「『きらめき』ってお題なら、9月に書いた」
「あの神様」は命の、「輝き」じゃなくてたしか「きらめき」だっけ?「輝き」で合ってた?
某所在住物書きはネット検索をして、目当てのものが出てこなくて、すぐに後者だと気付いた。
そうか。「輝き」だったらしい。
つまり某万博のネタが書ける――多分。
「無難なところでは、猫の目の輝きかな??
ほら、暗いところで猫にフラッシュたくと、猫の目が瞳の色に輝く、っていう」
ところで、「きらめき」と「輝き」には、いちおう、違いがあるらしい。
前者はキラキラ光っていること、飾り立てていること、華やかで人目をひくこと。
後者は、明るさが満ち溢れていることだという。
――――――
LEDの輝き、金銀の輝き、海の輝きに命の輝き。
「かがやき」には色々あるものです。
電気不足、サビや指紋、天候不良に心の不調。
それが失われる要因も、色々あるものです。
今回はひとつ、厨二ふぁんたじーな「輝き」のおはなしを、ご用意しました。
「ここ」ではないどこかの世界に、「世界線管理局」なる厨二ふぁんたじー組織がありまして、
その世界が「その世界」で在り続けられるように、他の世界からの過度な干渉・過剰な移民の流入を、取り締まっておったのでした。
ところで、こういう組織には、だいたい珍妙な開発と発明ができる天才エンジニアさんが、だいたいひとり、あるいは1チーム、居るものでして。
勿論この管理局にも、いるのでした。
「その『だいたいひとり』が!この俺様。
管理局経理部のスフィンクス様だ。
今回は俺様の傑作コタツ、『Ko-Ta2』のコンパクトな持ち運び可能機、『Ko-Ta4試作機』の、
第●●回、テスト稼働をしていくぜぇ」
ところでこのスフィンクス、こんな口調で女性とのウワサ。まぁまぁ、気にしない気にしない。
「たかがコタツが、なんで傑作ってさ。
この『Ko-Ta2』も『Ko-Ta4』も、スイッチ押せば、ミカンが勝手に出てくるワケよ。
出てくるんだけどさ。
試作機の『Ko-Ta4』の挙動が、うん……」
さて、そろそろお題回収です。
「Ko-Ta2は問題ねぇのよ。
ちゃんと、コタツの上に、ミカンが出てくんの」
問題は試作機の方よ。
天才技術者スフィンクス、持ち運び可能なコタツのKo-Ta4を、広げて準備して、ミカン1個目の材料をコタツにブチ込んで、スイッチをポン!
Ko-Ta4の動きを観察します。
うぃんうぃん、ウィンウィン、Ko-Ta4が材料の取り込みを終えますと、Ko-Ta4の机の上がポン!
輝きまして、出現したのが、
ミカンはミカンなのでしょうけど……
「ほら。Ko-Ta4は、妙な挙動をするワケ」
なんと出現したミカンは、背中にキュウリを背負っておったのです。
「いや、キュウリ……??」
失敗、しっぱい。 キュウリを冷やしキュウリにして、お味噌など付けてコリコリしながら、
天才スフィンクス、次の実験です。
「ひとまず軽い調整はしてみた」
うぃんうぃん、ウィンウィン、Ko-Ta4が2個目の材料を取り込んで、準備完了したので、
天才技術者スフィンクスが、スイッチをポン!
またもやKo-Ta4の机の上が輝きまして、
今度こそ、ちゃんとしたミカンが……??
「いやいやいや。え??」
なんと今度は、コタツの机の上に出てきたのは、
ミカンはミカンでも、キンキンに、シャーベットのように凍ったミカンだったのです!
「Ko-Ta2のコタツでは、スイッチ入れりゃ、普通のミカンが普通の温度で出てくるんだけどな」
失敗、しっぱい。 ミカンシャーベットをガリガリ削って、ちょっとお酒に浮かべながら、
天才スフィンクス、最後の実験です。
「え?このコタツの、ミカンの材料?
野暮なことは聞いちゃいけねぇよ」
うぃんうぃん、ウィンウィン、Ko-Ta4が最後の材料を取り込んで、準備完了です。
今度こそ、ちゃんとしたミカンよ、出てこい!
天才技術者スフィンクスが、スイッチをポン!
そしてKo-Ta4の机の上が輝きまして、
最後に出てきたミカンが……??
「……うん知ってた」
最後の最後に出てきたのは、
ミカンはミカンでも、あんこミカン!
そうです。これを大福の生地で包めば、みかん大福が爆誕するのです。
「なんでKo-Ta2は普通のミカンが出てくるのに、
Ko-Ta4に限って、こうなるんだろな……」
原因が分からない天才技術者スフィンクス、大きなため息ひとつ吐いて、食いしん坊な同僚に連絡です。
「よぅ。ヒマ? あんこミカンとミカンシャーベットが爆誕しちまってさ。一緒に食わね?
アイスでも持ってこいよ。ゼッタイ合うから」
失敗、しっぱい。 自分の頭を掻きながら、天才スフィンクス、再度ため息を吐きました。
試作機のKo-Ta4は、まだうぃんうぃん、ミカン製造の輝きを放っておったとさ。
「原作読んだり観たりしたことないけど、そのネタだけは知ってる。……結構多いと思うんよ」
たとえばそれこそ、「時よ止まれ」の漫画とか。
某所在住物書きはネットで某漫画を検索しながら、今回配信分に何で立ち向かうか画策していた。
時間が止まればどれだけ助かることか。
「『メンテが終わればメンテが始まる』の元ネタも、読んだことは無いが原作の名前も絵も知ってるし。
『だったら漕げばいいだろ!』なんて、語録大量に覚えてるが本編観たことねぇし。……あと他は?」
ところで昔々、20年以上前、海外ゲームの映画化において、「もし時間が止まったら」を簡潔かつ短時間だけ描写した場面があった。
空間内に静止している物体は、力が加わるまで静止し続ける。慣性の法則という。
時間内に静止しているナイフに対して、「同じ『時間の力』が加わるまで静止し続ける」とした。
ひょっとしたら「時間よ止まれ」は「物体よ止まれ」であり、「空間よ凍りつけ」かもしれない。
――――――
私、後輩こと高葉井は、2月末をもって今のブラックな職場を退職して、
3月1日から推しゲーの聖地にして生誕の地、都内の某図書館に転職するんだけど、
転職に誘ってくれた元同僚にして3月からの先輩の付烏月さん、ツウキさんは、
この図書館で、二度目の恋をして、ソッコーでフラれて、今ではメシ友以上恋人未満の関係らしい。
最初の恋人はどうだったの?
って、聞いたことがある。
そっちは両思いだったそうだ。
『両思いだったけど、敵対組織の悪いひとにカノジョが目を付けられて、さらわれちゃって、
助け出してからお互いがお互いのためを考え過ぎちゃって、そのせいでお互い「大嫌い」って嘘ついて、別れちゃったんだよーん』
とか言ってたから、要約すると「別れた結果はナイショ」なんだと思う。
『元カノさん元気にしてる?』
『だから、メシ友以上恋人未満』
『それは二度目のカノジョさんでしょ?』
『うん』
『え?』
『うん』
そんなこんなのハナシをしてた付烏月さんは、
どうやら、私の推しゲーの、推しカプの右の人に酷く似てる神レイヤーさんと、お知り合いらしい。
そのひとはなんと、私の推しゲーの聖地にして生誕の地、要は私が3月からお世話になる図書館に、
レアエンカウントな確率で、来るそうだ。
個人的にすごくお近づきになりたいから、
付烏月さんにワイロを渡して、是非会いたいと、伝えてもらった。
今日は、あわよくばその神レイヤーさんと会えたらの期待を寄せつつ、「あくまでそっちはサブの目的というつもりで」、
3月からお世話になる予定の図書館に、お世話になりますの挨拶をするため、
菓子箱を持って、某図書館に、行ったものの、
「マジかぁ……」
図書館って、月曜日は、休館らしい。
「付烏月さん、『月曜日にアポ無しで図書館に行ってみな』って言ったじゃん。いったじゃん……」
どんより曇り空のなか、気分下がり気味なのを頑張って、外に出てきて図書館まで来たのに、
見事に、付烏月さんにダマされたらしい。
玄関には休館日の看板。それから、利用時間外の返却はコチラみたいな矢印と案内板。
「……明日、ちゃんと連絡入れよっと」
グルチャの付烏月さんにぷんぷん、怒りマークのスタンプと、「騙したなッ!」のスタンプ送って、
秒で既読が付いたのを確認してから、
来た道を戻ろうとしたら、
「ん?」
すぐ、付烏月さんから返信が来た。
『図書館の中庭見てごらん』
「なかにわ??」
玄関から、少し歩く。
本館の一般第一開架書庫が見えてくる。
紫外線対策が為されたガラス張りで、無人のテーブルと大きい本棚が見える。
「なかにわ、」
テーブルの先が、中庭だ。
それは一般第一開架書庫と、一般第二開架書庫と、一般第三開架書庫を繋ぐように作られていて、
キレイな自然と、キレイなベンチがある。
休館日の図書館の、中庭のベンチに誰か居る。
男の人だ。読んでいた本を閉じて、大きなため息を吐いて、私に背を向けて遠くへ歩いていく。
「ひっ!!」
そこで一気に、一瞬で、私の血圧が上がった。
変な声も出た。悲鳴だったと思う。
「ル部長……ルリビタキ部長だ!!」
私から離れていくその人は、まさしく、どこからどう見ても、私の推しゲーの推しカプの、右の人にそっくりだった。完全に、その人そのものだった。
「待って、待って」
スマホで動画撮りたいけど会ってお話したいけどそもそも休館中の図書館にどうやって入れば良いんだろうで、私の頭が混乱している間に、
推しカプの右によく似た人は、私から離れていく。
「おねがい、まって……!」
ああ、時間よ止まれ。ガチでとまれ。
私の高血圧と脈拍上昇も知らず、休館中の図書館の中庭に現れたその人は、私の視界から消えた。
あとで付烏月さんに聞いたら、
その人こそ、私が「会いたい」って付烏月さんに頼み込んだ、「高葉井ちゃん曰く『ルブチョの神レイヤーさん』」、だったそうだ。
「『君の目を見つめると』、『君の奏でる音楽』、『突然の君の訪問』に『君の背中』。
……まだお題になってないのは、あと何だ?
君の仕草と君の書く文章と、君の……料理?」
去年の2月は「君は今」なんてお題を書いた。某所在住物書きは過去投稿分を振り返る。
「君」から始まるお題は、少々のアレンジが可能だ。文字を追加すれば「太郎君の声」にも「主君の声」にも、なんなら「太上老君の声」にもなる。
ところで日本には「君島」や「大君」、「下村君」といった地名も存在する模様。
「志君の声がする」。なんと地域ライクな物語だろう。朝ドラのタイトルにできるかもしれない。
「『君の声』ねぇ……」
――――――
だいたい食い物のハナシやら、厨二ふぁんたじーな物語やらを投稿しているこのアカウントです。
「書く習慣」は恋愛風のお題が多く登場するので(例:「Love you」「イブの夜」「愛言葉」)、
おノロケ執筆不得意な物書きが、ちょっとロマンスなおはなしをご用意しました。
前回投稿分に、繋がらないでもないおはなし。
都内某所のおはなしです。
十数年前の東京には、既に「こっち」の世界のものではない異世界由来の巨大組織が、
少なくとも2個は、確実に潜り込んでおりました。
ひとつは「こっち」の世界の独自性と独立性を保全保護したい「世界線管理局」、
もうひとつは、「こっち」の世界を滅亡世界の難民受け入れ先にしたい「世界多様性機構」といい、
双方が双方、相手の思想信条に対して、そっぽを向いた仕事をしておるので、
特に多様性機構は、管理局に対して、それはそれは敵意むき出しで、威嚇などするのでした。
さて。そろそろお題回収といきましょう。
お題回収役は、前回投稿分でも登場した、付烏月、ツウキという男。
実はこの男、「世界管理局」の局員でして、ビジネスネームを「カラス」といいました。
カラスは当時、管理局に就職してからまだまだ数年の、ひよっこカラス。
相手の表情と仕草を観察して、脳科学の知識でもって、敵から情報を手に入れるスキル1本で、
スゴ腕主任として、活躍しておったのでした。
ひよっこ主任のカラス、管理局に潜入してきたスパイに、目的と仲間の数を聞きます。
「へッ、誰が管理局なんかに情報を渡すかよ」
あぁ、あぁ。スパイさん。君の声がする。
君の左右非対称な平静と恐怖の表情から、「俺、実は新人なんです」と声がする。
ひよっこ主任のカラス、管理局で一緒に仕事をしている裏切り局員にも、計画と本心を聞きます。
「いやいやそんな、裏切りなんて。考えてないよ」
あぁ、あぁ。管理局員さん。君の声がする。
君の首筋をさすったり喉元を触ったりする指から、「僕、すごく不安なんです」と声がする。
表情と仕草の分析が得意なひよっこカラスは、
たちまちのうちに、敵対組織の「世界多様性機構」が、近いうちに「世界線管理局」へ、大規模襲撃を仕掛ける予定であると、情報を掴みました。
ところでそんな、ハイスペックひよっこカラス、
実は都内某所在住の現地住民な女性ひとりに、ポッと一目惚れしておりまして。
どうにもこうにも、無責任にも、恋い焦がれてしまっておったのです。
何故「無責任」って?そりゃもう、少し考えれば簡単なことです。
ひよっこカラスはじめ、世界線管理局の局員は、世界多様性機構から嫌われておるのです。
そんな男性局員が、暴力に対抗する手段も知らない女性に、無責任に恋焦がれてしまったら、
その女性は、かわいそうに、敵対組織から見れば格好の誘拐対象になってしまうのです。
なのに、ひよっこカラスときたら、そんなこと全然考えもせず、対策すらせず、
カァカァクァークァー、愛の歌を鳴くのです。
「今日はあのコに、何をプレゼントしよっかな」
あぁ、あぁ。愛しい人。君の声がする。
記憶の中のあの瞳から、あの唇から、「私、あなたの全部理詰めな行動が少し怖いけど、それを含めて一緒に居たいの」と声がする。
「それとも、どこかで一緒に、お食事がいいかな」
恋に盲目なひよっこカラスは、「この後」に何が待ち受けているかも予想せず、
ただ幸福に、一途に、「君の声」がする方へ、飛んでゆくのでした……
「14日投稿分の段階で『よし、15日投稿分はこうしよう』って決めてたのに、
まさかよりによって、18時投稿になるとはな」
12月頃に「ありがとう、さようなら」ってお題を書いたわな。某所在住物書きは時計を見ながら、
次のお題が残り40分で配信される事実に、大きなため息を吐いた。
書いては消し、消しては書いて、メシを食ってアイデアが詰まって消す。
納得いくハナシを投稿したい欲求と、早めに物語を投稿したい堅実さの、折り合いがなかなかつかない。
面倒なことである。
「『ありがとう』ねぇ」
ぶっちゃけ、最近言っていない。
「ありがとうねぇ……」
――――――
前回投稿分からの続き物。
最近最近の都内某所、某稲荷神社近くのおでん屋台で、真夜中に野郎1人がちびちびお酒を飲みつつ餅巾着など食っておったところに、
「やっと高葉井を図書館に転職させた理由を吐く気になったか。『付烏月』」
そのお酒ちびちびさんに、「この日のこの時刻、この場所に来て」と呼ばれた別の野郎が、なにやら意味深なことを言いながら、
「店主。こいつと同じものを」
おでん屋の店主さんからお酒を受け取りつつ、隣に座ったのでした。
「自分で予想してみたら?ルリビタキ部長」
「お前の考えなど分からん」
「分からないってことは、まだ無責任ってことだ」
「なんだと」
「ホントだもん。ウソじゃないもーん」
お酒ちびちびさんは名前を付烏月、ツウキといい、
付烏月に呼ばれた方の野郎はビジネスネームをルリビタキといいました。
そうです。前回投稿分の「図書館に現れるというルリビタキ」、実は激似のコスプレイヤーさんではなく、本物の御本人だったのです。
「ゲームに登場する人気キャラ」とは仮の姿。
ルリビタキは「この世界」の影にひそみ、「他の世界」からの密航者に目を光らせて、
その世界の独自性、独立性を乱す者を取り締まる、
「世界線管理局」の職員だったのです。
さてそろそろ、お題回収といきましょう。
「お前に課金してくれる高葉井ちゃんから、愛しの愛しのルリビタキ部長に、お届け物だよん」
前回投稿分で飴を受け取っていた付烏月です。
渡せと言われた本人に、飴が入った袋を渡します。
「飴?」
「『是非実際に会いたいから』ってさ。辛いの好きでしょ?気に入ったら会ってやりなよ。『ルリビタキにすごくよく似たレイヤー』として」
「はぁ」
まぁ、ひとまず、ありがとう。礼は言う。
ルリビタキは付烏月から貰った飴を一粒取り出して、光に当ててみて、ぱくり。
「ふむ」
最初の甘味を通り越すと、徐々に「超鬼殺し」の名前通りの激辛が、ルリビタキの舌をビシビシ刺します。
「うん。良い」
表情には出さずとも、なかなか気に入った様子。
販売元の確認を始めます。
「美味いの?」
あんまりルリビタキが辛そうな顔をしないので、
「実はそんなに、激辛じゃないとか?」
高葉井からルリビタキに飴を渡すように言われた付烏月、興味本位で1個、飴を口に放り込みます。
「ふーん……」
数秒は、甘いのです。
だってそれは、「飴」なのです。
「あっ、ア、ほあぁぁぁぁぁぁ!!!!」
普通に激辛じゃん!痛いじゃん!
高葉井から「渡せ」と言われた飴を食ってみた付烏月、数秒たって押し寄せてきた「興味本位で食べないでください」の激辛に、
絶叫して、悶絶して、店主から貰ったお水で逆に轟沈しましたとさ。
「1月15日配信のお題が『そっと』だった」
まさか来月も13〜15日付近に、「そっと」シリーズが配信されるんじゃないだろうな。
某所在住物書きは過去配信分のお題を確認して、天井を見上げ、ため息を吐いた。
「そっと伝えたい」である。「こそっと伝えたい」だの、「そっと伝えた『いわかん』」だの、アレンジできないこともない。
そっと伝える「違和感」って、なんのこっちゃ。
「そっと。……そっとなぁ」
腕を組み、天井を見上げたままの物書きは、ネタにできそうな記憶を掘り返す。
出てきたのは電話対応中の同僚に対する「お先に」くらいであった。
――――――
来月から私が転職でお世話になる図書館は、
私の推しゲーの聖地で、推しゲー生誕の地で、
私が長年一緒に仕事をしてる先輩の、前々職。
なにより私の元同僚さん情報によれば、
推しゲーの推しカプ、その右側のひとにバチクソ似てるひとが、すごくレアな確率で、来るらしい。
推し生誕の聖図書館で、推しキャラ激似の人とエンカウントできるとか、最高ですか、至高ですか。
しかもその人、推しキャラにドチャクソよく似たスーツを着て御来館なさるそうなので、
きっと、私と同じ推しゲーが推しで、
私と同じ推しキャラが推しの、
日夜、体型維持とお肌の手入れを怠惰しない、神レイヤーさん、なんだと思う。
ぜひお近づきになりたい(機材準備)
ぜひ、私に御姿を見せてただきたい(土産用意)
ということで、藤森先輩の後輩こと、私高葉井は、藤森先輩の友人にして神レイヤーさんの情報元、
「付烏月と書いて『ツウキ』と読む」のひとに、
そっと、こっそり、コンタクトをとったのだ。
ところで私の推しカプの右側さん、ビジネスネームを「ルリビタキ」といいまして。
――「ルリビタキ部長に似てるっていう『その人』に、ぜひ、これを……」
藤森先輩のアパートの、近所の稲荷の茶っ葉屋さんに、お得意様専用の飲食用個室がある。
「新潟のアンテナショップで買ったの。『超鬼殺し』っていう飴ちゃん」
そこに付烏月さんを呼びつけて、長居&接待用のおいしい料理を注文して、
付烏月さんに、小さな紙袋を、そっと渡した。
中に入っているのは、新潟の激辛飴。
それはそれは激辛らしい。
神レイヤーさんが激辛好きかは知らないけど、
少なくとも、神レイヤーさんが似てるというルリビタキ部長には、「心が荒れてくると、激辛を食って気持ちを鎮めようとする」って設定が存在する。
撮影時の小物として、丁度良いと思った。
「『興味本位で食べないでください』だって」
わぁお。すごい。
紙袋の中を見た付烏月さんは、口をぱっくり。パッケージと原材料を、しげしげと見てる。
「あのね。図書館に来るっていう『ルリビタキ』、こういうの好きなんだわ」
ちゃんと渡しておくよ。ヒヒヒ。
付烏月さんは悪い笑顔で、紙袋をしまった。
「あの、そっとね、そぉーっと、伝えてね。
一応、趣味のハナシになるし、声を大にして言って大丈夫かどうか、ちょっとグレーだし」
「はいはい」
「ホンッットに、そっとね。そっと」
「はいはい。万事了解だよん」
付烏月さんに念を押して、「絶対大っぴらに言わないように」とクギをさして、
言いたいことが終わったから、あとはお食事。
神レイヤーさんと私を繋げてくれるであろう付烏月さんに、接待、せったい。
「ガチでよろしくね」
ダメ押しで付烏月さんに、そっとお願いすると、
「オッケー」
付烏月さんは話半分で、まずお肉に箸をつけた。