前回投稿分からの続き物。
最近最近の都内某所、某杉林に隠れるように、不思議な不思議な、大きな建物が建っておって、
それは「この世界」に異世界からの難民を、密航のカタチでもって避難させてきて、彼等の生活をサポートするために作られた支援施設。
通称、「領事館」といいました。
領事館の活動目的は、故郷の世界が滅んでしまった難民たちの支援者として、
まだ生存している世界に彼等を渡し、彼等がそこで生きて逝けるように、支援と助言を為すこと。
そして、彼等が「滅んだ世界からの密航者」であることを、「そういう違法を監視して取り締まっている組織」から守り抜くこと。
領事館は異世界の難民たちのため、生活支援、心理的相談、最初の衣食住の工面、「この世界」と意思疎通するための翻訳機の貸与等々、
あらゆることを、領事館の親組織のお金と資源で支援して、支援して、支援し続けて、なんなら領事館の親組織自体の財政が少々カッツカツなので、
結果として、継続的に、領事館は万年資金不足!
領事館は、カネが無い!!
仕方がないので領事館、彼等の活動資金と余剰金を得るために、アレコレいろいろ、節約やら資金集めやらを、一生懸命やっておるのでした。
で、その資金集めの手段のひとつが、都内の某病院、某狐の漢方医さんのとこでの助手バイトでして。
なにより狐の漢方医さんは、「狐の薬」という妙薬を持ってるもんで、その秘密を難民たちのサポートに、なんとか使えないものかと、虎視眈々……。
で、その漢方医さんのところでバイトをしておったところ、前回投稿分で敵対組織の職員が、
なにやらカフェインに関係する頭痛を主訴に、ひとり、来院してきまして。
(まさか、私達の監視と取り締まりをしてる「例の組織」、ブラック企業だったりする??)
助手バイトに来ていた領事館の職員、「ヒバ」は敵さんの目のクマを見て、推測しました。
だって、酷く疲れた顔をしています。
きっと、組織に酷く、使い潰されているのです。
(わぁ、わぁ。 なんというか、お疲れ様)
領事館も財政難でキッツキツだけれど、
そのキッツキツは、敵対組織の彼等よりは、体力的にも精神的にもマシなのかもしれない。
「彼等」の仕事の奥深くを知らぬヒバは、頭痛を主訴に来院した敵対職員を見て、その末端を知ったような気がしたのでありました。
――「……っていうことが、あったんですがね」
バイト先で敵対組織の職員と出会ったヒバは、
職場の領事館に帰ってきてすぐ、その情報を領事館の同僚と上司に共有しました。
「もしかして『例の組織』、ちょっと高待遇をチラつかせてやれば、ブラックな職場から逃げたくてウチに寝返ったり……しませんかね?」
「ないない。無い」
否定に右手をブンブン振るのは上司の「スギ」。
領事館の、館長さんです。
「アレだ。お前が漢方医の助手としてバイトしてるのを、どこかで聞いて、確認に来たんだろう。
疲れて見えたのも、罠に違いない」
いいか。決して、信じるな。 スギは言いました。
「でも、どこからバレたんでしょうね。ヒバが漢方内科でバイトしてるって情報」
まさか、難民の中に、敵対組織へ情報を売り渡した裏切り者が? ヒバの同僚「アスナロ」が、とんでもないことを言い出しまして、
「どこでしょうね……」
それを否定できないヒバは、ただ首をかっくり。
ここでようやくお題回収。
ヒバとスギとアスナロ3人、あれこれ敵対組織について考察している最中の離れたところでは、
真面目な新人の「アテビ」がふんふん、自動掃除ロボットと空気清浄機を異世界の技術で魔改造合体させた通称「頑張ルン△"」を、
鼻歌を歌いながら、拭き拭き、柔らかいファイバータオルで拭き掃除しておったとさ。
5/25/2025, 9:49:42 AM