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「いや、早くない?」
「暦的には夏だし良くない?」
薄ら寒い雨の中、またも冬の上着を引っ張り出した
私の隣、真白い腕を晒して君は笑った
「というか、どうやって来たの」
「お・し・ご・と」
「せ、世知辛い……」
ざわざわとさざめく大通り
カラフルに咲く傘の林を器用に抜けていく裾
「それで」
「うん?」
小走りに追いかけて、追い掛けて、道路の真ん中
ふと立ち止まる君は雨粒を透かしていた
「君の手を取ればいいのかな?」
「……うん、正解」
そういえばあの日は友引だったかと
遠ざかる意識の中、悲しく歪んだ顔だけが見えていた

‹半袖›

5/28/2024, 1:34:46 PM