「夏と冬は一緒に来ます。春と秋が消えても、きっと長い夏と極端な冬は一緒に残ります。
暖冬は一緒に大雪の季節も意味している可能性があります。冬は一緒にコタツ。……あとは?」
厳冬、暖冬、初冬に晩冬、番外編で冬瓜。
どの冬でハナシを書くのが簡単だろう。
某所在住物書きは今日も今日とて、途方に暮れる。
そもそも「冬」のお題はこれで、少なくとも3回目。「冬になったら」と「冬のはじまり」を先月書いた――ここに「雪」を加えれば更に増える。
「で、今月と、来月で、『冬』はあと……」
まだ「冬」は続く。物書きは知っていた。
ということで、「冬は一緒に『冬』のお題のネタ探し」なんてどうだろう。
――――――
東京も、雪が降った。
私は見れなかったし、撮れなかったけど、
呟きックスのトレンドは一気に賑わって、完全にお祭り状態。動画もたくさん投稿された。
さすがに、東京でコレが積もると、交通は麻痺するしスリップ事故は多発するしで散々だけど、
雪国出身の私の先輩の故郷は、道路も建物も街路樹も全部白くて、全部キレイに見えて、
それから、ええと、それから、そうだ。
雪道を全力疾走するお姉さんと
雪道をチャリでゆっくり走行する高齢男性がいた。
なんだろう(全日本冬景色違和感選手権決勝)
あれは何だったんだろう(スーパー雪国民の部)
真相を突き止めるべく、私、先輩の後輩こと高葉井は、「冬は一緒にコタツでミカン」の撮影クルーとともに、ジャングルもとい雪原の奥地へ……
「やめておけ」
「なんで?」
「雪道を足で走るのはともかく、自転車で走行する方法は、もうロストテクノロジーだ」
「なんで……??」
雪国出身の先輩の、アパートで生活費節約術としてのシェアディナーを一緒に食べながら、
先輩と一緒に、その日の夜のニュースを観てたら、
「例年の3倍の積雪も」ってテロップと一緒に、豪雪な道路と、雪かきの真っ最中の一家と、
それから、雪道を平然とロースピードで走行する、自転車おじーちゃんの映像が流れた。
思い出されるのは、今年の2月の終わり。2月28日頃のハナシだったと思う。
先輩の帰省に同行して、その日ようやく咲いた「春の妖精さん」、フクジュソウを見て、
写真撮って、雪を見て、木を見て、田んぼが埋まってるっていう雪原を見て、また花を見た。
で、その背景のメッチャ遠くに、
雪道をメッチャ全力で走ってるお姉さんと、
ゆっくり自転車を運転する高齢者さんがいたのだ。
懐かしいなぁ。 元気にしてるかな。
「自転車『は』、ロステクってことは、
先輩、雪道は普通に走れるの?大丈夫なの?」
「滑らず走る方法を知っているから。問題なく」
「革靴は?パンプスとかピンヒとかは?」
「雪道をハイヒールで歩くのは非常に危ない」
「いやいやいや、そもそも雪道を歩くこと自体、バチクソに危ないからね??」
「雪道を走ること自体は、一部、日常の範囲内だ」
「日常じゃない。それ、普通じゃない」
「お前も習得するか?まず安全に転ぶ方法をだな」
「むり。遠慮」
安全に転ぶ方法は、東京でも有用でだな。
私をイジりたいのか、それこそ今後の安全のために情報提供しておきたいのか、
先輩はシェアディナーの手を止めて、右手でトテトテ歩く人を真似て、左手でそれを指さして、
ツルッ。雪道でコケたときの注意点を力説してる。
「先輩」
取り敢えず、ごはんの方に集中したいから、
私は先輩の目を見て言った。
「ルブチョって単位知ってる?」
私の言葉に先輩は、指を止めて、「え?」の表情。
ひとまず、「冬は一緒に凍結路面歩行の講習」のシチュエーションは、回避したと思う。多分。
「るぶちょ?」
「うん。ルブチョ。イチミ2振りで1ルブチョ」
「なんだ、それ」
「ルー部長の辛味の単位。辛いのが好きなの」
「はぁ」
「仕事が詰まったり、イライラしてたりすると、普通に5ルブチョくらいまで増える」
「ごるぶちょ……」
12/19/2024, 3:52:09 AM