「『おセンチですわぁ!』『コンコン御狐ぱわぁ!』『知恵の輪ぁ!』『アン・ドゥ・トロワぁ!』……後はなんだろうな」
わぁ。意外と出てくる。某所在住物書きは「わぁ」で終わりそうな言葉を探して探して、突発的に香川県を閃いた――そういえば最近、例のうどんチェーン店に行っていない。
「多分、名字となればもっと、」
名字となれば、「わぁ」はもっと多いかもしれない。考えた物書きは早速「わ」で終わる名字を思い出そうとするものの、
「わ、わ……?」
意外と、それこそ、「香川」や「瀬川」、「藤川」等々、「◯◯川」しか思い出せない。
自分の持ちネタの、キャラの名字を確認する。
最後に「川」が付いている人物を出した形跡は、今のところ1人も居ない。
――――――
1月最後の週だ。
2025年になって、もうすぐ1ヶ月だ。
私、後輩こと高葉井の推しソシャゲも新年イベントともう1個の復刻イベントを終えて、
1月最後の週に、とんでもない新規コス&新規ボイス付きの「私の推し」を実装してきた。
推しカプの右の、「部長になる前」の時代のと、
推しカプの左の、今のビジネスネームを引き継ぐ前、「駆け出しの頃」の時代のと。
つまり過去編だ。
つまり、去年の最終月に実装された、「ルリビタキ部長の先代さん」が存命だった頃の時代だ。
なんということでしょう。
先代部長と今代部長と、その部下さんとで過去編パーティーが作れるではありませんか。
しかも同時実装の先代スフィンクス、つまりノラばーちゃんの全盛期もゲットすれば、世代と時代を完全無視した過去フルパが完成なんだ。
更にフレンドに(以下略)
わぁ(語彙力)
ということで、職場の昼休憩中に、ウチの職場の新卒ちゃんにガチャを引かせてみることにした。
アレだ。ビギナーズラックだ。
更に言うと、物欲センサー対策だ。
昨日頑張って発掘した無償分のガチャ石200+α回分を、そのうちの50連分を、
新卒ちゃんの指に、私は任せることにした。
「せんぱい、本当に、辞めちゃうんですか」
新卒ちゃんは私によほど懐いてるらしく、
すごく不安そうに、私に聞いてきた。
「本当に、2月末で転職しちゃうんですか」
今にも泣きそうな新卒ちゃんは、今年の4月で入社2年目、社会人2年生。
まだまだ分からないことだらけなんだろう。
「大丈夫だよ」
ノラばーちゃんのガチャに一緒に実装された「【秘術士の全盛期】キツツキ」が欲しいっていう新卒ちゃんの代わりに、新卒ちゃんのルーキーアカウントをタップしながら、言った。
「私、付烏月さんと同じ図書館に転職するだけだから。私と付烏月さんに会いたくなったら、図書館に来れば良いよ」
幸先よく、さっそくSSR確定演出が来るけど、引いたのは「キツツキ『現』査問官」。
目当ての「キツツキ『前』査問官」じゃない。
すり抜けだ。別キャラだ。わぁ(あるある)
「ごめん。こっちすり抜けた」
「先輩、こっち、確定入りました」
「でかしたッ!!」
さすがビギナーズラック。
職場の昼休憩中に、ルーキーアカウント持ちの新卒ちゃんに引かせた私のスマホのガチャは、
最初の10連でピックアップSSRの方の確定演出が入って、「私の推しカプのどちらか片方」のゲットが確実になった。
「貸して、かして」
さっそく新卒ちゃんからスマホを返してもらって、スクショ動画の撮影開始。
1枚目と2枚目は恒常SR。3枚目は恒常NR。
4枚目が、私が欲しかった「推しカプの左」の駆け出し時代だった。
「あざす!あざぁす……!」
若い。若いよぉ。わぁ(●REC)
新卒ちゃんに手を合わせて、深く深くお礼して、なんなら握手までしちゃって、
それから後はもう、ウィニングラン気分。
「ありがと。大事に育てる。うぅぅ」
5枚目、6枚目まで恒常NRが続いて、
あとはスキップして良いかなって、
7枚目をスキップしようとしたところで、
「ぅえ?」
新卒ちゃんの、新卒ちゃんたるビギナーズラックが、ビギナーズラックした。
8枚目に「推しカプの右」、部長になる前の時代のやつが出てきたのだ。
「わ、わぁ、わ、」
新卒ちゃんが、やらかした。
初手10連2枚抜き。ダブりナシ。ピックアップキャラコンプリートを成し遂げたのだ。
「わぁぁぁぁぁ、わぁ!」
状態異常:語彙力になった私は、ただただ新卒ちゃんの手を握って、ぶんぶん振って、ハグしそうになったのを必死で我慢して語彙力だった。
「あわぁ……」
スクショ、スクショ、二拍手一礼。
私、今年の運を使い切ったかもしれない。
職場の昼休憩に涙目になっちゃってる私を、「そっち系に理解のある」支店長は、普通にスルーでコーヒーなんかすすってた。
「終わらない物語の誤字修正、当分終わらない物語、終わらない物語の書き方。
まぁまぁ、色々アレンジは可能よな」
俺の場合は「終わらない」っつーより、「ゴールを決めてない」物語だけどな。
某所在住物書きは過去投稿分をスワイプしながら言った――これで「書く習慣」への投稿も690を超えた。あと1〜2個で700である。
初投稿から同じキャラクター、同じ舞台、同じ設定で書いてきた投稿は、いわゆる「終わらない」に含まれるだろうか。
「キャラと組織は増えたけどな」
物書きは振り返る
「物語を、『終わらせない』にせよ『続ける』にせよ、キャラは増えてくし、消えもするわな」
――――――
私、「藤森先輩の後輩」こと高葉井は、
ただいま、推しゲーの聖地で推しゲーのガチャの、無料分ガチャ石の発掘作業を続けております。
ソシャゲ内のミニゲームと、ソシャゲ内の放置報酬とを、課金と広告のチカラでブーストして、
更にその広告再生も課金の特典でスキップして、
ガチャ石と、ガチャチケと、それからSSR指定可能の確定チケと、それから10連引き直しチケを、
ざくざく、掘り掘り、荒稼ぎ。
ひとまず無償石分で、200連+α分の石を、この推しゲー聖地で発掘する予定だ。
私語遠慮。大きな音厳禁。勿論ソシャゲのボイス再生もBGM再生もご法度。
私の推しゲーの聖地は都内の某私立図書館。
ここから同人ゲーとして私の推しが始まって、
着々とコアな信者が増えて、ソシャゲになってから一気に人気に火がついた。
私の推しは、通称「ツル」と呼ばれてる、「ツバメ」と「ルリビタキ」の部下&上司カプ。
来週、新規ボイス&新規コスが実装される。
『ルツ推しの方ですか?』
私と同じブース、隣のテーブルでスマホを真剣に操作してた同世代が、私のガチャ石発掘作業に気付いて、一緒のテーブルに移ってきた。
筆談だ。だって、ここは図書館だ。
『ツル推しです』
私がその人のメモに返事を出すと、
そのひとは一瞬曇った顔をしたけど、
『来週のガチャのため、お互い頑張りましょう』
私が書き添えた次の文章に、強く頷いて、
軽く会釈して自分のテーブルに戻っていった。
ツとルのどっちが左だろうと、右だろうと、
来週のガチャで狙うキャラは双方変わらない。
推しゲーのために聖地でガチャ石発掘をエンドレスストーリーしてるのも、変わらない。
終わらない、終わらない。
私も、私と反対のヘキを持ってたさっきの人も、
双方、どっちもどっちで、来週のために「終わらない物語」を走ってるワケだ。
ただお互いの嗜好が逆だっただけのこと。
(頑張ろう)
なんとなく連帯意識と善良なライバル意識が芽生えてきた私は、さっきのルツ推しの人より多く石を発掘しようと、
ガチャ石を掘って掘って、眠くなって、
更に石を掘って掘って掘って、数秒寝落ちして、
目が疲れてきて、記憶がとんで、とんで、とんで
夢の中でルリビタキ、通称ル部長が
月夜の晩にタバコふかしたり
何故かアーモンドパウダーに威嚇したりsh
「お客さーん!閉館で〜す」
図書館に場違いな大声と、軽い肩ポンポンとで、
一気に覚醒して、飛び起きた。
「ル部長?」
「ルブチョ居ないよん。ここ、図書館」
「としょかん、」
「おはよございまぁす。久しぶり、後輩ちゃん」
私に声をかけてきたのは、去年の12月まで同じ職場で仕事してた、「付烏月」と書いて「ツウキ」と読む付烏月さん。
3月に、私の先輩になる予定だ。
というのも、3月から、私もこの「推しゲーの聖地」で働くことになったのだ。
付烏月さんからの誘いで。
「はいはい。閉館閉館。お帰りください」
「閉館?」
「後輩ちゃん、今までずぅーっと寝てたの」
ほら、鍵かけちゃうから帰って。
ガチャ石発掘のエンドレスストーリーは終了。
付烏月さんはそう言って、パタパタパタ、図書館の鍵と思われるカードを振った。
「付烏月さん、」
久しぶりに会えたのに、ゆっくりおしゃべりもできず、私はそのまま来館者用玄関から帰された。
「付烏月さーん」
ねぇ、なんで「1月16日」に、私を「図書館で一緒に働かない?」って誘ってくれたの。
ホントにこの図書館に、私の推しにすごく似てるレイヤーさん、来るの。
聞きたいことに答えてもらえないまま、
私の目の前で、図書館の明かりが消えていく。
「むぅ」
寂しさを引きずって、でも向こうも仕事だろうし、
仕方ないよねって図書館の消灯を見守ってると、
私がまだ寝ぼけてるのか、それとも本当にそこに居たのか、ひとつだけ照明が付いてる部屋の窓から、私の推しのルリビタキ部長に似た人が、
私をチラっと、数秒だけ見て、すぐそこから離れていったように見えた。
「同名の映画があるらしい。シュクメルリで有名なジョージアが舞台の映画だとさ」
嘘は「嘘」だから、優しい嘘にせよ優しくない嘘にせよ、相手を騙してることに変わりはねぇな。
某所在住物書きは新しいお題を確認しつつ、スマホをスワイプ、スワイプ。
シュクメルリ鍋の画像を見ている。今年も復活、だという。 ガウマルジョス。
「やさしい嘘、優しい嘘、易しい嘘……」
なんか書きやすい「嘘」のネタ、あったかねぇ。
天井を見る物書きの舌は、既にシュクメルリ。
「『お年玉預かっとくよ』って嘘ついて、親が親自身のために使っちまうのは、アウトだっけ?」
分からぬ。この物書きはおそらく時効である。
――――――
やさしい嘘には、善良な「優しい嘘」と、指摘容易な「易しい嘘」があろうかと思う。
今回は後者。易しい嘘のおはなし。
前回投稿分からの続き物、最近最近の都内某所。
某不思議な稲荷神社敷地内の宿坊に、
逃げるように部屋を借りて、ひとり粛々、自分の仕事をしている者がある。
「世界線管理局」なる厨二ふぁんたじー組織の法務部、「ツバメ」である。
前回投稿分のおはなしで、ツバメはひょんなことから、大量の花粉をボフン吐き出す上司のハプニングを間近で目撃してしまった。
他部署のイタズラアイテムが原因である。
あんまり花粉ボフンの勢いと量が「酷かった」せいで、上司を当分直視できない。
思い出し笑いを我慢するのも精一杯である。
よって、管理局と協力関係にある稲荷神社に、その宿坊に、ツバメは逃げ込んだのだ。
都内某所の稲荷神社は、不思議な狐が居る神社。
本物の御狐が居る神社である。
よもやここに「アーモンドナッツに偽装されたイタズラ花粉ボフントラップ」はあるまい。
「さて」
喫茶店からコーヒーのセットをテイクアウトしてきたツバメは、宿坊に来てやっと、花粉ボフンの思い出し笑いから開放された。
「仕事を始めよう」
「おじちゃん、コーヒーのおじちゃん」
とてとてとて、ちてちてちて。
客人の魂の匂いを嗅ぎつけて、自分の修行のために餅を売ろうと、稲荷の子狐が宿坊に来た。
「きょうは、なんで、タバコのオッサンといっしょじゃないの?」
稲荷のコンコン子狐は、魂の匂いが分かるので、ツバメの優しい性格をよく理解している。
尻尾をぶんぶん振り倒して、ぐいぐい制服をよじ登って、子狐はツバメの鼻を舐めた。
「タバコのオッサン」は、ツバメの上司のこと。
諸事情で前回、口から大量の花粉を吹き出して、盛大に咳き込んだ。
ツバメは彼から逃げるために宿坊に来たのだ。
「部長は、風邪を引いてしまったんだ」
ここでお題回収。ツバメが小さな嘘を言う。
「だから、私ひとりでここに来たんだよ」
稲荷のコンコン子狐は、魂の匂いが分かる。
ツバメの小さな嘘は、完全に嗅ぎ分けるのが容易な「やさしい嘘」であった。
「うそだ、うそだ。タバコのオッサン、カゼなんか、ひいてないんだ」
「部長には、抜けられない用事があったんだ」
「それも、うそだ。キツネ、ぜんぶ分かるんだ」
「たのむ。部長のことは、何も言わないでくれないかな。仕事に集中したいんだ」
「わかった!キツネ、オッサン、言わない!」
コンコンコン!宿坊のお客様、ただいま、おもてなしのお餅をお持ちします。
子狐は尻尾をぶんぶん振って、ツバメが作業をしている座敷から出ていく。
「やっと静かになった」
ツバメはようやく本腰入れて、作業を開始。
宿坊に持ち込んだ仕事は、だいたい2〜3時間程度の量と質であった。
パチパチパチ。上司の花粉ボフンを頭から追いやって、ツバメは真面目にキーボードを叩く。
パチパチパチ。上司のイタズラアーモンドトラップに威嚇する様子を無理矢理忘れて、ツバメは必死にキーボードを叩く。
忘れよう、忘れよう。アーモンドも花粉も、自分は見ていない。何も知らない。仕事をしよう。
そのツバメの努力を一瞬で爆破解体したのが、きなこ餅を持参して帰ってきた例の子狐。
「コーヒーのおじちゃん!」
子狐は完全に善意で、コンコン!叫んだ。
「しごとのオヤツに、アーモンドパウダー入りの、きなこおもち!どーぞ」
「あーもんど、」
今まで思い出し笑いを我慢していたツバメは、子狐が持ってきた餅を見て、とうとう陥落した。
「よりによって、よりによって……ッ!」
餅にたっぷり振られたアーモンド入りのきなこは、ツバメにはどうしても、上司が数十分前吹き出した、ボフンの花粉にしか見えなかった。
苦しげに、静かに笑うツバメを、子狐はコックリこっくり、首をかしげて不思議がったとさ。
「『安らかな瞳』と『澄んだ瞳』なら去年書いた」
当時は鏡に向かって「安らかな瞳」ってどういう瞳だってやってみて、爆笑して撃沈したわ。
某所在住物書きは過去投稿分を懐かしんだ。
「瞳をとじて」といえば、よく言われるのが
「瞳は閉じられない」と、
「『パソコンを落とす(厳密には「電源を落とす」)』のようなものだから問題無い」の議論。
丁度、「その歌」が流行した世代である。
丁度、国語教師がそれをネタにした世代である。
「懐かしいわなぁ」
なお、お題と同名の映画も存在するようである。
ポスターは普通に、目を閉じている。
――――――
「ここ」ではない、どこか別の世界のおはなし。
「世界線管理局」なる厨二ふぁんたじーな組織の、法務部執行課、特殊即応部門のオフィスが部隊。
そこはビジネスネーム制が採用されていて、
お題回収役は「ツバメ」といった。
経理部の発明家「スフィンクス」が、奇妙で不思議な魔法のアーモンドを開発したのだ。
すなわち、ナッツの端をかじってポイチョ投げると、数秒で小さな爆発を起こして、
そして、盛大に暴徒制圧用の花粉(※スギ由来)をバラまくトラップである。
悪辣非道な敵組織にスギ花粉症持ちが居るのだ。
「勿論、誤食した際の対策もバッチリだぜ」
魔法のアーモンドの開発者・スフィンクスは、ツバメに説明するにあたって、自信満々。
「つきましては、実際に使用した際のデータをとりたいワケ。ちょっと付き合えツバメくん」
拒否拒絶の選択肢は用意していないらしく、
その場でスフィンクスはデータ収集用のカメラ等々を設置し、問答無用でアーモンドを手渡した。
「天才的な俺様の発明の、貴重な貴重な最初のデータになるのだ。光栄に思えよ〜」
「要するに、私にこれを、どうしろと?」
「端っこかじって、そのまま持っててほしい」
「はぁ」
「想定では、かじって5秒後に花粉がドチャクソな勢いでボフンするから、ちゃんと目を閉じて」
「どちゃくそな、いきおい、」
「いいな。俺様が良いぞって言うまで、ゼッタイ、目を開けるなよ。ゼッタイだぞ」
「つまり、あなたが良いぞと言う前に、ランダムなタイミングで目を開けろと?」
「ちげぇわ!ホントの意味での『ゼッタイ開けるな』だっつーの。コントじゃねぇよ」
はい。記録開始。 スフィンクスが遠隔スイッチを操作して、カメラ等々を起動する。
右手で合図のゴーサインが為され、ツバメはスフィンクスから手渡された魔法の――端をかじって5秒後に花粉がボフンするというトラップの、不思議なアーモンドをかじった。
味は普通のアーモンドである。
歯ごたえも、普通のアーモンドである。
「はい!目ェ閉じて!」
ここで今回のお題回収。
言われるまま「瞳を閉じて」、ツバメは花粉ボフン予定の5秒後を待った。
3、4、5、 何の変化もない。
6、7、8、 誤差にしては起動が遅い。
9、 10。 やはり、何も起きない。
「スフィンクス査問官?」
「おかしいな。なんで起動しねぇんだろ」
「私が間違えて『普通のアーモンド』を食べてしまった可能性は?」
「それかぁ? それかもなぁ?」
おかしいな、おかしいな。
撮影を中断したスフィンクスと、「瞳を閉じ」ることをやめたツバメは、ふたりして首を傾ける。
「また妙なイタズラ道具の開発か?」
そこへ昼休憩のために戻ってきた「ルリビタキ」が合流して、スフィンクスの手からアーモンドを2粒つまんでいった。
「なかなか美味い」
カリカリカリ。2粒を飲み込んだルリビタキは、
「どこで買った、この、」
ナッツをどこで買ったか聞くために、スフィンクスを見て口を開いた丁度その瞬間、
ボフン!
食道の奥底で突然空気が瞬間的に膨張したのを感じ、口を閉じる間もなく、大量の花粉を鼻と口から吹き出して、咳き込んだ。
「……おいスフィンクス。鬼畜猫。なんだコレ」
「あるぇ?なんでおまえから花粉が出てんの?」
「質問に答えろ。『なんだ』。『コレ』」
「撮って良いか?撮って良いよな?」
「質問に、答えろ。何度も言わせるな」
ルリビタキから花粉が飛び出すのを間近で見てしまったツバメは後ろを向き、瞳を閉じて、
ただただ笑いをこらえるのに必死だったとさ。
「ソシャゲのプレゼントボックス、バレンタインのチョコ、最終的に親の所得になるかもしれんがお年玉、あと『ど◯兵衛』。他は?」
ぶっちゃけ最近、自分の機嫌を取るための自分用贈り物しか買ってねぇわな。
某所在住物書きは過去配信分のお題を確認しながら、ぽつり、ぽつり。
去年の12月25日に「プレゼント」のお題が配信されたばかりである。 更に2月14日には、おそらくバレンタインが控えている。
重複する「贈り物ネタ」をどう乗り切るべきか。
「……普通にそのまま、プレゼントネタかなぁ」
最終的に物書きは、あれこれ考えるのをやめた。
――――――
昨日投稿分に繋がるおはなし。
最近最近の都内某所に、本物の魔女が店主をしているレトロでアンティークな喫茶店がありまして、
そこの店主さんは昨日投稿分の、「世界線管理局」なる厨二ふぁんたじー組織の局員でした。
「主人様!先々週から稼働してる『おせっかいの金平糖オルゴール』、砂糖代とレモンピール代の節約で莫大な利益をもたらしていますよ」
にゃー、にゃー!
店長の使い魔猫、ウルシが言いました。
「ご主人!客から『オルゴールの金平糖を売ってほしい』との要望も増えてる。売り上げのためにも、オルゴールの金平糖を増やそう!」
にゃー、にゃー!
店長の使い魔、ジンジャーも言いました。
「『おせっかいの金平糖オルゴール』って何」って?それは過去投稿分のおはなしなのです。
過去作1月11日投稿分に、
周囲の人間の悩みや苦しみを少しずつ吸い取って、それを材料に、指定された風味の金平糖を作り出すオルゴールが登場したのです。
が、1月11日投稿分までのスワイプが面倒なので、気にしてはいけません。
「主人様、もっと客から苦しみを吸い取って、金平糖を作って、砂糖代を節約しましょう!」
「ご主人、もっと客から悲しみを吸い取って、金平糖を作って、客に売って利益を出そう!」
にゃーにゃー、にゃーにゃー!
繁盛と高コスパを狙う使い魔猫が、店長に怒涛の提案を畳み掛けました。
でも魔女の店主、人間の心を一気に吸い取ることの弊害と反動を、よくよく知っておりました。
「だめよ」
魔女の店主、言いました。
「人間の心は、人間の体と一緒で、いきなり大きく動かしたら疲れてしまうのよ」
ほら、「心を一気に食わせた結果どうなるか」の言い訳が、丁度やってきたわ。
魔女の店主が喫茶店のドアに目を向けると、
チリンチリン、世界線管理局の男の人が、ドアを押して、入ってくるところでした。
「アンゴラさん、チカラを貸してください」
魔女の店主を「アンゴラ」と呼んだ彼は、ビジネスネームを「ツバメ」といいました。
「ウチの部長の姿が、最近、昼休憩の間だけ見当たらないのです。あなたの魔法や占いで、何か、彼に関するヒントを頂けませんか」
ここから今回のお題の回収です。
ここから前回の投稿分に繋がります。
「部長が気になるなら、良いものがあるわ」
魔女の店主、今朝の占いの結果として、自分の喫茶店にツバメが来ることを知っていたのです。
「『言い訳物語の羅針盤』を、持っていきなさい」
それが今日の、「あなたへの贈り物」よ。
にっこり笑った店主はそれっきり、ツバメから目を離して、「次」に来るお客のために紅茶の準備を始めたのでした。
「その『言い訳の羅針盤』というのは、どこに」
「収蔵部のドワーフホトに探させているわ。今頃、もう見つけて、経理部のお友達のコタツの中で、いっしょにお昼寝してる頃じゃないかしら」
「ひるね、ですか」
「そう。昼寝よ」
さぁさぁ。もう、お行きなさい。
ここに「あなたへの贈り物」はありません。
茶っ葉の缶とティーポットを揃えて、湯を沸かし始めた店主は、ただツバメに視線でもって、ドアの先を示します。
「協力、ありがとうございました」
仕方がないので、ツバメはドアを開けて帰ります。
その後のツバメと「ツバメのところの部長」のおはなしは、前回投稿分でご紹介したとおり。
喫茶店はまた、心地良い静寂が戻ってくるのです。
おしまい、おしまい。