かたいなか

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3月22日は、さくらねこの日だそうですね。
それにちなんだワケでもありませんが、ネコ目イヌ科キツネ属のおはなしです。

最近最近の都内某所、某稲荷神社敷地内の一軒家に、人に化ける妙技を持つ化け狐の末裔が、家族で仲良く暮らしておりまして、
そのうち末っ子の子狐は、善き化け狐、偉大な御狐となるべく、絶賛修行中。
今月から「ここ」ではない別の世界の、世界線管理局なる組織に修行の場所を移して、
管理局員の仕事を手伝っておりました。

そんなコンコン稲荷子狐の、その日の仕事のお手伝いは、法務部から大事な道具を借りてくること。
「ヒバリ」という機械生命体が、その道具を大事に保管しているそうです。

「良いですか、子狐」
法務部執行課、実動班特殊即応部門の副部長、ツバメなるビジネスネームの人間が、
子狐の首に、イラスト付きのメモをさげてやりつつ優しい声で言いました。
「この絵をヒバリに見せて、『貸してくれ』と頼んできてください」

優しい声をしてるわりにツバメ、なにやら心の奥底は、少しスンとしてる模様。
「オジサンなにかあったの」
稲荷子狐は稲荷狐なので、相手の心の香り、相手の魂の匂いが分かります。
ツバメはなにやら、悲しい、寂しい、むなしい気持ちが心の中に、残っている様子です。

「私は『オジサン』ではないよ」
スンとした目でツバメ、言いました。
「さあ、子狐、行ってきてください」
詳細は前回投稿分参照ですが、スワイプが面倒なので気にしてはいけないのです。
「同じ法務部の、ヒバリという局員です。
頼みましたよ子狐」

さて、そろそろお題回収開始です。

「ヒバリさん。ヒバリさん」
とってって、ちってって。
コンコン稲荷子狐は、頼まれたものを機械生命体から借りるために、
尻尾を上げてご機嫌で、廊下を歩いてゆきました。
「ヒバリさん、道具、かしてくださいな」

あっち、こっち、そっちの局員に聞きながら、機械生命体・ヒバリのところに辿り着きますと、
「やあ、子狐くん。待っていましたよ」
キュイーン、きゅいーん、1機の機体生命体が子狐に向かって歩いてきて、
滑らかな挙動でもって、お辞儀をしました。

「ワタシが法務部のヒバリです。
ツバメ副部長から、連絡は受けていますよ」

「ん!」
コンコン稲荷子狐が、首にさげてもらったツバメのメモを、ヒバリに見せます。
「コレ、かして、ください!」
メモにはオシャレな薄黄色の香水瓶が、1行の管理番号と一緒に描かれていました。

とってって、キュインキュイン、
ちってって、ヒュインヒュイン。
稲荷子狐と機械生命体が、
二人ぼっちで、美しい道具や武器がズラッと並ぶ保管庫の中を、歩いてゆきます。
モフモフ子狐と無機質生命体が連れ立って、二人ぼっちで歩く様子は、なかなか絵になります。

「きみが頼まれたのは、キンモクセイの香水です」
「キンモクセイ!キンモクセイ!あまいニオイ」
「その金木犀ではありません。
世界多様性機構という組織の、キンモクセイというビジネスネームを持つ男が、持ってきた物です」

「たよーせーきこー」
「ワタシたち世界線管理局の局員は、動物のビジネスネームを貸与されています。
対して、世界多様性機構の構成員は、植物のビジネスネームを持っているのです」
「ふーん」

君がワタシから借りるべき標本の、元々の持ち主に会ってみますか?
二人ぼっちで保管庫の中を歩いておった機械生命体・ヒバリが、子狐に向き直って聞きました。
コンコン子狐は小首を傾けて、今度は反対側にも傾けて、ちょっと面白そうだったので、
そのままヒバリにくっついて、歩いてゆきました。

「元々の持ち主」がどういう人間だったかは、
それは今回のお題とは関係無いので、ひとまず気にしない、気にしない。 おしまい。

3/22/2026, 3:00:04 AM