い通りにならないことを
可愛くないと言われました
彼女は随分幼くて
そして素直でしたから
己は可愛くないのだと
愚直に信じ込みました
暫く彼女が大きくなり
可愛いさに言及されなくなった頃
彼女はふと思いました
己が可愛くないというのは
つまり己は美しく
綺麗な格好いい系なのではと
彼女は随分素直が過ぎて
そして酷く愚直でしたから
言葉の裏の意味なんて
知っていたって認識しません
物語でも授業でもないのだから
言葉通りにしか汲みません
‹美しい›
ひとを傷付けてはいけません
でも逆らったら冤罪です
ひとを愛するのは素晴らしい
なのに狂い病み排される
よわきモノを慈しみなさい
けど虐げてアイと呼ぶ
正しきことは一つです
ダブスタの民は舌何枚?
‹どうしてこの世界は›
玄い闇を抜け出して
君は小さな指を握った
青い空を駆け出して
君は小さな手を取った
朱い陽射しに立ち向かい
君は小さく声綴じた
季節を重ねて時を経て
君が大きくなっていく
その道を寿ぎ見守って
いつか白い光の中
小さく小さくなった背を
抱いて天の国迎えるまで
君の瞳に映りゆく
全てが輝いているように
‹君と歩いた道›
砂糖にスパイス素敵な何か
そうして女の子できるなら
カエルかたつむり子犬の尾
そうして男の子できるなら
可愛い妹が欲しかった
頼れる兄が欲しかった
だから探して集め果て
ぎゅっとぎゅっとかためてみた
キャベツの中にも橋の下にも
コウノトリのお腹にもなかったから
ぎゅっとぎゅっとお願いごと
愛する家族が欲しかった
‹夢見る少女のように›
例えば君が誰も居ない
まさらの地に降り立つとき
君の白銀の一歩目を
私は確かに見送ろう
例えば君が命満つ
混沌の地に降り立つとき
君の黒影消えるまで
私は確かに見送ろう
例えば君が手を伸ばし
私をその地に招いても
留まる私は君の手が
力尽きるまで見守ろう
君がいつか還るとき
再び迷子にならぬよう
私は此処に留まろう
君のいく先見送ろう
‹さあ行こう›
水面は静かに凪いでいた
土砂に濁りながらも水面は
青い空を映し凪いでいた
水面は静かに揺れていた
汚泥に澱みながらも水面は
星々を散らし揺れていた
彼女は静かに揺蕩った
腹に心に何かを隠して
それでも彼女は美しく
静か静かに揺蕩った
‹水たまりに映る空›
あなたを思って作ったの
白い皿の上湯気が立つ
あなたが好きだから作ったの
黄色蕩けて赤いハート
どうか食べてどうぞ食べて
真っ二つ切られた楕円形
カラフル混ざる朱色の中
輝くばかりの白色は
‹恋か、愛か、それとも›
あの子の側に居たいなら
あの子の隣りに居たいなら
大事な大事な決まり事
あの子と笑い合いたいなら
あの子と共に在りたいなら
破っちゃいけないお約束
とっても簡単な決まり事
酷く難解なお約束
嘘をついたらいけません
優しさでも悪意でも
サプライズでも無意識でも
どんな意味がそこにあったとしても
嘘をついたらいけません
嘘をついたら本当に
針を千本拳骨万回
そんなで済む訳ないでしょう
‹約束だよ›