「去年は『衛星列車ともう一度巡り会えたらどうする』みたいなハナシを書いた記憶がある」
「誰か」と、巡り会えたら、
巡り会えたら「やりたいこと」、
巡り会えたら幸運/悪運な「何か」、
巡り会え、タラ。 巡り会えた、らっこ。
他に何か書けそうな案あったっけ。某所在住物書きは焚き火のアプリでパチパチ、ぱちぱち。
ものの試しで思考を文章化などしている。
個人的に欲しい「巡り会わせ」は勿論宝くじ。
当たればガチャの自爆など、すり抜けも、確率も。
「……タラは地味に猫のハナシに使えそう」
パチン。焚き火アプリの効果音が弾ける。
もう少し簡単に投稿しやすいネタと、複数巡り会えたら、どれだけラクができることだろう。
――――――
都内某所に、私が推してるゲームの同人時代の聖地になってる、私立図書館がある。
私の今の同僚、付烏月さん……ツウキさんの前の職場であり、私と今年の2月まで長いこと一緒に仕事してた藤森先輩の前々職でもあった。
昨日、そこの館長さんと初めて出会った。
付烏月さんとなにやら2人して話をしてたのだ。
「奇跡をもう一度」。夜にフォロワーから聞いたことだけど、なんとその館長さん、私の推しゲーに、そのひとがモデルのキャラが居るとのこと。
言われてみればガチャで分厚い本のページをバラバラする自称魔女さんに似てた。
聖地図書館内でのエンカウント率があまりにも低過ぎるせいで、「巡り会えたらそれだけでガチャ召喚触媒」って派閥があるらしい。
なにそれ私知らない(ガチャれば良かったの後悔)
ともかく。私は昨日、某私立図書館の低エンカウント率な館長さんと遭遇したワケだ。
それを、コーヒーと低糖質ケーキが美味しいカフェで相席した先輩に話したら、バチクソ驚かれた。
「会えたのか、あの館長と?!」
事実として、ホントに、前々職の先輩も驚くくらい低確率だったらしい。 ガチャれば良k(略)
「低確率も何も、」
おくちパックリで藤森先輩は言った。
「一部の来館者から魔女と噂されていたようだが、
事実として、あのひとは本当に魔女だ。神出鬼没で、つい先程まで居た筈の場所に居ない」
私もあの図書館には1年だけ世話になったが、ほぼほぼあそこの仕事上の責任者は副館長だったよ。
先輩はそう言ってどこか遠くを、唖然とした目で。
トップが神出鬼没(ところで:推しゲーの局長)
実質の責任者が、副( :自称魔女で神出鬼没)
居るはずの場所に居ない(そのせいで副局長略)
「私もずっと、離職してから会えていない」
「館長さんに?」
「彼女から借りていた、私物の本がある。『不要になったら返してほしい』と」
「図書館に勤めてるんでしょ?司書さんとかに『渡しといて』って言えば良いのに」
「それができれば苦労しない」
「くろうしない」
「本当に神出鬼没なんだ。『渡してほしい』からの、数週間不在からの、いつの間にか館長の机から消失して館長の手に、『渡っていない』」
「先輩」
「なんだ」
「ウチの魔女局長がご迷惑をおかけしております」
「きょく、なんだって?」
そんなこんなで、ずっと会えずじまい、本を返せずじまいさ。 先輩がため息ひとつ吐いて言った。
先輩がおもむろにバッグから出したのは、丁寧に紙製のカバーが付けられた少し分厚い本。
レアエンカウントの館長さんに巡り会えたらすぐ返せるように、いつも持ってるんだと思う。
「花の本だ」
パラパラパラ。先輩はページを流しめくった。
「恋愛トラブルで精神的に落ちていた頃、在来・固有種の写真や著者のコラムに世話になった」
心が根腐れしそうになったら、根腐れの原因から離れる。離れてもっと良い場所で咲く。
人間は歩ける多年草なのだから。
小さなコラムを指さして、先輩は穏やかに笑った。
「病院に居るよ」
先輩に、館長さんの居場所を教えたけど、
先輩は、完全に巡り会えない前提の表情をしてた。
実際このおしゃべりの後で、先輩は私が伝えた病院の私が伝えた病室に向かったらしいけど、
神出鬼没の魔女さんらしいといえばらしい後日談として、先輩はタッチの差で、
「あと数十分早ければ」、巡り会えたらしい。
10/4/2024, 3:16:16 AM