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空に揺蕩う白い雲
指差す君に綿飴を
空で割れる大花火
指差す君に線香を
空に煌めく無数の星
指差す君に盃を
空に空に空っぽの空に
指差し指差しなく君に
目を耳を塞ぎ沈黙を
連れていくなと沈黙を

‹届かない……›


綺麗だけどねと炎天下
日傘の影に君は隠れる
落ちる光は綺麗だけどね
大樹から離れて君は言う
苦手なんだ樹の下は
上にあるものが分からなくて
虫でも落ちてきたのかと
問えば君は肩を竦める
夜露が落ちてきたのかと
問えば君は指を振る
怖い物が落ちてきたのだと
恐ろしい物があったのだと
君は日傘の下で言う
ふわり空いた足元を
指をさして君は言う

‹木漏れ日›


絵葉書を貰った
花咲く景色を選ぶ
その人には珍しく
一面の星空と
大きく輝く満月の
裏返しても本文は無く
差出人も宛名も無い
だから私はいつもの通り
大事な文箱にそっと仕舞う
君と言葉を交わせる日を
待ち侘び待ち侘びポストが鳴る

‹ラブソング›


封蝋の色と刻まれたマーク
便箋の端に掠れる数字
手紙の枚数 折り方 透かし
一見平和な時候の挨拶
実は秘密のSOS?
なんて冗談を転調に
文章を解いて編み直す
一見平和な近況報告
二見目秘密の救援要請
解いて編んで三見目
「無事に解けた?」
なんて念押しの問
昔々の子供の頃に
持ち寄り持ち寄り作った暗号
その日に消えたあの子のこと
早く早くに行かなくては
他の子達が解き明かす前に
誰かが辿り着く前に

‹手紙を開くと›

5/8/2025, 10:21:36 AM