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2/10/2025, 10:06:10 AM

いつも君の影にいた
広い広い背の後ろにいた
其処はぬるま湯みたいに優しくて
たまに振り返る君の笑顔が
殊の外嬉しそうだったのを覚えている

今は私が前に立つ
眩し過ぎた光を受け止めて
灼き貫く痛みに揺らがずに
時に走る怖気の闇に
堪えること無く叱咤を振るい

そうしてたまに振り返る
私の後ろにいる君が
幸せそうに眠る時
私は嬉しくてたまらない

君を守り愛せることが
幸福に過ぎてたまらない

‹君の背中›

2/9/2025, 9:35:58 AM

あまり遠くへ行かないで
あまり急いで行かないで
青い鳥も宝物も
結局近くにあったのだから
あまり急いで生かないで
あまり綺麗に逝かないで
その命が宝物と
旅立つ君に言えなくて
立ち止まって手を伸ばしてと
旅立つ君に言えなくて

‹遠く…›


口を噤んで手を結って
目を塞いで耳を断つ
全部焼いて捨てたから
全部沈めて消したから
首刎ねられるその瞬間
息の根絶えるその瞬間
この世の誰もが真実を
知らずに葬り去ったのだ

‹誰も知らない秘密›

2/7/2025, 9:53:54 AM

空が白み始めた。
薄闇の下で鉛筆を走らせていた目に、
その光は思ったより強く響く。
花弁の雫を落としながら空を見上げれば、
徐々に星が消えていく様がはっきりと。
誰の声もない未だ寝静まる街は、
不思議とどこか知らない街のようで。
観察日記を置いた足は、
知らず何処かへ攫われていく。

‹静かな夜明け›

2/6/2025, 9:44:46 AM

永遠の愛を誓うよと
差し出した薔薇の花束
暗い夜道に気付かずに
君は笑って受け取った
永遠の愛を示す花
君の所有権を示す花
17本の黒薔薇を
君は笑って受け取った

‹永遠の花束›


互いに以心伝心だったら
サプライズなんて要らないし
イベントもサンタすら必要無かったけど
互いに互いの心が分からなかったから
二人きっと夢を見ていられたのだろう
離れた手は二度と結ばれることはないけれど
それでも二人いられた時間は
確かに美しい記憶になった

‹heart to heart›

2/4/2025, 10:23:48 AM

柔らかな毛並みを撫でる
君は心地よく目を細める
走れなく萎えた脚を
好物の飲み込めない喉を
傷むばかりの内臓を
抱えて尚君は静かにうたう
残される者に伝う悔悟さえ
光無き眼にはもう届かない

‹やさしくしないで›


水町の向こうに覚えておいて
月の灯の下忘れないで
決して消えない君の罪
ただ一人君は覚えておいて

‹隠された手紙›

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