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5/8/2025, 10:21:36 AM

空に揺蕩う白い雲
指差す君に綿飴を
空で割れる大花火
指差す君に線香を
空に煌めく無数の星
指差す君に盃を
空に空に空っぽの空に
指差し指差しなく君に
目を耳を塞ぎ沈黙を
連れていくなと沈黙を

‹届かない……›


綺麗だけどねと炎天下
日傘の影に君は隠れる
落ちる光は綺麗だけどね
大樹から離れて君は言う
苦手なんだ樹の下は
上にあるものが分からなくて
虫でも落ちてきたのかと
問えば君は肩を竦める
夜露が落ちてきたのかと
問えば君は指を振る
怖い物が落ちてきたのだと
恐ろしい物があったのだと
君は日傘の下で言う
ふわり空いた足元を
指をさして君は言う

‹木漏れ日›


絵葉書を貰った
花咲く景色を選ぶ
その人には珍しく
一面の星空と
大きく輝く満月の
裏返しても本文は無く
差出人も宛名も無い
だから私はいつもの通り
大事な文箱にそっと仕舞う
君と言葉を交わせる日を
待ち侘び待ち侘びポストが鳴る

‹ラブソング›


封蝋の色と刻まれたマーク
便箋の端に掠れる数字
手紙の枚数 折り方 透かし
一見平和な時候の挨拶
実は秘密のSOS?
なんて冗談を転調に
文章を解いて編み直す
一見平和な近況報告
二見目秘密の救援要請
解いて編んで三見目
「無事に解けた?」
なんて念押しの問
昔々の子供の頃に
持ち寄り持ち寄り作った暗号
その日に消えたあの子のこと
早く早くに行かなくては
他の子達が解き明かす前に
誰かが辿り着く前に

‹手紙を開くと›

5/5/2025, 9:36:35 AM

あ、と思った
す、と逸れた
僕に君は見えるけど
君に僕は見えないから

あ、と思った
す、と透き過ぎた
僕に君は触れないし
君に僕は触れないから

あ、と思った
す、と影差した
君の最期まで、君達の末代まで
ずっとずっと見守りたかったけど

す、と目を閉じた
あ、と声がした
どうやら此処までお元気で

‹すれ違う瞳›


君と一緒なら何処までも
鮮やかな風の山道を抜けて
洋々に輝く海路を走って
遥か高い天空を目指して
僕らの春を夏辿る道を
この素晴らしい日々を
素晴らしさに足る尽力を
君と一緒なら何処までも
僕らきっと何処までも

‹青い青い›


生誕の命は乳の香り
恋する少女は花の蜜
夢燃す少年は海の光
覚悟の女性は堅き果
進む男性は新たな菓
揺蕩う老人は霞の綿
匙掬う人間の脳髄は
いつ何時も酷く甘い

‹sweet memories›

5/2/2025, 9:53:50 AM

「どんな感じー?」
「顔隠れたー!」
「はぁー?!この期に及んでそれー?!」
「もうちょっとだからー!」
「もう針金仕込んだほうが良いよ絶対に!」
「やだー!風だけでふわっとさせるのー!」
「だってもう夕暮れになっちゃうよ!」
「まだもうちょっと!!」
「駄々っ子め!加工でも何でも出来るでしょ!」
「うちの天使が一番可愛いんだもん!!
 天下に完全証明するんだもん!!」 
「嬉しいけど此処に於いてはお馬鹿!!」

‹風と›


走っていけるよ何処までも
そう言って彼は星になった
最後の最後まで全部全部
そう言って彼女は書になった
これは輝かしい未来のため
そう言ってあの子は像になった
せめて自分で出来るだけ
そう言ってその子は有名になった
誰もかれもその生を
一繋ぎストーリーに語るけど
デートの服で悩んだり
オレンジの野菜が嫌いだったり
ゲームに勝てなくて泣いたり
どうにも捨てられないモノがあったりした
そういう些細な、些細なことも
大切な生の一部だったこと
もう誰も知らないけれど
もう誰も覚えてないけれど
ただのヒトだった頃の事も
全てがその道に続いていたと
朽ちた教室で夢を見た

‹軌跡›


例えば目尻に輝くラメ
甘く柔らかな頬の色
紅指す唇の艶めきに
計算づくで香る肌

化粧が嫌いで
お洒落も知らず
日の下駆け回っていた貴方を
それほどまでに美しくさせた人
貴方が恋して愛した人

悔しさを飲み込んで
せめて一等に笑って祝おう
私の大事な友人に
必ず必ず幸あれと

‹好きになれない、嫌いになれない›

4/29/2025, 8:27:48 AM

明けぬ夜は無いのだと
止まぬ雨は無いのだと
雷鳴の空を背に
うたうように君が言う
溶けぬ冬は無いのだと
終わらぬ生は無いのだと
白銀の虚無を背に
うたうように君が言う

ならば君もいつの日か
自由にうたう日がくるだろか
春の陽気に躯を捨てて
朝日煌めく晴天へ
その翼でその声で
自由にうたう日がくるだろか

‹夜が明けた。›


花嵐の中声がする
潮騒の中声がする
木枯の中声がする
深雪の中声がする
君の声がする僕の前で
君の声に手を伸ばす
君の声がする僕の後で
君の声に脚踏み出す
風に紛れて声がする
空気揺らして声がする
声がする声がする
でもそこには何も無い

‹ふとした瞬間›


指を繋ぐ糸の色は
私にはとんと見えないが
小指絡げて満足に笑う
君が望むならそれでいい
明日に発ち行くその指に
確かな導となるのなら

‹どんなに離れていても›

4/26/2025, 6:27:54 AM

「全く身勝手なことでさァ、
 追いかけりゃ逃げるクセに
 辞めた途端に追い縋る」
「全く馬鹿な話でねぇ、
 吊った魚にゃ興味も無いと
 顔の一つも見やしない」
「ソの感情こそがヒトとは言うがね」
「ソれが無ければ幾分平和というのに」
「ソレも一理」
「ソレも重畳」

‹「こっちに恋」「愛にきて」›


いつかのときには兄弟で
いつかのときには恋人で
いつかのときには親子で
いつかのときにはペットと飼い主
いつかのときには好敵手で
いつかのときには相棒で
いつかのときには天敵で
いつかのときには捕食関係
めぐりめぐってめぐった果てに
いつかまたぼくらただの平和な
ただの友だちになりたいね

‹巡り逢い›


君と一緒なら何処へでも
海を潜り 山を進み
空の遥か 虹の果まで
花を摘んで 石を拾って
川を渡って 輪廻の先へ
君と一緒なら何処へでも
違えてしまっても 忘れても
君と一緒なら何処へでも
愛した君よ 何処までも

‹どこへ行こう›

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