切って 貼って 断って 繋いで
失敗は置いといて たまに材料にして
好きなように好むように
上手くいくように成功するように
混ぜて 分けて 裂いて 縫って
零して壊して失敗したら 次の材料にして
組み入れて 取り出して
取り替えて 入れ換えて
楽しく必死で 夢中に魅入られた
無邪気に笑うこどもみたいに
狂科学者は未来を謳う
犠牲の一つも悼まずに
‹まだ見ぬ景色›
きっと行こうねと結んだ約束
不確かな将来への切符
絶対行こうねと指を切る
積み上げた先の未来の話
見えない程離れてしまっても
聞こえない程別れても
願掛けの証は捨てられず
きっと行こうねと夢見た世界
絶対行こうねと望んだ光景
君は目の前で手を差し出した
共に行こうと震える声が
ああ叶わないのだと知っていた
知っていたから地に伏した
現ではもう叶わないから
いつかまた だけの祈りの言葉
いつかまた此処で会えたなら
この世界で出会えたなら
次こそきっと 今度こそきっと
‹あの夢のつづきを›
ふわりふわふわ白が降る
はくり空で閉じた口内は
仄かな甘味にただ噤む
道を白く染める粉を
ぎゅっと握る目が合った
「あったかいね」
「そうだね」
突付けば直ぐに崩れる白玉は
風に舞う先透明に溶け落ち
悴まない指先もまた
透明にべとついた
「帰りたいね」
「……そうだね」
冷たく凍える世界だった
天地程異なる厳しい世界だった
それは間違いなくそうだった
それでもどうしてもこの世界を
常春のお菓子の国を愛せない
‹あたたかいね›
鍵束を持っていた
酷く重くてやけに軽い鍵束だった
銀に金に黒やピンク
大も小も無機も豪奢もごちゃ混ぜな
様々の沢山の鍵が連なっていた
開けてご覧と声がした
穴の空いた扉があった
鍵穴は真っ暗なその中で
どの鍵も使えるから
だから好きな鍵を使ってご覧と
声がした
何を開けるかも分からぬ鍵で
何処へ開くかも分からぬ扉を
開けてご覧と声がした
選んで進めと
声がした
‹未来への鍵›
木星はガスで出来ているらしいと
君は白い息を吐く
天王星は氷で出来ているらしいと
君はアイスに齧り付く
水星は岩石で出来ているらしいと
君は河原で積み遊ぶ
そして僕らもこの星の一部と
君は命の輝きを
‹星のかけら›
ぱちり目を覚ます知らない音
何処か楽しげに弾む曲
擦過の音はサッカーの様に
床を滑る割れた画面
知らない音が鳴っている
知っている筈の携帯から
過保護の過ぎる人達は
今度は何を仕込んだやら
誘拐犯の安否もそぞろに
静か静かに眠るふり
助けが届くその時まで
何も何も知らないふり
‹Ring Ring…›
行くのかいと問えば君は黙って頷いた。
止められないことなど分かっていた、
その優しさなら尚更に。
だからせめて君の背に、
空を逝く不帰の背中に、
誰よりも強い風を、
最期まで翔け抜ける為の
強い、強い風を贈る。
一度切りの祈りに代えて、
平穏を望んだ祈りに代えて。
‹追い風›
二人手を繋いで
買い物をしたりとか
二人机に向かって
お菓子を摘むとか
二人頭を突き合わせて
とりとめなく将来を笑うとか
そのくらいでいいから
そのくらいでいいから
せめて物語の中だけでも
ハッピーエンドにしてくれないの
‹君と一緒に›