かたいなか

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12/16/2025, 9:57:35 AM

今回のお題は「明日への光」。
明日への光速計算のおはなしをご紹介します。

ここではないどこか、別の世界に、世界線管理局という厨二ふぁんたじー組織がありまして、
その日は経理部で小さいような大きいような、ともかく事件が発生中。

法務部が原因特定のために、あっちを調べたりこっちを調べたり、そっちで聞き込みしてみたり、
あっちこっちを調査している間、
ズダダダダ、ダダダズダダダ、ダダダダン!
規格外に高速、すなわち光速も良いところのスピードでもって、電卓を叩く局員が居ました。

経理部の局員です。
管理局ではビジネスネーム制を採用しており、
その局員は、マンチカンと呼ばれています。

ダガダダダダ、ドダダ、ダダダズダダズダダダン!
マンチカンは最近1〜2年程度で入局してきた新米局員。最近ようやく経理の仕事を覚えました。

ズダダダダダダ、ダダダ、ダガダダダズダダダン!
経理部のコンピュータリソースを全部ぜんぶ事件の解決に総動員しておりますので、
伝票の計算は、マンチカンが電卓で、ダダダダン!
高速、もとい光速計算するのでした
が。

「ロシアンせんぱぁぃ!!」
ダダン!全部の計算を異次元のはやさで終了したマンチカン。先輩のロシアンブルーに言いました。
「何回やっても!合計が!合いませぇん!!」

そりゃそうです、マンチカンの計算が合わないのが、まさしく「事件」のメインなのです。
前日間違いなく収支を確認した資金が、その日の昼から妙な方向にズレてズレて、
すなわち、管理局の中から資金をイジられていることが、その日のうちに発覚したのです。

要するにデータ上の資金強盗です。
どうやら、管理局を推しの仇のごとく敵視している組織が、嫌がらせをしているようなのです。

「あのねマンチカン」
完全に混乱状態のマンチカンに、
先輩のロシアンブルー、言いました。
「どこがどれくらい合わないか、探してるのよ」

ズレを探して、差額を見つけて、記録する。
それがマンチカンの、今日のお仕事です。
だけどマンチカン、敵襲とかハッキングとか、ともかく外部からの攻撃に慣れてないのです。
去年いきなり攻撃的な組織がケンカを売ってきたときも、マンチカンはビビってしまって、
カチンコチン、怖くて固まっておったのです。

「大丈夫、マンチカン?明日までに特定できる?」
「うぇぇぅ、がんばぃます」
「ほら深呼吸して。涙拭いて。明日までよ」
「がんばッ、がんばぃまぅ、ぅえぇぅ」

「本当に大丈夫?」
「うぅぅ」
「ちょっと休憩する?」
「ぅえぇぅぅ……」

ダダダダダ、ズダダダダダダン!
そろそろお題回収です。
期限であるところの明日に向けて、マンチカン、電卓を叩いて叩いてダダダダン!
明日への光速計算を、続けるのでした。

「マンチカン。マンチカン」
「なんですか先輩」
「休憩しましょ。ね。イーツ取ってあげるから」
「うぅぅ。 ゴチになります。 おにく。さかな」

「資料が汚れちゃうから飲み物オンリーよ」
「おにくぅぅぅーー」

ダダダダ、ズダダダン!
明日への光速計算は、当分、続きましたとさ。

12/15/2025, 9:35:53 AM

「丸くなるな」で始まる広告がありますが、
意外とその缶を飲んだことがない物書きです。
「星になる」がお題とのことなので、星のおはなしをひとつ、ご紹介。

前回投稿分から続くかもしれないおはなし。
最近最近のおはなしです。
都内某所、某稲荷神社敷地内の一軒家に、
人に化ける妙技を持つ化け狐の末裔が、家族で仲良く暮らしておりまして、
そのうち末っ子の子狐が、
親友の化け子狸が修行している和菓子屋さんから、何種類かの和風シュトレンを購入。
尻尾ブンブンで、帰ってきました。

抹茶シュトレン、小倉あんシュトレン、
和紅茶シュトレンにサツマイモシュトレン。
ゆずとミカンとチョコのシュトレンもあります。

「しゅとれん!しゅとれん!」
シュトレンと初遭遇の子狐は大興奮!
みたらしシュトレンをひとくちガブッ!切り分けるでもなく食べますと、
「おいしい」
バターと砂糖と、みたらしソースとあんこの味が、子狐の舌の上で幸福の宇宙を爆誕させまして、
「おいしい!」

子狐の目がお題どおり、まさしく、
星になる、のでありました。

「しゅとれん、おいしい、おいしい」
星になるキラキラ両目を輝かせて、コンコン子狐はみたらしシュトレンを、
ちゃむちゃむちゃむ、ちゃむちゃむちゃむ。
一気に食べ進めて、半分を通り越して、いつの間にか1本、全部食べてしまいました。

「しゅとれん、おいしい、おいしい!」
星になるキラキラ両目の子狐の隣では、なにか良くないものでも食べてしまったのか、
子狐の神社に来ておったドラゴンが、弱々しくうつ伏せで、口を開けて、ダウンしています。

多分ワサビでも食ったのです。
子狐はなんでも、多分、知っておるのです(多分)

「オッサン、オッサン、だいじょうぶ」
くんくんくん。子狐はドラゴンのパッカンしている口のニオイをかぎました——やはりワサビです。
『みれば わかるだろう』
きゅあおう。くぅおおうん。ドラゴンは虚ろな目で、もはや魂が星になる直前です。
よほど大量のワサビを、一気に食ったのでしょう。

「オッサン、オッサン、ワサビ、好きなの」
『ちがう』
「オッサン、ワサビ、きらいなのに食べたの」
『事故だ』

「オッサンくちなおし、しゅとれんどーぞ」
「ぎゃおお!!ぐぎゃおおおん!!」

あまい!違う、苦い!じゃない甘い苦い甘い!!
ぎゃおぎゃおぎゃお!!
子狐がドラゴンのパッカンしている口に、抹茶シュトレンをブチ込んだところ、
どったんばったん、ドラゴンは一気に元気になって、活発に、ドチャクソに、動き回りました。

抹茶の苦味とワサビの辛味と砂糖の暴力で、のたうち回っているとも言います。
まぁ、お題とは無関係なので、気にしないのです。

そんなことよりコンコン子狐、美味探求の同志たる人間の匂いを察知しまして、
さっそく、シュトレンの数種セットをその人間と一緒に、食べることにするのです。

「おねーちゃん!おけしょーの、おねーちゃん!」
それは、子狐を誰より上手にトリミングして、お化粧してくれる、女性の人間でした。
「しゅとれん!いっしょにしゅとれん!」
女性の人間は、ドワーフホトといいました。

「よしよしコンちゃん、あたしが、シュトレンにお星さまの魔法をかけてあげましょー」
子狐がドワーフホトのもとへ跳んでくと、
ドワーフホトはニッコリ笑って、ぱらぱらぱら。
和風シュトレンの白い粉砂糖の上に、赤や緑や黄色なんかの、小ちゃくキレイな金平糖を、
お星さまのように、少しずつ降らせました。

「おほしさま」
「手作りだよぉ〜」
「てづくり!」

さぁさぁ、お星さまのシュトレンを食べましょう。
子狐とドワーフホトは幸福に、和風シュトレンを分けあって、一緒にもぐもぐ!
やっぱり子狐もドワーフホトも、両目がキラキラ、星になる、のでありました。

12/14/2025, 9:38:23 AM

去年の夏、8月のだいたい最初の頃、「鐘の音」というお題を書いた物書きです。
日本式風鐘とはすなわち風鈴のこと。
稲荷神社の子狐が、手水の上に飾られたキラキラガラスの吊り鐘を取ろうとして、ぴょん!
最終的に手水にボチャン、したのでした。

さすがに冬の入口を過ぎた12月に
そんな見の冷える、下手すりゃ凍るような物語を
再掲載するワケにもいかないワケでして。
今回は冬らしいおはなしをひとつご紹介。

最近最近のおはなしです。
都内某所の某稲荷神社、敷地内の一軒家に、
人に化ける妙技を持つ化け狐の末裔が家族で仲良く暮らしておりまして、
そのうち末っ子の子狐が、去年の夏に神社の手水へ、勢いよくボチャンした遊び盛り。

その日はコンコン子狐の、お気に入りの参拝者が、
子狐のお母さんに頼まれて、子狐に紅白ツートンのハーネスつけて、紅白ツートンのリードでもって、
だいたい10分から20分程度、お外へ散歩に連れていってくれました。

というのも子狐の大親友の化け子狸のおうちが
まさかの代々続く和菓子屋さんでして
その和菓子屋さんが今年初めて
和風シュトレンを限定販売するのです。

『行って、好きな味を買ってらっしゃい』
子狐のお母さんはそう言って、残高が十分チャージされたICカードを託してくれました。

「ICカード? 子狐、使い方は分かるのか」
「あいしーかーど」
「そうだ。分かるのか」

「キツネなんでもしってる」
「本当か」
「キツネうそつかない」
「本当は?」
「うそつかない!キツネ、わかる!」

「和菓子屋でシュトレンを選んだとして、レジに着いたとして、最初にやることは?」
「『ツケといてください』。」

「……そうか」

ガランガラン、がらんがらん。
さぁさぁ、お題回収です。

遠い鐘の音が、ガランガラン。
子狐の大親友、化け子狸の和菓子屋さんの方から、
少し控えめに、でも確かに、聞こえてきました。
和風シュトレンが焼き上がったのです。

「はやく!はやく!しゅとれん!」
ギャギャギャ!きゃんきゃん!
コンコン子狐はリードを引っ張って、なかば跳んでるような、二足歩行モドキになりながら、
一緒に散歩してくれる参拝者さんを引っ張って、
遠い鐘の音めがけて、猛ダッシュします。

数人程度並ぶ和菓子屋さんの、列の先では和菓子屋の若い店員さんが、がらんがらん。
シュトレンの店頭販売開始を告げます。
お客様の目の前で、お客様の望みの量の、美しいパウダーシュガーをパタタタタ。振るのです。

「はい、まいど、まいど!お待たせしました」

子狐の親友の子狸も、しっかり人間に化けて、白い三角頭巾をして、お店のお手伝い。
砂糖振ってラッピングしたシュトレンを受け取って、それを和紙風の柄の箱に詰めます。
詰められたシュトレンは、たしかに粗熱はある程度、抜けているものの少し温かくて、
なにより、バターと砂糖の良い香りがします。

「しゅとれん、しゅとれん、しゅとれん」
くぅくくく、くぅくぅ、くわぅ!
リードで引っ張られて、二足歩行の子狐です。
ぴょんぴょん跳ねて、尻尾も振ります。
人間が子狐を散歩させているというより、
子狐が人間を散歩させているような強引さで、
子狐は参拝者さんのリードを引っ張ります。

「はい、次のお客様!お待たせしました」

遠い鐘の音に導かれて、和風シュトレンの販売場所に到着した子狐の尻尾は、完全に高速回転。
お母さん狐から貰ったICカードで、全種類の和風シュトレンを1個ずつ購入して、
こやこや、こやん!嬉しそうに帰りましたとさ。

12/13/2025, 9:58:20 AM

クリスマスノーム、ノーミスノーマーク、
デス/ートにミラーレスノーファインダー。
お題は「Snow」ではなく「スノー」らしいので、
重箱のスミを突っついては破壊する物書きです。

今回ご紹介するおはなしは、言葉を話すハムスターがお題回収役。
世界線管理局なる厨二ふぁんたじー組織に勤務する、ムクドリというビジネスネームを貸与された、
不思議な不思議なハムと、歯のおはなしです。

「ノーティース!ノーライフ!」
昔々、だいたいそろそろ1年にもなるでしょうか、
とっとこムクドリは、ハムスターの本能として、固い木をカジカジ爆速で噛んでいました。
「僕たちハムスターは!永久に!伸び続ける自分の歯と付き合いながら生きるのが運命!」
カリカリカリ、かりかりかりかり!
噛み心地も強度も丁度良いその木は、ムクドリのお気に入り。どんどん跡が付いていきました。

「もっと、もっと、もっとだ!」
ノーティースノーライフ!
ノーティースノーライフ!
健康健全な歯なくしてハム生なし!
とっとこムクドリはもうご機嫌。
思う存分、ハムスターの本能を発揮しました。
「はぁッ なんて噛み心地の良い木だろう」

ところでとっとこムクドリ、
木を噛んでる場所が都内某所、本物の魔女が店主をしておる喫茶店で
噛んでる木がその喫茶店のバチクソ高価なアンティークテーブルだったのですが、
ノーティースノーライフ、そのひと噛みでいったい全体おいくら万円の被害なのでしょう??

「ああ、ああ、ああ!素晴らしい木材!
もっともっともっと……もっと?」
「見つけたわよ、ムクドリ」

ぷにゅっ!
魔女の喫茶店のアンティーク家具を齧っておったとっとこムクドリは、
とうとう、店主の魔女に見つかって、背中をつまみ上げられ、捕獲されてしまいました。

「はなせ。はなせっ」
「あなた、これで今月何度目だと思っているの」
「仕方無いだろ!ノーティースノーライフ!
僕たちは何か齧らないと、生きていけないんだぞ」
「場所をちゃんと考えなさい」

次に見つけたら容赦しないわよ。
魔女はそう言って、ムクドリをポイ。
喫茶店の外に放り出してしまいました。
「ちぇっ!ケチ!」

ノーティースノーライフ!
ノーティースノーライフ!
健康健全な歯なくしてハム生なし!
とっとこムクドリは大抗議。
だけどその日は、もう店主に犯行がバレました。
さすがにもう入店できません。

「仕方無い。今日は、別の場所を探すか」
ととととと、トタタタタ。
とっとこムクドリが喫茶店から、名残惜しそうにせわしなく、小さな歩幅で離れてゆきます。
「彼女のお店、本当によく厳選された良い木ばっかりだから、噛んでて気持ち良いのになぁ……」

ノーティースノーライフな、とっとこムクドリのおはなしでした。
その後、何日後か何週間後か分かりませんが、
最終的にムクドリは、魔女の怒りを買いまして、
あーなって、こーなって、ごにょごにょ。
その先はお題の範囲外なので、ナイショナイショなのでした。 おしまい、おしまい。

12/12/2025, 9:58:40 AM

都内某所、某アパートの一室に、
夜空を越えて、そして複数の県境をまたいで、実家からクール便の荷物が届きました。

「良い香りだ」
部屋の主は藤森といい、風吹き雪降る田舎の出身。
藤森の部屋に届いたのは、雪国では一般的に、多かれ少なかれ栽培されている、リンゴ。
みずみずしい赤と黄色は、どれも上から下まで均等に色がのって、とっても美味しそうです。
「おっ。出たな。ぐんま名月」

甘酸っぱいシャキシャキのふじに、
酸味より甘味のシナノスイート。
いつかどこかの番組で知名度を上げたぐんま名月に
今では知らない人が少ない王林。
赤2種に黄色2種の、食べ比べセットがぎっしり。

藤森の部屋に送られてきたリンゴは、量が毎度毎度、いっつもいっつも多いので、
届けばその都度、季節の花の写真撮影で世話になっている稲荷神社に、お裾分けに行きます。

稲荷神社の巫女さんは、藤森が日頃利用しているお茶っ葉屋さんの店主の身内さんなので、
藤森からリンゴを受け取ると、
代わりにお茶っ葉をサービスしてくれたり、ついでに神社の御札を分けてくれたり。

お裾分けしたリンゴに少しでも傷など付いておりますと、その傷からリンゴの甘いあまい、良い香りが出てゆきますので、
稲荷子狐がダッシュでばびゅん!狐尻尾を爆速で振って駆けつけまして、
特に甘味の豊富な品種のリンゴを、はやく切れと、キャッキャキャ、ギャギャ!キャンキャン!
藤森にせよ、巫女さんにせよ、ねだるのでした。

ところでその日は子狐の他に
世界線管理局なる組織の法務部局員が2人、
夜空を越えて、はるばる空路で来たとのこと。
そのうち上司の男性がリンゴについて完全無知。
何も、本当になにも、知りませんでした。

ほーん。
雪国出身の藤森、上司さんを見て言いました。

…——「まず、赤い方から」
しゃり、しゃりっ。
赤いリンゴに果物ナイフを当てて、フレッシュなチーズを薄く一切れのせまして、
藤森、上司さんに一切れ差し出しました。
「これは、ふじです。どちらかというと酸味が主役のリンゴで、タマネギとのフレッシュサラダにも、合うといえば合う品種です」

はぁ。 そうか。 上司さんは小首を傾けて、チーズをちょいとのせた赤リンゴを、
つまもうとしたところで子狐がバクッ!
しゃくしゃく、しゃく、しゃく。こやこや。

「……もう1個作ります」
「いや、良い。あとで一気に貰う」

「同じ赤ですが、こちらは味が違います」
しゃく、しゃくっ。
別の赤いリンゴに果物ナイフを当てて、今度は適温に溶けたバターと一緒に表面だけ炙って、
藤森、上司さんに一切れ差し出しました。
「これが、シナノスイートです。甘さが主役で、アップルパイがよく合います」

はぁ。 なるほどな。 上司さんが小首を、
傾けた頃にはもうその場所にリンゴが無い。
しゃくしゃく、しゃく、しゃく。こやこや。

「……」
「俺よりそいつに皮剥いてやってくれ」

リンゴ、リンゴ、りんご!
2回もリンゴを失敬して、オサレアップルを堪能した子狐は、どちらかというとシナノスイートの方がおくちに合った様子。
キラキラした目はそれこそ、夜空を越えて光る、流れ星だか流星群だかのようだったとさ。

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