まぐ

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5/23/2023, 12:12:33 PM

生きとし生けるものは、誰しも死から逃れられない。
それは果たして不幸だろうか。いや、私にとってはこの上ない幸せだ。
私を待っていてくれる人なんて誰もいない。一心に思って理解してくれる人なんて現れない。それでも死は、私の全てを受け入れ何もかもを支配してくれる。

いつまでも迎えを待っている。あなたが来る日を、ずっとずっと。

5/22/2023, 7:06:04 PM

明日こそは新しい自分を手に入れるのだと誓った。
何度も失敗してきた。でも次こそは必ず成功させる。
自傷、過量服薬、首吊り。そのどれもうまくいかなかった。これが失敗したら最後、もう私は閉鎖病棟という名の「安全な繭」の中に閉じ込められて、一生自由を奪われるに違いない。
最後のチャンス。そう思うと体の震えが止まらない。傷だらけの体で、私はどうにか建物の屋上に侵入した。ちょうど夜と朝の境目の滲んだ空に出迎えられる。ああ、なんて綺麗なんだろう。あの空に今日の私を沈めて、明日からはこの世界に存在しない自分を手に入れるのだ。
靴を脱ぐ。フェンスによじ登る。さあ、あとは飛び立つだけ。私は迷いなく地を蹴って、東雲色の空に包まれた。
ありがとう、昨日までの自分。そしてさようなら。
こんにちは、私のいない明日。

5/21/2023, 10:32:07 AM

私は穢れて油膜の張った、薄汚い水だった。
全て洗い流して一生に一度くらい綺麗になりたかった。だから私はありとあらゆる液体をお腹がいっぱいになるまで飲み下し、それを口から何度も何度も吐き出した。繰り返し続けた。胃液も胆汁も何もかも出し尽くした後、私は体の中にまだ赤い水が溜まっていると気づいた。
肌を切り付け傷口を水に浸す。それが濁っていくたびに透明に近づける気がした。肌からは血の気が引いて、青に近い白になって萎びていく。それはどう見ても透明とは程遠かったけれど、私にとっては十分だった。
死ぬ間際、限界まで「透明」に近づいた自分の体を鏡で見た。本当に本当に幸せな気持ちでいっぱいだ──そう思った時、瞳から雫が垂れ落ちた。それは今まで見た何よりも透き通った液体で、私はゆっくりと微笑みながら生涯に幕を閉じた。

5/20/2023, 6:34:20 PM

あなたは物静か。誰にも心を許さない。そんな貴方に唯一愛してもらう方法を見つけました。
何も食べず、食べれば吐いて。それを繰り返し、痩せ細った私の前にあなたは静かに佇んでいた。そんなあなたの手を引いて、今度は浴室に入る。カミソリと、溜めた湯と、そこに浸す腕。静かに静かに血の風呂が出来上がっていく。意識が薄れていく中で、あなたはただ私を見下ろしていた。知っている。あなたはこの光景をもう飽きるほど見ている。「死」そのものであるあなたには響かないのかもしれない。それでも、それでも。私が意識を失うその一瞬、あなたが少しでも私を見てくれるのなら。

「ずっと好きでした」

全ての体の力が抜けて、濃い死の匂いが浴室を満たしたその時。あなたはただ、そばにいてくれた。ああ、返事が聞きたいな──最後に思ったのは、そんなことだった。

5/20/2023, 3:00:41 AM

雨は予報された通りに降るわけではない。だから、私が気まぐれに外に出た今この瞬間降り始めることだってごく自然なのだ。
こうして雨を惹きつける自分を恨んだことはない。雨は私のことがきっと好きでたまらなくて、ついついやってきてしまうのだろう。それはとても愛おしく、同時になんて身勝手なのだと怒りすら湧いてくる。だって──ほら。
帰宅した瞬間、愛しの「彼」はどこかへ行った。散々好きだと囁くくせに、私が愛を返そうとすると恥ずかしがっていなくなるのだ。
我慢の限界に達したある時、シャイなあの人を振り向かせる術をひとつ思いついた。私は次の日海へ身体を沈めた。そこは私を出迎えるように輝いているようにも、追い出そうと嘶いているようにも感じた。でも、どう思われようとも構わない。私だってあなたが好きなのだ。

──彼女がいなくなったその日、世界中が突然の豪雨にみまわれたという。

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