「『安らかな瞳』と『澄んだ瞳』なら去年書いた」
当時は鏡に向かって「安らかな瞳」ってどういう瞳だってやってみて、爆笑して撃沈したわ。
某所在住物書きは過去投稿分を懐かしんだ。
「瞳をとじて」といえば、よく言われるのが
「瞳は閉じられない」と、
「『パソコンを落とす(厳密には「電源を落とす」)』のようなものだから問題無い」の議論。
丁度、「その歌」が流行した世代である。
丁度、国語教師がそれをネタにした世代である。
「懐かしいわなぁ」
なお、お題と同名の映画も存在するようである。
ポスターは普通に、目を閉じている。
――――――
「ここ」ではない、どこか別の世界のおはなし。
「世界線管理局」なる厨二ふぁんたじーな組織の、法務部執行課、特殊即応部門のオフィスが部隊。
そこはビジネスネーム制が採用されていて、
お題回収役は「ツバメ」といった。
経理部の発明家「スフィンクス」が、奇妙で不思議な魔法のアーモンドを開発したのだ。
すなわち、ナッツの端をかじってポイチョ投げると、数秒で小さな爆発を起こして、
そして、盛大に暴徒制圧用の花粉(※スギ由来)をバラまくトラップである。
悪辣非道な敵組織にスギ花粉症持ちが居るのだ。
「勿論、誤食した際の対策もバッチリだぜ」
魔法のアーモンドの開発者・スフィンクスは、ツバメに説明するにあたって、自信満々。
「つきましては、実際に使用した際のデータをとりたいワケ。ちょっと付き合えツバメくん」
拒否拒絶の選択肢は用意していないらしく、
その場でスフィンクスはデータ収集用のカメラ等々を設置し、問答無用でアーモンドを手渡した。
「天才的な俺様の発明の、貴重な貴重な最初のデータになるのだ。光栄に思えよ〜」
「要するに、私にこれを、どうしろと?」
「端っこかじって、そのまま持っててほしい」
「はぁ」
「想定では、かじって5秒後に花粉がドチャクソな勢いでボフンするから、ちゃんと目を閉じて」
「どちゃくそな、いきおい、」
「いいな。俺様が良いぞって言うまで、ゼッタイ、目を開けるなよ。ゼッタイだぞ」
「つまり、あなたが良いぞと言う前に、ランダムなタイミングで目を開けろと?」
「ちげぇわ!ホントの意味での『ゼッタイ開けるな』だっつーの。コントじゃねぇよ」
はい。記録開始。 スフィンクスが遠隔スイッチを操作して、カメラ等々を起動する。
右手で合図のゴーサインが為され、ツバメはスフィンクスから手渡された魔法の――端をかじって5秒後に花粉がボフンするというトラップの、不思議なアーモンドをかじった。
味は普通のアーモンドである。
歯ごたえも、普通のアーモンドである。
「はい!目ェ閉じて!」
ここで今回のお題回収。
言われるまま「瞳を閉じて」、ツバメは花粉ボフン予定の5秒後を待った。
3、4、5、 何の変化もない。
6、7、8、 誤差にしては起動が遅い。
9、 10。 やはり、何も起きない。
「スフィンクス査問官?」
「おかしいな。なんで起動しねぇんだろ」
「私が間違えて『普通のアーモンド』を食べてしまった可能性は?」
「それかぁ? それかもなぁ?」
おかしいな、おかしいな。
撮影を中断したスフィンクスと、「瞳を閉じ」ることをやめたツバメは、ふたりして首を傾ける。
「また妙なイタズラ道具の開発か?」
そこへ昼休憩のために戻ってきた「ルリビタキ」が合流して、スフィンクスの手からアーモンドを2粒つまんでいった。
「なかなか美味い」
カリカリカリ。2粒を飲み込んだルリビタキは、
「どこで買った、この、」
ナッツをどこで買ったか聞くために、スフィンクスを見て口を開いた丁度その瞬間、
ボフン!
食道の奥底で突然空気が瞬間的に膨張したのを感じ、口を閉じる間もなく、大量の花粉を鼻と口から吹き出して、咳き込んだ。
「……おいスフィンクス。鬼畜猫。なんだコレ」
「あるぇ?なんでおまえから花粉が出てんの?」
「質問に答えろ。『なんだ』。『コレ』」
「撮って良いか?撮って良いよな?」
「質問に、答えろ。何度も言わせるな」
ルリビタキから花粉が飛び出すのを間近で見てしまったツバメは後ろを向き、瞳を閉じて、
ただただ笑いをこらえるのに必死だったとさ。
「ソシャゲのプレゼントボックス、バレンタインのチョコ、最終的に親の所得になるかもしれんがお年玉、あと『ど◯兵衛』。他は?」
ぶっちゃけ最近、自分の機嫌を取るための自分用贈り物しか買ってねぇわな。
某所在住物書きは過去配信分のお題を確認しながら、ぽつり、ぽつり。
去年の12月25日に「プレゼント」のお題が配信されたばかりである。 更に2月14日には、おそらくバレンタインが控えている。
重複する「贈り物ネタ」をどう乗り切るべきか。
「……普通にそのまま、プレゼントネタかなぁ」
最終的に物書きは、あれこれ考えるのをやめた。
――――――
昨日投稿分に繋がるおはなし。
最近最近の都内某所に、本物の魔女が店主をしているレトロでアンティークな喫茶店がありまして、
そこの店主さんは昨日投稿分の、「世界線管理局」なる厨二ふぁんたじー組織の局員でした。
「主人様!先々週から稼働してる『おせっかいの金平糖オルゴール』、砂糖代とレモンピール代の節約で莫大な利益をもたらしていますよ」
にゃー、にゃー!
店長の使い魔猫、ウルシが言いました。
「ご主人!客から『オルゴールの金平糖を売ってほしい』との要望も増えてる。売り上げのためにも、オルゴールの金平糖を増やそう!」
にゃー、にゃー!
店長の使い魔、ジンジャーも言いました。
「『おせっかいの金平糖オルゴール』って何」って?それは過去投稿分のおはなしなのです。
過去作1月11日投稿分に、
周囲の人間の悩みや苦しみを少しずつ吸い取って、それを材料に、指定された風味の金平糖を作り出すオルゴールが登場したのです。
が、1月11日投稿分までのスワイプが面倒なので、気にしてはいけません。
「主人様、もっと客から苦しみを吸い取って、金平糖を作って、砂糖代を節約しましょう!」
「ご主人、もっと客から悲しみを吸い取って、金平糖を作って、客に売って利益を出そう!」
にゃーにゃー、にゃーにゃー!
繁盛と高コスパを狙う使い魔猫が、店長に怒涛の提案を畳み掛けました。
でも魔女の店主、人間の心を一気に吸い取ることの弊害と反動を、よくよく知っておりました。
「だめよ」
魔女の店主、言いました。
「人間の心は、人間の体と一緒で、いきなり大きく動かしたら疲れてしまうのよ」
ほら、「心を一気に食わせた結果どうなるか」の言い訳が、丁度やってきたわ。
魔女の店主が喫茶店のドアに目を向けると、
チリンチリン、世界線管理局の男の人が、ドアを押して、入ってくるところでした。
「アンゴラさん、チカラを貸してください」
魔女の店主を「アンゴラ」と呼んだ彼は、ビジネスネームを「ツバメ」といいました。
「ウチの部長の姿が、最近、昼休憩の間だけ見当たらないのです。あなたの魔法や占いで、何か、彼に関するヒントを頂けませんか」
ここから今回のお題の回収です。
ここから前回の投稿分に繋がります。
「部長が気になるなら、良いものがあるわ」
魔女の店主、今朝の占いの結果として、自分の喫茶店にツバメが来ることを知っていたのです。
「『言い訳物語の羅針盤』を、持っていきなさい」
それが今日の、「あなたへの贈り物」よ。
にっこり笑った店主はそれっきり、ツバメから目を離して、「次」に来るお客のために紅茶の準備を始めたのでした。
「その『言い訳の羅針盤』というのは、どこに」
「収蔵部のドワーフホトに探させているわ。今頃、もう見つけて、経理部のお友達のコタツの中で、いっしょにお昼寝してる頃じゃないかしら」
「ひるね、ですか」
「そう。昼寝よ」
さぁさぁ。もう、お行きなさい。
ここに「あなたへの贈り物」はありません。
茶っ葉の缶とティーポットを揃えて、湯を沸かし始めた店主は、ただツバメに視線でもって、ドアの先を示します。
「協力、ありがとうございました」
仕方がないので、ツバメはドアを開けて帰ります。
その後のツバメと「ツバメのところの部長」のおはなしは、前回投稿分でご紹介したとおり。
喫茶店はまた、心地良い静寂が戻ってくるのです。
おしまい、おしまい。
「羅針盤。らしんばんなぁ……」
丁度、この「書く習慣」アプリには、それに準ずるものが去年まで存在していたのだ。
某所在住物書きは大きなため息ひとつ吐いて、ぽつり、ぽつり――つまり今年から、その「羅針盤」が役に立っていないのである。
明日はこのお題だから、今日はこの物語にしよう。
来週このお題が来るから、今日はこの伏線を仕込んでおいて、来週回収しよう。
「次」のお題が見えるのは、連載風の投稿スタイルを使用する物書きとして、まさに羅針盤であった。
「……Webブラウザ版、ホントに、いい加減、お題の更新作業してくれねぇかな」
物書きは愚痴った。
「このまま行けば、今年中に全部新しいお題に差し替えになって、ブラウザ版から2024年以降の投稿読めなくなるが……??」
――――――
羅針盤は、元々風水に関係する占いの道具「羅盤」が存在して、それに磁針をくっつけたところ、現代まで重宝される「羅針盤」になった、
という背景・物語があるそうです。
「占いにルーツを持つ現代の事物」といえば、「インフルエンザ」も、占星術が名付け親。
ということで今回はインフルエンザのおはなし……
は、ちょっと置いておきまして、
普通に、不思議な不思議な羅針盤が登場するおはなしをご用意しました。
「ここ」ではないどこかの世界に、「世界線管理局」という厨二ふぁんたじーな組織があり、
そこのビジネスネームは全部動物。
お題回収役の法務部局員さんも、「ツバメ」という名前で仕事をしておりました。
その日ツバメは昼休憩に、部長の「ルリビタキ」について、ひとつ気付いたことがありまして、
ここ数日、ルリビタキ部長は休憩の時刻になると、執行課実動班 特殊即応部門のオフィスから、
スルッと出ていって、
休憩終了の時刻まで帰ってこなくて、
いつの間にか部長の席に戻ってきて、午後の仕事をしておったのでした。
「一体全体、いかがなさったのだろう」
部下のツバメ、ルリビタキがちょっと心配です。
「局内のどこを探しても、全然見つからない」
最近ルリビタキは、ツバメの目から観れば、時折疲れが溜まっていそうな雰囲気もあるのです。
ルリビタキが気になるツバメのもとに、収蔵課の魔女アンゴラが、助け舟を出してくれました。
「部長が気になるなら、良いものがあるわ。『言い訳物語の羅針盤』を、持っていきなさい」
収蔵課の魔女のアンゴラの、部下のドワーフホトから不思議な、魔法の羅針盤を受け取りまして、
その羅針盤の光がさす方へ、ツバメ、さっそく向かいました。
最初に羅針盤の光が示したのは、ドワーフホトと一緒にコタツで昼寝をしていたスフィンクス。
「あ?鳥頭のルリビタキ?
ああ、あいつのことなら知ってるよ」
コタツムリなスフィンクス、言いました。
「俺様が作ってやった、『熱』の概念を吸い取る宝石が、自分の激しいイライラの熱も吸い取ってくれるって知ったらしくてな。
最近ずっと、自分の焦りもイライラも全部、宝石に食わせてるって話してやがったぜぇ」
「『熱』の概念を吸い取る宝石って何だ」って?
それは過去作、1月17日投稿分のおはなしなのです。ちょっとスワイプが面倒なので、詳しくは気にしないのです。
次に羅針盤の光が示したのは、医療棟で局員の治療を請け負うヤマカガシ。
「ふむ。最近のルリビタキ部長のハナシか。
勿論知っているとも」
妙な薬を調合しているヤマカガシ、言いました。
「最近、焦りやイライラを吸収してくれる宝石を手に入れたらしいが、
自分の心を宝石に食わせると、確かに一瞬で冷静な状態に戻るものの、食わせた分の反動が酷いことが判明したらしくてな。その相談に来ていた」
食わせた心の反動か。
最近疲れが溜まっていそうだったルリビタキの、その「疲れ」の背景が見えた気がして、
ツバメは小さく、数度、頷きました。
最後に羅針盤の光が示したのは、「向こう側」の世界、「最近最近の都内某所」の某アパートの一室で、泥のように眠っているルリビタキ本人。
「今週の頭に、例の敵性組織がまた、ウチの局員を10人拉致っただろう」
宝石に焦りとイライラの心を食わせた反動で疲労コンパイのルリビタキ、言いました。
「早く救出するためには、焦りも苛立ちも不要だから、手っ取り早く平常心に戻るために宝石に全部食わせてたんだがな。
結果として、今日の午前で局員は救助が完了したものの、毎日毎日イライラと平常心の間を一瞬で何度も行き来したせいで、気力がな……」
で、ここ数日は、せめて昼だけでも休もうと、「こっちの世界」の「この部屋」に来て、昼休憩の間だけ寝ているというワケだ。
ルリビタキがこれまでの言い訳を終えると、
不思議な不思議な「言い訳物語の羅針盤」の光が、フッ、と消えました。
部長のルリビタキが昼休憩の間だけ消える理由を知ったツバメは、ため息ひとつ。
「今は休んでください」と、「宝石を乱用せず、自分の心を大事になさってください」とだけ、
部長に伝えましたとさ。
「過去にはもっと、長文なお題も出てたな」
久しぶりに文章系のお題が出てきた。
某所在住物書きは天井を見上げて、今日も今日とてため息を吐いている。
文章系というか、エモエモ系というか、抽象的なお題は「書く習慣」の日常風景である。
エモと恋愛と、空と雨雪と、それから季節と年中行事。そして「明日」。これが「書く習慣」のお題のほぼ過半数な傾向であった。
ところで、去年までの「書く習慣」は、ある方法によって「次のお題がこれだから」と、明日に向けて投稿を考えられた――でも今年は?
――――――
明日までの「過去」とはすなわち、あなたがたがその全工程・全行程を、どの程度速い努力で進んできたかによって算出されます。
今までの人生 = みちのり ÷ はやさ。
では今回のお題のように、明日に向かう未来を算出するには、どうすれば良いでしょう?
すなわち、歩くのです。今回配信のお題によれば、「明日」は歩けば到達できる未来なのです。
と、いう屁理屈は置いといて、今回のおはなしのはじまり、はじまり。
全開投稿分からの続き物。
「ここ」ではないどこかの世界に、「世界線管理局」なる厨二ふぁんたじーな組織がありまして、
そこはビジネスネームが全部動物。
経理部の新人は「マンチカン」というネコチャーンな名前を貰いました。
今日は他部署の仕事の見学遠足2日目。
管理局の受付窓口を見に行きます。
管理局にどんなお客さんが来ているか、先輩ロシアンブルーと一緒に見に行きます。
「総務部総合案内課、通称『窓口係』だ」
犬耳の窓口係さん、コリーが説明しました。
「私達の業務は多岐にわたる。
異世界渡航許可を申請する者への窓口、
異世界召喚士の情報収集用窓口、
他の世界から妙な物体や生命体が漂着してきたときの、持ち込み窓口や相談窓口。
相談や持ち込みを、他部署に繋げることもある」
そういえば、管理局が襲撃されたとき、
窓口係さんが非戦闘局員を、率先して先導してシェルターに案内してた。カッコよかったなぁ。
新人マンチカン、大人な女性の犬耳コリーに、いわゆる尊敬のまなざしです。
「『管理局が敵襲』ってなに」って?
それは過去投稿分12月3日のおはなしですが、
スワイプがただただ面倒なので、気にしない。
ところでマンチカンの先輩ロシアンが、
ひとつ咳払いして、マンチカンの肩をポンポン、叩いていますよ。
嫉妬でしょうか? いいえ、違います。
マンチカンが気が付いて、ロシアンが目線でさす方向を見ると、 ああ、なるほど。
「子狐ちゅぁん!今日も管理局に来たんですか!」
「はい、管理局内巡回許可証、交付しましゅよ、今日もお餅売りの営業、頑張ってきてね〜」
「コンちゃんその前に。危険物持ち込んでませんか?ナデナデして検査しましょうね」
「ジャーキーたべる?写真撮ってもいい?」
「どこもそうだけど、」
先輩ロシアン、こっそり言いました。
「非戦闘部署としては、窓口係がイチバン、『癒やしが存在しない』って言われているの。
だからひとたびモフモフキュートが来局すると、
……つまり、こうなるのよ。覚えておきなさい」
さて、そろそろお題回収といきましょう。
「たすけてください!」
窓口に来たお客さん、すごく必死に窓口係さんに、1枚の結晶板を見せながら懇願しています。
その結晶板には情報が――つい先日閉鎖した世界の情報が表示されているのです。
「閉鎖して、もうすぐ滅ぶ私の世界に、まだ何万人も生存者が取り残されているんです。
生きているんです!どうか、助けてください」
それは、既に「過去」となった、自然の摂理として滅びに向かった世界からの延命要請でした。
「申し訳ありませんが、救助はできません」
窓口係さん、感情を意図的に凍らせて答えました。
「明日に向かって歩く」のが世界線管理局です。
他の世界の独自性を尊重するために、
他の世界が、その世界であり続け、
どの世界からも文化的・生態的・経済的侵略を受けないようにするために、歩くのです。
「でも」、何万人の滅ぶべき人を、
毎度毎度、毎回毎回救助して、他の生きている世界へ横流しし続けていては、
いずれ世界は、過去の「滅んだ世界」に生きていた人々で満たされてしまうのです。
んん。なかなか、難しいハナシです。
「ひとまず奥の方で、おはなしを」
「結構です。助けてくれないなら、世界多様性機構に相談に行きます!」
ぷんぷん。 泣きながら、怒りながら、お客さんが帰っていったその影で、
受付係のうちのひとりが、なにやら、デスクから離れてどこかへ行ってしまいました。
新人マンチカン、何事だと思ってそのひとを観察していると、
「あのひと、多分ウチの局員じゃないわ」
先輩ロシアンが、言いました。
「私達は『明日』に向かって歩くの」
ロシアンには、確信がありました。
「でも、『過去』をどうしても放っておけない組織、『過去』に手を全力で差し伸べる組織も、
ああいうふうに、たしかに、居るのよ」
ふーん。そうなんだ。
新人マンチカンはただただ、小首を傾けたとさ。
「『投稿用のハナシを考えている間に考えついたネタ』は、保存しておくようにしてるぜ」
今日も今日とて書きづらいお題が来た。某所在住物書きは天井を見上げて途方に暮れ、ため息を吐く。
「たとえば、昨日の『手のひらの宇宙』。
いっそ『手乗りのハムスターか何かが宇宙を内包してる』って設定とかどうだ、って考えついたのさ。……まぁ前回は使わなかったけどな」
で、要するにどうした、ってハナシ。
カキリ、カキリ。物書きは小首を鳴らす。
「つまり、今回のお題があんまり難しいから、いっそぶっ飛んだ設定であるところの『宇宙ハムスター』、出しちまうか、っていう」
――――――
前回投稿分からの続き物。「ここ」ではないどこかの世界に、「世界線管理局」という厨二ふぁんたじーな団体組織がありまして、
滅んだ世界から漂着したチートアイテムを収容したり、滅びそうな世界への渡航を制限したり、
ともかく、世界間の円滑で安全な運行のために日々、アレコレ色々やっておるのでした。
ここの経理部の新人さん、マンチカンは、丁度収蔵部の仕事の見学遠足から帰ってきたところ。
「ヒラメキは大事」という気付きを得て、自分の部署に戻ってきました。
先輩のロシアンブルーは、マンチカンが他部署でたくさんメモをしていたので、大満足の大感心。
貪欲に勉強する者は、先輩ロシアン、大好きです。
ところで他部署の見学遠足から帰ってきて早々、
経理部のコタツの上に、かわいらしいハムスターが1匹2匹、3匹4匹……?
「あら。珍しい」
マンチカンがハムスターにうずうずしていると、
先輩のロシアンブルー、コタツの上の複数匹を見て、言いました。
「法務部執行課特殊情報部門、通称『ハム部』、『管理局のネズミ』よ。外見がハムスターなのに、法務部に居るから、名前が全員鳥類なの」
怒らせちゃダメよ。 ああ見えて、「怒らせてはいけない管理局員」の第2位なんだから。
ロシアンブルー、コタツの上のハムーズに、
よくローストされたアーモンドとフレッシュなマカダミアナッツ、それからよく厳選されたカボチャのナッツを提供すると……?
「おっと、ロシアン嬢!」
なんと、群れているハムズのうちの1匹が、明るく透き通るダンディーボイスで、先輩ロシアンに話しかけてきたではありませんか!
「丁度良かった。貴女から問い合わせを受けた例の件、今日ようやく調査が終わったんだ。
マダム・ノラに預けてある。受け取ってくれ」
「先輩。ロシアンせんぱい」
「なぁに。マンチカン」
「ハムスターが、喋ってます」
「そりゃそうよ。管理局員だもの。筆記言語なり音声言語なり、そりゃあ、するわよ」
「『私達』を見るのは、初めてかしら?」
ハムスターが喋ってる。
驚愕する経理部の新人マンチカンに、「法務部の局員」と紹介されたハムーズの1匹が、
落ち着いた優しい淑女の声で言いました。
「私達は『世界を崩壊させるリスクを持つ侵略生物』セカイバクダンキヌゲネズミと、その亜種。
通称『破壊神ハムスター』の生き残り。
本当は駆除対象なのだけれど、管理局の恩情で、局員として生存を許されているのよ」
破壊神ハム?世界爆弾絹毛ネズミ?
新人マンチカン、新出単語続出でちんぷんかんぷん。要するにこのハムズ、何者なのでしょう。
ここからがお題回収。
破壊神ハムこそ、「ただひとりの君」なのです。
「俺が、その『破壊神ハムスター』の原種、たった1匹残った『本物の世界爆弾』だ」
ハムの1匹、自分より大きな名刺をマンチカンに渡しながら言いました。
名刺には法務部執行課の部署名と、ハムのビジネスネーム、「ヒクイドリ」が書かれていました。
「俺達破壊神ハムスターは、その亜種も含めて、体内に固有の『概念の種』を持っていてね」
破壊神ハムの原種ことヒクイドリが言いました。
その顔は、ハムスターなのに、すごくイタズラで鬼畜な笑顔をしておりました。
「特に原種に関してだけは、自分の命が尽きると、
『宇宙』や『世界』の概念を発芽させて、『その場所』で新しい世界を誕生させるのさ――元々存在している宇宙も世界も全部吹っ飛ばして、な。
だから俺が、管理局内で高所から落っこちたり、
ネコチャーンに狩られてコロリンチョしたり、
チューチューコロリみたいな罠に引っかかったりすると、君も、君の先輩も、その上司も全部全員、『新しい宇宙の誕生』に巻き込まれちまうワケだ」
「だから僕たち、特に『僕たちの原種』は、『世界爆弾』として恐れられているのさ」
ハムズの仲間の他の一人が、にっこり笑ってマンチカンに、教え諭すように言いました。
「といっても、亜種の方は世界を壊すワケじゃなくて、身の危険を感じると花粉を飛ばしたり酷く大きな音を出したりするだけ、なんだけどね。
まぁ、気をつけて。僕たち、特に『僕たちの原種』の『ただ1匹の爆弾』を、怒らせないように」
新人マンチカン、説明を聞き終えて、
静かに、「ヒクイドリ」の名前を持つ破壊神ハムスターの原種を見つめました。
ただひとりの君へ。 ただ1匹、本当に危険な爆弾を抱えているハムへ。 長生きしてください。
新人マンチカン、静かに、目で訴えたのでした。