かたいなか

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「過去にはもっと、長文なお題も出てたな」
久しぶりに文章系のお題が出てきた。
某所在住物書きは天井を見上げて、今日も今日とてため息を吐いている。
文章系というか、エモエモ系というか、抽象的なお題は「書く習慣」の日常風景である。

エモと恋愛と、空と雨雪と、それから季節と年中行事。そして「明日」。これが「書く習慣」のお題のほぼ過半数な傾向であった。

ところで、去年までの「書く習慣」は、ある方法によって「次のお題がこれだから」と、明日に向けて投稿を考えられた――でも今年は?

――――――

明日までの「過去」とはすなわち、あなたがたがその全工程・全行程を、どの程度速い努力で進んできたかによって算出されます。
今までの人生 = みちのり ÷ はやさ。
では今回のお題のように、明日に向かう未来を算出するには、どうすれば良いでしょう?
すなわち、歩くのです。今回配信のお題によれば、「明日」は歩けば到達できる未来なのです。

と、いう屁理屈は置いといて、今回のおはなしのはじまり、はじまり。

全開投稿分からの続き物。
「ここ」ではないどこかの世界に、「世界線管理局」なる厨二ふぁんたじーな組織がありまして、
そこはビジネスネームが全部動物。
経理部の新人は「マンチカン」というネコチャーンな名前を貰いました。

今日は他部署の仕事の見学遠足2日目。
管理局の受付窓口を見に行きます。
管理局にどんなお客さんが来ているか、先輩ロシアンブルーと一緒に見に行きます。

「総務部総合案内課、通称『窓口係』だ」
犬耳の窓口係さん、コリーが説明しました。
「私達の業務は多岐にわたる。
異世界渡航許可を申請する者への窓口、
異世界召喚士の情報収集用窓口、
他の世界から妙な物体や生命体が漂着してきたときの、持ち込み窓口や相談窓口。
相談や持ち込みを、他部署に繋げることもある」

そういえば、管理局が襲撃されたとき、
窓口係さんが非戦闘局員を、率先して先導してシェルターに案内してた。カッコよかったなぁ。
新人マンチカン、大人な女性の犬耳コリーに、いわゆる尊敬のまなざしです。

「『管理局が敵襲』ってなに」って?
それは過去投稿分12月3日のおはなしですが、
スワイプがただただ面倒なので、気にしない。

ところでマンチカンの先輩ロシアンが、
ひとつ咳払いして、マンチカンの肩をポンポン、叩いていますよ。
嫉妬でしょうか? いいえ、違います。
マンチカンが気が付いて、ロシアンが目線でさす方向を見ると、 ああ、なるほど。

「子狐ちゅぁん!今日も管理局に来たんですか!」
「はい、管理局内巡回許可証、交付しましゅよ、今日もお餅売りの営業、頑張ってきてね〜」
「コンちゃんその前に。危険物持ち込んでませんか?ナデナデして検査しましょうね」
「ジャーキーたべる?写真撮ってもいい?」

「どこもそうだけど、」
先輩ロシアン、こっそり言いました。
「非戦闘部署としては、窓口係がイチバン、『癒やしが存在しない』って言われているの。
だからひとたびモフモフキュートが来局すると、
……つまり、こうなるのよ。覚えておきなさい」

さて、そろそろお題回収といきましょう。

「たすけてください!」
窓口に来たお客さん、すごく必死に窓口係さんに、1枚の結晶板を見せながら懇願しています。
その結晶板には情報が――つい先日閉鎖した世界の情報が表示されているのです。
「閉鎖して、もうすぐ滅ぶ私の世界に、まだ何万人も生存者が取り残されているんです。
生きているんです!どうか、助けてください」

それは、既に「過去」となった、自然の摂理として滅びに向かった世界からの延命要請でした。
「申し訳ありませんが、救助はできません」
窓口係さん、感情を意図的に凍らせて答えました。

「明日に向かって歩く」のが世界線管理局です。
他の世界の独自性を尊重するために、
他の世界が、その世界であり続け、
どの世界からも文化的・生態的・経済的侵略を受けないようにするために、歩くのです。

「でも」、何万人の滅ぶべき人を、
毎度毎度、毎回毎回救助して、他の生きている世界へ横流しし続けていては、
いずれ世界は、過去の「滅んだ世界」に生きていた人々で満たされてしまうのです。
んん。なかなか、難しいハナシです。

「ひとまず奥の方で、おはなしを」
「結構です。助けてくれないなら、世界多様性機構に相談に行きます!」

ぷんぷん。 泣きながら、怒りながら、お客さんが帰っていったその影で、
受付係のうちのひとりが、なにやら、デスクから離れてどこかへ行ってしまいました。
新人マンチカン、何事だと思ってそのひとを観察していると、
「あのひと、多分ウチの局員じゃないわ」
先輩ロシアンが、言いました。

「私達は『明日』に向かって歩くの」
ロシアンには、確信がありました。
「でも、『過去』をどうしても放っておけない組織、『過去』に手を全力で差し伸べる組織も、
ああいうふうに、たしかに、居るのよ」
ふーん。そうなんだ。
新人マンチカンはただただ、小首を傾けたとさ。

1/21/2025, 4:31:53 AM