前回投稿分からの続き物。
「ここ」ではないどこか、別の世界に、世界線管理局なる厨二ふぁんたじー組織がありまして、
別組織・世界多様性機構は、この管理局を一方的に、ドチャクソ敵視しておったのでした。
そのわりに組織のビジネスネーム制は真似するし
わざわざ管理局を重点的に襲撃するし、
なんなら管理局を襲撃しても、けっきょく鎮圧されるか逮捕されるかで負けて終わるし。
要するに多様性機構は単純に、
バカみたいに「大好きな」管理局に、ちょっかいを出したいのかもしれません(早々にお題回収)
ところで世界線管理局の、法務部の機械生命体局員・ヒバリが個人的に管理している保管庫の中に、
そんな多様性機構の構成員が、複数人、ポイチョの放ったらかしにされておりまして。
せっかくなのでそのうちの1人、機構の香水魔術師・キンモクセイに、話を聞いてみましょう。
…––「そうですね。自分でも、バカみたいなことをしたと少しは思いますよ」
法務部の機械生命体、ヒバリに連れられて、機構の野郎・キンモクセイが語り始めました。
「私の専門は香水魔術。人間は私の香りから、逃れることは不可能です。
……相手は人間ではなく機械生命体だったのです」
くんくん、くんくん。何かヘンなニオイがするぞ。
キンモクセイの証言を、ちゃんと聞いているのかいないのか、なんなら話に興味がそもそも無いのか、
成り行きで見学中の稲荷子狐は、証言席に座るあわれな機構職員の周囲を文字通り、
自慢の鼻でもって、嗅ぎ回っています。
ネコ目イヌ科の動物らしく、おしりスメルのチェックは、おこたりません。
魂を見透かす稲荷狐らしく、心魂スメルのチェックも、忘れません。
むむっ! なんだ、このニオイは。
どうやらコンコン稲荷子狐、何か良くないものを嗅ぎとった様子です。
「私の任務は、世界線管理局に捕まった機構の仲間たちを助け出して、管理局を壊滅させること。
私、キンモクセイの香水魔術でもって、ほとんどの管理局員はたちまち倒れてしまいました」
キンモクセイは語り続けます。
「管理局員も私の香水魔術の前には、為すすべもない。手始めにこのヒバリの標本保管庫に捕らわれている仲間たちを、助けようとしたのです」
結果はご覧のとおりでしたがね。
キンモクセイは肩をすくめました。
つまり、あらゆる生物の嗅覚から相手の中に忍び込む自慢の香水魔術が、
機械の体を持つ機械生命体・ヒバリの前に、あっけなく敗北してしまったのです。
「そう。生物です」
機構の香水魔術師・キンモクセイの目が、怪しく、鋭く光りました。
「生物になら、私の香水魔術は効果がある。
そこの稲荷子狐!お前はこれから私の魔術で……」
お前はこれから私の魔術で、
稲荷狐としてのチカラを、管理局壊滅と機構繁栄のために使うのです!
キンモクセイは、そう言いたかったのでしょう。
ヒバリの死角に隠し持っていた香水の小瓶を、床に落として割ろうとしたところで、
パクッ!
コンコン子狐、キンモクセイが落とした小瓶を子狐のおくちで、難なくキャッチしたのでした。
「え」
なんだこれ、なんだこれ。コンコン。
「そんな、バカな、私の香水瓶が……!」
わるいニオイ、わるいニオイだ!コンコン。
「おのれ!おのれぇぇぇ!」
はいはい、バカみたいなことはやめて、そろそろ戻りましょうね。
せっかくのチャンスをモノにできなかった機構メンバー・キンモクセイを、
管理局の法務部局員、機械生命体のヒバリがいつもの保管庫に戻します。
コンコン稲荷子狐は、キンモクセイが割ろうとした魔術用の香水瓶と、しばらくコロコロたわむれておりましたが、
数分で飽きまして、ヒバリにポイチョ、処分要請よろしく、あげてしまいましたとさ。
3月22日は、さくらねこの日だそうですね。
それにちなんだワケでもありませんが、ネコ目イヌ科キツネ属のおはなしです。
最近最近の都内某所、某稲荷神社敷地内の一軒家に、人に化ける妙技を持つ化け狐の末裔が、家族で仲良く暮らしておりまして、
そのうち末っ子の子狐は、善き化け狐、偉大な御狐となるべく、絶賛修行中。
今月から「ここ」ではない別の世界の、世界線管理局なる組織に修行の場所を移して、
管理局員の仕事を手伝っておりました。
そんなコンコン稲荷子狐の、その日の仕事のお手伝いは、法務部から大事な道具を借りてくること。
「ヒバリ」という機械生命体が、その道具を大事に保管しているそうです。
「良いですか、子狐」
法務部執行課、実動班特殊即応部門の副部長、ツバメなるビジネスネームの人間が、
子狐の首に、イラスト付きのメモをさげてやりつつ優しい声で言いました。
「この絵をヒバリに見せて、『貸してくれ』と頼んできてください」
優しい声をしてるわりにツバメ、なにやら心の奥底は、少しスンとしてる模様。
「オジサンなにかあったの」
稲荷子狐は稲荷狐なので、相手の心の香り、相手の魂の匂いが分かります。
ツバメはなにやら、悲しい、寂しい、むなしい気持ちが心の中に、残っている様子です。
「私は『オジサン』ではないよ」
スンとした目でツバメ、言いました。
「さあ、子狐、行ってきてください」
詳細は前回投稿分参照ですが、スワイプが面倒なので気にしてはいけないのです。
「同じ法務部の、ヒバリという局員です。
頼みましたよ子狐」
さて、そろそろお題回収開始です。
「ヒバリさん。ヒバリさん」
とってって、ちってって。
コンコン稲荷子狐は、頼まれたものを機械生命体から借りるために、
尻尾を上げてご機嫌で、廊下を歩いてゆきました。
「ヒバリさん、道具、かしてくださいな」
あっち、こっち、そっちの局員に聞きながら、機械生命体・ヒバリのところに辿り着きますと、
「やあ、子狐くん。待っていましたよ」
キュイーン、きゅいーん、1機の機体生命体が子狐に向かって歩いてきて、
滑らかな挙動でもって、お辞儀をしました。
「ワタシが法務部のヒバリです。
ツバメ副部長から、連絡は受けていますよ」
「ん!」
コンコン稲荷子狐が、首にさげてもらったツバメのメモを、ヒバリに見せます。
「コレ、かして、ください!」
メモにはオシャレな薄黄色の香水瓶が、1行の管理番号と一緒に描かれていました。
とってって、キュインキュイン、
ちってって、ヒュインヒュイン。
稲荷子狐と機械生命体が、
二人ぼっちで、美しい道具や武器がズラッと並ぶ保管庫の中を、歩いてゆきます。
モフモフ子狐と無機質生命体が連れ立って、二人ぼっちで歩く様子は、なかなか絵になります。
「きみが頼まれたのは、キンモクセイの香水です」
「キンモクセイ!キンモクセイ!あまいニオイ」
「その金木犀ではありません。
世界多様性機構という組織の、キンモクセイというビジネスネームを持つ男が、持ってきた物です」
「たよーせーきこー」
「ワタシたち世界線管理局の局員は、動物のビジネスネームを貸与されています。
対して、世界多様性機構の構成員は、植物のビジネスネームを持っているのです」
「ふーん」
君がワタシから借りるべき標本の、元々の持ち主に会ってみますか?
二人ぼっちで保管庫の中を歩いておった機械生命体・ヒバリが、子狐に向き直って聞きました。
コンコン子狐は小首を傾けて、今度は反対側にも傾けて、ちょっと面白そうだったので、
そのままヒバリにくっついて、歩いてゆきました。
「元々の持ち主」がどういう人間だったかは、
それは今回のお題とは関係無いので、ひとまず気にしない、気にしない。 おしまい。
春彼岸も真ん中を過ぎた今日このごろです。
最近最近の都内某所、某私立図書館に激レアなケースで出没する別世界出身者は、
ビジネスネームをツバメといいまして、「ここ」ではないどこかの世界の、世界線管理局なる組織に、法務部局員として籍を置いています。
別世界出身者・ツバメはコーヒーが大好き!
東京でカフェラテを飲んでからというもの、ずっとずっと、いわゆるカフェインジャンキー。
酸味ゆたかなコーヒーから、深い苦味をたたえるコーヒー、コクに全振りのコーヒーまで、
あらゆるコーヒーを愛して、様々なコーヒーに会いにゆきます。
そしてツバメ、気に入ったコーヒーを見つけては、
豆を買い、仕事の休みの日に少量だけ小瓶に詰めて、東京で覚えたバイクにまたがり、
よく整備された山のキャンプ場で、火を起こし、豆を煎って、挽いて、お湯で蒸らして、
静かに1杯、2杯、楽しむのです。
前回投稿分でこのツバメ、魔女のおばあちゃんの喫茶店で、それはそれはドチャクソに良い豆に遭遇。
繊細多彩な香りとフレッシュな味が、このカフェインジャンキーの幸福中枢を、完ッ全に打ちのめしてしまいました。
ペアリングされたスイーツは3種。
セット価格で8000円(税抜)。
ツバメ・ザ・ジャンキーは大満足で、ポンと現金払いをして、200gの豆を購入。
大事に大事に抱えて帰路につき、敬愛する上司に1杯誘いましたが断られたので、
そのまま夜にチビチビ、ちびちび。
お気に入りの映画を観ながら1杯飲んで、2杯飲んで、その日はぐっすり眠ったのでした。
ところで今回のお題は「夢が醒める前に」です
(お題回収開始)
『おう、いらっしゃい、ツバメさん』
夢の中のツバメは、都内某所の某私立図書館の中、
食堂併設の飲食スペースにおりました。
『さすが、繧ク繝ァ繧ヲ繝帙え縺ョ莨晞#が早いね』
そうです。さすが夢の中です。
図書館食堂の店主さんの言葉が、言葉のカタチを為していません。
それでもツバメは、夢の中のツバメなので、
夢の中の店主が何を伝えようとしているのか、何故かハッキリと分かるのです。
すなわち前回投稿分で堪能した「あの」コーヒーが、今日からモーニングサービス限定で、
サンドイッチと目玉焼き、それからツバメの故郷の朝食の一番人気が一緒について、
なんとたったの500円で堪能できるのです!
夢の中でのみ適用される反論不要の絶対的な納得感って何なんでしょうね(浮遊感)
『ああ、素晴らしい』
ツバメは夢が醒める前に、夢の中の店主から、夢のモーニングサービスプレートを受け取って、
何故か図書館の飲食スペースではなく、自分の職場の自分のデスクに座ります。
『いい匂いだ』
ああ、なんて美しい、■■■の香り。
ツバメは夢の中で深呼吸して、何の迷いも疑いもなく、コーヒーカップをつまんで口元に––…
…––「んがっ!……ん、 ん??」
ピピピピッ! ピピピピッ! ピピピピッ!
コーヒーカップをつまんで口元に持っていく前に、
ツバメは端末のアラームのせいで、ぱっちり夢から醒めてしまったのでした。
「ゆめ、 ……ああ、うん、 そうだよな。
図書館であの高級コーヒーを、500円ぽっちで飲めるワケが、ない よな」
知ってた(気付かなかった)
うん知ってた(思い至らなかった)
ツバメは深いため息を吐いて、
せめて夢が醒める前に、ひとくちだけ、
たったひとくちで良いから、あのコーヒーを飲みたかったと、しょんぼりしておったとさ。
前回投稿分からの続き物。
「ここ」ではないどこか、別の世界に、世界線管理局なる厨二ふぁんたじー組織がありまして、
そこの法務部執行課、実動班特殊即応部門の副部長は、ビジネスネームをツバメといいました。
管理局はビジネスネーム制を敷いており、
皆みんな、それぞれの部署ごとに、動物の名前のビジネスネームを貸与されておったのでした。
さて。
前回投稿分でこのツバメ、稲荷子狐を接待するお仕事を上司から言い渡されまして、
帰宅できたのが日の入りを少し過ぎた頃合い。
コンコン稲荷子狐の、頭を撫でてやって、ご馳走を注文してやって、ソースがついたら拭いてやって、要するにモフモフのちゃむちゃむ。
子狐はたいそう満足して、帰ってゆきました。
「はぁ。 おわった……」
御狐様の子供、お稲荷様の神使見習い、いずれ世界線管理局にチカラを貸してもらうかもしれない子狐の接待が終わったら、
あとは、ツバメ自身へのご褒美タイム。
というのもツバメ、コーヒーが大好きでして、
収蔵部収蔵課の局員、魔女のアンゴラおばあちゃんが店主をしている喫茶店に、
そこそこ高級で、なかなか味わえない、ツバメ好みのコーヒー豆が入荷したのです。
カフェインジャンキー・ツバメの胸は、カフェインによる動機・頻脈カンケーなしに、高鳴ります。
とある島の山の中腹、寒暖差に抱かれて育った、
コク深い、野性味のあふれる、しかしフルーティーな香りのかぐわしいコーヒーなのです。
「こんにちは」
チリンチリン、ちりんちりん。
お題どおりに胸が高鳴るツバメです。
「例の予約のコーヒーを、お願いします」
「やっと来たわね。いらっしゃい、ツバメ」
常連のツバメが喫茶店の扉を開けて、ドアベルが可愛らしく鳴り響きますと、
店主の魔女、アンゴラおばあちゃんが、穏やかな笑顔でツバメを迎えて、カウンターに案内しました。
「ちょうど今、焙煎が終わったところよ」
テーブルではガリガリがらがら。
不思議な不思議なハムスターが、濃い琥珀色の中深煎りを、少し粗めに挽いています……
ところでとっとこハムスター、なにか小さなプレートを首から下げています。
『私は魔晶の杖を1本噛みました』だそうです。
きっと高級品だったのでしょう(察してください)
「ああ……素晴らしい」
挽き終えた豆がセットされ、お湯の84°Cが静かに豆の上に置かれますと、
パッ、と一気に香りが咲いて、既に十分高鳴っておったツバメの胸は、更に高鳴ります。
煎りたての新鮮なスパイスのような、
じっくり熟成されて時を過ごしたワインのような、
しかしどこか、ワイルドベリーともワイルドチェリーとも知れぬ甘香が隠れておるような、
緻密に組み上げられたガラス細工か飴細工のような繊細さを、ツバメはたしかに、感じました。
「美しい香りがします」
「良いでしょう?意外とハニーチーズと合うのよ」
蒸らしている間にツバメの前に、ショコラとクッキーとドライフルーツと、それからハチミツを少し垂らしたチーズがそれぞれ整列して、
その真ん中に、カタ、かちり。
ツバメの胸を高鳴らせている主役、そこそこ高級なコーヒーが登場します。
ツバメの高鳴りは最高潮!昇天寸前です。
「さあ」
おかわりの2杯分も別個で添えて、アンゴラおばあちゃんが穏やかに、ツバメに言いました。
「どうぞ。めしあがれ」
ツバメは、それはそれは幸福な穏やかさでもって、
アンゴラおばあちゃんが淹れた最高の1杯の、最高の香りをまず、堪能しましたとさ。
前回投稿分のおはなしで、狂犬病予防法第5条に先駆けて、狂犬病予防接種を頑張った子狐です。
最近最近の都内某所、某本物の稲荷狐が住まう稲荷神社在住の末っ子子狐は、
善き化け狐、偉大な御狐となるべく、絶賛修行中。
注射を我慢するのもひとつの修行です。
「ちゅーしゃ!りふじん!リフジン!」
ですが子狐、なぜ毎年注射をするのか、誰のために毎年痛い思いをしなければならないのか、
ちっとも、少しも、理解していません。
「フジョーリだ!フジョーリだ!」
取り敢えず今年の分の注射を耐え抜きましたので、
ご褒美のお肉、油揚げ、豆腐、お餅等々、
存分に、十分に、堪能したのでした。
「フジョーリ!」
ちゃむちゃむ、ちゃむちゃむ。
コンコン子狐、大好きな特撮風アニメの次回予告に出てきた言葉「不条理」を叫びながら、
でもご褒美はとっても美味しいので、尻尾ぶんぶん、大満足。おかわりも抜かりありません。
そんな子狐の隣で虚ろ目して、子狐と上司による不条理と対峙してる野郎がひとり居りまして。
「そうだね 不条理だね……」
というのもこの野郎、ビジネスネームをツバメといいまして、
本当であれば今頃、予約しておいた喫茶店で、
予約しておいた最高級コーヒーを目の前で焙煎してもらって、挽いてもらって、淹れてもらって、
そして、フルーティーな香りと焙煎の苦味とを存分に楽しんでいる予定だったのです。
それが突然、敬愛する上司から子狐の見守りと食べ物の支払いを任せられまして。
「仕方無い。しかたないんだ」
ああ、ああ。私のコーヒー。
上司の指示の理由も、子狐の見守りに自分を指名した理由も理解しているツバメです。
喫茶店の店主をしている魔女のおばあちゃんからも、予約の件はキャンセル料と、それから24時間以内の入店とで、
ギリギリ、許してもらえそうなのです。
とはいえ本来ならコーヒーなのです(お題回収)
「フジョーリ!フジョーリ!」
「そうだね。不条理だ」
「オジサンも、フジョーリ」
「オジサンの年齢じゃないけど私も不条理だ」
「オジサン、おにく、たべる。
キツネのおにく、あげる。オジサンおたべ」
「うん。子狐、きみが食べて良いんだよ」
良い子良い子。
ツバメが子狐の頭を撫でてやると、子狐はそれが嬉しくて嬉しくて、
尻尾ぶんぶんぶん、お耳ペッタン、目が幸福です。
注射の不機嫌はもう吹っ飛んだようです。
ツバメも子狐の幸福を見て、ニッコリ。
とはいえ本来ならコーヒーです(略)
「フジョーリ!」
「そうだ。不条理だ」
「ちゅーしゃ、ハンタイ!」
「注射は来年も、頑張りましょうね」
「オジサンおにく。」
「私にお肉を渡しても来年の注射は消えないよ」
「おにく」
ちゃむちゃむ、ちゃむちゃむ!
コンコン子狐は幸福に、狂犬病予防接種を耐えたご褒美を堪能し続けます。
ツバメは相変わらず虚ろ目。
時折オジサンと呼ばれては、たまに「オジサン」を訂正して、子狐を撫でてやるのでした。
最終的にツバメは予約の時刻から、だいたい18時間ほど遅れて、
ようやく、念願のコーヒーに辿り着きましたとさ。