前回投稿文からの続き物。
最近最近、「ここ」ではないどこかの世界、ドチャクソ規格外な規模の難民シェルターの中に、
不思議なハムスターが店長を押し付けられている喫茶店がありまして、
そこでは店長ハムが「ムクドリ」を名乗り、クルクルからからネズミ車式の専用焙煎器を回して、
1杯ずつ、丁寧にコーヒーを焙煎してくれるので、
収容されておる難民からも、なにより難民のお世話や密航者の取り締まり等々をしておる「世界線管理局」の職員からも、
大勢のひとから、好かれておったのでした。
なお店長ハムが借金を返済し終えたら、この高単価で高満足度の1杯焙煎な喫茶店は、営業終了。
というのもムクドリ、本物の魔女の喫茶店で、ハムスターの本能のままに、
コードだのアンティークデスクだの、固いものをカジカジかじって削って、キズモノにしたのです。
これはしゃーない。
「うぅ……くそぅ……ちくしょう……」
雨降るその日もとっとこムクドリ、ネズミ車式の焙煎器の上を、とっとこ、とっとこ。
「あの鬼畜魔女め……」
豆を入れて、ムクドリが持っている不思議なチカラで焙煎器を適正温度まで上げて、
そして、走って回しておりました。
「借金返済し終えたら、仕返しに、あいつのイチバン高い椅子の足、かじってやるッ」
焙煎器のネズミ車から出力された動力は、もちろん焙煎器自体をくるくる、くるくる、回しますが、
先日追加でネズミ車式焙煎器に糸車が増設。
糸車はハムスターのエターナルネズミ車マラソンによって、魔法のシルクを紡ぎます。
魔法のシルクは美しいシルク。防暑の魔法がかけられて、撫でればサラリ、ほどよい冷たさ。
これを織って布にして、魔女たちのための夏用新作ローブを作るのです。
とっとことっとこ、とっとことっとこ。
糸車が増設されたことで少し重くなったネズミ車を、延々回し続けておるムクドリです。
とっとことっとこ、とっとことっとこ。
喫茶店の中では別部署の、人間の同僚が、何故かドネルケバブ屋さんを1日限定開業。
お客さんがケバブ食べつつ、ムクドリのコーヒーを飲んでおって、ムクドリの食欲に刺さります。
「くぅぅぉぁあああああ!
負けるな僕!負けちゃダメだ僕ぅぅぅぅ!!」
「雨の香り、涙の跡」。
雨の香りは喫茶店の外、涙の跡はムクドリの下。
雑食でお肉もイケるクチのハムスター、ムクドリは、美味しそうなケバブのニオイを知らんぷり。
「ムクドリくーん、ちょっと休んだらぁ?
ムクドリくんの分、作っておいたよぉ〜」
優しい優しい別部署の同僚が、小ちゃいケバブを持ってきますが、ムクドリ、見てないことにします。
雨の香り、涙の跡。
雨の香りはケバブで上書き、涙の跡は気のせい。
くそぅ、くそぅ、ちくしょう。
あの魔女が僕をこんな喫茶店に詰め込まなけりゃ、きっとケバブだって無かったのに!
とっとこムクドリは自分の能力で発生させた熱の上に、いわゆる「心の汗」を1粒落として蒸発させて、そして、焙煎器と糸車を回し続けました。
ムクドリの借金返済がいつ終わるのか、
いつまでムクドリはネズミ車式コーヒー豆焙煎器を回し続ければ良いのか、
それは、今後のお題の出題状況次第ということで。
しゃーない、しゃーない。
「……。 ねーねー、ムクドリくん」
「なぁに、ホトさん。僕今頑張ってキミのアイスラテ用のコーヒー焙煎してる最中だよ」
「あのねー、今、焙煎器に、糸車付いてるよねー」
「そうだね、あの魔女のせいだよ」
「焙煎器も回ってて、糸車も回っててぇ」
「そうだね。鬼畜魔女のせいだよ」
「がんばれば、 この ケバブぅ……」
「これ以上やめてぇぇぇぇぇぇ!!!!!」
6/20/2025, 3:31:27 AM