今回のお題は「木漏れ日の跡」とのこと。
「ここ」ではないどこか、別の世界に、木漏れ日のクッキーというお菓子がありますので、
そのおはなしをひとつ、ご紹介します。
世界を繋ぎ、それぞれの自立性と尊厳を守り、
滅んだ世界からの影響を止めることが仕事の、
「世界線管理局」という組織がありまして、
世界線管理局には、たくさんの世界から集められた、技術にせよ道具にせよ魔法の宝物にせよ、
ともかく、様々なものが保管されておりました。
保管されているものの中には既に亡き世界で親しまれていたレシピのような、情報もありまして。
あまたの情報の中のひとつに、「木漏れ日」、
すなわち木漏れ日のクッキーなるお菓子のレシピも、大事に保管されておったのでした。
必要なのは、木漏れ日が持つ光から、魔法の蜜を精製する魔法のミツバチの巣。
コモレビバチといいます。
コモレビバチが作り出す低カロリーな糖類を、たっぷり使って焼き上げられるのが、
既に滅んでしまった某世界で、最期の最後まで愛された、木漏れ日のクッキーなのです。
世界線管理局に勤める、ビジネスネーム・ドワーフホトは、あらゆる世界の美味しいものが大好き!
亡き世界からこぼれ落ちたコモレビバチを回収し、
コモレビバチたちを難民シェルターの森に放ち、
ハチたちのコロニーが十分に育った頃、
木漏れ日のクッキーを作るのに十分な量を、
交渉して、ちょっと折れて、貰ってさっそくキッチンへ行って、かしゃかしゃ、こねこね。
ウサギの形とネコの形、キツネの形にカラスの形、それからミカンの形をしたクッキーが、
温かさをまとって、オーブンから出てきます。
「んーん、いいにおい!
上出来だよぉ。コレはもう、カンペキだよー」
焼き立てクッキーの香りを堪能できるのは、クッキーを作った者の特権です。
「ディップ用のソース、各種できたよん」
お菓子作りを手伝ってくれた、法務部の査問官・カラスが、チョコソース然りフルーツジャム然り、
あらゆる美しいソースを、準備してくれました。
「どーする?味見する?」
「ダーメ」
ルビーのストロベリージャムとアンバーのマーマレードを見ながら、ドワーフホト、言いました。
「味見は、スフィちゃんも一緒〜」
スフィちゃん連れてくるぅ。
ドワーフホトは親友の、経理部のエンジニア・スフィンクスを連れてくるために、
キッチンから、出てゆきました。
「クッキーに合いそうな酒持ってこよっかな……」
カラスもカラスの用事でもって、
キッチンから、出てゆきました。
ここからがお題回収。
そうです。木漏れ日の「跡」です。
「クリア」 「クリア」 「ムーブ」
トトトトトト、たたたたたた!
誰も居なくなったキッチンに、一列数匹のハムスターたちが、周囲を警戒しながらテーブルへ。
「コンタクト」
ハムスターたちは木漏れ日クッキーのお皿に辿り着き、ササッ!と瞬時に展開。
「いそげ」
5次元バッグだかワームホールポケットだか知りませんが、ザッカザッカとクッキーを、
1枚残らず、盗んでしまいました!
「んんー。うまい」
「ジャムどうする?」
「つまみ食いするな。ジャムは諦めろ」
「ナッツクリームは?」
「諦めろ」
撤収、撤収!ゴーゴーゴー!!
トトトトトト、たたたたたた!
ハムスターたちはまんまとクッキーを頂いて、
全速力で、逃走してゆきました。
静かになったキッチンに残されたのは、
まさしくお題の、「木漏れ日の跡」。
木漏れ日クッキーがこんもり盛られておったハズの、美しい大皿と、その上の小さな小さな、とても小さなクッキーの欠片。
「そこに確かに木漏れ日クッキーがあった」という、痕跡だけであったのでした。
「うわぁーん!クッキー消えちゃったぁ!」
木漏れ日クッキーが消えたキッチンにドワーフホトが戻ってきますと、当然クッキーがありません。
「カラスさぁん!!カラスさぁーん!!」
「んー、 うん。 ふーん」
カラスはあちこち徹底的に、丁寧に調査と分析をしまして、結果小さな動物の体毛数本を発見。
「おけ把握」
木漏れ日の跡を追跡すべく、お仕事モードの淡々っぷりで、短く、言うのでした……
窮鼠猫を噛む、追い詰められた狐はジャッカルより凶暴、という言葉があります。
コレを本気でやらかしたハムスターがおりますので、今回はそいつのおはなしをひとつ。
「ここ」ではないどこか、別の世界に、世界線管理局なる厨二ふぁんたじー組織がありまして、
そこは、たとえば獣人だったり、あるいは機械生命体だったり、宇宙タコだったりと、
人間も、人外も、心も魂も無さそうなモノだって、
動物名のビジネスネームを貸与されて、食堂や居住地区、レジャー施設も完備された職場で、働いておったのでした。
今回お題を回収するのは、セカイバクダンキヌゲネズミの亜種。要するに不思議なハムスター。
名前を、ムクドリといいます。
ところでこのムクドリ、
数ヶ月前からずっとずっと、ずぅーっと、
管理局の某シェルター内にあるコーヒー専門店に閉じ込められておりまして。
罪状は、「こっち」の世界の東京の、某本物の魔女がの喫茶店の、あらゆる高価な家具・器具・調度品を、カジカジして傷つけた器物損壊罪。
『お前がここでコーヒーを売って、累計売上金が貯まったら、そこから出してやりましょう』
とっとこムクドリを監禁した魔女、言いました。
『もし、お前がこの店で、崇高な善なるおこないを為したなら、刑期を少し短くしてやりましょう』
とっとこムクドリに罰を与えた魔女、言いました。
自分でカジカジしたものの費用を、コーヒーの売り上げによって賠償する。
崇高で善良なことを為せば、少し賠償額が減る。
それが、「ささやかな約束」。
他人のものをかじったムクドリと、そのかじられた物の持ち主たる魔女の、お題回収でした。
ガラガラガラ。
とっとこムクドリ、ハムスター用の回し車のような形をした焙煎機を、走って走って回します。
ムクドリは不思議なハムスター。
高きはドチャクソな超高温から、低きは極低温まで、温度を操ることができるのです。
このスキルを使ってムクドリ、それぞれの豆をベストな温度で、焙煎することができるのです。
ガラガラガラ。
注文が入ればとっとこムクドリ、その豆を回し車で焙煎して、クラッシュして、抽出して、
挽きたてを超える、焙煎したてのコーヒーを、
ベストな温度、ベストな時間、ベストな挽き具合でもって淹れて、提供するのです。
すべては魔女との、ささやかな約束。
すべてはコーヒーの売り上げでもって、魔女からの罰を消してもらうこと。
すべては……
「……んああー!!もうイヤだ!!
やってやる!!僕は逃げて、あの魔女に一矢、いや、二矢でも三矢でも、むくいてやる!!」
ちゅー!ちゅー!ギーギー!
数ヶ月のコーヒー専門店員ごっこ、カフェ店員ごっこに疲れたとっとこムクドリの怒りは大噴火!
誰にどうやって作ってもらったか知りませんが、
多連装ミサイルランチャー(ハムスターサイズ)など背負って、カフェから出て、いざ反逆!
自分をカフェに閉じ込めた魔女のもとへ、
トトトトト、とことことこ!
勇ましく走って、
行って数分、管理局の廊下で、
まさかの管理局をドチャクソ敵視している組織のスパイ数人をバッタリ出くわしまして。
「あっ」
「あ、」
「ハムスター?管理局もペット飼ってるの?」
「バカ、違う!あいつも局員だ。見つかったんだ」
「しかも武装してるぞ」
「あ……」
『お前がかじった家具のことは、お前が売ったコーヒーの売上金で相殺してあげる』
『お前が善なる尊い行動をしたら、その分少し、免除してあげる』
魔女とのささやかな約束から、妙な方向に飛んでった、不思議ハムスターの物語でした。
ここから先については、詳しくは語りません。
ただムクドリは結局、多連装ミサイルランチャーでもって、スパイの連中をドン!ちゅどん!
こてんぱんに、やっつけてしまったとさ。
前回投稿分に繋がるおはなし。
最近最近の都内某所、某アパートに、藤森という雪国出身者がボッチで住んでおりまして、
その日は別の世界からの、お客様に対応中。
「世界線管理局」なる厨二ふぁんたじー組織から、「こっち」の東京に仕事に来ている男性は、
ビジネスネームを、ツバメといいます。
ツバメはだいたい1時間ほど前まで、都内某所の本物の魔女のおばあちゃんが仕切っている喫茶店で、
ツバメの上司のドラゴンと一緒に仕事のハナシをしておったのですが、
メニューの追加注文のために鳴らした呼び鈴が、本来鳴らすべきチリンチリンではなかったらしく。
それを何度か鳴らしている間に、まさかの闇堕ちをしてしまったのです!
呼び鈴は「闇堕ちの呼び鈴」といいました。
なんでも運悪く酔っ払いの別のお客さんが酔っ払ってそのまま席に置いて忘れてったそうで。
「どうですか。藤森」
「私の後輩の、高葉井に連絡を入れてみました。やはり一緒に居るそうです」
「それで」
「完全に警戒されていると」
「だろうな。 だろうな……」
――――――
闇堕ちしたツバメが上司ドラゴンに一体全体何をしたのかは知りませんが、
結果として上司ドラゴン、藤森の高葉井、もとい後輩のアパートに転がり込んで、ツバメの状態異常であるところの急性闇堕ちが治るまで籠城。
部屋から出てこなくなってしまったのでした。
最終的に闇堕ちツバメ、近所の稲荷神社に連行されて、状態異常を解除してもらったようです。
「かけまくも かしこき ウカノミタマの大神」
稲荷神社の神職さん、稲荷狐一家のお母さん狐が、闇堕ちツバメのために祈ります。
「ツバメぇー、闇堕ちから戻ってらっしゃーい」
おばあちゃん狐と一緒に真っ昼間からお酒を飲んでおったオネェ宇宙タコも、■■■をピャーしてダンシングみょんみょん草を召喚し、祈ります。
「まどろっこしいねぇ。こういうのは、こいつの魂に直接手を突っ込んだほうが早いんだよ」
オネェ宇宙タコの酒杯にお酒を注いでいたおばあちゃん狐は、祈りもへったくれもありません。
ドンドコドンドコ、みょんみょん、どぷんどぷん。
祈りの果てにツバメはようやく、闇堕ちの状態異常から帰ってきたのですが、
ドンドコドンドコ、みょんみょん、どぷんどぷん。
祈りの果てにツバメはそれまで、上司ドラゴンに何をしたかも思い出したのですが、
ああ、なんということでしょう。
祈りの果てに状態異常が回復したのに、回復を報告して一切合切謝罪したい対象がどこぞで籠城中。
「部長……」
ツバメはとっても困りました。
「あれ、ツバメさん?」
途方に暮れているツバメのところにバッタリ居合わせたのが、稲荷神社の冬の花と景色を撮りに来ておったツバメの知り合い。藤森だったのでした。
――――――
「高葉井から返信です」
「なんて」
「『ルー部長かわいい』『呼び鈴鳴るといちいち威嚇してくるかわいい』だそうです」
「部長……」
「呼び鈴?」
「なんでもありません」
ああ、ああ。どうしよう。
藤森の部屋で途方に暮れるツバメです。
祈りの果てがこの結果です。
最終的にツバメとツバメの上司の間の交通障害はだいたい数時間続きまして、
結果どうなったかは文字数、文字数。 おしまい。
心の迷路と言われても、特に迷路らしい迷路に踏み込んだ経験の無い気がする物書きです。
だいたい少し悩んで、欲望の方に動くのです。
最終的にどうなるかは置いときます。
ということで「心の迷路」のおはなしをひとつ。
最近最近の都内某所、某安めのアパートに、
後輩もとい高葉井なる女性がぼっちで住んでおり、
その日は諸事情で、まさかのドラゴンが同室。
このドラゴンの人間形態が、高葉井もプレイしているゲームのキャラであり、高葉井の推しでした。
非現実的ですが気にしてはいけません。
そういう物語なのです。 しゃーない。
ところでこのドラゴンは、仕事で使っている名前をルリビタキと言いまして、
「ここ」とは別の世界の職場の、法務部執行課実動班、特殊即応部門の部長さんでした。
で、そのルリビタキ部長さんが、なぜ高葉井の部屋に居て、小さく丸くなっているかといいますと、
『何も聞くな』
どうやら経緯を説明するのが難しいようです。
何かのハプニングに巻き込まれたようです。
「ルー部長、その、『何かのハプニング』って」
『なんでもない。本当に、なんでもない』
「あの、私の先輩から、ルー部長の部下さんのツー様を部屋で保護してるってメッセが来てて」
『なん でも ない』
くるる、くくるるる。
強大なチカラを持ち、雄々しい体と翼が双方美しいルリビタキ・ドラゴンですが、
完全に首を引っ込めて、尻尾を隠しています。
どうやら高葉井の先輩とルリビタキの部下を、
ドチャクソに、一時的に、避けているようです。
「なにか小言でも言われてるんですか。
タバコ吸うなとか。他にも何かとか」
『なんでもない。何も、言われていない』
「先輩から、ツー様が部長に謝りたいってメッセ」
『なんでもないと言っている』
「先輩、ルー部長の好きなお茶漬け作って待ってるって言ってますよ」
『食わん。その手には乗らん』
「何があったか先輩に聞いていいですかルー部長」
『ダメだ。聞くな。やめろ』
ギャッ!ぐるるっ、ぎゃおう。
何があったかルリビタキ・ドラゴン、高葉井のスマホがチリンチリンと、メッセージ到着の呼び鈴みたいな音を響かせるたび、
鈴の音に対して、小さく、少しだけ威嚇します。
どうやら鈴の音に、因縁があるようですが、
高葉井は何も、知りません。
「ルー部長?」
『いやだ。俺は、今日は、ツバメにも藤森にも会わない。俺は、ここから動かない』
「るーぶちょう」
『闇堕ちの呼び鈴の効果は、ちょっとやそっとじゃ抜けない。絶対にまだ残っている。いやだ』
「闇堕ち?」
『なん でも ない』
どうしよう。
推しのルリビタキが相変わらず、鈴の音の着信音に威嚇しているのを見つめて、高葉井が思います。
どうしよう、どうしよう。
色々高葉井の先輩から聞いても良いし、
このまま推しを先輩から守り通しても良いのです。
ああ、どうしよう。
高葉井は心の迷路に入り込んで、迷い倒して、
だけど推しは尊いので、推しに食べ物を貢ぎます。
「ロールキャベツ食べませんか」
『ろーるきゃべつ。
食べても藤森のところへは行かない』
「行かなくても良いです」
『俺は屈しない』
「ホントに何があったんですかルー部長……」
鈴の音に威嚇する推し。
推しに会いたがる推しの部下。
推しの部下と一緒に居る先輩。
高葉井は、心の迷路の攻略法が、
結局分からなくて、でも推しが尊くて、ずっとずっと推しにくっついておりました。
「闇堕ちの呼び鈴」が何なのか、
ルリビタキに何が起きていたのか、
判明するかどうかは、今後のお題次第。 おしまい。
寒くなってきて、東京も冬が近づいてきた。
去年の夏頃に空色ゼリーの大食いチャレンジでお世話になった喫茶店では、
冬に向けて、アイスティーやアイスコーヒーの種類が減って、その分ホット用のメニューが増えた。
誰が飲むのか知らないけど、「ティーカップで飲みたいお酒?」なんて説明文のお酒も提供されてる。
ロング・アイランド・アイス・ティー、っていう名前の、中辛口なお酒らしい。
一緒にメニューブックを見たアーちゃんが、「ロングアイランドキッチン」って間違えてた。
アーちゃんは、アテビっていう名前で、今年の夏から私の職場の私立図書館に転職してきた。
いわば、私の後輩だ。
先月ようやく、新居を選んで引っ越して、荷解きまで終わって、前職との縁が完全に切れたらしい。
今日はアーちゃんが、来客用のティーセットを買いたくなったらしくて、一緒に100均を回って、
最終的に猫又の雑貨屋さんって店で4000円くらいの黄色い花をあしらったシリーズになった。
誰を呼ぶかは知らない。
ただ私に予定は聞いてきた。
ぜひ、ぜひ、ぜったい損はさせないから、来週の月曜に新居に来てほしいって念を押された。
ところで
全然関係ないけど
アーちゃんの椅子の奥のテーブルで
私のメイクの師匠のホト様っぽい誰かが
ぐでんぐでんのドゥルンドゥルンに呂律が呂律で
猫並みに液体しながら誰かに絡んでたけど
誰だったんだろ。 誰と誰だったんだろ。
ロングアイランドキッチン、アル度数高いのかな。
ハナシを元に戻す。
「ティーセットって、便利ですね」
元々日本出身じゃないアーちゃんが言った。
「カップを買えば、お皿も付いてくる。
カップとお菓子用のお皿が、セットで買えます」
「お菓子?」
あれ。ソーサーってそういう使い方だっけ。
分かんなくなって、ネットに聞いてみたら、
なんか、カップソーサーの役割じゃなくて、
過去のソーサーの、衝撃の使い方が出てきた。
ティーカップに取っ手がなかった頃、
熱いカップの中身をソーサーに移して、
冷まして、飲んでたらしい。
マ?(※AI回答のため真偽知らん)
……マ?(もう自信持って「違う」って言えない)
「高葉井さん。高葉井さん」
「え、 え?」
「顔が、すごく苦悩してます」
「あぁうん。ドチャクソ苦悩してる」
「大丈夫ですか」
「ただちに影響出るナントカじゃないから大丈夫」
アッサムとケーキセットのお客様は?
アーちゃんとアレコレ話してたら、ウェイターさんが私のラテ&ケーキセットとアーちゃんのアッサムティー&ケーキセットを持ってきてくれた。
アーちゃんの方にはキレイなキレイなロックキャンディーのスティックが付いてきてて、
私の方には、かわいいウサギのラテアート。
「撮りたいです」
アーちゃんがスマホを取り出した。
「撮ろうよ」
私もスマホを出した。
同じ画角で撮って、なんか2人で笑った。
職場で特に、必要以上に絡む私達じゃないけど、
なんとなく、親密度が互いに上がった気がした。
元々平均値ではあったけど、それが一段か二段くらい、上がったような気がした。
「アイランドキッチン追加で頼んでみる?」
「キッチン違います。 ……なんだっけ」
「なんでも良いよ。頼んでみる?」
「えええ……」