前回投稿分に繋がるおはなし。
最近最近の都内某所、某アパートに、藤森という雪国出身者がボッチで住んでおりまして、
その日は別の世界からの、お客様に対応中。
「世界線管理局」なる厨二ふぁんたじー組織から、「こっち」の東京に仕事に来ている男性は、
ビジネスネームを、ツバメといいます。
ツバメはだいたい1時間ほど前まで、都内某所の本物の魔女のおばあちゃんが仕切っている喫茶店で、
ツバメの上司のドラゴンと一緒に仕事のハナシをしておったのですが、
メニューの追加注文のために鳴らした呼び鈴が、本来鳴らすべきチリンチリンではなかったらしく。
それを何度か鳴らしている間に、まさかの闇堕ちをしてしまったのです!
呼び鈴は「闇堕ちの呼び鈴」といいました。
なんでも運悪く酔っ払いの別のお客さんが酔っ払ってそのまま席に置いて忘れてったそうで。
「どうですか。藤森」
「私の後輩の、高葉井に連絡を入れてみました。やはり一緒に居るそうです」
「それで」
「完全に警戒されていると」
「だろうな。 だろうな……」
――――――
闇堕ちしたツバメが上司ドラゴンに一体全体何をしたのかは知りませんが、
結果として上司ドラゴン、藤森の高葉井、もとい後輩のアパートに転がり込んで、ツバメの状態異常であるところの急性闇堕ちが治るまで籠城。
部屋から出てこなくなってしまったのでした。
最終的に闇堕ちツバメ、近所の稲荷神社に連行されて、状態異常を解除してもらったようです。
「かけまくも かしこき ウカノミタマの大神」
稲荷神社の神職さん、稲荷狐一家のお母さん狐が、闇堕ちツバメのために祈ります。
「ツバメぇー、闇堕ちから戻ってらっしゃーい」
おばあちゃん狐と一緒に真っ昼間からお酒を飲んでおったオネェ宇宙タコも、■■■をピャーしてダンシングみょんみょん草を召喚し、祈ります。
「まどろっこしいねぇ。こういうのは、こいつの魂に直接手を突っ込んだほうが早いんだよ」
オネェ宇宙タコの酒杯にお酒を注いでいたおばあちゃん狐は、祈りもへったくれもありません。
ドンドコドンドコ、みょんみょん、どぷんどぷん。
祈りの果てにツバメはようやく、闇堕ちの状態異常から帰ってきたのですが、
ドンドコドンドコ、みょんみょん、どぷんどぷん。
祈りの果てにツバメはそれまで、上司ドラゴンに何をしたかも思い出したのですが、
ああ、なんということでしょう。
祈りの果てに状態異常が回復したのに、回復を報告して一切合切謝罪したい対象がどこぞで籠城中。
「部長……」
ツバメはとっても困りました。
「あれ、ツバメさん?」
途方に暮れているツバメのところにバッタリ居合わせたのが、稲荷神社の冬の花と景色を撮りに来ておったツバメの知り合い。藤森だったのでした。
――――――
「高葉井から返信です」
「なんて」
「『ルー部長かわいい』『呼び鈴鳴るといちいち威嚇してくるかわいい』だそうです」
「部長……」
「呼び鈴?」
「なんでもありません」
ああ、ああ。どうしよう。
藤森の部屋で途方に暮れるツバメです。
祈りの果てがこの結果です。
最終的にツバメとツバメの上司の間の交通障害はだいたい数時間続きまして、
結果どうなったかは文字数、文字数。 おしまい。
心の迷路と言われても、特に迷路らしい迷路に踏み込んだ経験の無い気がする物書きです。
だいたい少し悩んで、欲望の方に動くのです。
最終的にどうなるかは置いときます。
ということで「心の迷路」のおはなしをひとつ。
最近最近の都内某所、某安めのアパートに、
後輩もとい高葉井なる女性がぼっちで住んでおり、
その日は諸事情で、まさかのドラゴンが同室。
このドラゴンの人間形態が、高葉井もプレイしているゲームのキャラであり、高葉井の推しでした。
非現実的ですが気にしてはいけません。
そういう物語なのです。 しゃーない。
ところでこのドラゴンは、仕事で使っている名前をルリビタキと言いまして、
「ここ」とは別の世界の職場の、法務部執行課実動班、特殊即応部門の部長さんでした。
で、そのルリビタキ部長さんが、なぜ高葉井の部屋に居て、小さく丸くなっているかといいますと、
『何も聞くな』
どうやら経緯を説明するのが難しいようです。
何かのハプニングに巻き込まれたようです。
「ルー部長、その、『何かのハプニング』って」
『なんでもない。本当に、なんでもない』
「あの、私の先輩から、ルー部長の部下さんのツー様を部屋で保護してるってメッセが来てて」
『なん でも ない』
くるる、くくるるる。
強大なチカラを持ち、雄々しい体と翼が双方美しいルリビタキ・ドラゴンですが、
完全に首を引っ込めて、尻尾を隠しています。
どうやら高葉井の先輩とルリビタキの部下を、
ドチャクソに、一時的に、避けているようです。
「なにか小言でも言われてるんですか。
タバコ吸うなとか。他にも何かとか」
『なんでもない。何も、言われていない』
「先輩から、ツー様が部長に謝りたいってメッセ」
『なんでもないと言っている』
「先輩、ルー部長の好きなお茶漬け作って待ってるって言ってますよ」
『食わん。その手には乗らん』
「何があったか先輩に聞いていいですかルー部長」
『ダメだ。聞くな。やめろ』
ギャッ!ぐるるっ、ぎゃおう。
何があったかルリビタキ・ドラゴン、高葉井のスマホがチリンチリンと、メッセージ到着の呼び鈴みたいな音を響かせるたび、
鈴の音に対して、小さく、少しだけ威嚇します。
どうやら鈴の音に、因縁があるようですが、
高葉井は何も、知りません。
「ルー部長?」
『いやだ。俺は、今日は、ツバメにも藤森にも会わない。俺は、ここから動かない』
「るーぶちょう」
『闇堕ちの呼び鈴の効果は、ちょっとやそっとじゃ抜けない。絶対にまだ残っている。いやだ』
「闇堕ち?」
『なん でも ない』
どうしよう。
推しのルリビタキが相変わらず、鈴の音の着信音に威嚇しているのを見つめて、高葉井が思います。
どうしよう、どうしよう。
色々高葉井の先輩から聞いても良いし、
このまま推しを先輩から守り通しても良いのです。
ああ、どうしよう。
高葉井は心の迷路に入り込んで、迷い倒して、
だけど推しは尊いので、推しに食べ物を貢ぎます。
「ロールキャベツ食べませんか」
『ろーるきゃべつ。
食べても藤森のところへは行かない』
「行かなくても良いです」
『俺は屈しない』
「ホントに何があったんですかルー部長……」
鈴の音に威嚇する推し。
推しに会いたがる推しの部下。
推しの部下と一緒に居る先輩。
高葉井は、心の迷路の攻略法が、
結局分からなくて、でも推しが尊くて、ずっとずっと推しにくっついておりました。
「闇堕ちの呼び鈴」が何なのか、
ルリビタキに何が起きていたのか、
判明するかどうかは、今後のお題次第。 おしまい。
寒くなってきて、東京も冬が近づいてきた。
去年の夏頃に空色ゼリーの大食いチャレンジでお世話になった喫茶店では、
冬に向けて、アイスティーやアイスコーヒーの種類が減って、その分ホット用のメニューが増えた。
誰が飲むのか知らないけど、「ティーカップで飲みたいお酒?」なんて説明文のお酒も提供されてる。
ロング・アイランド・アイス・ティー、っていう名前の、中辛口なお酒らしい。
一緒にメニューブックを見たアーちゃんが、「ロングアイランドキッチン」って間違えてた。
アーちゃんは、アテビっていう名前で、今年の夏から私の職場の私立図書館に転職してきた。
いわば、私の後輩だ。
先月ようやく、新居を選んで引っ越して、荷解きまで終わって、前職との縁が完全に切れたらしい。
今日はアーちゃんが、来客用のティーセットを買いたくなったらしくて、一緒に100均を回って、
最終的に猫又の雑貨屋さんって店で4000円くらいの黄色い花をあしらったシリーズになった。
誰を呼ぶかは知らない。
ただ私に予定は聞いてきた。
ぜひ、ぜひ、ぜったい損はさせないから、来週の月曜に新居に来てほしいって念を押された。
ところで
全然関係ないけど
アーちゃんの椅子の奥のテーブルで
私のメイクの師匠のホト様っぽい誰かが
ぐでんぐでんのドゥルンドゥルンに呂律が呂律で
猫並みに液体しながら誰かに絡んでたけど
誰だったんだろ。 誰と誰だったんだろ。
ロングアイランドキッチン、アル度数高いのかな。
ハナシを元に戻す。
「ティーセットって、便利ですね」
元々日本出身じゃないアーちゃんが言った。
「カップを買えば、お皿も付いてくる。
カップとお菓子用のお皿が、セットで買えます」
「お菓子?」
あれ。ソーサーってそういう使い方だっけ。
分かんなくなって、ネットに聞いてみたら、
なんか、カップソーサーの役割じゃなくて、
過去のソーサーの、衝撃の使い方が出てきた。
ティーカップに取っ手がなかった頃、
熱いカップの中身をソーサーに移して、
冷まして、飲んでたらしい。
マ?(※AI回答のため真偽知らん)
……マ?(もう自信持って「違う」って言えない)
「高葉井さん。高葉井さん」
「え、 え?」
「顔が、すごく苦悩してます」
「あぁうん。ドチャクソ苦悩してる」
「大丈夫ですか」
「ただちに影響出るナントカじゃないから大丈夫」
アッサムとケーキセットのお客様は?
アーちゃんとアレコレ話してたら、ウェイターさんが私のラテ&ケーキセットとアーちゃんのアッサムティー&ケーキセットを持ってきてくれた。
アーちゃんの方にはキレイなキレイなロックキャンディーのスティックが付いてきてて、
私の方には、かわいいウサギのラテアート。
「撮りたいです」
アーちゃんがスマホを取り出した。
「撮ろうよ」
私もスマホを出した。
同じ画角で撮って、なんか2人で笑った。
職場で特に、必要以上に絡む私達じゃないけど、
なんとなく、親密度が互いに上がった気がした。
元々平均値ではあったけど、それが一段か二段くらい、上がったような気がした。
「アイランドキッチン追加で頼んでみる?」
「キッチン違います。 ……なんだっけ」
「なんでも良いよ。頼んでみる?」
「えええ……」
前回投稿分からの続き物。
「ここ」ではないどこか、別の世界に、「世界線管理局」なる厨二ファンタジー組織がありまして、
世界と世界を繋ぐ航路を敷設したり、
違法な手段で世界を渡る密航船を取り締まったり、
滅んだ世界からこぼれ落ちたチートアイテムを、他の世界に影響を与える前に、回収したり。
世界のために、たくさん働いておりました。
で、前回投稿分で
この管理局のチートアイテム回収・保管部署が
とある滅亡世界の人の心の境界線を崩して猛威をふるったジュースなるものを回収したところ、
無事、要するに、ただの超微アル飲料だったことが、ジュースの成分分析により判明しまして。
「あぅ。なんぼん飲んらかわぅれたけどぉ、
ぁしかにぃ、ひぃぉーに、ひぃ〜ぉーに、
おぉ鄒主袖縺励°縺」縺溘〒縺医☆」
「☆、って言われても、あたし分かんないよぉ」
「うぇぅ。ぅぃちゃぁん。
ういちゃん、おいでー、ナデナデしたぇるぅー」
「やめろ。俺は『ういちゃん』でなければ『スフィちゃん』でもない。やめろ、おい、こら」
「ほらー、これ、好きれよぉ〜。ぁぃぁぃ」
「ぐ、ぬぬ」
要するに、ただのお酒だったのです。
だったのですが。
滅亡世界の滅亡理由となった「心の境界線を崩してしまうジュース」なんて言われると
そこに美術的兵器、兵器的財宝の匂いを検知してしまう、ド変態な機械生命体が
この管理局におりまして。
彼は名前をヒバリと言いました。
「ああ、ああ!素晴らしい!なんと退廃的で、芸術的に、人間の心を壊す兵器だろう!」
ヘンタイ機械生命体のヒバリは、自分の製造経緯により、芸術的な兵器とか財宝的な兵器とか、
とも価値ある兵器を集めておりました。
「飲んだ者の心の境界線を崩すジュース。まさしく、ワタシのコレクションに加わるに相応しい!
すぐミス・ドワーフホトに連絡しよう」
本当はただの微アル飲料なんて事実はいざ知らず、
ガシャーン!シャキーン!フゥォオオオ!!
ヒバリは興奮して興奮して、興奮しまくって、
さっそく、ただのアルコール飲料の標本をひとつ、譲り受ける申請を出しまして、
結果、申請が通ってしまいました。
ここからがお題回収。
その微アル缶1本をヘンタイ機械生命体ヒバリの標本庫に届ける仕事を任されたのが、
同じ機械生命体の、猫型配送ロボット、ベラbゲホゲホ!……もとい、クロネコです。
クロネコは、管理局内の書類や備品、消耗品に購買物品等々、あらゆるものを届けるのがお仕事。
今回もその延長として、チートアイテム収集・保管専門部署からヘンタイ機械生命体の標本庫へ、
物品を届ける仕事を、請け負ったのです
が。
「怖いにゃ。あんなとこ、行きたくないにゃあ」
コロコロ、とぼとぼ。
豪華絢爛、金銀財宝に輝くヒバリの標本庫の、玄関とも言うべき表層を移動しながら、
クロネコ、機械生命体だけど、泣きそうです。
「玄関はイイにゃ。まだマシだにゃ。ピカピカしてて、キラキラしてて、キレイだにゃ。
だけど、この玄関を過ぎて、本当の標本庫に入ったら、おっかないにゃ、怖いにゃあ」
ゴゴゴ、がたん!
大きな黄金の扉が自動的に開きます。
黄金の扉の先が、ヒバリの標本庫主要層上部。ヒバリが微アル缶を持ってきてほしいと、クロネコのゴールとして指定したエリアの、真上です。
美しい兵器しか有りません。
価値ある兵器しか在りません。
生あるモノは、何も、誰も、居ません。
酷い静寂がクロネコをいじめます。
「怖いにゃあ!怖いにゃあ!
寂しくて、寂しくて恐ろしいにゃあ!」
だけどクロネコは配送ロボット。
自分の仕事を、為さねばなりません。
「ううう、お仕事終わったら、問答無用で、高級電源でじっくり充電して、高級メンテナンスも予約してやるにゃあ!
寂しくても、さびしくても、へっちゃらにゃあ!」
おんどりゃあ!なんじゃおりゃあ!なおなおなお!
本物のビビリ猫のように、あっちこっちに威嚇しながら、クロネコはコロコロ、自分の下部に装着されている移動用ローラーで移動していきます。
「おらぁ!お邪魔しますにゃあ!
ヒバリさんお届け物だにゃ早く持ってけにゃあ!」
なかば逆ギレ状態で依頼品を標本庫の主要層下部まで持っていくと、
ばびゅん!ローラー駆動では有り得ないほどの速度でもって、帰っていきましたとさ。
【世界線管理局 収蔵品
『透明缶』 シリーズ②
心の境界線を透かすジュース 初期ロット】
見た目としてはごく普通の缶入り飲料。
いわゆる「透明缶」シリーズのうちのひとつ。
透明な飲料水でも、クリア素材の缶でもない。
滅亡した某世界が、まさしく滅亡する理由となった間接的な理由であり、兵器転用可能な日用品。
摂取すると、10〜30分の間、缶に記載された能力をひとつ、自身に付与する。
なお「心の境界線を透かすジュース」初期ロットは
相手の心の境界線を「透かす」のではなく
自分の境界線を「崩してしまう」という
重大な欠陥が発覚・多発したため
数日で全部その手の権力者に買い占められた
<<数日で全部その手の権力者に買い占められた>>
――――――
「ここ」ではないどこか別の世界に、「世界線管理局」という厨二ふぁんたじー組織がありまして、
そこでは世界と世界を繋ぐ航路を敷設したり、
航路の保守点検や管理整備をしたり、
滅亡した世界との航路を封鎖して、滅んだ世界からこぼれ落ちたチートアイテムを回収したり。
世界と世界に関する様々な仕事をしておりました。
滅亡世界からこぼれ落ちるアイテムは意外と多く存在しておって、専用部署もそこそこ広大。
収蔵部収蔵課が、主に頑張っています。
その日も収蔵部の管理局員・ドワーフホトのもとに、飲料タイプの収蔵品が届きました。
今回ドワーフホトのもとに届いたのは、
前回のおはなしと同じ世界から流れ着いた、透明な羽根を授ける「透明缶」の親戚。
なんでも、飲んだ者の心の境界線を、10分から30分だけ、崩してしまうらしいのです
が、
どうもそのジュースの効果、
その世界に住んでいた生命体にしか
サッパリ、ちっとも、少しも効果が無いようで。
というのもこのジュースの「心の境界線を崩す」とされる有効成分はアルコールだったのです。
要するにただのお酒だったのでした。
『アルコール度数、出たよぉ!』
自分の収蔵庫に透明缶を受け入れたドワーフホトの、仕事の手伝いをしているデジタル生命体が、
収蔵庫のメインモニターにフワリ、あらわれて、ドワーフホトに数値を示しました。
『微アルも微アル。この、心の境界線をアルコールで崩しちゃうっていうお酒の度数は、
まさかの、たったの0.3%だったよー!』
「0.3って、どれくらいかなぁ」
モニターの前では、ドワーフホトと一緒に収蔵品の情報を記録しておった魂人形その1が、その2だかその3だかに言いました。
「なんかねぇ、0.5とか7とかは、ビールに多いっぽいけど、0.3は多分希少価値ぃ」
その2だかその3だかが、即座に手元の端末で調べて、そして情報を共有します。
「んんん。味としてはぁ、ホワイトサワー」
おやおや、魂人形その5あたりがサボっています。
「サボってないもぉん。自分の体を使って、害がないか、記録収集してるんだもーん。
てことで、もう1本開けるね〜」
「つまりぃ……この、飲んだ人の、心の境界線を崩しちゃうっていうジュース、もといお酒で、
このお酒が生まれた世界、滅んじゃったんだねぇ」
世界いろいろ、滅亡原因いろいろ。
ドワーフホトは、唇を真一文字に結びました。
「うぅーん。ホントに、有効成分、アルコール?
実は、他にも何か、成分あるんじゃなーいぃ?」
「ないねー」
「こっちも検出ゼロー」
「こっちも反応ナーシぃ」
『ボクも以下どーぶん』
「もちょっと飲まないと分かんなぁい」
「そっかぁ。 そっかぁ……」
心の境界線を崩しちゃうお酒って、
説明だけ聞くと、まぁまぁ、怖いねぇ。
ドワーフホトは缶をとって、まじまじと観察して、
翻訳グラスで文字を確認しながら言いました。
結局は、正体は、
微アルも微アル、ただのお酒だったのでした。
それが、「その」世界では、政敵の飲み物に仕込まれて、敵国の指導者の飲み物に仕込まれて、
その世界を、間接的に荒らしたのでした。
「微アルなのにねー……」
世界ひとつを間接的に滅ぼしたお酒を5杯くらい飲んでおった魂人形は、
良い気持ちで、上機嫌で、心の境界線を少しだけ、
ほんの少しだけ、柔らかくしておったとさ。