かたいなか

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12/23/2024, 6:33:00 AM

「某100均にも売ってるちゃんぽん鍋キューブに、きざみゆず入れたら意外と美味かったわな」
冬至の「ゆずの香り」から2日離れた本日である。
某所在住物書きは七味のキャップを開けて、鼻を近づけ、首をカックリ。
ゆずが入っていた気がしたのだ。どうやら物書きの手持ちの七味は「ゆずの香り」ではなく「陳皮(みかんのかわ)の香り」であったらしい。

「『ゆず胡椒の香り』なら、来年、書けるかもな」
物書きは閃いたが、メモは取らなかった。
「ゆず胡椒」は、ゆずか胡椒、どちらかが入っていないハズであったのだ――どっちだったっけ??

――――――

最近最近のおはなしです。都内某所のおはなしです。
某稲荷神社敷地内の一軒家に、人に化ける妙技を持つ化け狐の末裔が、家族で仲良く暮らしており、
そのうち末っ子の子狐は、善き化け狐、偉大な御狐となるべく、絶賛修行中。
稲荷のご利益豊かなお餅を作って売ったり、狐の術のお勉強をしたり、それからお母さん狐の仕事をちょっと手伝ったりも、しておったのでした。

その日コンコン子狐は、おばあちゃん狐が作ってくれた稲荷寿司を、ちゃむちゃむ、ちゃむちゃむ。
胃袋に次々丁寧に、幸福に収めておったところ、
漢方医として病院で仕事をしているお父さん狐が、ベロンベロンに酔い潰れて、帰ってきました。
たしか、今日で4徹の5連勤です。人間のお医者さんが病気にかかってしまって、その穴を、お父さん狐がこっそり埋めたのです。

「がんばった、わたし、がんばったよ……」
くぁぁ、くわぁぁん。 お父さん狐は弱々しく、お母さん狐を呼んで鳴いて、パッタン。
狐に戻ってグースピ、眠ってしまいました。
「かかさん。かかさん……」

ところでお父さん狐、なにか小さなボトルを抱えていますね。 宝物でしょうか。

「ゆずだ!」
コンコン子狐、お父さん狐を起こさぬよう、慎重にボトルを引っ張り出しました。
「ゆずの、かおりがする!」
きっと、おいしいジュースか何かです。
お父さん狐は口から何か、心か魂のようなものを吐き出して、眠ったまま動きません。
丁度いいや!子狐はそのまま、ゆずの香りのするボトルを引きずって、引きずって、
自分の宝物にすべく、持ってってしまいました。

「いいかおり。いいかおり」
コンコン子狐、ボトルの首に噛みついて、引きずって、お父さん狐から離れます。
「ゆずジュース、どんなあじだろう」
誰にも取られないように、廊下を通り抜け、黒い穴の中も通り抜けて、どこかの職場にたどり着くと、

コロコロコロ!ぽんぽんぽん!
子狐の侵入に気付いた24と1個のミカンが、たちまち子狐を取り囲んで、
ベルトコンベアの上の梱包物よろしく、ボトルごと、子狐をどこかへ連れてゆきました!
「なにするの、なにするのっ!」

なんだか非現実的な展開ですね。
しゃーないのです。こんなフィクションで、そんなファンタジーなのです。気にしてはなりません。

コロコロコロ、ぽんぽんぽん!
ゆずの香りするボトルを抱えた子狐は、24と1個のミカンにのせられて、廊下を移動し扉を潜り、
「経理部」と書かれたブースへ向かいます。
「あら、かわいい子狐ちゃん」
「不知火とポンデコさんに捕まったの?不運ねぇ」
人間や猫耳の従業員が、ミカンコンベアの上の子狐をチラリ見て、すぐ仕事に戻ります。

「んんー?誰が俺様の職場に潜り込んだと思ったら、おまえ、稲荷神社の子狐じゃねぇか」
最終的に子狐は、24と1個のミカンによって、
経理部の窓際にある、コタツの前に到着。
「この俺様に、ゆずの酒でも献上に来たのか?
よしよし。良い心がけじゃねぇの」

コタツの主、女性のコタツムリさんは上機嫌。
水晶の文旦と、光り輝く日向夏をキュッキュと拭いて、磨いて、丁寧に元の場所に戻すと、
小さな酒杯を、コタツの中から取り出しました。
「さぁ、子狐。俺様にお酌したまえ」

「オシャク?」
「そう、お酌。お前が持ってるそのボトル、お酒」
「やだっ!これ、キツネのものだやいっ」

「おまえ、酒飲めるの?」
「のめるもん!かかさんは、『こどもだからダメ』っていうけど、キツネ、おさけ、のめるもん!」
「それをお前の世界では『未成年』てゆーの」

ほら。美味しい美味しいハウスみかんやるから、飲めないお酒は、こっちゃ寄越しなさい。
コタツムリのお姉さん、コタツの上にあるミカンのカゴから、色も形も良いみかんをザッカザッカ抜きまして、コンコン子狐にくれてやります。
子狐は大喜びでミカンをがぶちょ!
胃袋にぜーんぶ納めまして、かわりにお父さん狐が抱えておった小さなボトルを、コタツムリさんに渡しましたとさ。

12/22/2024, 4:59:21 AM

「星空、空模様、空が泣く、あいまいな空……
『空』が付くだけで、これで、9例目なんよ」
ここに天気ネタ・雨ネタが入れば、ほぼ1ヶ月に1〜2回、相手にしている「空」。
これまで何度遭遇したか分からぬそれは、「書く習慣」アプリの常連と言える頻度である。
空と雨と年中行事と、エモと恋愛ネタに関しては、この1年で、何度も出題されてきた。

「今までで、どんな空を書いてきたっけ」
物書きが上を見たとて、そこに大空は無い。
「つーか、どういう空を、『書いてない』っけ?」
書き尽くした感のある空ネタの、新しいネタはどこにあるだろう?

――――――

最近最近の都内某所、某アパートの一室、夜。
部屋の主を藤森といい、去年の暮れまで諸事情で、生活感ミニマムの空間で過ごしておったのだが、
今年の5月でようやく諸事情の問題が完全解決。
少しずつ、家具やら家電やらが、増えてきている。

というのもこの藤森、執着と所有欲の強い元恋人に、自分の職場にまで押し掛けられたワケで。
いつ住所がバレても良いように、
いつでも夜逃げできるように、
一般サイズの冷蔵庫はおろか、消費に時間がかかってしまう大容量調味料さえ、1台も。1本も。

おかげでちゃんこ鍋キューブを転用した鶏そばや、
ミネストローネのフリーズドライを流用したリゾットにピザトースト等々、
「調味料を使わない料理」のレパートリーは、ここ数年で増えた、増えた。

1.5リットルの醤油など購入して
その直後に元恋人に部屋がバレようものなら
シンクに買ったばかりの醤油をドッパドッパ捨ててボトル容器も処分する必要があるのだから、
砂糖や塩の袋も、酢や醤油のボトルも、味噌のパックも。藤森の部屋で探すのは、困難であった。
『つい最近までは』。

「物が増えてきた」
オニオンポタージュの粉スープで作ったクリームパスタを食いながら、惰性で料理番組など聴きつつ、
藤森はひとり、部屋を見回して、ぽつり。
「去年は、この半分の家具も無かったのに」
元恋人との諸事情、すなわち恋愛トラブルが完全解決した事実を、しみじみ味わっている。
すなわち追われるリスク、家を特定される不安から開放された幸福を。

テレビ画面に、目を向ける。
料理研究家がコメントしながら、濃い口醤油を大さじ1杯、鍋に回しかけている。
「もう、醤油も大容量ボトルで買えるな」
ここで突然のお題回収。
「そうだ。 買えるじゃないか、もう。 醤油」

明日、「大空」晴れて放射冷却の気温だが、
今こそ、その大空の下で醤油を買いに行こう。


時間が過ぎて朝になり、晴天の都内某所である。
「何年ぶりだ、醤油をリッターで買うなんて?」
藤森はコロコロ、ころころ、買い物用キャリーバッグを引いて、近所の馴染みのスーパーへ。
「ひとまず『さしすせそ』と、ソースと、みりんと……あとは何だ、コショウ?油??」

新居に越してきた家族の、料理担当の方と言われれば信じてしまう程度の種類の調味料を、
つまりだいたい十数種類のボトルやらパックやらを、ざっかざっか、ぽいちょぽいちょ。
カゴに放り込んで、少し嬉しそうな顔で、セルフレジへ並んでタッチ決済である。
「ああ。素晴らしい。醤油が買える」

一部の藤森と面識のない店員はキョトンとして、
この醤油やらコショウやらアマニ油やらを購入していった客を推理・推測・想像している。
『八丈島とか離島から来た人かしら』
『いや。地方の田舎から上京してきたばかりかも』

「醤油だ。みりんだ」
コロコロ、ころころ。少し上機嫌な藤森である。
スーパーから出て、買い物用キャリーバッグを引いて、大空晴れた放射冷却の気温の下を歩く。
「何を作ろう。何が作れる?」
そのままアパートの自宅へ帰還し、キッチンにポイポイ、ぽいぽい、購入物を並べると、

「……そもそも冷蔵庫の中の食材は?」
途端、自分が「調味料『しか』」購入していなかったことに気付き、今年買ったばかりの冷蔵庫を開けて、中を見渡して脳内で食材をリスト化、
する必要も無いほどスッカラカンであったので、
「なにをつくる……?」
スーパーに、秒でとんぼ返りして、肉を食うか魚を食うかで数十分、葛藤しておったとさ。

12/21/2024, 4:24:52 AM

「『ラベルの音』で、当初、書きたかったワケ」
うまいこと考えたと思ったんだ。
某所在住物書きは、小瓶にラベルを貼るジェスチャーをしながら弁明した。
「茶っ葉を小分けにして、テープでラベル作って、それを貼る音とか。
スーパーの値引きの時間に、店員が値引きラベルを作って、それが端末から出てくる音とか。
書けると思ったワケ。実際書けたワケよ」

結局「ラベル」ではなく「ベル」に戻したのは、完成品に対して掲載の納得ができなかったから。
「言うて、『ベルの音』の方も、うん、うん……」
もう少し書ける気がする。 これを白紙にして、他の物語を書くべきだとも思う。
物書きは苦悩しつつも、「少なくともマシな方」を投稿する判断をとった。
要するに、こだわれば、キリが無いのである。

――――――

私が走ってるソシャゲで、来週のガチャ予報PVが2個、配信された。1個は年末の復刻だ。
もう1個は、新規絵と新規ボイス。
「ドワーフホトのウィンターティーパーティー」。
ドワーフホトっていうビジネスネームのキャラがいて、その子がメッッチャかわいい冬のお嬢様服を着て、貴族な部屋でお茶会を開催、っていう。

カワイイけど私の推しではない(暗示)

PVもキレイだ。
ダークレッドとダークブラウンを基調にした部屋で、ドワーフホトお嬢様が、呼び鈴をチリン。
小さなハンドベルの音で、不知火タイプのミカンがポンポン、24と1個で跳ねてきて、
お菓子やポットをのせたワゴンを押したり、
お嬢様のテーブルにクロスを敷いたり、
お茶の準備をしたり。

カワイイ。推しではない(強めの暗示)

チリン。PVの中のお嬢様が、呼び鈴を鳴らす。
ミカンは舞台の奥に下がって、お茶会開始。
ウサギ系のビジネスネームを持つキャラが、それぞれカワイイ、あるいはカッコいいお召し物で、
名前が紹介されて、レアリティーが紹介されて、
最後に執事の格好してお茶の給仕とかをする私の推し2名が、サプライズで登場。

タバコのカッコいいオッサン(?)と、
その部下のカッコいいお兄さんだ。
推しだ(事実) 推しが執事だ(これも事実)
こちらはガチャでの登場じゃなくて、
ガチャと連動して開催されるイベントで、報酬としてゲットできるらしい。
良かった。ヨカッタ。私の財布は、年を越せる。
貯金額を微増させたまま、終了することがでる。

……ドワーフホトの衣装カワイイ(推しじゃない)
私もお茶会したい(特にお菓子)

で、繰り返し繰り返し、何度かPVを視聴して、
職場の昼休憩中に、お茶会どーのこーの、お菓子云々、推し執事って呟いてたところ、
その欲望を、同僚に聞かれたらしい。
「そのPVに映ってるの、シフォンとマカロン?」
同僚は、名前を付烏月さん、ツウキさんといって、お菓子作りが今年のトレンド。
今月で離職しちゃうけど、これまで何度も、職場に手作りスイーツを持ってきてくれた。
「再現スイーツ、作ってあげよっか?」
多分呼び鈴も、似たやつ、準備できるよん。
最後の感謝セールみたいに、付烏月さんは気前の良いことを提案してきた。

「再現スイーツ?」
「白いシフォンとチョコのシフォン。
かわいいマカロンとタルトショコラ」
「おお、おおお」

「小さなハンドベルの音チリン」
「おををを、ホト様、ほとさま……!」

「執事の服は無いからゴメンね」
「大丈夫。作れるひと知ってる」
「つくれる?」
「藤森先輩に着せよう。先輩に着せて、ツー様やってもらって、ル部長は我慢する」
「ルブチョ???」

「大丈夫だよね??お世辞じゃないよね??」
「大丈夫、作るけど、気合い入ってるね?」
「だって再現ティーパーティー……」

あーだこーだ、云々。
ソシャゲのPVから、リアル茶会のハナシになって、それから、コスがどうの、こうの。
今日もウチの職場はゆっくり時間が過ぎていく。
ひとまず茶会の日程は、私の先輩の予定次第ってことでまとまったけれど、
先輩が執事コスをしてくれるかは、聞きそびれた。

12/20/2024, 3:49:45 AM

「何度でも言うが、俺は別に、ぼっちクリスマスでも寂しも何ともねぇからな」
この時期に「寂しさ」とか、当てつけか、んなワケ無いな、ただの毎度安定のエモネタだな失礼しました。
某所在住物書きはスマホに届いた題目の通知文を見ながら、今日も何を書くべきか悩み抜いていた。
感覚として、このアプリはエモネタと天候ネタと年中行事あたりで半数である。きっと数日後は「クリスマス」、31日頃には大晦日っぽい何かであろう。

「どうせ来る行事ネタから逆算して、それに対して『寂しさ』を書くことも、できるっちゃできるが」
そこまでして、クリスマスネタ組みたかねぇわな。
ガリガリガリ。今日も物書きは苦悩で頭をかく。

――――――

「ここ」ではない、どこかの世界の、「世界線管理局」なる非常に厨二ちっくな職場からスタート。
法務部執行課、実働班特殊即応部門のオフィスの早朝はとても静かで、たったひとり、外付けキーボードをパチパチ、ぱちぱち。
コーヒーを飲みつつ、指を滑らせている。
ビジネスネーム制が採用されているこの職場。
一度離職した彼に以前付けられていた名前は、「カラス」、あるいは「ハシボソガラス」であった。

「おはようございます」
もうひとり、従業員が入ってきた。
彼はビジネスネームを「ツバメ」といった。
「おとといは、ススキまんじゅう、ごちそうさまでした。おばあさまの故郷の菓子と聞きましたが」

「俺にしては、なかなか上手に作ったでしょ?」
パチパチパチ。カラスは相手に視線を合わせない。
己の為すべき業務だけを為し、始業時刻前にオフィスから」抜ける予定なのだ。
というのもこのカラス、来年1月1日から復職予定の男なもので、「正式には」、「まだ」、ここの従業員ではないのである。
「次からマニマニ、お金取るよん。1個200円」

「カラス前主任。 管理局から離れている間、」
先客のデスクに自分の荷物を問答無用で置くツバメ。そもそもカラスが座って仕事をしている席は、元々ツバメのデスクである。
カラスは勝手にオフィスに来て、勝手にツバメのパソコンで、必要な仕事をしていたのだ。
「一体、あなたに何があったのですか。

『あの』『図書館』で、長いこと非常勤として、私達のサポートをしてくださっていたと聞きました。
昔のあなたは『歯車』で、笑顔も泣き真似もすべて計算づくだった。でも図書館をお辞めになった今は、心から私達に接してくださるようになった」

あの図書館で、何があったのですか。
何があなたを、機械から人間に変えたのですか。
質問攻めのツバメに、カラスは数秒、無言。
「今日は、レモンパイ、持ってきたよん」
カラスが言った。
「1個だけ、少〜しワサビを隠したパイを仕込んでるから、楽しんで食べてね」
最後までツバメの顔を見なかったが、
カラスの視線には、寂しさが混じっていた。


――…少し時間を進める。
その日の間の都内某所、某職場の某支店、昼。

後輩もとい高葉井という女性が、今月で離職する同僚から貰ったレモンパイを、
チマチマ、ちまちま、小さく賞味している。
同僚は名前を付烏月、ツウキといい、
彼が作ってくる菓子は毎回絶品であったのだ。

これが、今年いっぱいで、残り2週間足らずで、
職場の昼休憩から消えるのである。

「おいしいよぅ。おいしいよぅ……」
チマチマ、ちまちま。高葉井は完全に寂しさの沼の中、寂しさの深海の底。
「これが、あと少しで、食べられなくなっちゃう」
来年から一体、何を楽しみにして、この支店に来れば良いというのだ。チマチマチマ。
高葉井は落ち込んでいた。
高葉井にとって、付烏月との仕事の付き合いは1年にも満たなかったが、付烏月は確実に高葉井の胃袋をガッシリつかんでいたのだ。

「あのさ。後輩ちゃん……」
いっぱいあるよ。そんな大事に食べなくていいよ。 
向かい側の付烏月の目は、あわれみでいっぱい。
「俺、図書館に戻るだけだよ。たまにしか図書館に居ないけど、会えなくなるワケじゃないよ……」
ねぇ、そんな気の毒な顔しないでさ。
俺が向こうに行っても、遊びに来れば良いんだよ。
ポンポン、高葉井の肩を叩く付烏月であったが、
高葉井は相変わらず、寂しさの渦中。

ねぇ、どうしよ。 支店長に救援を求める。
放っておきたまえ。 支店長は気にしない。
ただ付烏月から貰ったレモンパイを、紅茶で楽しむだけであったとさ。

12/19/2024, 3:52:09 AM

「夏と冬は一緒に来ます。春と秋が消えても、きっと長い夏と極端な冬は一緒に残ります。
暖冬は一緒に大雪の季節も意味している可能性があります。冬は一緒にコタツ。……あとは?」
厳冬、暖冬、初冬に晩冬、番外編で冬瓜。
どの冬でハナシを書くのが簡単だろう。
某所在住物書きは今日も今日とて、途方に暮れる。

そもそも「冬」のお題はこれで、少なくとも3回目。「冬になったら」と「冬のはじまり」を先月書いた――ここに「雪」を加えれば更に増える。
「で、今月と、来月で、『冬』はあと……」
まだ「冬」は続く。物書きは知っていた。
ということで、「冬は一緒に『冬』のお題のネタ探し」なんてどうだろう。

――――――

東京も、雪が降った。
私は見れなかったし、撮れなかったけど、
呟きックスのトレンドは一気に賑わって、完全にお祭り状態。動画もたくさん投稿された。
さすがに、東京でコレが積もると、交通は麻痺するしスリップ事故は多発するしで散々だけど、
雪国出身の私の先輩の故郷は、道路も建物も街路樹も全部白くて、全部キレイに見えて、
それから、ええと、それから、そうだ。

雪道を全力疾走するお姉さんと
雪道をチャリでゆっくり走行する高齢男性がいた。

なんだろう(全日本冬景色違和感選手権決勝)
あれは何だったんだろう(スーパー雪国民の部)
真相を突き止めるべく、私、先輩の後輩こと高葉井は、「冬は一緒にコタツでミカン」の撮影クルーとともに、ジャングルもとい雪原の奥地へ……

「やめておけ」
「なんで?」
「雪道を足で走るのはともかく、自転車で走行する方法は、もうロストテクノロジーだ」
「なんで……??」

雪国出身の先輩の、アパートで生活費節約術としてのシェアディナーを一緒に食べながら、
先輩と一緒に、その日の夜のニュースを観てたら、
「例年の3倍の積雪も」ってテロップと一緒に、豪雪な道路と、雪かきの真っ最中の一家と、
それから、雪道を平然とロースピードで走行する、自転車おじーちゃんの映像が流れた。

思い出されるのは、今年の2月の終わり。2月28日頃のハナシだったと思う。
先輩の帰省に同行して、その日ようやく咲いた「春の妖精さん」、フクジュソウを見て、
写真撮って、雪を見て、木を見て、田んぼが埋まってるっていう雪原を見て、また花を見た。

で、その背景のメッチャ遠くに、
雪道をメッチャ全力で走ってるお姉さんと、
ゆっくり自転車を運転する高齢者さんがいたのだ。
懐かしいなぁ。 元気にしてるかな。

「自転車『は』、ロステクってことは、
先輩、雪道は普通に走れるの?大丈夫なの?」
「滑らず走る方法を知っているから。問題なく」
「革靴は?パンプスとかピンヒとかは?」

「雪道をハイヒールで歩くのは非常に危ない」
「いやいやいや、そもそも雪道を歩くこと自体、バチクソに危ないからね??」
「雪道を走ること自体は、一部、日常の範囲内だ」
「日常じゃない。それ、普通じゃない」

「お前も習得するか?まず安全に転ぶ方法をだな」
「むり。遠慮」

安全に転ぶ方法は、東京でも有用でだな。
私をイジりたいのか、それこそ今後の安全のために情報提供しておきたいのか、
先輩はシェアディナーの手を止めて、右手でトテトテ歩く人を真似て、左手でそれを指さして、
ツルッ。雪道でコケたときの注意点を力説してる。

「先輩」
取り敢えず、ごはんの方に集中したいから、
私は先輩の目を見て言った。
「ルブチョって単位知ってる?」
私の言葉に先輩は、指を止めて、「え?」の表情。
ひとまず、「冬は一緒に凍結路面歩行の講習」のシチュエーションは、回避したと思う。多分。

「るぶちょ?」
「うん。ルブチョ。イチミ2振りで1ルブチョ」
「なんだ、それ」
「ルー部長の辛味の単位。辛いのが好きなの」
「はぁ」

「仕事が詰まったり、イライラしてたりすると、普通に5ルブチョくらいまで増える」
「ごるぶちょ……」

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