「去年はたしか『三日月』が配信されたわな」
某所在住物書きは過去配信分のお題を確認しながら、ぽつり、ぽつり――安定の星&空ネタである。
「星が溢れる」「星空の下で」「流れ星に願いを」「星空」「星座」「月夜」「太陽のような」
そして「星のかけら」で、天体に限定してお題を抽出しても、8例目。 これに「空」が付く物を合わせれば、数は更に倍増する。
星をそのまま天体としてネタに使った投稿は、これまで数回書いてきた。今回は「星」を別のものに変えてやろう――物書きは画策し、思考した。
「王道なとこでは、金平糖か?」
ネット情報によれば、星と金平糖を結びつけた商品は、なかなか豊富な種類を誇っているらしい。
――――――
金平糖を、「星のかけら」みたいだとこじつけて、こんなおはなしをご用意しました。
最近最近のおはなしです。都内某所のおはなしです。某稲荷神社敷地内の一軒家に、人に化ける妙技を持つ化け狐の末裔が、家族で仲良く暮らしており、
そのうち末っ子の子狐は、善き化け狐、偉大な御狐となるべく、絶賛修行中。
稲荷のご利益たっぷりなお餅を作って売って、社会と人間を勉強しておったのでした。
その日のコンコン子狐は、「一定の条件下だけ」で餅売り巡回を許された大きな職場で、
一番二番を争う上客様から、幸福なお代を受け取りまして、とってもご機嫌。
美しいガラスの小物容器です。
中にコロコロ、まるで星のかけらのような、金平糖がぎっしり詰まっているのです。
オシャレに、スイートボトルと言うそうです。
「スフィンクス」というビジネスネームを使っている上客様から、貰ったのです。
『俺様の最高傑作のひとつであるKo-Ta2の、持ち運びタイプ、Ko-Ta4試作機の生成物だぜ』
コタツムリのスフィンクス。ボトルに金平糖を詰めて、きゅっとフタを回し閉めて言いました。
『本当はコタツの中に材料取り込んで、スイッチ押せば、ミカンが出てくるハズなんだがよ。
なんでだろうな。ミカンは、ミカンだったんだけどよ。皮むいたら中身が金平糖でだな……』
まぁ、極上に美味だったから、餅売りの褒美としてお前にやる。ありがたく思えー。
コタツムリのスフィンクスはそう言うと、コンコン子狐のお餅のお代として、金平糖のぎっしり詰まったボトルを、手渡してやったのでした。
さて。 星のかけらのスイートボトル、金平糖詰まったそれのフタを、なんとか取りたい子狐です。
回し閉めたフタがキツいのか、子狐のチカラが弱いのか、2分間カジカジしても、3分間タシタシしても、ちっともフタが動きません。
人間の大人のチカラを借りるため、魔女のおばあさんんの喫茶店へ、とってって、ちってって。
「おばちゃん!ビンのフタ、とって、とって!」
喫茶店のキャットドアから店内に入ると、真っ先に店主のおばあちゃんのもとへ……
「子狐ちゃんだぁ。いらっしゃーい」
行こうとしたら、店内では、「スフィンクス」の同期でお友達の「ドワーフホト」が、
店主さんと一緒に、お茶会をしておったのでした。
「どーしたの?ビンのフタぁ?」
ドワーフホト、子狐からボトルを受け取ると、
子狐がそれを誰から貰ったか、すぐ理解しました。
「あー、なるほどねー。スフィちゃんだぁ」
スフィンクスが寄越すボトルは、開け方にコツがあって、それさえ覚えれば簡単なんだよ。
子狐からボトルを受け取ると、キキュッ、ポン!
細くて綺麗な指でもって、ドワーフホトは簡単に、それのフタを開けてしまいました。
「ほぉ〜ら。取れた」
カラカラカラ、チリチリチリ。
美しいガラスのスイートボトルから、美しいレースのアンティーク皿に、金平糖が落ちていきます。
カラカラカラ、チリチリチリ。
淡い色した星のかけらが、優しい夜明け色した空に、綺麗な音をたてて落ちていきます。
星のかけらの金平糖が、夜明けの空のアンティーク皿に広がっていく様子は、
それはそれは、美しいものでした。
「はい。どーぞ」
ドワーフホトは夜明けの淡い星空を、ひとまずここで食べる分として、子狐に渡してやりました。
コンコン子狐は大満足!フタを開けてくれたドワーフホトの、アゴだの鼻だのをベロンベロン。
尻尾を振って、舐め倒しました。
「はははっ、やだぁ!そんなに私の顔舐めたら、子狐ちゃん、私のファンデ食べちゃうよぉ!」
最終的に子狐とドワーフホトは、店主の魔女のおばあさんと一緒に、
星のかけらの金平糖を仲良く分け合って、甘いココアや琥珀の紅茶、ウィンナーコーヒーなんかでもって、美しく、楽しく、穏やかに、お茶会を存分に楽しんだとさ。 おしまい、おしまい。
1/10/2025, 5:38:12 AM