かたいなか

Open App

最近最近のおはなしです。「ここ」ではないどこか、別の世界のおはなしです。
「世界線管理局」という厨二ふぁんたじー組織の中に、滅んだ世界の生存者を受け入れる難民シェルターがありまして、
バチクソ規格外な広さのそこでは、今まさに、地球でいうところの初夏な温度設定。
暑さが顔を出し始めて、そういう気温を好む植物や鉱石植物、魔法植物が絶好調。
美しい花、輝かしい花が、たくさん咲いています。

「さぁ!第3季節の花見フェスだよ!」
難民シェルターのお花の手入れをすすんで為している花粉ハムスターが、難民シェルターを直接管理している空間管理課とタッグを組みます。
「滅んだ世界の花、滅びそうな世界の花、まだ生きている世界で絶滅してしまった花!
みんなで愛でて、みんなで楽しもう!」

総勢【ごにょごにょ】人居る難民にも、管理局の局員にも、花見フェスが大好きなひとがいっぱい。
「んんん〜!屋台!増えたぁ〜!」
ほら、ここにも花見フェスを、ドチャクソ楽しんでいる収蔵課局員が……
おや、この局員、何故車内販売みたいなガラガラのサービスワゴンを押しているのでしょう?
「さぁて、新しく増えた食べ物、何かなぁ〜」

この局員は、ビジネスネームを「ドワーフホト」といいまして、親友の「スフィンクス」を連れ出し、友達という名のオトモな稲荷子狐をワゴンに乗せ、
がらがらがら、花見フェスの屋台スペースを巡回中――そうです、「渡り鳥」しておるのです。

「おねーちゃん!おねーちゃん!」
コンコン子狐、人語を話して叫びました。
「おみせ、いっぱい!おいしいもの、いっぱい!」
コンコン子狐は花見フェス、今日が初めて。
たくさんの屋台から、たくさんの良い匂いがするので、興奮して尻尾を高速回転しています。

え?親友のスフィンクス?
ああ、どうやら管理局員のひとりが出してるキッチンカーを、チベットスナギツネのジト目で、
じとっと、ジトーっと、見ているようです。

「……あいつまた何か壊したのか」
スフィンクスの知っている別の局員が、強制的にバイトとして労働させられておったのです。
ガラガラ、がらがら。その局員ハムスターは不思議なコーヒー焙煎機を、ずっと回しておりました。

「あそこぉ!」
ドワーフホトが、ひとつの可愛らしい屋台を指さしました――光水晶の鉱石花と宇宙カエデから抽出した、砂糖菓子の屋台だそうです。
「宇宙カエデのシロップぅ〜!
あれはねぇ、すごく、すごぉーく、高価〜」
まずはあそこの、超リーズナブルな琥珀糖を、10個ばかり詰めてもらいましょう。
ドワーフホトはガラガラ、ワゴンを押してゆきまして、美しいボトルに宝石を詰めてもらいました。

「んんー、あの屋台も、新出店〜」
次の屋台へ渡り鳥。
ドワーフホト、ワゴンを押して向かいます。
「おねーちゃん、おねーちゃん」
コンコン稲荷子狐、ドワーフホトに言いました。
「おにく。おっきい、おにくが、ある」
子狐が見つけたのは、世界ウシの超巨大ステーキ。
シェアして食べることを想定された、もはやキロ単位のジューシーでした。

「コンちゃん、コ〜ンちゃん」
ドデカステーキに釘付けの子狐に、ドワーフホト、ささやいて、別の場所を指さしました。
「あっちの奥ぅ」
なんということでしょう。ひとつの家ほどに大きなお鍋で、ブラウンビーフシチューが、コトコト。
ゆっくりじっくり、幸福に煮込まれています。

「こやぁ、こや、くわぁ、くわー……」
子狐は完全に目を見開いてしまって、
開いた口が、ふさがりません。
「行こ〜ぅ」
ガラガラ、がらがら。世界ウシの巨大ステーキを購入して、ワゴンに乗せたドワーフホトは、
またまた、更に、渡り鳥。
次の目的地に、超巨大お鍋を目指すのでした……

5/30/2025, 4:36:35 AM