かたいなか

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1/12/2025, 4:56:24 AM

「去年は『寒さが身に染みて』だった」
ちょっと書きやすく修正されたカンジはする。
某所在住物書きは過去投稿分を確認しながら、呟いた――これで5日連続の、お題差し替えであった。
「別にお題、変えても俺は構わねぇけどよ。
あの、『Web版』の方、2023年頃配信されたお題ラインナップから、一切変更されてねぇよな?」
「Web版」とは何か。ナイショである。

ところで。
「ひらがなのお題は、結構、自由度が高い」
物書きは考える。
「『あ、戦いね』とか、『阿多田か伊根』とか、漢字変換が可能なんよ。だって『暖かいね』でも、『温かいね』でもねぇからな」
今回は戦いの方で行かせてもらうぜ、と物書き。
すなわち、以下のおはなしである。

――――――

前回からの続き物。「ここ」ではないどこかの世界に、「世界線管理局」なんて厨二ちっくファンタジーな団体組織がありまして、
そこはビジネスネーム制を採用しており、全員、動物の名前で統一されておったのでした。

今日のお題回収役は、ドワーフホトと言いまして、ウサギのビジネスネームの持ち主。
同期で友達のスフィンクスから頼まれた用事を、丁度やり終えて職場に戻ってきたところでした。

「うぅぅ。にがい。すっぱい。しぶいぃ……」
自分の同僚で先輩で師匠、アンゴラに、スフィンクスが作った「未来への鍵」を持っていって、手渡すまでが用事だったのですが、
この鍵の不思議なチカラによって、ドワーフホト、
東京全土の「酸っぱい」と「渋い」と「渋&酸の合体技としてのニガい」を合わせて煮詰め凝縮したような金平糖によって舌が総攻撃を受けまして。
本当に、ほんとうに、酷い目に遭ったのでした。

「ひどいよぉ。 ひどいよ、スフィちゃん……
あたし、スフィちゃんに何か、うらまれること、
……少なくとも『恨まれることは』してないよぉ」

わぁん。スフィちゃん、鬼ぃ。鬼畜猫。
舌に残る酸味と渋味と苦味の記憶を、濃厚生シュークリームのホイップで誤魔化しながら、
ドワーフホト、職場に戻ってきたのでした。
「鍵、ちゃんと手渡してきたよ」とスフィンクスに、報告するまでが用事です。

ところでスフィンクスが仕事をしている筈の経理部のあたりが、どうもこうも、賑やかですね……?
「賑やか、っていうより、さわがしーよぉ?」

ズドドドド、ドギャギャギャギャ!!
スフィンクスが居る経理部に、近づくにつれて場違いな、戦場のごとき魔法発動音が響きます。
ズダダダダ、スパパパパン!!
スフィンクスが居る、経理部のコタツに近づくにつれて、魔法の防御音や無効果音も届きます。

「あ、たたかいね。戦いの音ねぇ……」
そうです。「あたたかいね」を、「あ戦いね」に変換して、お題を回収するおはなしなのです。

で、誰と誰が戦っておるかと申しますと。
ドワーフホトの舌を酸味と渋味と苦味でコテンパンにしてしまったスフィンクスと、
ドワーフホトと同じ目に遭わされた、総務部総合案内課の、コリーです。

「今日という今日は許さんぞスフィンクス!!」
ズドドドド、ドギャギャギャギャ!!
普段は受付に居る犬耳コリー、「本来の姿」に戻って牙をむき出しにして、光の弾をぶつけます。
「私を、実験のネズミ同然に使いおって!!」

相当キレているようです。そりゃそうです。
前回投稿分の「未来への鍵」と同じ製法で作られた酸味と渋味と苦味の金平糖を1粒、
それから同じ製法で作られた激辛の金平糖を2粒、
実験として、食わされたのですから。

「ハーッハッハッハァ!!
効かねぇな!全然効いてねぇぜ、駄犬ちゃん!」
ズダダダダ、スパパパパン!!
コリーの本気を爆笑しながら、全弾防御して無効化して、爆笑してるのがスフィンクスです。
「俺様の傑作、24機の不知火とデコ〜ポンの前には、すべてが無力なのだぁ!!」

キングマンダリンの統合合体承認、する必要も無いぜぇ!ふぅはははァ!!
爆笑スフィンクスを守るのは、24個と1個、「しらぬい」タイプのミカンたち。
ポォンポォンと跳んではねて、小さなエネルギーシールドを展開して、コリーの攻撃をことごとく、全部無駄無駄してしまうのです。
「これが、俺様の至宝、水晶文旦と日向夏を守護する精鋭の実力、その4分の1だぜェ!
はははっ!!ハァーッハッハッハァー!!」

「うぅーん……」
駄犬と鬼畜猫が経理部で、ズドドドスパン、とっても楽しそうにじゃれておるので、ドワーフホトは用事完了を報告できません。
「あとでで、良いよねぇ」
しかたない、しかたない。すべては「あ戦いね」のお題回収の影響です。
ドワーフホトは諦めて、一旦、自分の収蔵部収蔵課のブースに戻ることにしたそうな。
おしまい、おしまい。

1/11/2025, 6:13:31 AM

「未来への鍵垢、未来への鍵外し、未来への鍵点検。『鍵』っつー単品をネタにするだけでなく、SNSとか点検動作とかの物語も書けそうだな」
まぁ、今回はガッツリ、ファンタジー爆盛りのフィクション書いたけどさ。
数回消して書き直してまた消してを繰り返した某所在住物書きは、最終的に投稿文章の妥協案を探し出して、文字通り「未来への鍵」の物語を完成させた。

個人的には茶会のような、オシャレなハナシを書きたかったのだ。それこそ糖分マシマシな、エモいものをたまにはひとつ、書きたかったのだ。
ただの毎度恒例食い物フィクションである。

「まぁいっか」
物書きは再認識した。 自分とエモは相性が悪い。

――――――

昨日投稿分からの続き物。最近最近の都内某所、魔女のおばあさんの喫茶店が舞台です。
稲荷神社の子狐が、金平糖のボトルのフタを取ってほしくて、前回、喫茶店にご来店。

取ってもらった金平糖は、1人のお客さんと、
コンコン子狐と魔女の店主さんとでもって、
仲良く分け合って、カリカリ、コリコリ。
甘い金平糖を幸福に、おなかに収めた子狐は、すっかり満足してしまって、
店主の膝の上で、ヘソ天して、ぐーすぴ。
お昼寝など、始めてしまったのでした。

ところで「1人のお客さん」、何が目的で魔女の喫茶店に来たのでしょう?
そこからが今回のお題の、はじまり、はじまり。

魔女の喫茶店に来ていたお客さん、ビジネスネームをドワーフホトといいますが、
店主の魔女・アンゴラに、レモンの薄黄色に美しく光る鍵を手渡して、言いました。
「スフィちゃんがねぇ、『頼まれてたヤツが完成したから、アンゴラに持ってけ』、ってさー」

客のドワーフホトが持ってきたのは、
魔女の喫茶店で新しいサービスを始めるための、
すなわち、文字通り、「未来への鍵」でした。
「あらあら。ありがとう」
これで、新しい商売ができるわ。
店主のアンゴラ、レモンの鍵と、その説明書とを受け取って、穏やかに優しく笑いました。

くしゅっ、くしゅん。
「商売」の漢字二文字に反応して、お昼寝中のコンコン子狐、くしゃみなどして目を覚まします。
さすが商売繁盛・五穀豊穣の稲荷狐。そういう言葉を、まるで「犬にジャーキー」、「猫にちぅーる」のように、本能的に好むのです。
周囲を見渡して、「商売」を探して、見つからないので毛づくろい、からの……
途中で電池が切れまして、ぐーすぴ。またヘソ天をキメてお昼寝を再開したのでした。

「最近ね」
アンゴラが言いました。
「心魂を濁らせて私の店に来るひとが、本当に、ほんとうに、多くなってしまったのよ」

ドワーフホトが持ってきた「未来への鍵」、「魔女の喫茶店の新サービス」を、
店主アンゴラ、アンティークの不思議なオルゴールに差し込んで、カチリ、回しました。

すると、どうでしょう。
ポン、ポロン。ポン、ポロン。
オルゴールが小さな小さな金属音を奏でるたび、
コン、コロン。カタン、コトン。
オルゴールの下に付けられた引き出しの中に、レモンの色した少し大きめの金平糖が、ゆっくり、ゆっくり、溜まっていくではありませんか!

「周囲の人の心魂の、錆だの渋だのを研磨して、レモンピールの苦みと香りに変換する鍵よ」
店主のアンゴラが、ドワーフホトに説明します。
「金平糖が溜まっているように見えるけれどね。
見た目に騙されてはダメよ。レモンだもの」

さぁ、どうぞ。
オルゴールの下の、引き出しを開けて金平糖を1個、つまみ上げた店主のアンゴラ。
指の中で金平糖を転がして、イタズラに微笑すると、淹れたばかりの紅茶にポトリ。
これみよがしに、落とします。
さぁ。
レモン金平糖入りの紅茶はティーカップソーサーにのせられて、カタン。ドワーフホトの目の前へ。

「わぁ。ちゃーんと、レモンだ」
差し出された紅茶の香りを吸い込んで、少しふーふー吐息で冷まして、
ドワーフホトが、味見をします。
「あ゛ぅ! だめ、コレ、 だめぇ……!」
ひとくち含んだ途端、極限まで凝縮されたレモンの渋みと苦みと酸味が、ドワーフホトの味覚という味覚を占領して、チクチク攻撃し始めました。
「うぅ〜ぅ! 酸っ、渋……分かんないぃー!」

そういえば「未来への鍵」を受け取ったとき、説明書も一緒に貰ったような……?

「あら」
口を押さえて悶絶しているドワーフホトに、大至急ホットミルクを出動させて、
魔女のアンゴラ、説明書を確認しました。
「あらあら。ごめんなさいね」
未来の鍵の説明書には、こう書かれていました。

『!!Danger!!
飲み物1杯(約200〜400ml)につき、
かならず金平糖をすり潰して、粉にして、ひとつまみ(0.2〜0.4g)だけ入れること!
※ウチの駄犬に金平糖まるまる1個ブチ込んだ紅茶飲ませたら、酸味とシブみと苦みで11分死んだ』

1/10/2025, 5:38:12 AM

「去年はたしか『三日月』が配信されたわな」

某所在住物書きは過去配信分のお題を確認しながら、ぽつり、ぽつり――安定の星&空ネタである。
「星が溢れる」「星空の下で」「流れ星に願いを」「星空」「星座」「月夜」「太陽のような」
そして「星のかけら」で、天体に限定してお題を抽出しても、8例目。 これに「空」が付く物を合わせれば、数は更に倍増する。

星をそのまま天体としてネタに使った投稿は、これまで数回書いてきた。今回は「星」を別のものに変えてやろう――物書きは画策し、思考した。
「王道なとこでは、金平糖か?」
ネット情報によれば、星と金平糖を結びつけた商品は、なかなか豊富な種類を誇っているらしい。

――――――

金平糖を、「星のかけら」みたいだとこじつけて、こんなおはなしをご用意しました。
最近最近のおはなしです。都内某所のおはなしです。某稲荷神社敷地内の一軒家に、人に化ける妙技を持つ化け狐の末裔が、家族で仲良く暮らしており、
そのうち末っ子の子狐は、善き化け狐、偉大な御狐となるべく、絶賛修行中。
稲荷のご利益たっぷりなお餅を作って売って、社会と人間を勉強しておったのでした。

その日のコンコン子狐は、「一定の条件下だけ」で餅売り巡回を許された大きな職場で、
一番二番を争う上客様から、幸福なお代を受け取りまして、とってもご機嫌。
美しいガラスの小物容器です。
中にコロコロ、まるで星のかけらのような、金平糖がぎっしり詰まっているのです。
オシャレに、スイートボトルと言うそうです。
「スフィンクス」というビジネスネームを使っている上客様から、貰ったのです。

『俺様の最高傑作のひとつであるKo-Ta2の、持ち運びタイプ、Ko-Ta4試作機の生成物だぜ』
コタツムリのスフィンクス。ボトルに金平糖を詰めて、きゅっとフタを回し閉めて言いました。
『本当はコタツの中に材料取り込んで、スイッチ押せば、ミカンが出てくるハズなんだがよ。
なんでだろうな。ミカンは、ミカンだったんだけどよ。皮むいたら中身が金平糖でだな……』

まぁ、極上に美味だったから、餅売りの褒美としてお前にやる。ありがたく思えー。
コタツムリのスフィンクスはそう言うと、コンコン子狐のお餅のお代として、金平糖のぎっしり詰まったボトルを、手渡してやったのでした。

さて。 星のかけらのスイートボトル、金平糖詰まったそれのフタを、なんとか取りたい子狐です。
回し閉めたフタがキツいのか、子狐のチカラが弱いのか、2分間カジカジしても、3分間タシタシしても、ちっともフタが動きません。

人間の大人のチカラを借りるため、魔女のおばあさんんの喫茶店へ、とってって、ちってって。
「おばちゃん!ビンのフタ、とって、とって!」
喫茶店のキャットドアから店内に入ると、真っ先に店主のおばあちゃんのもとへ……

「子狐ちゃんだぁ。いらっしゃーい」
行こうとしたら、店内では、「スフィンクス」の同期でお友達の「ドワーフホト」が、
店主さんと一緒に、お茶会をしておったのでした。
「どーしたの?ビンのフタぁ?」

ドワーフホト、子狐からボトルを受け取ると、
子狐がそれを誰から貰ったか、すぐ理解しました。
「あー、なるほどねー。スフィちゃんだぁ」

スフィンクスが寄越すボトルは、開け方にコツがあって、それさえ覚えれば簡単なんだよ。
子狐からボトルを受け取ると、キキュッ、ポン!
細くて綺麗な指でもって、ドワーフホトは簡単に、それのフタを開けてしまいました。
「ほぉ〜ら。取れた」

カラカラカラ、チリチリチリ。
美しいガラスのスイートボトルから、美しいレースのアンティーク皿に、金平糖が落ちていきます。
カラカラカラ、チリチリチリ。
淡い色した星のかけらが、優しい夜明け色した空に、綺麗な音をたてて落ちていきます。
星のかけらの金平糖が、夜明けの空のアンティーク皿に広がっていく様子は、
それはそれは、美しいものでした。

「はい。どーぞ」
ドワーフホトは夜明けの淡い星空を、ひとまずここで食べる分として、子狐に渡してやりました。
コンコン子狐は大満足!フタを開けてくれたドワーフホトの、アゴだの鼻だのをベロンベロン。
尻尾を振って、舐め倒しました。
「はははっ、やだぁ!そんなに私の顔舐めたら、子狐ちゃん、私のファンデ食べちゃうよぉ!」

最終的に子狐とドワーフホトは、店主の魔女のおばあさんと一緒に、
星のかけらの金平糖を仲良く分け合って、甘いココアや琥珀の紅茶、ウィンナーコーヒーなんかでもって、美しく、楽しく、穏やかに、お茶会を存分に楽しんだとさ。 おしまい、おしまい。

1/9/2025, 5:24:21 AM

「Ring。輪っか、円形の演劇場、競馬場、徒党、それから呼び鈴の音。……意味は結構色々あるのな」
去年は「色とりどり」ってお題だった。某所在住物書きは過去投稿分を確認しながら呟いた。
「My Heart」、「I LOVE...」、「Kiss」、「Love you」に続く5例目の英語ネタであり、
「I LOVE...」、「言葉はいらない。ただ...」から数えて3例目の「...」で終わるお題である。

365+1個のお題を配信する「書く習慣」は、そのお題の過半数、なんなら3分の2程度が、5個ほどのグループに分けられる。
すなわち「Love you」のような恋愛系と、
雨雪ネタと、空系のネタと、年中行事系と、
そして今回、「Ring Ring...」のようなエモエモムードを大なれ小なれ含んだお題と。

「出題者としては、『好きな人からの音声通話が、Ring Ring...着信を告げました』みたいなのを想定してんのかな、知らんけど」
しかしこの物書き、エモい系のお題とは相性が悪かった。よって「Ring」の「輪っか」に活路を……

――――――

外回りの仕事の帰り道で、新しいパン屋さんを見つけた。リング系のドーナツに、リング系のパイ、リング系のパン……リングリング、Ring Ring...
その名もド直球、「りんぐ・べぇかりぃ」。
SNSの宣伝が上手にできてないのか、そもそも論として「お店」と分かりづらいのが理由か、
お客さんが、あんまり入ってなかった。

「丁度良いや」
お客さんが密集してないってことは、店内で風邪とかインフとかをもらう可能性が少ないってこと。
これからバズる可能性を見越して、他の誰も目をつけてない、手をつけてない間に、
このリングのお店を、見てやろうと思った。

チリンチリン、チリンチリン。
「りんぐ・べぇかりぃ」のドアを押して中に入ると、かわいいドアベルがよく響いて、
店内は、焼きたてのパンの香りでいっぱい。
輪っかのパンの専門店ってだけあって、一部を除いて多くのパンは、投げ輪みたいな棒に引っ掛けて、面白く並べられてる。

ピザリングぶれっど、なんてグループを見つけた。
注意書きには、
「レンジやオーブンでリベイクしていただきますと、中のチーズが溶けて、より美味しくなります」
ピザのチーズだのケチャップだのを、全部フィリングにしてパンに隠して、それを焼いたみたい。
今日はマルゲリータと、てりやきピザと、それから七草味噌メープルとマシュマロチョコハニーのピザリングが並んでたから、
ひとまず無難に、マルゲリータを貰うことにした。

……七草味噌メープルってなんだろう(未知)

「七草を煮込んでペーストにして、メープルシロップと赤味噌を練り込んでフィリングにしました」
シュガードーナツとピザリングをレジに持ってって、七草味噌メープルのことを聞いたら、
狐耳を付けた店員さんが試食を持ってきてくれた。
「甘じょっぱく、でも味が濃くなり過ぎないように仕上げています。少しだけ、一味や七味、マスタードなんかを付けても、美味しいですよ」

ふーん(一味や七味)
そーなんだ(マスタード)

「七草味噌メープルは、七草セットの在庫が無くなれば、販売終了になって、随時別のフードロス削減協力メニューと入れ替わります」
器用に狐耳をピクピク動かす店員さん。
「次は禁断のダブル炭水化物、あんバター餅パンが登場予定です。ぜひ、また来てください」

耳の仕組みは分からないし、なんで狐耳なのか知らないけど……いや、そういえばお店の看板に、かわいい狐のイラストが描かれてたような気がする。
ともかく、新しいリングパン専門店でリング要素を浴びて、リング要素を買って、
ごはんを食べるべく昼休憩の自分の支店に戻った。

チリンチリン、チリンチリン。
お店から出るときに、ドアベルの音に気を取られてよく見てなかったけど、
私とすれ違いざまにお店に入ってきた男の人が、
なんだか、すごく、私の惜しゲーの推しキャラに、
似てるような、気のせいなような、気がした。

1/8/2025, 4:27:33 AM

「去年の『今日』は、『雪』っつーお題だった」
今年は「追い風」だったな。某所在住物書きはアプリからの通知画面を見ながら、ぽつり。
「雨雪系のお題、このアプリ、結構多いもんな」

記憶に残っているだけ、かつ「雨」と「雪」の文字がガッツリ使われているものだけでも、
「書く習慣」における雨雪ネタのお題は、少なくとも7個以上。だいたい1ヶ月に1回は、雨雪系に遭遇している計算となる。
それが、ひとつ減ったらしい。

代わりに増えたのが風系のネタだ。
これで4個目であった。
「まぁ、深刻なネタ枯渇は起こしてねぇし」
書けるっちゃ、書けるさ。物書きは呟いた。

――――――

「風に乗って」、「風に身をまかせ」、「秋風」、
そして、今回の「追い風」。
風のお題の4個に1個が、順風、すなわち自分の進む方向に吹く風についてのお題なもので、
つい、順風に逆らいたくなってしまう物書きです。
「追い風味」のおはなしなんて、どうでしょう。

1週間のお正月が過ぎた、都内某所です。
某稲荷神社敷地内の一軒家に、人に化ける妙技を持つ化け狐の末裔が、家族で仲良く暮らしておりまして、
そのうち末っ子の子狐は、善き化け狐、偉大な御狐となるべく、絶賛修行中。
稲荷のご利益ゆたかなお餅を作って売って、少しずつ、社会と人間を、勉強しておったのでした。

その日のコンコン子狐は、同い年で同じ化け狐のミーちゃんから、実家のスーパーで売れ残った大量の七草セットを七割引きで大量回収してきまして、
意気揚々と、家の台所に戻ってきたのでした。
「おやさい、おやさい。いっぱいだ!」
コンコン子狐のお小遣いは、一時的にスッカラカンになりましたが、ここから一気に増えるのです。

シーズン外で値下げされた七草セットで、おいしいおいしい、惣菜お餅セットを作りましょう。
仕入れてきた七草セットを追い風に、お小遣いをたっぷり増やすのです。

「よし!ななくさおもち、つくる!」

まずコンコン子狐、大量の七草セットのパックを、
3分の1と、3分の2の量に分けて、
後者の方、多く分けた方の草を細かく切った後、
ドザザザッ!それらすべてを大きな鍋に、全部ぜんぶ、入れてしまいました。
七草を柔らかく、ほっこり、煮込むのです。
カブの歯ごたえは少ーしだけ残しつつ、お餅の具として成立するように、じっくり、煮込むのです。

「でも、おやさいだけじゃ、おもち、おいしくないんだ。おニクもどっさり、入れるんだ」

次にコンコン子狐は、別件で朝からコトコト煮込んでいた豚バラブロックのお鍋のフタを取りまして、
深く、大きく、うなずきました。
湯気をもうもうと上げる鍋の中にあるのは、醤油とハチミツと、追い風味にソースとメープルシュガーを少し足したもので煮込まれた豚バラ。
2時間3時間煮込まれて、それはよくよく煮汁を吸って、箸を刺せばすぐに崩れました。

「おいしそう。おいしそう」
食いしん坊なコンコン子狐、ぶっちゃけお肉単品にガブチョ、かじりつきたくて仕方ありません。
「だめ、ダメ。これは、おもちに入れるんだ」
食欲の酷い風に逆らいながら、コンコン子狐、
良い具合に煮込まれた七草の水気ならぬお湯気を切って、美しい飴色の煮汁に使った豚バラブロックのお鍋に、ドザザザッ!ブチ込みます。

そこから、もう少し煮込みまして、お餅の具材として丁度良いように味と食感を整えたら、
ぺたぺた、ぱたぱた。ぺたぺた、ぱたぱた。
甘じょっぱく完成した七草と豚バラの具を、お餅の中に次々、次々。仕込んでゆきました。

仕上げのお題回収。
出来上がった惣菜お餅に、豚バラと七草のエキスがしみ出した飴色煮汁をうすく塗って、追い風味。
コンコン子狐は完成したお餅をサッとあぶって、香ばしい「焼き」の風味を追加したのでした。
「できた、できた!おもち、できた!」

あとは、大量に仕入れてきた七草セットのうちの残り3分の1で、フレッシュなサラダを作りまして、
お餅と一緒に小分けにして、パッキング。
「なんか、サラダ、うーん……」
緑と白ばっかりで、七草サラダに「いろどり」が無いのを、数秒だけ悩みましたが、
まぁ、まぁ。そのへんは、購入者の美的センスに、なんとかしてもらいましょう。

「よーし!しゅっぱつ!」
できたての七草惣菜お餅を、押し車式のキャリーケースにザッカザッカ詰め込んで、
コンコン子狐、まるで車内販売の店員さんみたいに、餅売りの主戦場へ向かいます。
子狐の餅売り巡回を条件付きで許してくれる職場が、ひとつ、あるのです。

「でも、そのまえに、
おとくいさんのとこ、いかなきゃ!」
コロコロコロ、ガラガラガラ。
コンコン子狐、まず一昨年からの一番のお得意様に、最初の一個を届けてから、
意気揚々と、尻尾を振って、餅売り巡回場所へ向かったとさ。 おしまい、おしまい……?

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