かたいなか

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「未来への鍵垢、未来への鍵外し、未来への鍵点検。『鍵』っつー単品をネタにするだけでなく、SNSとか点検動作とかの物語も書けそうだな」
まぁ、今回はガッツリ、ファンタジー爆盛りのフィクション書いたけどさ。
数回消して書き直してまた消してを繰り返した某所在住物書きは、最終的に投稿文章の妥協案を探し出して、文字通り「未来への鍵」の物語を完成させた。

個人的には茶会のような、オシャレなハナシを書きたかったのだ。それこそ糖分マシマシな、エモいものをたまにはひとつ、書きたかったのだ。
ただの毎度恒例食い物フィクションである。

「まぁいっか」
物書きは再認識した。 自分とエモは相性が悪い。

――――――

昨日投稿分からの続き物。最近最近の都内某所、魔女のおばあさんの喫茶店が舞台です。
稲荷神社の子狐が、金平糖のボトルのフタを取ってほしくて、前回、喫茶店にご来店。

取ってもらった金平糖は、1人のお客さんと、
コンコン子狐と魔女の店主さんとでもって、
仲良く分け合って、カリカリ、コリコリ。
甘い金平糖を幸福に、おなかに収めた子狐は、すっかり満足してしまって、
店主の膝の上で、ヘソ天して、ぐーすぴ。
お昼寝など、始めてしまったのでした。

ところで「1人のお客さん」、何が目的で魔女の喫茶店に来たのでしょう?
そこからが今回のお題の、はじまり、はじまり。

魔女の喫茶店に来ていたお客さん、ビジネスネームをドワーフホトといいますが、
店主の魔女・アンゴラに、レモンの薄黄色に美しく光る鍵を手渡して、言いました。
「スフィちゃんがねぇ、『頼まれてたヤツが完成したから、アンゴラに持ってけ』、ってさー」

客のドワーフホトが持ってきたのは、
魔女の喫茶店で新しいサービスを始めるための、
すなわち、文字通り、「未来への鍵」でした。
「あらあら。ありがとう」
これで、新しい商売ができるわ。
店主のアンゴラ、レモンの鍵と、その説明書とを受け取って、穏やかに優しく笑いました。

くしゅっ、くしゅん。
「商売」の漢字二文字に反応して、お昼寝中のコンコン子狐、くしゃみなどして目を覚まします。
さすが商売繁盛・五穀豊穣の稲荷狐。そういう言葉を、まるで「犬にジャーキー」、「猫にちぅーる」のように、本能的に好むのです。
周囲を見渡して、「商売」を探して、見つからないので毛づくろい、からの……
途中で電池が切れまして、ぐーすぴ。またヘソ天をキメてお昼寝を再開したのでした。

「最近ね」
アンゴラが言いました。
「心魂を濁らせて私の店に来るひとが、本当に、ほんとうに、多くなってしまったのよ」

ドワーフホトが持ってきた「未来への鍵」、「魔女の喫茶店の新サービス」を、
店主アンゴラ、アンティークの不思議なオルゴールに差し込んで、カチリ、回しました。

すると、どうでしょう。
ポン、ポロン。ポン、ポロン。
オルゴールが小さな小さな金属音を奏でるたび、
コン、コロン。カタン、コトン。
オルゴールの下に付けられた引き出しの中に、レモンの色した少し大きめの金平糖が、ゆっくり、ゆっくり、溜まっていくではありませんか!

「周囲の人の心魂の、錆だの渋だのを研磨して、レモンピールの苦みと香りに変換する鍵よ」
店主のアンゴラが、ドワーフホトに説明します。
「金平糖が溜まっているように見えるけれどね。
見た目に騙されてはダメよ。レモンだもの」

さぁ、どうぞ。
オルゴールの下の、引き出しを開けて金平糖を1個、つまみ上げた店主のアンゴラ。
指の中で金平糖を転がして、イタズラに微笑すると、淹れたばかりの紅茶にポトリ。
これみよがしに、落とします。
さぁ。
レモン金平糖入りの紅茶はティーカップソーサーにのせられて、カタン。ドワーフホトの目の前へ。

「わぁ。ちゃーんと、レモンだ」
差し出された紅茶の香りを吸い込んで、少しふーふー吐息で冷まして、
ドワーフホトが、味見をします。
「あ゛ぅ! だめ、コレ、 だめぇ……!」
ひとくち含んだ途端、極限まで凝縮されたレモンの渋みと苦みと酸味が、ドワーフホトの味覚という味覚を占領して、チクチク攻撃し始めました。
「うぅ〜ぅ! 酸っ、渋……分かんないぃー!」

そういえば「未来への鍵」を受け取ったとき、説明書も一緒に貰ったような……?

「あら」
口を押さえて悶絶しているドワーフホトに、大至急ホットミルクを出動させて、
魔女のアンゴラ、説明書を確認しました。
「あらあら。ごめんなさいね」
未来の鍵の説明書には、こう書かれていました。

『!!Danger!!
飲み物1杯(約200〜400ml)につき、
かならず金平糖をすり潰して、粉にして、ひとつまみ(0.2〜0.4g)だけ入れること!
※ウチの駄犬に金平糖まるまる1個ブチ込んだ紅茶飲ませたら、酸味とシブみと苦みで11分死んだ』

1/11/2025, 6:13:31 AM