かたいなか

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今回のお題は「記憶の地図」とのこと。
ぶっちゃけこちらの記憶の地図では、6月というのはもう少し、いやもっともっと、涼しいハズだった気がする物書きです。
うだうだ溶けてても仕方ありません。
今回は、こんなおはなしをご用意しました。

最近最近の都内某所、某私立図書館は、
バチクソに胡散臭く、ドチャクソに不思議な女性が、ずっと、ずーっと、館長をしておりました。
なんでも数十年、ずーっと同じ人が、ずーっと同じ若さで、ずっと、ずっとずーっと、館長の座に就いているというウワサ。吸血鬼か何かでしょうか?

「いいえ。私は、『全世界図書館の館長』。
ただそれだけです。その他ではありません」
不思議で胡散臭い館長は、自分の名前を、
「Last Universal Common Ancestor」の頭文字をとって、LUCA、ルカと、名乗りたがりました。
「私は、動物のビジネスネームを貸与している世界線管理局の協力者であり、
植物のビジネスネームを使用している世界多様性機構の協力者でもある。
ゆえに双方に共通する祖を、今は名乗りましょう」

うふふ。うふふふふ。
館長の笑顔はすべての魂への慈愛に満ちているようで、すべての生き物を卑下しているようで、
要するに、バチクソに、胡散臭いのでした。
「『卑下』など失敬な。私はすべての世界の、すべての異世界も、あらゆる魂の輝きを愛でます。
美しい魂を卑下だなんて。そんな、そんな」

さて。
そんな胡散臭館長の趣味はというと、
都内に構えた図書館に、のこのこ誘われてやって来た「他の世界から来た異世界人」。

だいたい都内で見かける異世界人というのは、自分の故郷が滅んでしまっておって、
都内にいわゆる「密航」のカタチでもって、避難してきて、生活している難民が大半。
そういう者の魂を、胡散臭館長の魔法でもって、本にしてしまってそれを、
他者立入禁止、職員も進入不可なプライベート書庫に飾るのが、館長の至上の楽しみなのです。
まるでUFOによる拉致です。あらこわい。

「そうやってキャトってきた本を、それぞれの世界に分けて書庫に並べていくと、
お題どおり、『記憶の地図』が完成するのです。
あの世界の記憶、この世界の記憶、
その世界のこの人は、こっちの世界に影響を与えて、そっちの世界の発展に寄与した。
1冊1冊の本が、それぞれの歴史を語ることで、
すなわち、記憶の地図が生まれるのです。

ああ、ああ。魂が描き出す、美しい世界の歴史!
すべての亡き世界の記憶が、その地図が、私の書庫に集結するのです。 素晴らしい!」

なお、あんまり難民をキャトルミューティレーションし過ぎると、難民を保護する組織からも、難民を取り締まる組織からも、怒られます。
だけど館長、気にしません。
ちっとも怖くないのです。
だって、この胡散臭館長、胡散臭いくせに、やたらチカラが強いのです。

「おやおや。今日も我が図書館に、哀れで美しい輝きを持つ異世界人が、やって来たようですよ」

さぁさぁ、「こっちの世界」の人間じゃない者。
お前の魂の輝きを、よこすのです。
さぁさぁ、故郷の世界が既に滅んでしまった者。
お前の記憶の地図を、我が書庫に寄贈するのです。

うふふ、ふふふうふふ。
神出鬼没で胡散臭い館長は、自分の図書館にやってきた、素直で優しく「この世界」を学ぼうと努力している異世界人の、
後ろにゆらぁり現れて、
それはそれは悪い笑顔を、によろるん、咲かせて、
そして、館長の魔の手を哀れな異世界j

「館長!また来館者にセクハラですか!
良い加減にしてください、訴えられますよ!」

魔の手を哀れな異世界人の胸に当てようとした、丁度そのタイミングで、
私立図書館の職員が館長をピコハンでピヒャッ!
打ち据えて、異世界人を危機一髪、助けたのです。

「聞き捨てなりませんね。セクハラではありません!私はこの者の、魂の輝k」
「ウチの館長がすいません。ヘンタイなんです。許してほしいとは言いませんので、どうぞ、お気を悪くなさったらコチラまでご一報ください」
「こら。ハナシを聞きなさい。私はこの者のt」
「はいはいタマシイタマシイ。帰りますよ館長」
「ぐぇぅ。 こら。襟で引きずってはなりません。
聞いているのですか。こら。藤森。ふじもり」

図書館の胡散臭館長、胡散臭くてチカラが強いので、誰も、ちっとも怖くありません。
だけど館長、やってることが完全に、「こっち」の世界の人間としてはセクハラにしか見えないので、
いっつも、だいたい、悲しいことに、
迅速に察知されて全力で阻止されて、
そして、「ウチのヘンタイがすいません」と、
変態の実績を、積み重ねられてしまうのです。

「うぅ、私の美しい魂、私の記憶の地図の一点」
「はいはい」
「藤森。何度も何度も、何度もそうやって私の楽しみを邪魔するなら、お前の魂もドチャクソにエロく抜き取って、美しい本にしてしまいますよ」
「はいはい」

「本当です。本当ですよ」
「すいません、変態が通ります、道を開けてk」
「失敬な!私のことは、ド変態と呼びなさい!」

ズルズルズル、ずるずるずる。
記憶の地図を完成させたい胡散臭館長のおはなしでした。 おしまい、おしまい。

6/17/2025, 6:46:53 AM