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6/3/2024, 9:10:19 AM

「正直者ね。美徳よ、確かに」
「でもね、社会に於いて利点かといえば、
 必ずしもそうでは無いわ」
「子供に正直を望むのは、正しい道を歩ませる為」
「……子供の行動思考、その逐一を把握する為」
「言ってみれば、思い通りにしたい大人の傲慢よ」
「だから正直者の子供は喜ばれる」
「でもいざ大人として社会に出た時」
「社会が大人に望むのは、
 最終的には他者を使える人になること」
「正直では無く、本音と建前を器用に扱う事」
「酷い話よね。それまで正しかった事が
 正しくないって突然言われるようなものよ」
「まして、窃盗を蔑む口で技を盗めと、
 そういう空気を読んで行動しろと言うのよ」
「そんな暗黙の了解で、皆が正しく大人になれると
 ……本当にね、馬鹿みたいじゃない?」

‹正直›


「雨ですねえ」
「雨だねえ」
「でも強行したらしいよ」
「今更変えられないでしょ」
「でもねえ嘘か本当かは知らないけれど」
「前置きが長いよ」
「ジューンブライドも旧暦説」
「わあ」
「本来の月だと晴れてて良い感じという噂」
「なんてこと」
「嘘か本当かは知らないけど」
「自衛を重ねた」
「要らない知識調べるのだるい」
「それはそう」

‹梅雨›

6/1/2024, 9:41:11 AM

「穢れないってどういうこと?」
「汚れてないってこと」
「じゃあお風呂に入ってくればいいの?」
「物理的………」
「じゃあ後何さぁ」
「精神っていうか…魂的な意味を指すことが多いな」
「………魂一周目な命って最近大分希少じゃない?」
「最初に増やしすぎたらしいからまぁ」
「うん……?」
「あー………物理な例で言うなら、
 どうせ捨てるなら使い切ってからにするだろ」
「あ、もしかして今世ってお掃除兼断捨離中?」
「だいたいそう」
「そっか、もう君に逢えないかもしれないのか」
「いや、お前と俺はしばらく大丈夫な筈」
「ん??」
「使い込んだ道具の方が掃除しやすいってこと」
「わぁい……大変だぁ……」

‹無垢›

5/31/2024, 9:13:32 AM

いつか君の流した涙が
熱に散り 雲に帰り 大地を潤し
やがて愛しい子の喉を刺す
甘い橙色になるように

身を裂くように響く声が
風となり 蝶を流し 種子を撒き
いつか晴れやかに笑う人の
両手を飾る花冠となるように 

優しい祈りが
例え残酷な絶望を経ても
いつか いつか光の射す
明日へ紛いなく続くように


‹終わりなき旅›

5/29/2024, 12:47:03 PM

口を開く、閉じる
「うわ、居たなら言えよ吃驚した……」

口を開く、閉じる
「何どうした、お腹すいた?」

口を開く、閉じる
「お前さぁ……」

口が閉じる、開かれる
「お前本当、アイツにそっくりだな」

口を閉ざす、視線が動く
飾り棚の上、写真立て

言葉はいつも、形にならない
別れも再会も、伝えられない

‹「ごめんね」›

5/28/2024, 1:34:46 PM

「いや、早くない?」
「暦的には夏だし良くない?」
薄ら寒い雨の中、またも冬の上着を引っ張り出した
私の隣、真白い腕を晒して君は笑った
「というか、どうやって来たの」
「お・し・ご・と」
「せ、世知辛い……」
ざわざわとさざめく大通り
カラフルに咲く傘の林を器用に抜けていく裾
「それで」
「うん?」
小走りに追いかけて、追い掛けて、道路の真ん中
ふと立ち止まる君は雨粒を透かしていた
「君の手を取ればいいのかな?」
「……うん、正解」
そういえばあの日は友引だったかと
遠ざかる意識の中、悲しく歪んだ顔だけが見えていた

‹半袖›

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