かたいなか

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5/29/2025, 3:43:58 AM

昨日に引き続き、私、後輩こと高葉井は、
推しの図書館司書コスな新規絵のために、
有償確定20連(1日1回1人キャラ指定可)と、
自分でお布施した方のガチャ(絶賛爆死中)とを、
それぞれ、回してる。

運営さんは、私に推しを完凸させる気が、さらさら無いらしい……ガチでさらさら無いらしい。
推しじゃなく、いわゆる人権、「【司書】スフィンクス【本よりミカン】」が先に完凸してしまった。
うん(おかげでステージはかどってます)
うん(でも違うんです。そうじゃないんです)

「高葉井ちゃん。今日もガチャで、コルチゾールドッパドッパでまくってるねー」
私をこの図書館に引っ張ってきた、「付烏月」と書いて「ツウキ」って読む付烏月さんが寄ってきた。
「無事?リーク情報でも見てリラックスする?」
付烏月さんが持ってきたのは、私の推しゲーで昨晩から「リーク動画」とされてる映像。
新しいイベントで使われる、イベントガチャだ。

「それ、動物愛護団体とかに何か言われそう」
「どーだろね」

私のゲームのマスコットキャラ的なチート能力持ちハムスターが、ガラガラ、ネズミ車を回してる。
それをスフィンクスっていうチート能力持ち俺様女性キャラが、イタズラな顔して見てる。

ガチャに使うのは、「返済ポイント」。
それを使って動画は100連、回す。
さらさらさら、きゅるきゅる、ひゅいいいん。
ガチで摩擦ゼロなネズミ車は、ハムスターの運動で高速回転を始めて、虹の輝きを放ち、
ばびゅーん! 最終的に、ハムがぶっ飛ぶ。

ネズミ車と同じく虹の輝きをまとったハムは、何かに当たって、虹の爆発!稲妻!ちゅどーん!
で、まだゲームに未実装なキャラとアイテムがガンガン出てくるガチャ結果画面に移行する。

「本物かなぁ」
相変わらず推しを完凸させる気さらさら無いガチャを回しながら、付烏月さんに呟く。
「俺は本物だと思うよん」
付烏月さんは付烏月さんで、コーヒー飲みながら、自分で作ってきたらしいクッキーをぱくり。
「まぁ、アップデートとかメンテとかが来れば、いずれ本物か偽物か分かるんじゃない?」
そうですね(ごもっとも)

「また回しているのか、高葉井」
付烏月さんのクッキーを貰って、私の飴ちゃんを渡して、物々交換完了してたとき、
私と一緒にこの職場に引っこ抜かれてきた先輩が現れた。お茶っ葉を捨てに行ってたみたい。
「残金や生活費とは、よく相談しておけよ」
アレだ。いわゆる冷茶、水出しってやつだ。
雪国出身の先輩は25℃あたりで「暑いな」って言い始めて、ひんやり冷たい冷茶を仕込み始める。

「ほら。1杯」
これが意外とおいしい。お茶の甘さがあって、苦みと渋みが少なくて、飲みやすい。
先輩は、朝から仕込んできたらしいそれを、私と付烏月さんに分けてくれた。

ところで先輩、なにやら手紙をいっぱい持ってるようですが、それなんですか。

「履歴書らしい」
住所と名前を隠して、「履歴書在中」って書かれてるところだけで並べて、先輩は手紙を見せてきた。
「お前の好きなゲーム、『この図書館』がモチーフで、生誕地だと、お前自身言っていただろう。
今回この図書館の制服を着たキャラが実装されたことで、その制服欲しさに、このとおりだ」

で、これからお断りの返信を、私が。
先輩はパソコンに向かって、カタカタ。
「副館長曰く、」
先輩が言った。
「ウチはそもそも、求人自体どこにも出していないし、これ以上職員を増やす気も無いらしい」
それこそ一切、さらさら、その気ナシだとさ。
先輩はそう言うと、文章をコピペして貼り付けて、部数指定してプリントして……

「ちなみに1通、『制服を男女100着買いたい』と、妙な日本語で手紙が来ていたな」
ふっと、ひとつ封筒を引き抜いて、
それだけ、副館長の机に置いた。
あっ(転売)
あ……(成敗)

5/28/2025, 5:19:59 AM

私が勤めてる私立図書館と、私が推してるゲームが、とうとう公式にコラボした。
私立図書館だからか、もっと別の理由からか、
ウチの職場はザ・司書さん、ってカンジの落ち着きカッコいい制服があるんだけど、
その制服を着たメインキャラと、マイナーキャラが、なかなかの性能で新登場。

私が着てる制服を着た食いしん坊のんびりキャラも、私が着てる制服を着た犬耳受付嬢キャラも、
私が着てる以下略、以下略……
ともかく今回は追加キャラが多かったからか、
運営さん、色々気を遣ってくれたらしく、
期間中の有償11連は同じ価格で20連になり、
必ず、有償20連に限り、1日1回だけ、
自分で選んだピックアップが確定で封入されるシステムが、特別に導入された。

ありがとうございます(お布施)
ありがとうございます(ところで:完凸)
でも私の推し2人+1匹を全員完凸させるには、期間中の確定有償だけじゃ足りないんです(悲しみ)

よって、ガチャ初日から石を突っ込むのです。

「うぅ、これで最後、これでッ、最後……!」
昼休憩中、自分のデスクで苦しみながらスマホをタップしたりスワイプしたりする私を、
じーっと、私の先輩は、ジト目で観察してる。
「これでッ、お願いします、お願いします、
お願ッ……ぁあ、あああ、 ああアアアア……!」

今日の確定分を引き終えて、推しの「ルリビタキ」とルリビタキのドラゴン形態と、それから「ツバメ」ってキャラは双方手に入った。
頑張って今日で、双方完凸させたいのだ。
ネットストアで石買って、突っ込んで、つっこんで、それで、何度か回して推しはすり抜けて、何の因果か、新規の全キャラが揃ってしまった。

ちがう、違う。 そうじゃ そうじゃない。
コンプリートじゃない。 完凸をしたい。

「くぅぅうううう……!」
コレデ、何連爆死シタデセウ。「【司書】ドワーフホト:本より団子」のNew!を見て、苦しくて、
気力回復のために今日入手した「【司書】ルリビタキ:読み聞かせのドラゴン」を見て、尊くて。

「ルー部長、るーぶちょう、どうか、チカラを」
最後の11連を、ふるえる人差し指で、まわす。
「これで きょうは さいご 今日はこれで最後」
大丈夫。
すり抜けたって、
低レアキャラで倉庫がパンパンになったって、
私の推しゲーには、再変換システムの、「スフィンクスのこたつ」がある。
そこに低レベルキャラを捨てrゲホゲホ、送り出せば、確率でガチャ石が手に入る。

「どうか どうか せめて」
どうか、せめて、1回は推しを凸したい。
だって推しが、私の職場の制服を着ているのだ……

――――――

…――「で、結局休憩中ガチャを引き続けたのか」
「はい。 はい」

気がついたら昼休憩が終わってて、私はそれを、先輩に肩叩かれてから気付いた。
「だイじょうぶ。ちゃんと、生活費の範囲内デ、石買ってるかラ」
「致命傷なのは分かるが、しっかりしろ」
最終的に何故か「本より団子」の子が2凸してしまって、推しは2人が1凸。

「何故このゲームと私達の職場がコラボを?」
「この図書館が、このゲームの原作の聖地で、生誕地なの。ここをモチーフに生まれた場所があるの」
「はぁ」
「それが、ガチでウチとコラボだよ。ゼッタイ引かなきゃだよ。先輩も、引こうよ」
「そうか」
「うぅ、うぅぅぅ……るーぶちょう……」

これで最後、これでさいご、さいご。
何度も何度も、ネットストアで石買って……
総額は、 みたくない。

「しっかりなさい。来月はボーナスよ〜」
オネェな多古副館長がアイスココアを練って、ミルクを注いで、私に寄越して背中叩いて、
多分、励ましてくれてるんだと、思う。

5/27/2025, 3:16:16 AM

永遠の後輩こと私、高葉井には、名前のトリックを使って元恋人さんから逃げ続けた先輩がいる。
その先輩が使ったトリックのひとつが、「名前の読み方変更」。戸籍に読み仮名が存在しなかったからこそ、可能だった方法だった。

これからどうなるか知らないけど、今までは、自分の名前の読み方を変更するのは簡単だったらしい。
『名前に関しては、漢字の読み仮名変更だ』
旧姓旧名持ちの先輩は、一昨年、
元恋人に見つかった時、私に種明かしをした。

『偽名本名の話じゃない。事実、私の戸籍は今、「藤森 礼」で登録されている。
改姓は説明が長くなるから割愛するが、
名前は「礼」の読みを、
「れい」から、「あき」に変えただけ。
戸籍に読み仮名が書かれていないことを利用した、
複数の自治体で認められている手続きさ』

これから、この「戸籍によみがなが書かれていない」って状況が、変わるらしい。
戸籍の、読み仮名追加だ。
行政から「この読み仮名で合っていますか」って確認のハガキが届いて、それで、
読み仮名が違っていれば、1年以内に届け出して、正しい読み仮名に変更するらしい。

粘着質な元恋人から逃げる前の先輩の旧姓旧名は、
「附子山 礼(ぶしやま れい)」。
珍しい名字だから、どこに逃げたってすぐバレる。
先輩がトリックを使って手に入れた今の名前は、
「藤森 礼(ふじもり あき)」。
先輩は名字と、それから名前の読み方を変えて、所有欲に満ちた元恋人から逃げた。

今はもう、粘着質の元恋人は居ない。
元恋人は完全に先輩を諦めて、地元に戻った。
「藤森 礼」を名乗る必要が無くなった先輩は、
もちろん、さすがに名字を「藤森」から「附子山」に戻すのはバチクソに難しいだろうけれど、
名前は、「礼」の読み仮名は、
先輩、どうするつもりなんだろう。

「私の読み仮名?」
先輩、自分の「礼」の読み仮名どうするの。
「れい」に戻すの。「あき」のままにするの。
昼休憩中の先輩と一緒に昼ご飯を食べてるときに、
私のところに読み仮名確認のハガキが届いたってことにして、それとなく、聞いてみた。

どうするの。戻すの。そのままいくの。
だって、もう、加元のやつ居ないよ。
「藤森」は手放せないかもしれないけど、
「礼」は、「れい」に戻せるかもしれないんだよ。
最後のチャンス、どうするの。

「まぁ、うん、そうだな」
先輩は、「言われてみれば」って顔をして、窓の外を見て、お茶を飲んで。長く息を吐いた。
「そうだな」
先輩は再度、言った。
ぶっちゃけ、先輩は「れい」でも「あき」でも、どっちでも構わないように見えた。
「高葉井。ちょっと、呼んでみてくれないか」

「先輩のこと?」
「そう。私のこと。『れい』と、『あき』とで」

「レイ先輩」
「うん」
「アッキー」
「うん。……うん?」
「だって、私が先輩と会ったときにはもう『あき』だったし。アッキーだったし」
「んん……、……うん」

先輩はまた、お茶を飲む。
「読み仮名変更手続きは、たしか、ハガキが到着した日から1年だ。まだ時間はある」
そうだ。まだ、時間はある。先輩はそう言って、
「そういえば、『れい』の方の私の名前を呼ばせたのは、初めてか?それとも、久しぶりか??」
今更のように、ハッとして、私に行った。

「初めてかもしれない」
私も私で、「附子山」の旧姓は呼んだ記憶があったけど、「れい」の旧名で呼んだ記憶は無かった。
「レイせんぱーい」
今日は、先輩の、君の名前を呼んだ日、その最初の1日だったかも、しれなかった。

5/26/2025, 3:00:20 AM

最近最近のおはなしです。「ここ」ではない、どこか別の世界のおはなしです。
「世界線管理局」という厨二ちっくファンタジーな組織が、いろんな組織の調停役をしておりまして、
その管理局の中には、滅んだ世界の遺物を保管する、収蔵部もありました。

今回のお題回収役は、まさにこの収蔵部の局員。
ビジネスネームを、「ドワーフホト」といいます。

「よーし、総点検、終わりぃ!がんばったー!」
その日のドワーフホトは、自分の担当である収蔵庫ひとつを、6時間かけて大掃除、および総点検。
朝ごはんから、何も食べていません。
完全に、おなかがペコペコです。
「そろそろコンちゃん、来るかなぁ〜」

大きな仕事を成し遂げるにあたって、
収蔵部のドワーフホト、とっておきのご馳走を、たっぷり注文しておりました。
不思議な稲荷子狐が作る、稲荷のご利益たっぷりな、絶品お餅の■種類を■■個ずつ。合計■■個。
お惣菜お餅からスイーツお餅、変わり種なお酒のおつまみお餅まで、どっさり!

ドワーフホトは、美味しいものが大好きなので、
美味しい美味しい、素晴らしい子狐のお餅■■個を、たっぷり、注文したのでした。

「まいど、まいど!」
ほら。アレコレそうこうしている間に、
ガラガラガラ、がらがらがら!
車内販売用サービスワゴンのような手押し車を押して尻尾も振って、稲荷子狐が現れましたよ。
「おねーちゃん、おもち、ちゅーもん、ありがと」

ところでお餅も手押し車もキラキラ綺麗なのに、
コンコン子狐だけ妙に、何故か、随分、
土だらけというか泥まみれというか……ですね?

「わぁ!コンちゃん、どうしたのぉ」
「たのしかった」
「『たのしかった』。じゃなくてぇぇ」

餅売り子狐が言うことには、
ガラガラガラ、がらがらがら、
ドワーフホトの収蔵庫へ向かうとき、座標軸的な近道として、管理局内に存在する難民シェルターを通ってきたらしいのですが、
そこのサラサラ砂地とフカフカ泥土が、あんまり魅力的かつ気持ちよさそうで、
子狐は子狐の本能に従い、ゴロゴロ、ざぶざぶ!
土を掘ったり砂を浴びたり、それはそれは、もう、たいそう楽しく遊んだそうなのです。

「おねーちゃん、おもち、どうぞ!」
コンコン子狐、どろんこで茶色く湿った毛をそのまんまに、ドワーフホトにワゴンを差し出します。
「んんー、お餅の前に、コンちゃん、お風呂ぉ!」

せっかく綺麗に掃除した収蔵庫を、泥んこ足跡で汚されては、たまったものじゃありません!
ドワーフホトは子狐を、やさしく抱いて連れてって、じゃぶん、じゃぶん、しゃらしゃらら!
温かい37℃のお湯の中に、入れてしまいました。

しゃらしゃらら、しゃらしゃらら。
白百合のシャワーヘッドから落ちる優しい雨音は、子狐の泥も土も砂のすべても、
しゃらしゃらら、しゃらしゃらら。
全部ぜんぶ、温かく優しく、流し去ってゆきます。

「あったかい。あったかい」
お湯で泥んこを流してもらって、コンコン子狐は大満足。目も口も閉じて、気持ちよさそうです。
「そのまま、目を閉じててねぇ〜」

しゃぷしゃぷぷ、じゃぶじゃぶじゃぶ。
スズランのシャンプーディスペンサーから3プッシュ、温めたペット用シャンプーを泡立てて、
じゃぶじゃぶじゃぶ、じゃぶじゃぶじゃぶ。
ドワーフホトは子狐を、温かく白い泡まみれにして、まるで雲か子羊のようにしてしまって、
そして、またシャワーの雨音でもって、全部ぜんぶ、洗い流してゆきました。

「よぉし。あとは、ドライヤー」
「やだっ。おっきい音、やだ」
「じゃあタオルドライだぁ」

コンコン子狐は狐なので、大きい音は苦手です。
なのでドワーフホト、ふわふわ優しいタオルでもって、子狐の水滴を全ー部拭いて、
しゅっ、しゅっ。 しゅっ、しゅっ。
流さないトリートメント効果付き、子狐が大好きと言ったペット用稲荷イメージフレグランスを、
かわいらしいフォトンガラスの香水瓶から、
吹いてやって、コームでもって、毛並みも綺麗に整えてやったのでした。

しゅっ、しゅっ。 しゅっ、しゅっ。
香水瓶の霧雨は、優しい雨音となって、コンコン子狐の周囲を包み込んだのでした。
「いいにおい。いいにおい」
「よぉし。コンちゃんのお風呂、終〜わりぃ!」

さぁさぁ、稲荷子狐さん。ご利益ゆたかな美味しいお餅をくださいな。ドワーフホトが幸福に、にっこり、穏やかに笑います。
コンコン、おけしょーのおねーちゃん、ご利益ゆたかなキツネのおもち、どうぞ。子狐が尻尾を振って、お餅を詰めたワゴンを差し出します。
お題を払って、お茶を淹れて、フレグランスを優しく焚いてご褒美タイム。
コンコン子狐とドワーフホトは、もぐもぐ、ちゃむちゃむ、一緒に■■■個のお餅を分け合って、ちょっと遅くなったお昼ご飯を堪能しましたとさ。

5/25/2025, 9:49:42 AM

前回投稿分からの続き物。
最近最近の都内某所、某杉林に隠れるように、不思議な不思議な、大きな建物が建っておって、
それは「この世界」に異世界からの難民を、密航のカタチでもって避難させてきて、彼等の生活をサポートするために作られた支援施設。
通称、「領事館」といいました。

領事館の活動目的は、故郷の世界が滅んでしまった難民たちの支援者として、
まだ生存している世界に彼等を渡し、彼等がそこで生きて逝けるように、支援と助言を為すこと。
そして、彼等が「滅んだ世界からの密航者」であることを、「そういう違法を監視して取り締まっている組織」から守り抜くこと。

領事館は異世界の難民たちのため、生活支援、心理的相談、最初の衣食住の工面、「この世界」と意思疎通するための翻訳機の貸与等々、
あらゆることを、領事館の親組織のお金と資源で支援して、支援して、支援し続けて、なんなら領事館の親組織自体の財政が少々カッツカツなので、
結果として、継続的に、領事館は万年資金不足!

領事館は、カネが無い!!
仕方がないので領事館、彼等の活動資金と余剰金を得るために、アレコレいろいろ、節約やら資金集めやらを、一生懸命やっておるのでした。

で、その資金集めの手段のひとつが、都内の某病院、某狐の漢方医さんのとこでの助手バイトでして。
なにより狐の漢方医さんは、「狐の薬」という妙薬を持ってるもんで、その秘密を難民たちのサポートに、なんとか使えないものかと、虎視眈々……。

で、その漢方医さんのところでバイトをしておったところ、前回投稿分で敵対組織の職員が、
なにやらカフェインに関係する頭痛を主訴に、ひとり、来院してきまして。

(まさか、私達の監視と取り締まりをしてる「例の組織」、ブラック企業だったりする??)
助手バイトに来ていた領事館の職員、「ヒバ」は敵さんの目のクマを見て、推測しました。
だって、酷く疲れた顔をしています。
きっと、組織に酷く、使い潰されているのです。
(わぁ、わぁ。 なんというか、お疲れ様)

領事館も財政難でキッツキツだけれど、
そのキッツキツは、敵対組織の彼等よりは、体力的にも精神的にもマシなのかもしれない。
「彼等」の仕事の奥深くを知らぬヒバは、頭痛を主訴に来院した敵対職員を見て、その末端を知ったような気がしたのでありました。

――「……っていうことが、あったんですがね」
バイト先で敵対組織の職員と出会ったヒバは、
職場の領事館に帰ってきてすぐ、その情報を領事館の同僚と上司に共有しました。
「もしかして『例の組織』、ちょっと高待遇をチラつかせてやれば、ブラックな職場から逃げたくてウチに寝返ったり……しませんかね?」

「ないない。無い」
否定に右手をブンブン振るのは上司の「スギ」。
領事館の、館長さんです。
「アレだ。お前が漢方医の助手としてバイトしてるのを、どこかで聞いて、確認に来たんだろう。
疲れて見えたのも、罠に違いない」
いいか。決して、信じるな。 スギは言いました。

「でも、どこからバレたんでしょうね。ヒバが漢方内科でバイトしてるって情報」
まさか、難民の中に、敵対組織へ情報を売り渡した裏切り者が? ヒバの同僚「アスナロ」が、とんでもないことを言い出しまして、
「どこでしょうね……」
それを否定できないヒバは、ただ首をかっくり。

ここでようやくお題回収。
ヒバとスギとアスナロ3人、あれこれ敵対組織について考察している最中の離れたところでは、
真面目な新人の「アテビ」がふんふん、自動掃除ロボットと空気清浄機を異世界の技術で魔改造合体させた通称「頑張ルン△"」を、
鼻歌を歌いながら、拭き拭き、柔らかいファイバータオルで拭き掃除しておったとさ。

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