かたいなか

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3/6/2025, 3:00:16 AM

「questionって、問題とか疑いとか名詞の他に、
質問するとか聴くとか、動詞の意味も有るのな」
「I LOVE」、「cute!」、「heart to heart」に「question」。英単語のお題もだいぶ増えてきたものだと某所在住物書きは考える。
英単語は英単語ゆえに、「実はこういう意味もある」が面白いものの、ではそれを物語として書けるかといえば、分からない。

有名どころでは「Turk(トルコ人)」だろう。
十字軍時代由来の歴史が絡んで、Turkは「トルコ人」以外の意外な意味を持った。
詳しくはネットで調べてみよう(丸投げ)

「で、『question』?」
物書きは天井を見上げる。これで何を書けって?

――――――

前回投稿分から、少し時間が戻ります。
最近最近の都内某所、某喫茶店のおはなしです。
本物の魔女のおばあさんが運営している喫茶店は、
本物の魔女の大釜と、本物の魔法のランタンが、
しれっとキッチンや店内に置かれて良い雰囲気。

店内でタロットともオラクルとも違うカードを並べてめくって、もう一度カードを並べてめくって、
結局同じカードが同じ並びで現れるので、
あらあら、まぁまぁ。
長い、少し重いため息を吐いて、首を振りました。
「今年はなにかと、荒れそうねぇ」

「アンゴラ。『伝えたいことがある』と聞いたが」
店主のおばあさんがカードを片付けておると、
チリンチリン、ちりんちりん。
ドアベルが可愛らしい音を鳴らして、「アンゴラ」と呼ばれたおばあさんに、来客を告げました。

この客こそ、前回投稿分の「条志」。
そうです。藤森の部屋で宇曽野とドッタンバッタン喧嘩して、なにやら友情など芽生えてしまっておった、「縄張り意識が高いルリビタキ」です。
条志は魔女のおばあさんの仲間なのでした。

「俺を呼び出して、何の用だ」
早くもお題回収。ルリビタキこと条志が、アンゴラばあさんに「question」を投げました。

「いつもの、おばあちゃんのお節介よ」
カードを揃えて美しいケースに入れて、アンゴラばあさん、条志のquestionに答えます。
「あなたの部屋のお隣さんが、『機構』に目をつけられたみたい。今、機構の下っ端さんが、お隣さんの部屋に不法侵入してるわ」

ほら、ご覧なさい。
アンゴラが大きな水晶玉を持ってきて、条志の前に出すと、水晶玉は4K8K顔負けの画質で、「条志のお隣さん」の部屋を映し出します。

「『機構』の連中だ」
条志はまるで、縄張りを侵害されたルリビタキのように、素早く反応しました。
機構は、条志とアンゴラの組織の敵でした。
「世界多様性機構」と呼ばれる異世界の組織が、
正しくはその下っ端が、
藤森の部屋に勝手に入り込んで、隠しカメラなり盗聴器なり、仕込んでおるのです。
「排除してくる」

「待ちなさい」
喫茶店から出ていこうとする条志を、アンゴラが静かに、穏やかに引き止めます。
「なんだ」
「あなたを喫茶店に呼んだのは、もうひとつ、理由があるわ。藤森から約束を貰ってきてほしいの」

「やくそく??」

「『条志に隠し事や偽証をしないこと』、『酷く悩んだら、必ず相談すること』。
この約束を、必ず、取り付けてきてちょうだい」
藤森から貰ってくる約束だと? 新しいquestionに、条志は眉をひそめます。
藤森と条志は、まだ出会ったばかり。
「3月から同じアパートの隣同士」、
「藤森の復職先と、条志の職場に繋がりがある」、
「藤森に復職を誘った付烏月の上司が上司」
というだけの間柄ですが、
藤森が誠実で、優しい人間であることは、条志の本能として、理解しておったのです。
そんな藤森にわざわざ「条志に偽証するな」と?

「とても、とても大事な約束よ」
アンゴラが条志に念を押します。
「彼はこれから、花を愛する優しい彼ゆえに、とても悩まなければならない運命にあるのよ」
彼のためにも、絶対に、約束を取り付けてきてね。
頼んだわよ、「ルリビタキ部長」。 アンゴラはため息のような微笑で、条志に言いました。

「……行ってくる」
頭にクエスチョンマークを浮かべたままの条志は、それでも藤森の部屋に不法侵入者が居るのは確かなので、足早に喫茶店から出ていきます。

「あっ、それから!ちょっと!」
アンゴラがひとつ、言い忘れたことを叫ぶのも、全然、さっぱり、聞いていません。
「……あぁ。行っちゃったわ」
アンゴラの未来予測では、条志が藤森の部屋の不法侵入者をやっつけた後で、
その藤森の部屋に、合鍵を使って藤森の親友が、「条志が藤森の部屋に不法侵入している状況で」、ガチャリ、入ってくるのです。

不法侵入者だ!藤森の親友がドッタンバッタン!
機構の仲間か?勘違い条志もドッタンバッタン!
「大丈夫かしら……?」
まぁ、たぶん、取っ組み合いになるわよね。
アンゴラは大きな大きなため息を、最後吐いて、
運命を天に任せたとさ。

3/5/2025, 5:03:47 AM

「『物語のお約束』といえば、爆破オチに主人公補正、それから恋愛系に鈍感。
『物語の約束』は、『ノックスの十戒』とか?」
公的文章の約束としては、会話文は「このように。」カギカッコの最後に句点を付けるそうだが、
大抵の現代小説、ライトノベル、雑誌編集等々では最後の句点が省略されがちである。
なんでだろな。某所在住物書きは首を傾けた。

「かく言う俺も、最後の句点は省略してるわな」

ところで物書きは、個人的になるべく正午から午後2時近辺の間で、2000字未満の文章を投稿できるよう、自身に対して約束を課している。
3年前は1000字未満、600字程度だった。
来年には2500字にでもなっているのだろうか?

――――――

「約束」と「お約束」では、意味が変わってくるような気がしないでもない物書きです。
今回はこんなおはなしをご用意しました。

最近最近のおはなしです。都内某所のおはなしです。某アパートの一室の、部屋の主を藤森といいまして、花咲き風邪吹き渡る雪国の出身。
3月から友人の誘いで、前々職の私立図書館に、復職してきたところでした。
その日は復職吹き込んだ友人と、前職でずっと藤森を支えてくれた親友とを招いて、
藤森のお部屋で、お疲れ様会と、これからよろしくお願いします会を、ささやかに開く予定。

いつもコスパと塩分と、糖質とを注意深く確認している藤森が、その日は少しだけハメを外して、
親友と友人が好きなお肉&お魚を、それぞれ、値引きしてない値段で買ってきたのでした。

「付烏月さんの甘い菓子に合うように、甘じょっぱいものと、サッパリしたものを作ろう」
付烏月、ツウキとはつまり、藤森の友人です。
「宇曽野のやつは酒が好きだから、やはり、塩味の効いたやつが良いだろうな」
宇曽野、ウソノとはつまり、藤森の親友です。
「本当に、良い友人に恵まれた。ありがたい」

双方が藤森の部屋に来るまで、あと2時間。
藤森はこの2時間で、美味しい、温かい、良い料理を2〜3品、可能なら5品、作る予定なのです。

少なくともお肉いっぱいの鍋はひとつ出すと、藤森、ふたりに約束しておりました。
シメを雑炊にするか、そうめんにするか、スープを吸わせてスパゲッティーにするか悩みますが、
まぁまぁ、そのへんは、ワイワイ食いながら決めれば良いのです。気にしない。

「そうだ。宇曽野が酒を飲むから……」
宇曽野が酒を飲むから、彼に「部屋に来る前にしじみを買ってこい」と伝えて、彼のための吸い物を作ってやっても、良いかもしれない。
考えながら藤森が、自宅のドアを開けると……?

どたんどたん、バタンバタン!
ドンガラガッシャーン!!
そうです、お約束です。
突拍子も無いことが発生したのです。
ぼっち暮らしの藤森の部屋で、誰かと誰かが取っ組み合いのケンカをしています!!

「なんだ!なんだ!?」
藤森が慌てて、買ってきたお肉も野菜もお魚も玄関に置いて、音がするリビングへ走っていくと、

「くっ、不法侵入者のくせに、なかなかやるな」
「お前こそ。人間にしてはスジがいい。藤森と俺達の敵でなければ、スカウトしているところだ」
あーあー、あーあー。
親友の宇曽野と、それから、3月から隣の部屋に越してきている「条志」と名乗るひとが、
どたんどたん、バタンバタン!
藤森の部屋でなにやら、取っ組み合って、妙な友情まで芽生えていそうではありませんか。

多分宇曽野は合鍵で、藤森の部屋に入ってきたのでしょう。条志の方は知りません。
何らかの方法で、双方部屋で鉢合わせて、
宇曽野は条志を「不法侵入者」と認識し、
条志は宇曽野を「藤森と条志の敵」と見たのです。

どちらも、悪い人ではないのです。
条志も、時折藤森がシェアディナーに誘ってやったり、条志自身がベランダ(……「べらんだ」?)にやって来て、ディナーのお礼を渡したり、
仲間には、本当に優しいのです――縄張り意識の強いヤマドリやルリビタキみたいに。

「条志さん……宇曽野、」
ひとまず、この縄張り喧嘩を止めなければなりません。藤森は大きく息を吸って、室内が防音防振加工されているのを良いことに、
お約束の言葉を、叫びました。
「ステイ!!!」

藤森の声を聞いて、宇曽野も条志もしずまります。
「状況!!」
藤森が腕を組み、また声を張り上げると、
「お前の部屋にこいつが、」
「機構の連中を部屋から追っ払った後、こいつが」
双方が双方で、双方を指差し、言ったとさ。
はてさて、条志が言った「機構」とは……?

3/4/2025, 3:00:03 AM

「桜、雪、手のひら、回避、人名として『ひらりー』、あとは『平理(へいり)』?」
ひらり、ヒラリ、比良裏。
取り敢えず東京は今日、雪がひらりで交通が麻痺。
雪国でない東京では、積雪路面をノーマルタイヤで走行する車が普通にあるので、車がひらり揺れるのを見るのは恐怖も恐怖。
雪国には雪国の、東京には東京の怖さがあるのだ。

「で、『ひらり』だって……?」
某所在住物書きは首を傾ける。
桜はまだ少ない。何をヒラリさせよう?

――――――

月曜日の休館日を挟んで、私、後輩こと高葉井の図書館勤務2週目が始まった。
今年3月1日から転職して、まだ3日目だから、ぶっちゃけ仕事内容の全部は把握できてない。

開館時間外に返却された本とかを戻す作業は、まだどこにどんな本があるか分かってないし、
(背表紙に付いてる459.7とか489.48を見れば分かるらしい)
貸出とかの受付業務は、「まだやらなくて良いわよ」って、オネェな多古副館長から言われた。
(1日目と2日目はほぼほぼ館内の案内と多古副館長とのおしゃべりで終わっちゃった)

で、月曜日の休館日を挟んで、3日目。
そろそろ何か、掃除のひとつでも良いから仕事を任せてほしいと思ってたら、
「こうはい。高葉井」
私と一緒に、3月にこの図書館に転職してきた(というか、先輩の場合は「復職」が正しいけれど、ともかく)前職の先輩、藤森先輩が、
「副館長から、お前に本の装備作業を見せるよう言われた。ついてきてくれ」

なんか、100均に売ってそうな箱と、
何重、何十重にもロールされてる、大きな紙?白地に赤い線の1cm感覚くらいな方眼紙?
と、それから何冊もの本を抱えて、
私の机に、やって来た。

先輩。せんぱい。
ほんの そうび って なんですか(初心者)

「装備とは、図書館に来たばかりの本に、バーコードを貼ったりラベルを付けたり等々して、
来館者が借りたり読んだり、利用できるように、本を整える作業のことだ」
ほら、行くぞ。 先輩は私を、図書館職員用の「第一作業室」とかいう部屋に連れてった。
なにか、いろいろ、カッターなりハサミなり、定規なりボンドなり、道具箱がキレイに並べられてて、
大きな机はホコリがひとつも落ちてない。

「ホコリ?そりゃそうだ」
テーブルのひとつに先輩が、持ってきた本とロールと等々を置いて、私に言った。
「ホコリが多い場所で、本にフィルムコートなど、とてもとても。かけられない」

先輩。せんぱい。
フィルムコートを、高葉井、知りません。

「高葉井。おまえ、図書館の本を借りたことは」
「ある」
「市販の本と違って、スベスベしていたり、特殊なフィルムで覆われていたり、しているだろう」
「してる」
「それがフィルムコートだ。
これからそのフィルムコートを、この本にかける」

シャッ、シャッ、シャキ!
「本の本体に関しては、カバーを少し切ったり、下準備は既に終わらせてある」
持ってきたロールを少し広げて、所定の長さで断ち切る先輩の所作は、まるで布生地のロールを必要分だけ裁断する手芸屋さん。
「ここから、本それぞれの大きさに分けていく」
ロールから切り取られた大きな長方形は、
シャキッ、シャキ。
2回、ハサミを入れられて、同じ大きさに3等分。
だいたい、持ってきた本1冊を、余裕もってぐるり包み込むくらいの大きさになった。

「さぁ、フィルムコートがけだ」
ふわり。 3等分された紙生地が、あらためて、腕まくりした先輩の横に置かれる。
「今日は、見ているだけでいい」
1枚を目の前に移動させて、長方形の短い1辺に2センチくらいの折り目をつけて、
長い1辺にも同様の折り目を少し付けると、

「これを、こうして、こうだ」
先輩は、SNSでよく見ることを言って、
紙生地をカリカリすると、
紙生地から透明な、シールみたいなフィルムみたいな、何か分からないシートが、
剥離して、
それを1冊の本にあてがって、
定規みたいなので押し付けて……

要するに、それを、そうして、そうなった
(訳:先輩が何をどうやったかよく分かんない)

「手貼りのラミネートをする際、気泡防止に、定規を使ってやる方法があるだろう?」
先輩それ何がどうなったの。 私の質問をひらりパリィして、先輩は作業を進める。
「アレを、本でやるようなものだ。
さっきフィルムを折ったのは、本に正確に、ズレないように、ラミネートするためさ」
これをするために、剥離紙の方が1cm間隔の方眼紙になっているんだ。
先輩はそう言って、本を覆ったフィルムにハサミを入れたり、本からキレイに2cmずつはみ出してるフィルムを本に折り込んだりしてる。

「これで、コートがけは終了だ」
1冊あたり、だいたい10分。
私にはそれが、遅いのか早いのか、分からない。
「まぁ、遅い方ではあるだろうさ」
全部のフィルムが本にくっついて、図書館でよく見る見た目の本になって、はい、次。2冊目。
「ひとまず、今日『は』、見ていれば良い」
先輩が言った。
まさかコレ、私、明日、やるの……??

3/3/2025, 3:00:05 AM

「『誰、カシラ?』とかにしたら、なんかの盗賊のほっこりなハナシとか、書けるんかな」
かしら、カシラ、頭。俺が最近覚えた鶏肉の部位はカシラじゃなくてセセリだった。
某所在住物書きはお題の「かしら?」を何か別の言葉にできないかと、予測変換しては焼き鳥の「カシラ」を思い出して、塩とタレの間で悶絶している。

焼き鳥をポン酢で食う地域があるという。
それはそれはサッパリしており、食欲も増進され、食うに飽きないと聞いた。
教えてくれた数年前のソシャゲの仲間とは、リアルで会ったことがない。誰であったのかしら……?

――――――

前回投稿分からの続き物。
「ここ」ではないどこかの世界に、「世界線管理局」という厨二ふぁんたじーな組織がありまして、
そこには滅んだ世界からこぼれ落ちた物品を回収して、他所に悪さをせぬよう収蔵するための、
収蔵部という、博物館のような部署がありました。

収蔵部は過去を保存し、活用するための部署。
滅んだ世界から収容してきたアイテムは、
敬意の有無はどうであれ、すべて最適な方法で、保存されたり活用されたりしなければなりません。

火力発電所1基分の電力をまかなえるアイテムで、豆電球たった1個を光らせるのは、
完全に、その世界とアイテムへの冒涜も同然。
収蔵部の局員は、配属されてすぐ、この信念と心構えをを叩き込まれるのです。

で、前回投稿分のおはなしで、
空間管理課がまさしく、火力発電所1基分の電力をまかなえるアイテムで、豆電球たった1個を光らせるような使い方をしていたことが発覚しまして。
奥多摩出身の局員、通称「奥多摩くん」が、
空間管理課の収蔵品を一斉チェックしたのでした。

カタタタタ、かたたたた。
お掃除ロボットの電源を、無尽蔵ドチャクソ高性能高価電力供給結晶(要約)のオリジナルから、
それを複製してダウングレードした普通性能低価格電力供給結晶(要約)のイミテーションへ。
オリジナルを収蔵部に戻し、代わりのイミテーションを収蔵部から借用するための書類を作ります。

カタタタタ、かたたたた。
新しい空間を作り出す、保存空間発生装置のセキュリティーも、人間と空間と時間を結びつけて記録する地デジ未対応水晶(要約)のオリジナルから、
それを複製してダウングレードした、一応能力の種類だけは一緒な水晶(要約)のレプリカへ。
オリジナルを収蔵部に戻し、代わりのレプリカを収蔵部から借用するための書類を作ります。

あれもスーパーオーバースペック、それも超過剰オーバースペック。ああもう、ああもう。
それとこれが収蔵部に戻れば、戻った収蔵品を、他の適切な場所に活用することができる。
奥多摩くんは定時で戻らず、夜も眠らず、
環境整備部が使っている収蔵品をチェックして、修正して、修正分の書類を作り続けました。
「あと3枚……あとさんまいだ、もうすぐ、もうちょっとで、ぜんぶ、おわる」

ここでようやく、お題回収。
真夜中まで環境整備部のオフィスに残って、カタカタ書類を作り続けている奥多摩くんの肩を、
ぽん、ポン。優しく、叩く者がありました。
誰かしら?

「あたしだよぉ、ドワーフホトだよー……」
それは、奥多摩くんの以前の同僚でした。
「あのねぇ、環境整備部で、収蔵品が適切に使われてないのは、よく分かったからぁ、
一気に徹夜で何枚も〜なんまいもぉ、申請書と返却届とアレとソレ、送ってこないでよぉぉ……」

そうです。奥多摩くんが徹夜して、書類を作って収蔵部に送った先で、
収蔵部で書類をさばく仕事もしているドワーフホトが、「この書類誰かしら?」「そろそろ終わるかしら?」「まだ届くのかしら?」と、
ずっと、ずーっと、夜中まで奥多摩くんの書類を処理し続けておったのです!!

「やすもうよ、奥多摩くん」
ヒロウコンパイ、眠気最大値のドワーフホトが、
プカプカ心だか魂だかを口から浮かべて同じく疲労困憊な奥多摩くんに、言いました。
「これ以上は体調崩しちゃう。休もうよぉ……!」
その声は必死で、一生懸命で、
奥多摩くんの精神もそうですが、ドワーフホト自身の体力も、限界に来ていることを、
確実に、切実に、訴えておりました。

「ねぇ、残りは寝て、起きてからでさぁ、
やすもぅ、ね、休もうよぉ!」
「あと3枚、あと3枚なんだ、3枚だけ終われば、俺は休むから。それに俺、まだ大丈夫だから」
「大丈夫ってさぁ!口から大事なものプカプカ浮かべて言う言葉じゃないよ!倒れちゃうよぉ!」

休みなさい、 いや大丈夫。
押し問答の繰り返しは続きに続いて、管理局はそろそろ、あと1〜2時間くらいで、朝を迎えます。
はてさて、先に眠気に負けて音を上げて、押し問答から下りたのは、2人のうち誰かしら……?

3/2/2025, 9:13:42 AM

今回は「――――――」の上、前座ナシでの投稿です。

別部署から異動してきたことで、気付く改善点、
もとい、知恵の芽吹きのときに立ち会うことって、
まぁまぁ、一応、あると思います。
たとえばピアノを昔から弾いていた関係で、タイピングが速いとか(※個人の感想です)
あるいはギルド戦がメインのゲームで軍師やデバッファーのジョブをよく使うため、仲間をやんわり説得するのが少し得意とか(※以下略)

今回のお題は「芽吹きのとき」らしいので、そういう異動系のおはなしをご用意しました。

「ここ」ではないどこかの世界のおはなしです。
「世界線管理局」なる厨二ふぁんたじー組織がありまして、今回のお題回収役は、収蔵部収蔵課から環境整備部空間管理課へ異動してきたばっかり。

お題回収役は「こちら」の世界の奥多摩出身なので、仮に「奥多摩くん」としておきましょう。

簡単に言えば、管理局内のドアを修理したり部屋を増築したりを一手に引き受ける部署へ、
今まで博物館の収蔵品を研究したりレプリカを作ったりしていた局員が、異動してきたようなもの。
完全に異業種です。
それでも上の偉い人が、「行きなさい」といえば、下っ端は行かねばならぬのです。
しゃーない(諦めが芽吹きのとき)

さて。
「そういえば、環境整備部に管理者を変更した収蔵品って、どういうふうに使われてるんだ」
元々、管理局の貴重品とも言える「収蔵品」、
つまり「滅びた世界」から収集したチートアイテムの管理を仕事にしていた奥多摩くんです。
チートアイテムが適切に、倫理的に、効率よく使われているか、保存されているか、チェックするのが奥多摩くんの仕事でした。
「環境整備部といえば、『これのオリジナル借りてくぜ、永遠にな!』で有名な部署だけど」

今は環境整備部所属の奥多摩くん、
管理局の修繕箇所や空きスペースの利用申請・拡張空間作成申請を、気にすべき立場ですが、
ついつい、収蔵部時代の目線で、部署内をチェックしてしまうのです。

「どれ。収蔵品適正利用チェックでも、するか」
どうせ、異動してきたばっかりで、まともな仕事を任せてもらえないのです。
奥多摩くんは奥多摩くんとして、確実にできる仕事をすることにしました。

「収蔵品適正利用チェック?」
環境整備部の先輩、ビジネスネーム「キリン」さんが、妙にイケボな声で聞いてきます。

「適正な装置に、適正なレベルのアイテムを使ってますか、ってチェックですよ」
奥多摩くん、分かりやすく説明しました。
「レベル1のスライム倒すためだけに、レベル99の装備をリースして使ってませんか、みたいな」

「すまない、逆に分からん」
「豆電球1個付けるのに、火力発電所1基分の電力作れるチートアイテムを使ってませんかって」
「なるほど」

キリンさんからの許可も貰ったので、奥多摩さん、さっそく環境整備部で使われているチートアイテムのチェックを始めました。
「どれどれ。まず、環境管理部が今所有している、チートアイテムのリストは、と……」

すると、まさしくお題回収、「芽吹きのとき」!
元収蔵部の奥多摩くん、新しい部署の環境整備部で、収蔵品管理の才能が芽吹いたのです!
「おいおいおいちょっとぉぉ!!」

元収蔵部の奥多摩くん、環境整備部が管理する収蔵品について、気付いてしまいました。
環境整備部はまさしく、「豆電球1個付けるのに、火力発電所1基分の電力作れるチートアイテムを使って」いたのです!

「イケボ先輩、じゃなくて、キリン先輩!
なんでたかがフロア掃除ロボットに電力供給結晶のオリジナルなんて使ってるんスか!!」
「え?必要だからじゃないか?」
「掃除ロボットの電力に組み込むなら!わざわざ供給電力無限のチートじゃなくても良いでしょ!」
「それもそうか」

「管理局の収蔵品は、滅んだ世界の思い出なんですから!ちゃんと適切な場所に使ってください!
しかも掃除ロボットだけじゃなく、管理局内の簡易警備人形と、その同期装置と、ごみ収集人形までオーバースペック状態じゃないですか!」
「そうなのか?」
「『そうなのか?』って!あのですねぇ!!」

ああもう、あああもう!!
俺!ちょっと「芽吹いて」良いですか!
元収蔵課の奥多摩さんが、移動先の部署の収蔵品を、全部サーチしてチェックして、
オーバースペックは適正スペックに、
レプリカやイミテーションでも問題無い収蔵品はレプリカやイミテーションに。

せっせ、せっせと取り替えて、「環境整備部が保有していたチートアイテムのオリジナル」を、
6割、7割、収蔵部の管理に戻していきます。

「奥多摩くん。これで仮に、機械や人形に不具合が出たら、どうするつもりだ」
「でません!」
「だから、『仮に』だ。どうするつもりだ」
「そのときは!改めてチートアイテムの専有申請を収蔵部に出してください!!」

元収蔵部の奥多摩くん、元収蔵部系空間管理課局員として、芽吹きのときです。
奥多摩くんが来てから色々、環境整備部内のチートアイテムがダウングレードしたものの、
不具合はひとつも、確認されませんでしたとさ。

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