桜吹雪に霞みゆく君に
消えないでと髪を引いた
向日葵畑に隠れる君に
行かないでと袖を引いた
色付く葉々に迷う君に
一人にしないでと裾を引いた
白い無音に溶ける君に
一人で行かないでと足を引いた
でも
二度と戻れぬ覚悟をさせてしまうなら
飲み込んだ恐怖が笑顔を形作るなら
硝煙と血香の中で相対するくらいなら
甘ったるい我儘なんて噤んで
空が青く世界が美しい内に
この手を離すべきだった
‹君と最後に会った日›
触れれば散る様な儚さであれば
君は隣にいてくれただろうか
見えずとも明白な馨しさがあれば
君は隣で安らいでくれただろうか
甘く満たす果を粉を振り撒けたなら
君は隣で笑ってくれていただろうか
それでも私は凛と立つ
嵐にも折れぬ万年花
緑の影に誰をも守る
強く鮮やかな花でありたい
‹繊細な花›
「あの日だって、最後まで楽しくて」
「でも在り来りに色褪せる思い出になると」
「……思ってたんだよ、馬鹿」
‹1年後›
眩しく温かな未知と
ちょっとだけ暗く怖く
美味しい楽しさと
苦手な嫌い
痛むような暑さ寒さも
柔らかな影に隠れて
伸ばされる手の柔らかさに
愛し合いされること
な
素敵な世界だと
思ってた
‹子供の頃は›
ぺたりと机に頬をつけた。
窓から降り注ぐ日差しと賑やかなグラウンド。
目を閉じていれば今にも、
君がペン先で突付き起こしてくれそうな。
そんな柔らかな昼下がり、
だったら。
がらんとした教室で
荒れ放題の教室で
取り止めなく独り夜を待つ
太陽光に燃え尽きる人たちを
その悲鳴に耳を塞いで
‹日常›
「夜みたいな色が良いの」
「暗いけど澄んでいる、重たくて華やかな色」
「それを」
「何という名で呼ばれ括られているのか」
「私にはどうも分からないけれど」
‹好きな色›
「愛ってなんだろう」
「守り支えるってなんだろう」
「君の為に何が出来るだろうって」
「この間まで何にも悩まなかったのにさ」
「一人なら何でもなかったのにさ」
「笑ったり泣いたり、楽しそうだったり」
「……あと、たまにはね、怒ってたりとか」
「そういう全部、君との全部」
「最後まで全部、傍で見ていたいって」
「……何だか照れくさいけどね」
‹あなたがいたから›
頭を傾けて空を伺う、その裾を引いた。
濡れるから、と引き込んだ傘の下、
僅か泣きそうに表情が歪んでいた。
雨が降ってるよ、と震える口元、
そんなの良いからとその目を覆った。
まだ降っているんだよ、と傾く頭、
それでも良いからと掬い上げた。
そんな事言うから、そんな事言うから、
ほら、罰が当たってしまったよ、と。
水溜りに泥を染めて、表情が消えていく。
可愛い可愛いてるてる坊主、
頸を落とされ雨に沈む。
‹相合傘›