前回投稿分からの続き物。
「ここ」ではないどこか、別の世界に、「世界線管理局」なる厨二ファンタジー組織がありまして、
世界と世界を繋ぐ航路を敷設したり、
違法な手段で世界を渡る密航船を取り締まったり、
滅んだ世界からこぼれ落ちたチートアイテムを、他の世界に影響を与える前に、回収したり。
世界のために、たくさん働いておりました。
で、前回投稿分で
この管理局のチートアイテム回収・保管部署が
とある滅亡世界の人の心の境界線を崩して猛威をふるったジュースなるものを回収したところ、
無事、要するに、ただの超微アル飲料だったことが、ジュースの成分分析により判明しまして。
「あぅ。なんぼん飲んらかわぅれたけどぉ、
ぁしかにぃ、ひぃぉーに、ひぃ〜ぉーに、
おぉ鄒主袖縺励°縺」縺溘〒縺医☆」
「☆、って言われても、あたし分かんないよぉ」
「うぇぅ。ぅぃちゃぁん。
ういちゃん、おいでー、ナデナデしたぇるぅー」
「やめろ。俺は『ういちゃん』でなければ『スフィちゃん』でもない。やめろ、おい、こら」
「ほらー、これ、好きれよぉ〜。ぁぃぁぃ」
「ぐ、ぬぬ」
要するに、ただのお酒だったのです。
だったのですが。
滅亡世界の滅亡理由となった「心の境界線を崩してしまうジュース」なんて言われると
そこに美術的兵器、兵器的財宝の匂いを検知してしまう、ド変態な機械生命体が
この管理局におりまして。
彼は名前をヒバリと言いました。
「ああ、ああ!素晴らしい!なんと退廃的で、芸術的に、人間の心を壊す兵器だろう!」
ヘンタイ機械生命体のヒバリは、自分の製造経緯により、芸術的な兵器とか財宝的な兵器とか、
とも価値ある兵器を集めておりました。
「飲んだ者の心の境界線を崩すジュース。まさしく、ワタシのコレクションに加わるに相応しい!
すぐミス・ドワーフホトに連絡しよう」
本当はただの微アル飲料なんて事実はいざ知らず、
ガシャーン!シャキーン!フゥォオオオ!!
ヒバリは興奮して興奮して、興奮しまくって、
さっそく、ただのアルコール飲料の標本をひとつ、譲り受ける申請を出しまして、
結果、申請が通ってしまいました。
ここからがお題回収。
その微アル缶1本をヘンタイ機械生命体ヒバリの標本庫に届ける仕事を任されたのが、
同じ機械生命体の、猫型配送ロボット、ベラbゲホゲホ!……もとい、クロネコです。
クロネコは、管理局内の書類や備品、消耗品に購買物品等々、あらゆるものを届けるのがお仕事。
今回もその延長として、チートアイテム収集・保管専門部署からヘンタイ機械生命体の標本庫へ、
物品を届ける仕事を、請け負ったのです
が。
「怖いにゃ。あんなとこ、行きたくないにゃあ」
コロコロ、とぼとぼ。
豪華絢爛、金銀財宝に輝くヒバリの標本庫の、玄関とも言うべき表層を移動しながら、
クロネコ、機械生命体だけど、泣きそうです。
「玄関はイイにゃ。まだマシだにゃ。ピカピカしてて、キラキラしてて、キレイだにゃ。
だけど、この玄関を過ぎて、本当の標本庫に入ったら、おっかないにゃ、怖いにゃあ」
ゴゴゴ、がたん!
大きな黄金の扉が自動的に開きます。
黄金の扉の先が、ヒバリの標本庫主要層上部。ヒバリが微アル缶を持ってきてほしいと、クロネコのゴールとして指定したエリアの、真上です。
美しい兵器しか有りません。
価値ある兵器しか在りません。
生あるモノは、何も、誰も、居ません。
酷い静寂がクロネコをいじめます。
「怖いにゃあ!怖いにゃあ!
寂しくて、寂しくて恐ろしいにゃあ!」
だけどクロネコは配送ロボット。
自分の仕事を、為さねばなりません。
「ううう、お仕事終わったら、問答無用で、高級電源でじっくり充電して、高級メンテナンスも予約してやるにゃあ!
寂しくても、さびしくても、へっちゃらにゃあ!」
おんどりゃあ!なんじゃおりゃあ!なおなおなお!
本物のビビリ猫のように、あっちこっちに威嚇しながら、クロネコはコロコロ、自分の下部に装着されている移動用ローラーで移動していきます。
「おらぁ!お邪魔しますにゃあ!
ヒバリさんお届け物だにゃ早く持ってけにゃあ!」
なかば逆ギレ状態で依頼品を標本庫の主要層下部まで持っていくと、
ばびゅん!ローラー駆動では有り得ないほどの速度でもって、帰っていきましたとさ。
11/11/2025, 9:59:09 AM