前回投稿文から続くおはなし。
最近最近、「ここ」ではないどこか、
自分の熱と冷気を調節できる不思議なハムスターが店主を押し付けられていおる喫茶店の近くで、
ガキんちょひとり、雨の中で泣いておりました。
「わぁーん!うわぁーん!」
泣いているガキんちょが雨にぬれて風邪をひかないように、大きな1匹のドラゴンが、
ガキんちょたちから「悪い竜神さま」、「わりゅーじんさま」と呼ばれているドラゴンが、
ツバサの片方を小さく、傘のように、
さり気なく広げてやっておりました。
ガキんちょは、ガキんちょのわりに、だいぶライトでソフトで健全ながら、三角関係を絶賛体験中。
優しいこのガキんちょを、異性のガキんちょが気に入って、好きになりまして、
その異性のガキんちょに好かれているこのガキんちょに、同性のガキんちょがイジワル。
というのも、優しいガキんちょを気に入っている異性ガキんちょに、イジワルした同性ガキんちょ、子供ちっくな恋を、しておるのでした。
あら甘酸っぱい。 まぁストロベリー。
好き、嫌い、 好き、嫌い。
その日も優しいガキんちょは、異性ガキんちょから誘われて、ケバブを食えるという喫茶店へ。
ガキんちょ2人、おっきいケバブを4個に切ってもらって、1個ずつ幸福に食っておりました。
好き、嫌い、 好き、嫌い。
2人を見つけた同性ガキんちょ、2人が2人で笑ってるのを見て、つい、カッとなってしまって、
喫茶店に入ってって、優しいガキんちょが食っているケバブの1切れを、奪ってしまいました。
『ひどいよ、ひどいよ!』
だけど優しいガキんちょは、優しいガキんちょ。
仕返しせず、ぐっと、必死に我慢して、
でも我慢しきれなかったので、
衝動的に雨降る喫茶店の外へ、飛び出したのです。
『おい。濡れるぞ。傘はどうした』
そこに丁度おったのが、ドラゴンでした。
『うう、うぅぅ! うわぁぁぁぁん!!』
ガキんちょは一気に悔しさと、悲しさと、怒りと怖かった思いとが、爆発しました!
そしてドラゴンに駆け寄って、ドラゴンの力強い手にしがみついて、わんわん!泣きました。
好き、嫌い、 好き、嫌い。
優しいガキんちょの泣いてるのを、ドラゴンは別に何とも言わず、ただガキんちょが濡れるので、
片方のツバサでもって、傘になってやって、
気が済むまで、一緒に居てやったのでした。
――「わりゅーじんさま、わりゅーじんさま」
ぐすぐす、ぐすぐす。
優しいガキんちょの号泣が鎮まってきたのは、それから10分と経たない頃合いでした。
「あのこ、なんで、イジワルするんだろう」
『さあな』
雨はまだ、やみません。
『少なくとも俺は、仕返ししなかったお前は、強かったと思うぞ。俺ならそいつを食ってたかもな』
ドラゴンは悪いドラゴンらしく、恐ろしいジョークを言ってやりましたが、
「ダメだよ!わりゅーじんさま、たべちゃダメ」
優しいガキんちょは優しくて、正直なので、
ドラゴンに強く、つよく、言いました。
「ホントは、やさしいの。ホントは、いいこなの。
だめ、ダメ、わりゅーじんさま、ゆるしてあげて」
『許して良いのか。お前にイジワルしたそいつを』
「やだ、けど、いいの。がまんする」
『我慢するだけで、良いのか』
「やだけど、がまん、する」
『お前だけ傷つくぞ。嫌いなことは、嫌いと言っても、良いんじゃないのか』
「うぅ、うぅー……」
まったく。どこまでも優しいやつだな。
ドラゴンは小さなため息を吐きました。
優しいガキんちょは、どこまでも優しいガキんちょだからこそ、異性ガキんちょから気に入られて、そして、好かれたのでしょう。
異性ガキんちょから好かれたからこそ、同性ガキんちょから、「嫌い」というより「嫉妬」の方を、買ってしまったのでしょう。
『ほら、行ってこい』
ドラゴンが優しいガキんちょに、言いました。
どうやら異性ガキんちょと同性ガキんちょが、
優しいガキんちょがなかなか帰ってこないので、雨の中迎えにきたようです。
同性ガキんちょの方に、涙の跡がある様子。
喫茶店の中の大人から、叱られたかな?
『さぁ』
優しいガキんちょも、雨の中を迎えに来てくれたガキんちょを見つけました。
「うん。 わりゅーじんさま、いってきます」
好き、嫌い、 好き、嫌い。
ガキんちょ3人はそれぞれが、謝って許して、
そして、皆で喫茶店へ、帰っていきましたとさ。
前回投稿文からの続き物。
最近最近、「ここ」ではないどこかの世界、ドチャクソ規格外な規模の難民シェルターの中に、
不思議なハムスターが店長を押し付けられている喫茶店がありまして、
そこでは店長ハムが「ムクドリ」を名乗り、クルクルからからネズミ車式の専用焙煎器を回して、
1杯ずつ、丁寧にコーヒーを焙煎してくれるので、
収容されておる難民からも、なにより難民のお世話や密航者の取り締まり等々をしておる「世界線管理局」の職員からも、
大勢のひとから、好かれておったのでした。
なお店長ハムが借金を返済し終えたら、この高単価で高満足度の1杯焙煎な喫茶店は、営業終了。
というのもムクドリ、本物の魔女の喫茶店で、ハムスターの本能のままに、
コードだのアンティークデスクだの、固いものをカジカジかじって削って、キズモノにしたのです。
これはしゃーない。
「うぅ……くそぅ……ちくしょう……」
雨降るその日もとっとこムクドリ、ネズミ車式の焙煎器の上を、とっとこ、とっとこ。
「あの鬼畜魔女め……」
豆を入れて、ムクドリが持っている不思議なチカラで焙煎器を適正温度まで上げて、
そして、走って回しておりました。
「借金返済し終えたら、仕返しに、あいつのイチバン高い椅子の足、かじってやるッ」
焙煎器のネズミ車から出力された動力は、もちろん焙煎器自体をくるくる、くるくる、回しますが、
先日追加でネズミ車式焙煎器に糸車が増設。
糸車はハムスターのエターナルネズミ車マラソンによって、魔法のシルクを紡ぎます。
魔法のシルクは美しいシルク。防暑の魔法がかけられて、撫でればサラリ、ほどよい冷たさ。
これを織って布にして、魔女たちのための夏用新作ローブを作るのです。
とっとことっとこ、とっとことっとこ。
糸車が増設されたことで少し重くなったネズミ車を、延々回し続けておるムクドリです。
とっとことっとこ、とっとことっとこ。
喫茶店の中では別部署の、人間の同僚が、何故かドネルケバブ屋さんを1日限定開業。
お客さんがケバブ食べつつ、ムクドリのコーヒーを飲んでおって、ムクドリの食欲に刺さります。
「くぅぅぉぁあああああ!
負けるな僕!負けちゃダメだ僕ぅぅぅぅ!!」
「雨の香り、涙の跡」。
雨の香りは喫茶店の外、涙の跡はムクドリの下。
雑食でお肉もイケるクチのハムスター、ムクドリは、美味しそうなケバブのニオイを知らんぷり。
「ムクドリくーん、ちょっと休んだらぁ?
ムクドリくんの分、作っておいたよぉ〜」
優しい優しい別部署の同僚が、小ちゃいケバブを持ってきますが、ムクドリ、見てないことにします。
雨の香り、涙の跡。
雨の香りはケバブで上書き、涙の跡は気のせい。
くそぅ、くそぅ、ちくしょう。
あの魔女が僕をこんな喫茶店に詰め込まなけりゃ、きっとケバブだって無かったのに!
とっとこムクドリは自分の能力で発生させた熱の上に、いわゆる「心の汗」を1粒落として蒸発させて、そして、焙煎器と糸車を回し続けました。
ムクドリの借金返済がいつ終わるのか、
いつまでムクドリはネズミ車式コーヒー豆焙煎器を回し続ければ良いのか、
それは、今後のお題の出題状況次第ということで。
しゃーない、しゃーない。
「……。 ねーねー、ムクドリくん」
「なぁに、ホトさん。僕今頑張ってキミのアイスラテ用のコーヒー焙煎してる最中だよ」
「あのねー、今、焙煎器に、糸車付いてるよねー」
「そうだね、あの魔女のせいだよ」
「焙煎器も回ってて、糸車も回っててぇ」
「そうだね。鬼畜魔女のせいだよ」
「がんばれば、 この ケバブぅ……」
「これ以上やめてぇぇぇぇぇぇ!!!!!」
糸杉、糸のこ、抜糸。日本には「一糸乱れぬ」と「一糸まとわぬ」なんて言葉もあります。
去年ご紹介したのは「アリアドネの糸」。
今回は不思議な不思議な喫茶店で紡がれる、魔法のシルクの糸のおはなしをお届け。
最近最近のおはなしです。「ここ」ではないどこかの世界に、「世界線管理局」なる厨二ふぁんたじー組織がありまして、
そこには、滅んだ世界からこぼれ落ちた難民を保護して収容するための、ドチャクソ快適で三食おやつ完備な難民シェルターがありました。
世界線管理局の難民シェルターは規格外。
土地は地球くらいに広いし、季節は6個あるし、
本物の植物や動物も居てレジャーもどっさり。
「何か仕事をしたい!」という難民のために、働ける場所も用意されているし、
なにより、難民のための料理を提供するためのお店は、管理局の職員も来るくらい。
店舗豊富、バリエーションも多数なのです。
ところでそんな難民シェルターに最近、
不思議な不思議な、セカイ バクダン キヌゲネズミの亜種が店主を押し付けられている、
1杯ずつコーヒーを焙煎して、挽きたてを出してくれるタイプの、期間限定なお店がありました。
というのもこの喫茶店、目的が店主の借金返済。
「ネズミ」だけに「糸」というか、別の喫茶店のコードをカジカジ、かじってダメにしまして。
なんならその喫茶店のアンティークをガリガリ、削りに削ってキズモノにしまして。
その修理費と慰謝料のためなのです。
「だって!仕方無いだろ!僕たちネズミだぞ!」
カラカラカラ、からからから。
回し車式の特殊な焙煎器に乗って、とっとことっとこ走って走って、1杯ずつ焙煎するキヌゲネズミ、つまりハムスター。
「固い机があればかじるし、持ちやすい糸や枝があれば持つ、それで歯を削る!」
仕方無い、仕方無い。本能です。
ガラガラ走るハムスターは、ハムスターのくせにビジネスネームを、「ムクドリ」といいました。
「それこそ、仕方ないだろう」
そのムクドリからアイスコーヒーを受け取って、
カラリ、涼しげに氷を鳴らす人間は、ムクドリの別部門の、コーヒー大好き同僚さん。
「ムクドリ、情報収集役として優秀なあなたに早く現場復帰してもらわないと、こちらも困る。
せっかく回し車を動力にしているんだ。ついでに糸車でも改造してくっつけて、絹糸でも、綿糸でも、作って売ってみては?」
コーヒーだけ売るよりは、儲かる気が。
同僚さんはまさしく、涼しげに、言うのでした。
「あのねぇ!注文入るたび焙煎器をぐるぐる回す!こっちの身にも!なってみろー!」
「いやぁ、本当に感謝していますよ。こうやって1杯ずつ、焙煎して砕いて淹れてくれるおかげで、フレッシュなコーヒーが毎日飲める」
「感謝するなら!チップ!もちょっと!」
「ごちそうさま。また来ます」
「ちょっとぉぉぉぉぉ!!」
カラカラカラ、からからから。
お店にもう一人のお客を置いて、しっかり支払いもして、ムクドリの同僚は行ってしまいました。
「副業に糸車。良いわね。そのアイデア」
その「もう一人のお客」こそ、ムクドリに机やコードをかじられて、被害を被った喫茶店の店主。
ムクドリにこの喫茶店の店主を押し付けた張本人にして、本物の魔女でした。
「今日は、早く上がって良いわよ。ムクドリ」
魔女がニッコリ、言いました。
「試しに魔法のシルクを紡いで、夏用の涼しい魔法の布を織りましょう。それで魔女のローブを作るの。
焙煎器の回し車と糸車をくっつけるわ。明日から、それもやってちょうだい」
よろしくね。糸紡ぎさん。
ハムスターに◯◯◯万円程度の机だの◯◯◯万円のアンティークだのをゴニョゴニョされた魔女は、
容赦なく、公平に、公正に、
代償を、請求しましたとさ。
昨日、数ヶ月ぶりに、私「永遠の後輩」こと高葉井の職場に、「館長出没警報」が出たらしい。
私が勤めてる私立図書館の、館長は自他共に認めるヘンタイだ。なんなら自分から、「人間の魂の輝きを愛でるド変態」を公言してる。
館長が出ると、館長のおメガネに叶っちゃった人は、どこかに連行されて何かされて、
そのまま、帰ってこないってウワサ。
こんな人が館長してる私立図書館だから、私の推しゲーの原案がこの図書館で生まれて、成長して、
マルチメディア展開まで、行ったのかもしれない。
私も推しゲーの推しカプを愛でるタイプの、ヘンタイというかオタクだけど、
それでも、この館長には、確実に届かない。
だってガチのド変態だ。
館長をモデルにして作られた、私の推しゲーの中のキャラクターは、ガチで人の魂を抜き取って愛でて、それを本にして、自分専用の書庫に飾るタイプのド変態。 館長本人の公認だ。
だからこそ館長が館内巡回を始めると、館長出没警報が出て、皆みんなその館長を探し始める。
というのもこの館長モデルのキャラ、推しゲーの周年ガチャや復刻ガチャの、ガチャ回し役だから。
つまりゲン担ぎ。召喚触媒。ド変態なのに。
もうワケが分かんない(多分褒め言葉)
「届かない」といえば。
その私の推しゲー、現在日焼け止めコスメコスメとコラボして、「夏のスイーツまつり」してて。
1点約500円程度のスイーツを、
敏感肌でも安心な日焼け止めクリーム1点、
日焼け止め入りオールインファンデ5点、
日焼けダメージケアしてくれるヘアオイル10点、
限定アイコスメ3点付きコスメボックス20点。
10点、とどかない。
10点届かないのに、10点届かないけど、
来月発売のアイコスメ付きボックスが、ほしい。
ぜひ実用と保管用に2個。
欲を言えば、3個。
1個は手に入れた。残り1〜2個。
とどかない。 届かないのに、 ほしい。
「うぅぐぁぁああうぁぅぁ……」
私が自分の生活費と、推し活費と、その他諸々を考えながら、500円✕10点分、あるいは30点分をどうやって捻出しようか悶絶してると、
「またガチャか」
前職からの私の先輩が、お昼ご飯から帰ってきた。
「ガチャじゃない。コスメ。5千円か1万5千円」
「はぁ」
「ガチで実用全ツッパなコスメなの。今オールインファンデとアイコスメの2個付けてきてるけど、ガチでイイの。可能ならあと2個欲しいの」
「そうか」
「届かないの。届かないのに、欲しいの」
「もう少し安いのでも良いのでは?」
「十分安いよ。アイシャドウとライナーとマスカラと、道具と収納箱付いて1万円だよ。破格だよ」
「十分高い、のでは?」
「普段アイメイクしないから先輩そんなこと言えるんだよ。ガチだよ。格安だよ……」
とどかない。 届かないのに、 ほしい。
ガチャを諦めるか生活水準下げるか、コスメボックス1個確保できたしそれで満足するか。
私の苦悩はずっとずっとぐるぐる回って、
なんの解決方法も出てこないまま最初に戻る。
「うぅぅ、あと10点、違う、あと30点。
うぁぅあぐあぁぁぁぅぁぅぁぅ、あうぅぅ……」
「悩むほどカネがないなら5千円にしておけ」
「あるの。 あるけど、ガチャ用で生活費なの」
はぁ。 先輩は私の苦悩に小さなため息を吐いて、自分の仕事に戻る。そろそろ昼休憩終了だ。
「せんぱい。どうしよ。私、食費、光熱費」
「たまにはガチャを控えたらどうだ」
「だってルー部長が呼んでるぅぅ」
どうしよう。とどかない。届かないのに。
私は昼休憩終了2分前まで、苦悩して葛藤して、先輩から再来週のボーナスのハナシを聞いて、
今年入ったばかりの私にボーナスが出るのか、出ないのか、副館長にガチで聞きに行った。
結果としては、ほんの少しだけ、出るらしかった。
今回のお題は「記憶の地図」とのこと。
ぶっちゃけこちらの記憶の地図では、6月というのはもう少し、いやもっともっと、涼しいハズだった気がする物書きです。
うだうだ溶けてても仕方ありません。
今回は、こんなおはなしをご用意しました。
最近最近の都内某所、某私立図書館は、
バチクソに胡散臭く、ドチャクソに不思議な女性が、ずっと、ずーっと、館長をしておりました。
なんでも数十年、ずーっと同じ人が、ずーっと同じ若さで、ずっと、ずっとずーっと、館長の座に就いているというウワサ。吸血鬼か何かでしょうか?
「いいえ。私は、『全世界図書館の館長』。
ただそれだけです。その他ではありません」
不思議で胡散臭い館長は、自分の名前を、
「Last Universal Common Ancestor」の頭文字をとって、LUCA、ルカと、名乗りたがりました。
「私は、動物のビジネスネームを貸与している世界線管理局の協力者であり、
植物のビジネスネームを使用している世界多様性機構の協力者でもある。
ゆえに双方に共通する祖を、今は名乗りましょう」
うふふ。うふふふふ。
館長の笑顔はすべての魂への慈愛に満ちているようで、すべての生き物を卑下しているようで、
要するに、バチクソに、胡散臭いのでした。
「『卑下』など失敬な。私はすべての世界の、すべての異世界も、あらゆる魂の輝きを愛でます。
美しい魂を卑下だなんて。そんな、そんな」
さて。
そんな胡散臭館長の趣味はというと、
都内に構えた図書館に、のこのこ誘われてやって来た「他の世界から来た異世界人」。
だいたい都内で見かける異世界人というのは、自分の故郷が滅んでしまっておって、
都内にいわゆる「密航」のカタチでもって、避難してきて、生活している難民が大半。
そういう者の魂を、胡散臭館長の魔法でもって、本にしてしまってそれを、
他者立入禁止、職員も進入不可なプライベート書庫に飾るのが、館長の至上の楽しみなのです。
まるでUFOによる拉致です。あらこわい。
「そうやってキャトってきた本を、それぞれの世界に分けて書庫に並べていくと、
お題どおり、『記憶の地図』が完成するのです。
あの世界の記憶、この世界の記憶、
その世界のこの人は、こっちの世界に影響を与えて、そっちの世界の発展に寄与した。
1冊1冊の本が、それぞれの歴史を語ることで、
すなわち、記憶の地図が生まれるのです。
ああ、ああ。魂が描き出す、美しい世界の歴史!
すべての亡き世界の記憶が、その地図が、私の書庫に集結するのです。 素晴らしい!」
なお、あんまり難民をキャトルミューティレーションし過ぎると、難民を保護する組織からも、難民を取り締まる組織からも、怒られます。
だけど館長、気にしません。
ちっとも怖くないのです。
だって、この胡散臭館長、胡散臭いくせに、やたらチカラが強いのです。
「おやおや。今日も我が図書館に、哀れで美しい輝きを持つ異世界人が、やって来たようですよ」
さぁさぁ、「こっちの世界」の人間じゃない者。
お前の魂の輝きを、よこすのです。
さぁさぁ、故郷の世界が既に滅んでしまった者。
お前の記憶の地図を、我が書庫に寄贈するのです。
うふふ、ふふふうふふ。
神出鬼没で胡散臭い館長は、自分の図書館にやってきた、素直で優しく「この世界」を学ぼうと努力している異世界人の、
後ろにゆらぁり現れて、
それはそれは悪い笑顔を、によろるん、咲かせて、
そして、館長の魔の手を哀れな異世界j
「館長!また来館者にセクハラですか!
良い加減にしてください、訴えられますよ!」
魔の手を哀れな異世界人の胸に当てようとした、丁度そのタイミングで、
私立図書館の職員が館長をピコハンでピヒャッ!
打ち据えて、異世界人を危機一髪、助けたのです。
「聞き捨てなりませんね。セクハラではありません!私はこの者の、魂の輝k」
「ウチの館長がすいません。ヘンタイなんです。許してほしいとは言いませんので、どうぞ、お気を悪くなさったらコチラまでご一報ください」
「こら。ハナシを聞きなさい。私はこの者のt」
「はいはいタマシイタマシイ。帰りますよ館長」
「ぐぇぅ。 こら。襟で引きずってはなりません。
聞いているのですか。こら。藤森。ふじもり」
図書館の胡散臭館長、胡散臭くてチカラが強いので、誰も、ちっとも怖くありません。
だけど館長、やってることが完全に、「こっち」の世界の人間としてはセクハラにしか見えないので、
いっつも、だいたい、悲しいことに、
迅速に察知されて全力で阻止されて、
そして、「ウチのヘンタイがすいません」と、
変態の実績を、積み重ねられてしまうのです。
「うぅ、私の美しい魂、私の記憶の地図の一点」
「はいはい」
「藤森。何度も何度も、何度もそうやって私の楽しみを邪魔するなら、お前の魂もドチャクソにエロく抜き取って、美しい本にしてしまいますよ」
「はいはい」
「本当です。本当ですよ」
「すいません、変態が通ります、道を開けてk」
「失敬な!私のことは、ド変態と呼びなさい!」
ズルズルズル、ずるずるずる。
記憶の地図を完成させたい胡散臭館長のおはなしでした。 おしまい、おしまい。