かたいなか

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10/4/2024, 3:16:16 AM

「去年は『衛星列車ともう一度巡り会えたらどうする』みたいなハナシを書いた記憶がある」
「誰か」と、巡り会えたら、
巡り会えたら「やりたいこと」、
巡り会えたら幸運/悪運な「何か」、
巡り会え、タラ。 巡り会えた、らっこ。
他に何か書けそうな案あったっけ。某所在住物書きは焚き火のアプリでパチパチ、ぱちぱち。
ものの試しで思考を文章化などしている。

個人的に欲しい「巡り会わせ」は勿論宝くじ。
当たればガチャの自爆など、すり抜けも、確率も。

「……タラは地味に猫のハナシに使えそう」
パチン。焚き火アプリの効果音が弾ける。
もう少し簡単に投稿しやすいネタと、複数巡り会えたら、どれだけラクができることだろう。

――――――

都内某所に、私が推してるゲームの同人時代の聖地になってる、私立図書館がある。
私の今の同僚、付烏月さん……ツウキさんの前の職場であり、私と今年の2月まで長いこと一緒に仕事してた藤森先輩の前々職でもあった。
昨日、そこの館長さんと初めて出会った。
付烏月さんとなにやら2人して話をしてたのだ。

「奇跡をもう一度」。夜にフォロワーから聞いたことだけど、なんとその館長さん、私の推しゲーに、そのひとがモデルのキャラが居るとのこと。
言われてみればガチャで分厚い本のページをバラバラする自称魔女さんに似てた。
聖地図書館内でのエンカウント率があまりにも低過ぎるせいで、「巡り会えたらそれだけでガチャ召喚触媒」って派閥があるらしい。
なにそれ私知らない(ガチャれば良かったの後悔)

ともかく。私は昨日、某私立図書館の低エンカウント率な館長さんと遭遇したワケだ。
それを、コーヒーと低糖質ケーキが美味しいカフェで相席した先輩に話したら、バチクソ驚かれた。
「会えたのか、あの館長と?!」
事実として、ホントに、前々職の先輩も驚くくらい低確率だったらしい。 ガチャれば良k(略)

「低確率も何も、」
おくちパックリで藤森先輩は言った。
「一部の来館者から魔女と噂されていたようだが、
事実として、あのひとは本当に魔女だ。神出鬼没で、つい先程まで居た筈の場所に居ない」
私もあの図書館には1年だけ世話になったが、ほぼほぼあそこの仕事上の責任者は副館長だったよ。
先輩はそう言ってどこか遠くを、唖然とした目で。

トップが神出鬼没(ところで:推しゲーの局長)
実質の責任者が、副( :自称魔女で神出鬼没)
居るはずの場所に居ない(そのせいで副局長略)

「私もずっと、離職してから会えていない」
「館長さんに?」
「彼女から借りていた、私物の本がある。『不要になったら返してほしい』と」
「図書館に勤めてるんでしょ?司書さんとかに『渡しといて』って言えば良いのに」

「それができれば苦労しない」
「くろうしない」
「本当に神出鬼没なんだ。『渡してほしい』からの、数週間不在からの、いつの間にか館長の机から消失して館長の手に、『渡っていない』」

「先輩」
「なんだ」
「ウチの魔女局長がご迷惑をおかけしております」
「きょく、なんだって?」

そんなこんなで、ずっと会えずじまい、本を返せずじまいさ。 先輩がため息ひとつ吐いて言った。
先輩がおもむろにバッグから出したのは、丁寧に紙製のカバーが付けられた少し分厚い本。
レアエンカウントの館長さんに巡り会えたらすぐ返せるように、いつも持ってるんだと思う。

「花の本だ」
パラパラパラ。先輩はページを流しめくった。
「恋愛トラブルで精神的に落ちていた頃、在来・固有種の写真や著者のコラムに世話になった」
心が根腐れしそうになったら、根腐れの原因から離れる。離れてもっと良い場所で咲く。
人間は歩ける多年草なのだから。
小さなコラムを指さして、先輩は穏やかに笑った。

「病院に居るよ」
先輩に、館長さんの居場所を教えたけど、
先輩は、完全に巡り会えない前提の表情をしてた。
実際このおしゃべりの後で、先輩は私が伝えた病院の私が伝えた病室に向かったらしいけど、
神出鬼没の魔女さんらしいといえばらしい後日談として、先輩はタッチの差で、
「あと数十分早ければ」、巡り会えたらしい。

10/3/2024, 3:02:44 AM

「エモネタ多い気がするこのアプリだけど、奇跡や運命なんかは、3月から数えてコレが初出よな」
まるで、何度も引いてSSRは揃った常設ガチャの、何故か1枚だけ出てこないSRのようだ。
某所在住物書きは過去投稿構分を辿り、今まで一度も「奇跡」が出題されていないことに言及する。

「俺としては『もう一度奇跡』なんざ例の『あと一度だけ』から始まる歌と、ソシャゲのリセマラよ。
必要SSR2枚抜き。確率約0.05%が2枚。ほぼ奇跡じゃん。……『奇跡をもう一枚』よな」
物書きはポツリ、呟いてスマホをいじる。
ところで去年は「無くなりそうな調味料を片付け目的で全投入したスープがバチクソ美味かった。再現の奇跡をもう一度」を書いた。 では今年は?

――――――

たまにお世話になってる漢方医さんから、自律神経と寒暖差疲労に効く薬を処方してもらって、
ついでに原因特定困難かつバチクソ酷い倦怠感で入院してるっていう本店の陰湿イヤガラセ常習犯、五夜十嵐の入院風景をチラ見した帰りの通路で、
偶然、別の入院部屋のドアが開いたとき、
チラリ目に入った光景から始まったハナシ。

3月から同じ支店で一緒に仕事してる付烏月さん、ツウキさんが、お見舞いのパイプ椅子に座って、
元気そうな黒髪長髪美女さんと笑って話をしてて、
付烏月さんに美女さんのことを聞いたら2人して
「生き別れの姉です/弟です」
と冗談を言われ、私が「いやいやウソでしょ」と反論してから、徐々に膨らんでったフィクション。

ちなみに正解は付烏月さんの前職のひと。
都内の私立図書館の館長さん。
奇跡的な偶然で、バチクソなんとなく受診したら、
これまた奇跡的に初期初期のガンが見つかって、
奇跡的に転移がどこにもみとめられてないと。
「軌跡をもう一度」。手術も成功したことだし、二度と再発しなければ良いね。そんな経緯らしい。

…――ふたりはこの病院で生まれ、館長さんの方がミスで取り違えられた。(※付烏月さんの冗談)
取り違いの事実に気付かないまま小学校に入学し、中学校を卒業して、奇跡的に、ふたりは一度同じ大学の同じゼミに入った。(※館長さんの悪ノリ)
当時は双方、何とも、少しも、いわゆる「双子の不思議な繋がり」なんて、感じなかったらしい。

大学を卒業して、お互い、別々の離れた進路へ。
館長さんは実家の私立図書館を。
付烏月さんは興味を活かし探偵に。(※多分虚偽)

館長さんの創作スキルが本領発揮して参りました。

「肉親」とすれ違う奇跡をもう一度。
付烏月さんが館長さんと再会したのは、館長さんの育ての親が「娘の本当の肉親を探してほしい」と付烏月さんに依頼してきたから。
付烏月さんは依頼者の「娘」、完治寛解困難な病に冒されてた「双子の姉」と再会した。
ふたりが取り違えられたこの病院で。
ふたりが引き離された、この病院で。

館長さんから誕生日と時刻を聞いた付烏月さんはすぐにピンときて、DNA検査を要請。
ふたりはめでたく、めでたく――…

「……ふたりはめでたく最初の病院で、マル十年越しの双子の再会。片や探偵業を辞めて姉の図書館へ、片や入退院を繰り返しながら、
同じ職場で仕事して、これまでのマル十年を埋める幸福な努力と労働を、開始するのでした。
おしまい。 おしまい……」

なんて厨二満載なおはなしが、もしかしたら私達の背後に、あるかもしれませんよ。ふふふ。
病室のベッドの上で、によろるん。
付烏月さんの前職の、図書館の館長さんは、
胡散臭く、すごく良い笑顔を見せた。
その笑顔が、なんとなく、付烏月さんの悪い笑顔に似て見えなくもない気がしないでもない。
なお他人の空似だ。 悪い奇跡の一致だ。

「いやいや。分かんないよ〜?」
付烏月さんも付烏月さんで、完全に悪ノリ。
すっっっごく、楽しそうではある。
「実は誰にも話してないだけで、エモエモで奇跡なバックストーリーの、サムシングが」
あったり無かったり、気のせいだったり。ヒヒヒ。
付烏月さんも、によろるん。
イタズラな笑顔で私に言った。
最後の最後、私の帰り際に付烏月さんと館長さんの正解な関係と事実を答え合わせ。
それでその場は終わったけど、やっぱり、館長さんと付烏月さんの笑顔は、少し、似てる気がした。
要するに、定期健診と早期発見て大事っていう。

10/2/2024, 3:12:21 AM

「たそがれ、たそがれ……ねぇ」
「黄昏」、「誰そ彼」とか書くらしいが、LEDだの液晶だの大量展開してる東京じゃ「誰そ」なんて言うこと少ねぇ気がするわな。某所在住物書きは言った。
似た題目として、4月の最初頃に「沈む夕日」なら遭遇していた物書き。同名でBGM検索をして、「沈む夕陽」、某有名探偵アニメがヒット。無事爆笑した経緯がある。

「アレの劇場版第一作目、たしか環状線の爆弾回収、たそがれ時だったな」
実際、現実世界じゃ有り得ないシチュエーションで、管制室のシーンも観る人が観れば指摘箇所満載らしいが、俺はああいうの、好きだったよ。
物書きは昔々に思いを馳せ、今日もため息を吐く。

――――――

たそがれ、黄昏。 うす暗くなる前の夕日。
薄闇のせいで「誰ですか、彼?」になる前の、
光のせいで、相手の顔が分からなくなる頃。
つまり逆光。 つまり光のイタズラ。
何が言いたいかというと、
私が勤めてる職場の、たそがれ前のある一定時間、
夕日が向かい側のビルの窓に当たってまぶしい。
そのまぶしい向かい側の窓を背にするお客さんと対峙しなきゃならない職場だからしんどい。

ノーモア、テロ級にまぶしい反射の斜陽。
わたしジャパンはこの活動を応援しています。

「5年前の鉄板ネタ、聞きたいかね。
珍しく我等が過疎支店に、たそがれ前、まさに向こうのビルに夕日が反射する頃。
ハゲの怪獣客様がお越しになってだな」

10月になった。東京はまだ残暑が酷い。
今年の3月から異動してきた支店は、厳密には支店の窓口業務は、今の時期の、日没前のある十数分〜数十分だけ、日光のオレンジな反射がまぶしい。
先月の前半も、先々月も問題無かったのに。

今の時期は太陽の関係で、仕方無い。
「教授支店長」って呼ばれてる支店長は言う。
どうにも光が困るようなら、どうせ過疎支店だから、窓口に来た客を反射光が当たらない接待席に連れて行くと良いって言ってくれるけど、
窓にブラインド、使わないのかな(多分:景観)
使っちゃ、ダメなのかな(確実に:店の景観)

「教授支店長、『ハゲの怪獣客』 is なに」
「だいたい予想できるだろう。
まずカルシウム不足気味なお客様がオレンジ色の反射的後光を背負ってお越しになる」

「はんしゃてき、ごこう、」
「そう。反射的後光だ。

当時そこに座っていたのは、別の支店で今勤務している若い男性なのだが、
後光怪獣客様が山頂にご来光しながら『窓口係が若手では専門的な相談ができない』と噴火してだな。
そのご来光がご来光で、あんまりジャストな場所からジャストな光がジャストしていたせいで、
その若手が、耐えきれず、爆笑してしまったと」

何事かと不審に思った常連、常連の対応をしていた別スタッフ。連鎖して常連が笑って大惨事さ。
支店長はこのネタを何度も何度も擦ってきたらしい。完全に平常心で、少しも笑わず、淡々と。
撮影時の電子音が出ないメリットを活かして常連が隠し撮りしたっていう当時の写真を見せながら。

「たそがれ時の類語に、逢魔が時、魔が差す時がある。怪獣の1匹や2匹、ダイヤモンド富士を体現する妖怪の1人や2人」
人口多いこの東京には、そりゃあ居るだろうさ。
ふざけてお祓いの真似をする支店長は、そう付け足して、光り輝く頭の画像を下げた。

「そのモンカス、それからどうなったの?」
「さぁ?なにせ、後光を背負っておられたニセ菩薩様だ。逆行のせいで顔など覚えちゃいない」
「声くらいは覚えてない?」
「たそがれ前の絶景があまりにも強烈でだな」

それこそ、化生のモノが、たそがれ前にひょろり迷い込んできたのかも、しれないな?
ハライタマエ、キヨメタマエ。ぶんぶん。
相変わらず支店長はお祓いの真似。
「化生のモノねぇ……」
科学だらけの現代だよ。さすがにそりゃないよ。
頬杖ついた私がため息ついて外を見ると、
遠くで子狐にハーネスつけて散歩させてるキレイな黒髪のひとと目が合った。
稲荷神社近くのお茶っ葉屋さんの店主さんだ。
別に、深い意味は無い。 深い意味は、無い筈だ。

10/1/2024, 3:00:36 AM

「『明日』はこれで、4例目よな」
5月の「明日世界がなくなるとしたら(略)」と「また明日」、8月の「明日、もし晴れたら」。
今日は「きっと明日も」らしい。某所在住物書きは配信の題目を目でなぞり、わずかな手ごわさを感じた。
大抵配信される題目は、この物書きにとって手ごわいものであった。それこそ、「きっと明日も」、難題のそれであろう。

「きっと」。 必ず、明日も◯◯になる。おそらく明日も◯◯だろう。間違いなく申し付ける。
さすがに「きっ」という呼び名の人物は居ないと思われるので、「キッと一緒に、明日も」は無理。
これくらいか。 これくらいだろうか。
「『明日』ねぇ……」
ところで10月1日はコーヒーの日らしい。
特に「それ」を意識しているワケではないものの、きっと明日も、無糖のコーヒーを飲むだろう。

――――――

10月に突入した東京ですが、まだまだ気温気候は夏の気配。だって明日が真夏日なのです。
明後日も25℃以上の夏日、その次も30℃の真夏日。夏、なつ、ナツ。きっと明日も暑いのです。
と、いう速攻のお題回収は置いといて、今回はこんなおはなしをご用意しました。

最近最近のおはなしです。都内某所のおはなしです。某稲荷神社敷地内の一軒家に、人に化ける妙技を持つ化け狐の末裔が、家族で仲良く暮らしており、
そのうち末っ子の子狐は食いしん坊の遊び盛り。
その日も尻尾をぶんぶん振り回して、神社敷地内の縄張り巡回、もとい参拝者のための安全確認。
コロコロ美味しい栗の入ったトゲトゲが落ちていたら、参拝者が怪我をするかもしれません。
コロコロ楽しいトチの実が参道に転がっていたら、参拝者も転んでしまうかもしれません。

あっちにヤマブドウ、こっちにアケビ。
そっちのキノコは何かしら、毒かしら。
コンコン子狐は尻尾をぶんぶん振り回して、稲荷神社のご利益豊かな鎮守の森を駆け回ります。
断じて今日のおやつの収集ではないのです。

ぶんぶんぶん、パタパタパタ。
コンコン子狐は稲荷神社の森の中。参道の上。
葛の葉とツルで編んだカゴをくわえて、たまに参拝者さんからカゴの中にお賽銭を投げ入れられながら、稲荷の恵みを探します。
心の傷ついた匂いがする参拝者さん、魂にヒビ入った匂いがする参拝者さんには、1個数粒、稲荷の恵みをおすそ分けします。

ぶんぶんぶん、パタパタパタ。
コンコン子狐が今日の縄張り巡回を、丁度終えようとした頃に、木漏れ日のさすあたりを見上げると、
どうしましょう、なんということでしょう!
神社の花を撮りに来ていた参拝者さんの頭の上に、ぷっくり膨らんだイチジクが見えるのです!
「イチジクだ、イチジクだ!」
なかなかグルメな子狐、イチジクのジャムにバターとあんこを添えた、お母さん狐特製のタルトやどら焼きの味をよくよく知っているのです。

よくよく見れば、イチジクの下で写真を撮るこの参拝者、お母さん狐が人間に化けて店主をしている茶っ葉屋さんのお得意様。顔見知りです。
名前を、藤森といいます。花あふれる雪国出身の、心優しく魂清き人間です。
よし、お得意様の肩を足場にして稲荷のイチジクを採りましょう。神社の美味を頂きましょう。

人間よ、参拝者よ。狐のあんよを受け止めなさい。
子狐コンコン、くわえていた葛のカゴをおろして全力助走。力強く地面を蹴って、一気に写真撮影中の参拝者さんもといお得意様に飛び付きました。

イチジク、イチジク!
「わっ、なんだ、子狐!何をしている?!」
イチジク、もうちょっとで届く!
おとくいさん、せのびして!もっと前にきて!
「だから、何が、どれが目的なんだ、子狐!」

おとくいさん、ギリギリ届かない。不便。
「あのな……?」

突然子狐の足場にされた参拝者のお得意様。
ちょっと周囲を見渡して、丁度近くに食べごろのイチジクを見つけたので、
一生懸命おててなり首なりを伸ばす子狐に代わり、
1個2個、3個。形の良いものを採ってやります。
「ほら。これが食いたいのか」
コンコン子狐は大喜び!狐耳ペタリの狐尻尾ビタンビタンで、幸福にイチジクをカゴの中へ入れます。
イチジクの木にはまだまだいっぱい、おいしそうに膨らんだものが見えます。
きっと明日も、食べごろが見つかるでしょう。
きっと明後日も、食べごろはそこにあるでしょう。

ありがとう、ありがとう!
コンコン子狐は参拝者にお礼として1個、稲荷のご利益詰まったイチジクをくれてやりました。
子狐がダッシュで帰る後ろ姿を見る参拝者の肩やら服やらには、子狐が運んできたイネ科やマメ科のひっつき虫が、大量に残っておったとさ。

9/30/2024, 3:01:03 AM

「6月頃に『狭い部屋』ってお題なら書いたわ」
エモい話を、書けないこともない。某所在住物書きはカキリ小首を鳴らし、ため息を吐いた。
静寂には複数の色が存在する。
痛い、気まずい、穏やかな、あるいは感動的な。
いずれにせよ、夕暮れの部屋を舞台に主人公ひとり、あるいは友人とふたりで、何か酷く悩ませれば良い。
沈黙はスパイスとなるだろう。

「でも不得意なのよ。エモネタ。納得行くハナシ書こうとすると投稿16時17時になっちまうし……」
ぽつり。物書きは弱点を吐露し、物語を組む。
ところで主観的な議題提起だが、人口多い東京都を始めとした都市において、「静寂」はなかなか貴重で、遭遇確率は少ないように感じる。
雑踏内で無音・静寂を得る方法は何だろう?

――――――

秋が近付く頃合いから、体調というより、「心調」も、崩れることがある気がする。
何人か共感してくれるフォロワーさん&フォロイーさんもいる。それで実際に困ってる人もいる。

自律神経がどうとか、気温差疲れがどうとか、医学的には言われてるけど、
だいたいこういうハナシを呟きックスですると、
どこからともなくコレやりなさいの指示厨・価値観押し付け厨やら心の問題厨やら、変な方のスピリチュアル系が小さなレスバを繰り広げる。
いつもサーチ&バトル作業お疲れ様です(なお感謝は一切してない)

そういう「心調」が崩れた日に何をしたくなるか、何もしたくなくなるかは、人それぞれだけど、
私に関しては、静かな場所に籠城したくなる。
静寂に包まれた自然だ。
それか、静寂に包まれた部屋だ。
東京はどこもかしこも「音」で溢れてるから、多分、その反動で「無音」の栄養失調なんだと思う。

なお東京はどこもかしこもだいたい「音」で溢れてる(大事二度)

――「しゃーないよ。日本一の人口密度だもん」
私の職場の昼休憩。
「東京って基本的に何か音してるよね」ってハナシを、今年の3月から一緒に仕事してる付烏月さん、ツウキさんって同僚にしたら、
まぁまぁ、正論っちゃ正論で返された。
「公園はだいたい誰か居るし。俺の前職の図書館も『静粛に』っては言うけど人多かったし。
カラオケはひとつの手だろうけど、隣の部屋の人がデカい声で歌ってるとか、それが聞こえるとか」
まぁ、まぁ。普通にあるよね。
付烏月さんは昼ごはんのコンビニサンドイッチの包装を開けながら言った。

「カラオケは考えつかなかった」
「どうしても静かな場所に行きたいなら、それこそ、藤森のアパートに引っ越しも手じゃない?」
「藤森先輩、」
「防音防振徹底してて、ほぼほぼ無音じゃん」

「家賃無理」
「うん」
「東京の静寂は、お金がかかる……」
「うん」

夏から秋に変わる頃の一過性だから、別に良いけどね。頑張って我慢、できないこともないけどね。
そんな言い訳をポツリして、私も私で、お昼ご飯のお弁当を突っつく。
「静寂の栄養素が不足してるっていうより、残暑だの気温差だののせいで、人付き合いの消費APとか消費HPとかが増加しちゃったって説もある?」
「ありそう。バチクソにありそう」

東京の静寂、静寂に包まれた部屋はお金がかかる。
自分で言った言葉を心の中で繰り返して、
お弁当箱の中のミートボールを、ぱくり、ぱくり。
「……そういえば藤森先輩の近所の茶っ葉屋さん、お得意様専用の飲食スペースが何故かすごく静かで、今秋のスイーツイベントやってる」

あそこ、なんであんなに静かなんだろう。
疑問提起っていうか話題提供っていうか、なんとなく「静寂」のハナシをしたら、
「ちょっとそのハナシ、詳しく」
静寂じゃなくて、「スイーツ」の方に反応した付烏月さんが、そこそこ真剣な顔してスマホをタップして、私の目を見た。
「たしかその茶っ葉屋さん、藤森がそれこそ、お得意様だったよね」
多分というか確実に、今日の仕事終わりに向けて、本店の藤森先輩にメッセ送ってるんだと思う。

「イベント限定スイーツセット、6種類らしいよ」
「ろくしゅるい」
「お一人様1日につき、2種類までだって」
「にしゅるいまで」

「静寂に包まれた部屋で、私と藤森先輩と、付烏月さんとで3人。1日で制覇できる」
「よぉしちょっと3人してスイーツでAPだのHPだの回復しに行こうか」

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