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2/7/2025, 9:53:54 AM

空が白み始めた。
薄闇の下で鉛筆を走らせていた目に、
その光は思ったより強く響く。
花弁の雫を落としながら空を見上げれば、
徐々に星が消えていく様がはっきりと。
誰の声もない未だ寝静まる街は、
不思議とどこか知らない街のようで。
観察日記を置いた足は、
知らず何処かへ攫われていく。

‹静かな夜明け›

2/6/2025, 9:44:46 AM

永遠の愛を誓うよと
差し出した薔薇の花束
暗い夜道に気付かずに
君は笑って受け取った
永遠の愛を示す花
君の所有権を示す花
17本の黒薔薇を
君は笑って受け取った

‹永遠の花束›


互いに以心伝心だったら
サプライズなんて要らないし
イベントもサンタすら必要無かったけど
互いに互いの心が分からなかったから
二人きっと夢を見ていられたのだろう
離れた手は二度と結ばれることはないけれど
それでも二人いられた時間は
確かに美しい記憶になった

‹heart to heart›

2/4/2025, 10:23:48 AM

柔らかな毛並みを撫でる
君は心地よく目を細める
走れなく萎えた脚を
好物の飲み込めない喉を
傷むばかりの内臓を
抱えて尚君は静かにうたう
残される者に伝う悔悟さえ
光無き眼にはもう届かない

‹やさしくしないで›


水町の向こうに覚えておいて
月の灯の下忘れないで
決して消えない君の罪
ただ一人君は覚えておいて

‹隠された手紙›

2/2/2025, 8:07:28 AM

さらば友よその背中に
夢果翔ける翼のあろう
さらば父母よその愛に
善なる国への道あろう
さらば子等よその掌に
美しき未来の光あろう
さらば片割よその心に
支う思い出の暖あろう
さらば現世よこの罪が
来世に漱ぐものならば
さらば我が名よ我が肉よ
また遭う事も有るだろう

‹バイバイ›


静謐な水面の美しい
写真を一枚裏書きに
君の名を書いて箱に入れ
幾枚幾日重ねてく
今は届かぬ君のポスト
代わりにいつか手渡しに
巡り巡った人生の
景色をいつか語るため

‹旅の途中›

1/31/2025, 9:05:52 AM

「殺したくないよ殺したくないよ、
 まだ二人で生きていたいよ」
「此処から出たいよ此処から出たいよ、
 君と行きたい場所沢山あるよ」
「死にたくないよ死にたくないよ、
 まだ君と一緒にいたいよ」
「此処から出たいよ此処から出たいよ、
 二人で見たい場所沢山あるよ」
「あぁね、でもね、ごめんね、痛いね」
「君の最期を飾れるの、君の最期は僕だけなの、
 とってもたまんない我慢できない」
「だからね、ごめんね、痛くしたね」
「ちゃんとずっと大事にするね、
 綺麗にきれいに飾るからね」

「………どうしてそんな顔するの?」

‹まだ知らない君›


薄闇の似合う奴だった
ちょいとした路地裏から手招いて
ちょっとした悪事に突き落とす
暗部と呼ぶには可愛らしく
さりとて日の下には消えそうな
薄闇の似合う奴だった
偶に行きずりオハナシするときの
稚拙な語りを気に入っていた

でも多分もう奴はいないのだ

ソレが多くにとって善だから指摘されないだけで
ソレがお上にとって都合良いから黙ってるだけで

今大通りで日の目を浴び
きらきらしく民に手を振るような
其処までの阿呆では無かったのに

暗色の紅がよく似合っていた
いっそ愛らしかった奴はもう居ないのだ

‹日陰›

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