かたいなか

Open App

昨日に引き続き、私、後輩こと高葉井は、
推しの図書館司書コスな新規絵のために、
有償確定20連(1日1回1人キャラ指定可)と、
自分でお布施した方のガチャ(絶賛爆死中)とを、
それぞれ、回してる。

運営さんは、私に推しを完凸させる気が、さらさら無いらしい……ガチでさらさら無いらしい。
推しじゃなく、いわゆる人権、「【司書】スフィンクス【本よりミカン】」が先に完凸してしまった。
うん(おかげでステージはかどってます)
うん(でも違うんです。そうじゃないんです)

「高葉井ちゃん。今日もガチャで、コルチゾールドッパドッパでまくってるねー」
私をこの図書館に引っ張ってきた、「付烏月」と書いて「ツウキ」って読む付烏月さんが寄ってきた。
「無事?リーク情報でも見てリラックスする?」
付烏月さんが持ってきたのは、私の推しゲーで昨晩から「リーク動画」とされてる映像。
新しいイベントで使われる、イベントガチャだ。

「それ、動物愛護団体とかに何か言われそう」
「どーだろね」

私のゲームのマスコットキャラ的なチート能力持ちハムスターが、ガラガラ、ネズミ車を回してる。
それをスフィンクスっていうチート能力持ち俺様女性キャラが、イタズラな顔して見てる。

ガチャに使うのは、「返済ポイント」。
それを使って動画は100連、回す。
さらさらさら、きゅるきゅる、ひゅいいいん。
ガチで摩擦ゼロなネズミ車は、ハムスターの運動で高速回転を始めて、虹の輝きを放ち、
ばびゅーん! 最終的に、ハムがぶっ飛ぶ。

ネズミ車と同じく虹の輝きをまとったハムは、何かに当たって、虹の爆発!稲妻!ちゅどーん!
で、まだゲームに未実装なキャラとアイテムがガンガン出てくるガチャ結果画面に移行する。

「本物かなぁ」
相変わらず推しを完凸させる気さらさら無いガチャを回しながら、付烏月さんに呟く。
「俺は本物だと思うよん」
付烏月さんは付烏月さんで、コーヒー飲みながら、自分で作ってきたらしいクッキーをぱくり。
「まぁ、アップデートとかメンテとかが来れば、いずれ本物か偽物か分かるんじゃない?」
そうですね(ごもっとも)

「また回しているのか、高葉井」
付烏月さんのクッキーを貰って、私の飴ちゃんを渡して、物々交換完了してたとき、
私と一緒にこの職場に引っこ抜かれてきた先輩が現れた。お茶っ葉を捨てに行ってたみたい。
「残金や生活費とは、よく相談しておけよ」
アレだ。いわゆる冷茶、水出しってやつだ。
雪国出身の先輩は25℃あたりで「暑いな」って言い始めて、ひんやり冷たい冷茶を仕込み始める。

「ほら。1杯」
これが意外とおいしい。お茶の甘さがあって、苦みと渋みが少なくて、飲みやすい。
先輩は、朝から仕込んできたらしいそれを、私と付烏月さんに分けてくれた。

ところで先輩、なにやら手紙をいっぱい持ってるようですが、それなんですか。

「履歴書らしい」
住所と名前を隠して、「履歴書在中」って書かれてるところだけで並べて、先輩は手紙を見せてきた。
「お前の好きなゲーム、『この図書館』がモチーフで、生誕地だと、お前自身言っていただろう。
今回この図書館の制服を着たキャラが実装されたことで、その制服欲しさに、このとおりだ」

で、これからお断りの返信を、私が。
先輩はパソコンに向かって、カタカタ。
「副館長曰く、」
先輩が言った。
「ウチはそもそも、求人自体どこにも出していないし、これ以上職員を増やす気も無いらしい」
それこそ一切、さらさら、その気ナシだとさ。
先輩はそう言うと、文章をコピペして貼り付けて、部数指定してプリントして……

「ちなみに1通、『制服を男女100着買いたい』と、妙な日本語で手紙が来ていたな」
ふっと、ひとつ封筒を引き抜いて、
それだけ、副館長の机に置いた。
あっ(転売)
あ……(成敗)

5/29/2025, 3:43:58 AM