かたいなか

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5/31/2025, 7:35:03 AM

前回投稿分のおはなしから、「まだ続く物語」。
つまり、昨日の続きを語ればすぐに、お題が回収できるのです。なんというボーナスステージ、
と、余裕ぶっこいておったところ、気が付いたらもう15時の物書きです。
今回はこんなおはなしの、はじまり、はじまり。

「ここ」ではないどこか、別の世界で、美しくかぐわしい花見の祭りが大々的に開催中。
お題回収役のビジネスネーム「ドワーフホト」は、不思議な稲荷子狐と一緒に、
ガラガラ、がらがら。
祭りの屋台の食べ物を、あれください、これくださいと集めて渡って渡り鳥。
大量に仕入れたその後は、良い香りの花に囲まれた飲食スペースで、それらを広げて楽しみます。

「光水晶の砂糖菓子〜、氷薄荷のハ〜ブティー」
「いいニオイのおもち!いいニオイのおニク!」

それ食べよう、これ切り分けよう。
いやいや、これとそれを、一緒に食べてみよう。
ドワーフホトと子狐は、美味しいものの味も匂いも、舌触りも喉ごしも、全部含めて大好き!
買ったもののいくつかは、イタズラカラスやイタズラわんこに盗み食いなどされているようですが、
もぐもぐ、ちゃむちゃむ。
それら含めて幸福に、食事を楽しんでおりました。

え?お花?花見?ソウデスネ(棒読み)
でも、花見の花が咲かせる良い香りは、良い食事の雰囲気スパイスに、丁度良いようでした。

ところで今回のお題は「まだ続く物語」。
前回投稿分のおはなしが「続く」ワケですが、
その前回分には居たハズの、ドワーフホトの大親友、「スフィンクス」が行方不明。
はて、どこに行ったのでしょう?

「いや、『どこ行った』って、馴染みの屋台探してたんだけどよ。見つかんなくてよ」
10分ほど迷子だった、ドワーフホトの大親友、俺様系最強生物のスフィンクスです。
「みかんジャムケーキをみかんピール増し増しで盛ってくれる店が、去年まで出てたんだけどよ。
今年居ねぇの。俺様食っちゃったのかな」

いっぱい探したんだけどよ。居ねぇんだよ……。
スフィンクスはしょんぼりして、ドワーフホトと子狐の、場所取り済みな場所に戻ってきます。
手にはたっぷり、いろんな世界のミカンを使った、
暖色系どっさりなスイーツ、お肉、ツマミ、酒。

「コレうまかった」
スフィンクスがドンと出したのは、あらゆる世界、あらゆる選択肢のミカンを集め作られた果実酒。
「ココに一味と山椒を少し」
甘くて辛いミカン酒は、お肉料理にピッタリ。
「こちらオレンジソースたっぷり焼き豚」

輝くナイフで切り分け、美しいお皿に盛り付けて、
さぁ、どうぞ。俺様の宝物と俺様のゆたんぽ。
「コンちゃんはまだ子供だから、お酒ダメェ」
「やだ、キツネ、のむ、キツネものむ、おさけ」
「大人になったら、一緒に飲もうね〜」

お酒とジュースと、メインディッシュが5種類、
主菜8個に副菜5個、
それから固さも柔らかさも味も別の主食が8個。
そこにスフィンクスのお土産を合流させて、
コンコンこやこや、お花見パーティー再開です。

「スフィちゃんが楽しみにしてた屋台さぁ」
「おん」
「今年〜……どうしたんだろうねぇ」
「んー。やっぱ、俺様が食っちまったのかな」
「まっさかぁ」
「いや、ワリと本気だって」
「またまたぁ〜」

さぁ、みんなで「いただきます」。
「スフィちゃん、そこのパンとってぇ」
「ほいさ」
スフィンクスとドワーフホトと、それから稲荷子狐の物語は、まだまだ、続きます。
だけどスフィンクスが今回のおはなしで探していた屋台は結局、最後までオチが行方不明のまま。
しゃーない。 しゃーないのです。

5/30/2025, 4:36:35 AM

最近最近のおはなしです。「ここ」ではないどこか、別の世界のおはなしです。
「世界線管理局」という厨二ふぁんたじー組織の中に、滅んだ世界の生存者を受け入れる難民シェルターがありまして、
バチクソ規格外な広さのそこでは、今まさに、地球でいうところの初夏な温度設定。
暑さが顔を出し始めて、そういう気温を好む植物や鉱石植物、魔法植物が絶好調。
美しい花、輝かしい花が、たくさん咲いています。

「さぁ!第3季節の花見フェスだよ!」
難民シェルターのお花の手入れをすすんで為している花粉ハムスターが、難民シェルターを直接管理している空間管理課とタッグを組みます。
「滅んだ世界の花、滅びそうな世界の花、まだ生きている世界で絶滅してしまった花!
みんなで愛でて、みんなで楽しもう!」

総勢【ごにょごにょ】人居る難民にも、管理局の局員にも、花見フェスが大好きなひとがいっぱい。
「んんん〜!屋台!増えたぁ〜!」
ほら、ここにも花見フェスを、ドチャクソ楽しんでいる収蔵課局員が……
おや、この局員、何故車内販売みたいなガラガラのサービスワゴンを押しているのでしょう?
「さぁて、新しく増えた食べ物、何かなぁ〜」

この局員は、ビジネスネームを「ドワーフホト」といいまして、親友の「スフィンクス」を連れ出し、友達という名のオトモな稲荷子狐をワゴンに乗せ、
がらがらがら、花見フェスの屋台スペースを巡回中――そうです、「渡り鳥」しておるのです。

「おねーちゃん!おねーちゃん!」
コンコン子狐、人語を話して叫びました。
「おみせ、いっぱい!おいしいもの、いっぱい!」
コンコン子狐は花見フェス、今日が初めて。
たくさんの屋台から、たくさんの良い匂いがするので、興奮して尻尾を高速回転しています。

え?親友のスフィンクス?
ああ、どうやら管理局員のひとりが出してるキッチンカーを、チベットスナギツネのジト目で、
じとっと、ジトーっと、見ているようです。

「……あいつまた何か壊したのか」
スフィンクスの知っている別の局員が、強制的にバイトとして労働させられておったのです。
ガラガラ、がらがら。その局員ハムスターは不思議なコーヒー焙煎機を、ずっと回しておりました。

「あそこぉ!」
ドワーフホトが、ひとつの可愛らしい屋台を指さしました――光水晶の鉱石花と宇宙カエデから抽出した、砂糖菓子の屋台だそうです。
「宇宙カエデのシロップぅ〜!
あれはねぇ、すごく、すごぉーく、高価〜」
まずはあそこの、超リーズナブルな琥珀糖を、10個ばかり詰めてもらいましょう。
ドワーフホトはガラガラ、ワゴンを押してゆきまして、美しいボトルに宝石を詰めてもらいました。

「んんー、あの屋台も、新出店〜」
次の屋台へ渡り鳥。
ドワーフホト、ワゴンを押して向かいます。
「おねーちゃん、おねーちゃん」
コンコン稲荷子狐、ドワーフホトに言いました。
「おにく。おっきい、おにくが、ある」
子狐が見つけたのは、世界ウシの超巨大ステーキ。
シェアして食べることを想定された、もはやキロ単位のジューシーでした。

「コンちゃん、コ〜ンちゃん」
ドデカステーキに釘付けの子狐に、ドワーフホト、ささやいて、別の場所を指さしました。
「あっちの奥ぅ」
なんということでしょう。ひとつの家ほどに大きなお鍋で、ブラウンビーフシチューが、コトコト。
ゆっくりじっくり、幸福に煮込まれています。

「こやぁ、こや、くわぁ、くわー……」
子狐は完全に目を見開いてしまって、
開いた口が、ふさがりません。
「行こ〜ぅ」
ガラガラ、がらがら。世界ウシの巨大ステーキを購入して、ワゴンに乗せたドワーフホトは、
またまた、更に、渡り鳥。
次の目的地に、超巨大お鍋を目指すのでした……

5/29/2025, 3:43:58 AM

昨日に引き続き、私、後輩こと高葉井は、
推しの図書館司書コスな新規絵のために、
有償確定20連(1日1回1人キャラ指定可)と、
自分でお布施した方のガチャ(絶賛爆死中)とを、
それぞれ、回してる。

運営さんは、私に推しを完凸させる気が、さらさら無いらしい……ガチでさらさら無いらしい。
推しじゃなく、いわゆる人権、「【司書】スフィンクス【本よりミカン】」が先に完凸してしまった。
うん(おかげでステージはかどってます)
うん(でも違うんです。そうじゃないんです)

「高葉井ちゃん。今日もガチャで、コルチゾールドッパドッパでまくってるねー」
私をこの図書館に引っ張ってきた、「付烏月」と書いて「ツウキ」って読む付烏月さんが寄ってきた。
「無事?リーク情報でも見てリラックスする?」
付烏月さんが持ってきたのは、私の推しゲーで昨晩から「リーク動画」とされてる映像。
新しいイベントで使われる、イベントガチャだ。

「それ、動物愛護団体とかに何か言われそう」
「どーだろね」

私のゲームのマスコットキャラ的なチート能力持ちハムスターが、ガラガラ、ネズミ車を回してる。
それをスフィンクスっていうチート能力持ち俺様女性キャラが、イタズラな顔して見てる。

ガチャに使うのは、「返済ポイント」。
それを使って動画は100連、回す。
さらさらさら、きゅるきゅる、ひゅいいいん。
ガチで摩擦ゼロなネズミ車は、ハムスターの運動で高速回転を始めて、虹の輝きを放ち、
ばびゅーん! 最終的に、ハムがぶっ飛ぶ。

ネズミ車と同じく虹の輝きをまとったハムは、何かに当たって、虹の爆発!稲妻!ちゅどーん!
で、まだゲームに未実装なキャラとアイテムがガンガン出てくるガチャ結果画面に移行する。

「本物かなぁ」
相変わらず推しを完凸させる気さらさら無いガチャを回しながら、付烏月さんに呟く。
「俺は本物だと思うよん」
付烏月さんは付烏月さんで、コーヒー飲みながら、自分で作ってきたらしいクッキーをぱくり。
「まぁ、アップデートとかメンテとかが来れば、いずれ本物か偽物か分かるんじゃない?」
そうですね(ごもっとも)

「また回しているのか、高葉井」
付烏月さんのクッキーを貰って、私の飴ちゃんを渡して、物々交換完了してたとき、
私と一緒にこの職場に引っこ抜かれてきた先輩が現れた。お茶っ葉を捨てに行ってたみたい。
「残金や生活費とは、よく相談しておけよ」
アレだ。いわゆる冷茶、水出しってやつだ。
雪国出身の先輩は25℃あたりで「暑いな」って言い始めて、ひんやり冷たい冷茶を仕込み始める。

「ほら。1杯」
これが意外とおいしい。お茶の甘さがあって、苦みと渋みが少なくて、飲みやすい。
先輩は、朝から仕込んできたらしいそれを、私と付烏月さんに分けてくれた。

ところで先輩、なにやら手紙をいっぱい持ってるようですが、それなんですか。

「履歴書らしい」
住所と名前を隠して、「履歴書在中」って書かれてるところだけで並べて、先輩は手紙を見せてきた。
「お前の好きなゲーム、『この図書館』がモチーフで、生誕地だと、お前自身言っていただろう。
今回この図書館の制服を着たキャラが実装されたことで、その制服欲しさに、このとおりだ」

で、これからお断りの返信を、私が。
先輩はパソコンに向かって、カタカタ。
「副館長曰く、」
先輩が言った。
「ウチはそもそも、求人自体どこにも出していないし、これ以上職員を増やす気も無いらしい」
それこそ一切、さらさら、その気ナシだとさ。
先輩はそう言うと、文章をコピペして貼り付けて、部数指定してプリントして……

「ちなみに1通、『制服を男女100着買いたい』と、妙な日本語で手紙が来ていたな」
ふっと、ひとつ封筒を引き抜いて、
それだけ、副館長の机に置いた。
あっ(転売)
あ……(成敗)

5/28/2025, 5:19:59 AM

私が勤めてる私立図書館と、私が推してるゲームが、とうとう公式にコラボした。
私立図書館だからか、もっと別の理由からか、
ウチの職場はザ・司書さん、ってカンジの落ち着きカッコいい制服があるんだけど、
その制服を着たメインキャラと、マイナーキャラが、なかなかの性能で新登場。

私が着てる制服を着た食いしん坊のんびりキャラも、私が着てる制服を着た犬耳受付嬢キャラも、
私が着てる以下略、以下略……
ともかく今回は追加キャラが多かったからか、
運営さん、色々気を遣ってくれたらしく、
期間中の有償11連は同じ価格で20連になり、
必ず、有償20連に限り、1日1回だけ、
自分で選んだピックアップが確定で封入されるシステムが、特別に導入された。

ありがとうございます(お布施)
ありがとうございます(ところで:完凸)
でも私の推し2人+1匹を全員完凸させるには、期間中の確定有償だけじゃ足りないんです(悲しみ)

よって、ガチャ初日から石を突っ込むのです。

「うぅ、これで最後、これでッ、最後……!」
昼休憩中、自分のデスクで苦しみながらスマホをタップしたりスワイプしたりする私を、
じーっと、私の先輩は、ジト目で観察してる。
「これでッ、お願いします、お願いします、
お願ッ……ぁあ、あああ、 ああアアアア……!」

今日の確定分を引き終えて、推しの「ルリビタキ」とルリビタキのドラゴン形態と、それから「ツバメ」ってキャラは双方手に入った。
頑張って今日で、双方完凸させたいのだ。
ネットストアで石買って、突っ込んで、つっこんで、それで、何度か回して推しはすり抜けて、何の因果か、新規の全キャラが揃ってしまった。

ちがう、違う。 そうじゃ そうじゃない。
コンプリートじゃない。 完凸をしたい。

「くぅぅうううう……!」
コレデ、何連爆死シタデセウ。「【司書】ドワーフホト:本より団子」のNew!を見て、苦しくて、
気力回復のために今日入手した「【司書】ルリビタキ:読み聞かせのドラゴン」を見て、尊くて。

「ルー部長、るーぶちょう、どうか、チカラを」
最後の11連を、ふるえる人差し指で、まわす。
「これで きょうは さいご 今日はこれで最後」
大丈夫。
すり抜けたって、
低レアキャラで倉庫がパンパンになったって、
私の推しゲーには、再変換システムの、「スフィンクスのこたつ」がある。
そこに低レベルキャラを捨てrゲホゲホ、送り出せば、確率でガチャ石が手に入る。

「どうか どうか せめて」
どうか、せめて、1回は推しを凸したい。
だって推しが、私の職場の制服を着ているのだ……

――――――

…――「で、結局休憩中ガチャを引き続けたのか」
「はい。 はい」

気がついたら昼休憩が終わってて、私はそれを、先輩に肩叩かれてから気付いた。
「だイじょうぶ。ちゃんと、生活費の範囲内デ、石買ってるかラ」
「致命傷なのは分かるが、しっかりしろ」
最終的に何故か「本より団子」の子が2凸してしまって、推しは2人が1凸。

「何故このゲームと私達の職場がコラボを?」
「この図書館が、このゲームの原作の聖地で、生誕地なの。ここをモチーフに生まれた場所があるの」
「はぁ」
「それが、ガチでウチとコラボだよ。ゼッタイ引かなきゃだよ。先輩も、引こうよ」
「そうか」
「うぅ、うぅぅぅ……るーぶちょう……」

これで最後、これでさいご、さいご。
何度も何度も、ネットストアで石買って……
総額は、 みたくない。

「しっかりなさい。来月はボーナスよ〜」
オネェな多古副館長がアイスココアを練って、ミルクを注いで、私に寄越して背中叩いて、
多分、励ましてくれてるんだと、思う。

5/27/2025, 3:16:16 AM

永遠の後輩こと私、高葉井には、名前のトリックを使って元恋人さんから逃げ続けた先輩がいる。
その先輩が使ったトリックのひとつが、「名前の読み方変更」。戸籍に読み仮名が存在しなかったからこそ、可能だった方法だった。

これからどうなるか知らないけど、今までは、自分の名前の読み方を変更するのは簡単だったらしい。
『名前に関しては、漢字の読み仮名変更だ』
旧姓旧名持ちの先輩は、一昨年、
元恋人に見つかった時、私に種明かしをした。

『偽名本名の話じゃない。事実、私の戸籍は今、「藤森 礼」で登録されている。
改姓は説明が長くなるから割愛するが、
名前は「礼」の読みを、
「れい」から、「あき」に変えただけ。
戸籍に読み仮名が書かれていないことを利用した、
複数の自治体で認められている手続きさ』

これから、この「戸籍によみがなが書かれていない」って状況が、変わるらしい。
戸籍の、読み仮名追加だ。
行政から「この読み仮名で合っていますか」って確認のハガキが届いて、それで、
読み仮名が違っていれば、1年以内に届け出して、正しい読み仮名に変更するらしい。

粘着質な元恋人から逃げる前の先輩の旧姓旧名は、
「附子山 礼(ぶしやま れい)」。
珍しい名字だから、どこに逃げたってすぐバレる。
先輩がトリックを使って手に入れた今の名前は、
「藤森 礼(ふじもり あき)」。
先輩は名字と、それから名前の読み方を変えて、所有欲に満ちた元恋人から逃げた。

今はもう、粘着質の元恋人は居ない。
元恋人は完全に先輩を諦めて、地元に戻った。
「藤森 礼」を名乗る必要が無くなった先輩は、
もちろん、さすがに名字を「藤森」から「附子山」に戻すのはバチクソに難しいだろうけれど、
名前は、「礼」の読み仮名は、
先輩、どうするつもりなんだろう。

「私の読み仮名?」
先輩、自分の「礼」の読み仮名どうするの。
「れい」に戻すの。「あき」のままにするの。
昼休憩中の先輩と一緒に昼ご飯を食べてるときに、
私のところに読み仮名確認のハガキが届いたってことにして、それとなく、聞いてみた。

どうするの。戻すの。そのままいくの。
だって、もう、加元のやつ居ないよ。
「藤森」は手放せないかもしれないけど、
「礼」は、「れい」に戻せるかもしれないんだよ。
最後のチャンス、どうするの。

「まぁ、うん、そうだな」
先輩は、「言われてみれば」って顔をして、窓の外を見て、お茶を飲んで。長く息を吐いた。
「そうだな」
先輩は再度、言った。
ぶっちゃけ、先輩は「れい」でも「あき」でも、どっちでも構わないように見えた。
「高葉井。ちょっと、呼んでみてくれないか」

「先輩のこと?」
「そう。私のこと。『れい』と、『あき』とで」

「レイ先輩」
「うん」
「アッキー」
「うん。……うん?」
「だって、私が先輩と会ったときにはもう『あき』だったし。アッキーだったし」
「んん……、……うん」

先輩はまた、お茶を飲む。
「読み仮名変更手続きは、たしか、ハガキが到着した日から1年だ。まだ時間はある」
そうだ。まだ、時間はある。先輩はそう言って、
「そういえば、『れい』の方の私の名前を呼ばせたのは、初めてか?それとも、久しぶりか??」
今更のように、ハッとして、私に行った。

「初めてかもしれない」
私も私で、「附子山」の旧姓は呼んだ記憶があったけど、「れい」の旧名で呼んだ記憶は無かった。
「レイせんぱーい」
今日は、先輩の、君の名前を呼んだ日、その最初の1日だったかも、しれなかった。

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