かたいなか

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「questionって、問題とか疑いとか名詞の他に、
質問するとか聴くとか、動詞の意味も有るのな」
「I LOVE」、「cute!」、「heart to heart」に「question」。英単語のお題もだいぶ増えてきたものだと某所在住物書きは考える。
英単語は英単語ゆえに、「実はこういう意味もある」が面白いものの、ではそれを物語として書けるかといえば、分からない。

有名どころでは「Turk(トルコ人)」だろう。
十字軍時代由来の歴史が絡んで、Turkは「トルコ人」以外の意外な意味を持った。
詳しくはネットで調べてみよう(丸投げ)

「で、『question』?」
物書きは天井を見上げる。これで何を書けって?

――――――

前回投稿分から、少し時間が戻ります。
最近最近の都内某所、某喫茶店のおはなしです。
本物の魔女のおばあさんが運営している喫茶店は、
本物の魔女の大釜と、本物の魔法のランタンが、
しれっとキッチンや店内に置かれて良い雰囲気。

店内でタロットともオラクルとも違うカードを並べてめくって、もう一度カードを並べてめくって、
結局同じカードが同じ並びで現れるので、
あらあら、まぁまぁ。
長い、少し重いため息を吐いて、首を振りました。
「今年はなにかと、荒れそうねぇ」

「アンゴラ。『伝えたいことがある』と聞いたが」
店主のおばあさんがカードを片付けておると、
チリンチリン、ちりんちりん。
ドアベルが可愛らしい音を鳴らして、「アンゴラ」と呼ばれたおばあさんに、来客を告げました。

この客こそ、前回投稿分の「条志」。
そうです。藤森の部屋で宇曽野とドッタンバッタン喧嘩して、なにやら友情など芽生えてしまっておった、「縄張り意識が高いルリビタキ」です。
条志は魔女のおばあさんの仲間なのでした。

「俺を呼び出して、何の用だ」
早くもお題回収。ルリビタキこと条志が、アンゴラばあさんに「question」を投げました。

「いつもの、おばあちゃんのお節介よ」
カードを揃えて美しいケースに入れて、アンゴラばあさん、条志のquestionに答えます。
「あなたの部屋のお隣さんが、『機構』に目をつけられたみたい。今、機構の下っ端さんが、お隣さんの部屋に不法侵入してるわ」

ほら、ご覧なさい。
アンゴラが大きな水晶玉を持ってきて、条志の前に出すと、水晶玉は4K8K顔負けの画質で、「条志のお隣さん」の部屋を映し出します。

「『機構』の連中だ」
条志はまるで、縄張りを侵害されたルリビタキのように、素早く反応しました。
機構は、条志とアンゴラの組織の敵でした。
「世界多様性機構」と呼ばれる異世界の組織が、
正しくはその下っ端が、
藤森の部屋に勝手に入り込んで、隠しカメラなり盗聴器なり、仕込んでおるのです。
「排除してくる」

「待ちなさい」
喫茶店から出ていこうとする条志を、アンゴラが静かに、穏やかに引き止めます。
「なんだ」
「あなたを喫茶店に呼んだのは、もうひとつ、理由があるわ。藤森から約束を貰ってきてほしいの」

「やくそく??」

「『条志に隠し事や偽証をしないこと』、『酷く悩んだら、必ず相談すること』。
この約束を、必ず、取り付けてきてちょうだい」
藤森から貰ってくる約束だと? 新しいquestionに、条志は眉をひそめます。
藤森と条志は、まだ出会ったばかり。
「3月から同じアパートの隣同士」、
「藤森の復職先と、条志の職場に繋がりがある」、
「藤森に復職を誘った付烏月の上司が上司」
というだけの間柄ですが、
藤森が誠実で、優しい人間であることは、条志の本能として、理解しておったのです。
そんな藤森にわざわざ「条志に偽証するな」と?

「とても、とても大事な約束よ」
アンゴラが条志に念を押します。
「彼はこれから、花を愛する優しい彼ゆえに、とても悩まなければならない運命にあるのよ」
彼のためにも、絶対に、約束を取り付けてきてね。
頼んだわよ、「ルリビタキ部長」。 アンゴラはため息のような微笑で、条志に言いました。

「……行ってくる」
頭にクエスチョンマークを浮かべたままの条志は、それでも藤森の部屋に不法侵入者が居るのは確かなので、足早に喫茶店から出ていきます。

「あっ、それから!ちょっと!」
アンゴラがひとつ、言い忘れたことを叫ぶのも、全然、さっぱり、聞いていません。
「……あぁ。行っちゃったわ」
アンゴラの未来予測では、条志が藤森の部屋の不法侵入者をやっつけた後で、
その藤森の部屋に、合鍵を使って藤森の親友が、「条志が藤森の部屋に不法侵入している状況で」、ガチャリ、入ってくるのです。

不法侵入者だ!藤森の親友がドッタンバッタン!
機構の仲間か?勘違い条志もドッタンバッタン!
「大丈夫かしら……?」
まぁ、たぶん、取っ組み合いになるわよね。
アンゴラは大きな大きなため息を、最後吐いて、
運命を天に任せたとさ。

3/6/2025, 3:00:16 AM