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「殺したくないよ殺したくないよ、
 まだ二人で生きていたいよ」
「此処から出たいよ此処から出たいよ、
 君と行きたい場所沢山あるよ」
「死にたくないよ死にたくないよ、
 まだ君と一緒にいたいよ」
「此処から出たいよ此処から出たいよ、
 二人で見たい場所沢山あるよ」
「あぁね、でもね、ごめんね、痛いね」
「君の最期を飾れるの、君の最期は僕だけなの、
 とってもたまんない我慢できない」
「だからね、ごめんね、痛くしたね」
「ちゃんとずっと大事にするね、
 綺麗にきれいに飾るからね」

「………どうしてそんな顔するの?」

‹まだ知らない君›


薄闇の似合う奴だった
ちょいとした路地裏から手招いて
ちょっとした悪事に突き落とす
暗部と呼ぶには可愛らしく
さりとて日の下には消えそうな
薄闇の似合う奴だった
偶に行きずりオハナシするときの
稚拙な語りを気に入っていた

でも多分もう奴はいないのだ

ソレが多くにとって善だから指摘されないだけで
ソレがお上にとって都合良いから黙ってるだけで

今大通りで日の目を浴び
きらきらしく民に手を振るような
其処までの阿呆では無かったのに

暗色の紅がよく似合っていた
いっそ愛らしかった奴はもう居ないのだ

‹日陰›

1/31/2025, 9:05:52 AM