かたいなか

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「終わらない物語の誤字修正、当分終わらない物語、終わらない物語の書き方。
まぁまぁ、色々アレンジは可能よな」
俺の場合は「終わらない」っつーより、「ゴールを決めてない」物語だけどな。
某所在住物書きは過去投稿分をスワイプしながら言った――これで「書く習慣」への投稿も690を超えた。あと1〜2個で700である。

初投稿から同じキャラクター、同じ舞台、同じ設定で書いてきた投稿は、いわゆる「終わらない」に含まれるだろうか。

「キャラと組織は増えたけどな」
物書きは振り返る
「物語を、『終わらせない』にせよ『続ける』にせよ、キャラは増えてくし、消えもするわな」

――――――

私、「藤森先輩の後輩」こと高葉井は、
ただいま、推しゲーの聖地で推しゲーのガチャの、無料分ガチャ石の発掘作業を続けております。

ソシャゲ内のミニゲームと、ソシャゲ内の放置報酬とを、課金と広告のチカラでブーストして、
更にその広告再生も課金の特典でスキップして、
ガチャ石と、ガチャチケと、それからSSR指定可能の確定チケと、それから10連引き直しチケを、
ざくざく、掘り掘り、荒稼ぎ。
ひとまず無償石分で、200連+α分の石を、この推しゲー聖地で発掘する予定だ。

私語遠慮。大きな音厳禁。勿論ソシャゲのボイス再生もBGM再生もご法度。
私の推しゲーの聖地は都内の某私立図書館。
ここから同人ゲーとして私の推しが始まって、
着々とコアな信者が増えて、ソシャゲになってから一気に人気に火がついた。

私の推しは、通称「ツル」と呼ばれてる、「ツバメ」と「ルリビタキ」の部下&上司カプ。
来週、新規ボイス&新規コスが実装される。

『ルツ推しの方ですか?』
私と同じブース、隣のテーブルでスマホを真剣に操作してた同世代が、私のガチャ石発掘作業に気付いて、一緒のテーブルに移ってきた。
筆談だ。だって、ここは図書館だ。

『ツル推しです』
私がその人のメモに返事を出すと、
そのひとは一瞬曇った顔をしたけど、
『来週のガチャのため、お互い頑張りましょう』
私が書き添えた次の文章に、強く頷いて、
軽く会釈して自分のテーブルに戻っていった。

ツとルのどっちが左だろうと、右だろうと、
来週のガチャで狙うキャラは双方変わらない。
推しゲーのために聖地でガチャ石発掘をエンドレスストーリーしてるのも、変わらない。

終わらない、終わらない。
私も、私と反対のヘキを持ってたさっきの人も、
双方、どっちもどっちで、来週のために「終わらない物語」を走ってるワケだ。
ただお互いの嗜好が逆だっただけのこと。
(頑張ろう)
なんとなく連帯意識と善良なライバル意識が芽生えてきた私は、さっきのルツ推しの人より多く石を発掘しようと、
ガチャ石を掘って掘って、眠くなって、
更に石を掘って掘って掘って、数秒寝落ちして、
目が疲れてきて、記憶がとんで、とんで、とんで

夢の中でルリビタキ、通称ル部長が
月夜の晩にタバコふかしたり
何故かアーモンドパウダーに威嚇したりsh

「お客さーん!閉館で〜す」
図書館に場違いな大声と、軽い肩ポンポンとで、
一気に覚醒して、飛び起きた。

「ル部長?」
「ルブチョ居ないよん。ここ、図書館」
「としょかん、」
「おはよございまぁす。久しぶり、後輩ちゃん」

私に声をかけてきたのは、去年の12月まで同じ職場で仕事してた、「付烏月」と書いて「ツウキ」と読む付烏月さん。
3月に、私の先輩になる予定だ。
というのも、3月から、私もこの「推しゲーの聖地」で働くことになったのだ。
付烏月さんからの誘いで。

「はいはい。閉館閉館。お帰りください」
「閉館?」
「後輩ちゃん、今までずぅーっと寝てたの」

ほら、鍵かけちゃうから帰って。
ガチャ石発掘のエンドレスストーリーは終了。
付烏月さんはそう言って、パタパタパタ、図書館の鍵と思われるカードを振った。
「付烏月さん、」
久しぶりに会えたのに、ゆっくりおしゃべりもできず、私はそのまま来館者用玄関から帰された。
「付烏月さーん」

ねぇ、なんで「1月16日」に、私を「図書館で一緒に働かない?」って誘ってくれたの。
ホントにこの図書館に、私の推しにすごく似てるレイヤーさん、来るの。
聞きたいことに答えてもらえないまま、
私の目の前で、図書館の明かりが消えていく。

「むぅ」
寂しさを引きずって、でも向こうも仕事だろうし、
仕方ないよねって図書館の消灯を見守ってると、

私がまだ寝ぼけてるのか、それとも本当にそこに居たのか、ひとつだけ照明が付いてる部屋の窓から、私の推しのルリビタキ部長に似た人が、
私をチラっと、数秒だけ見て、すぐそこから離れていったように見えた。

1/26/2025, 5:22:30 AM