かたいなか

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9/5/2023, 4:08:27 AM

「防衛省運用の、防衛通信衛星ひとつの愛称。某JRの特急列車。楽曲の名前。酒の名前にも複数。
前々回の『心の灯火』で紹介した『四つの署名』、
『自分の中に秘め持つ小さな不滅の火花
(little immortal spark concealed about him』
の『spark』も『きらめき』って一応訳せるわな」
他には「命のきらめき」とか?某所在住物書きはスマホに映る、輝きの赤い輪を見つめた。

「探せば結構、色々出てくると思うんよ。だって使い勝手良いもん。頭を柔らかくすりゃあ、多分列車でも衛星でも、文学でもねぇ所からネタ出せるぜ」
問題は俺自身の頭が加齢でこのざまってハナシ。物書きはため息を吐き、ネタ探しに戻る。

――――――

相変わらずの、暑い東京のお昼。諸事情で、いつも一緒の先輩が当分いないから、ランチは外食にした。

先輩がいない理由はクソだ。
先輩が名字変えてまで縁切った失恋相手が、今更超絶粘着してきて、そこから物理的に避難するためだ。
先輩は藤森、失恋相手は加元っていう。
加元さんは先に先輩に惚れておきながら、その先輩をバチクソにディスって、心をズッタズタに壊した。
先輩は8年逃げ続けたけど、最近、加元さんに職場とグルチャのアカウントがバレた。

その加元さん、私のことまでロックオンしたらしい。
用心しておけって、先輩に避難場所提供してる宇曽野主任、先輩の親友に昨日言われた。
何を用心すれば良いんだろう。
考えながら道を歩いてたら、すぐ、それが分かった。

「わっ!?」
もうちょっとで目当てのお店、ってところで、
私はいきなり、狭い狭い小道に引き込まれた。

「静かに。安心しろ、私だ」
腕を強く、でも優しく掴まれて、肩から引き寄せられて、頭が真っ白になったと思ったら、
「早速加元さんから嫌がらせを受けているようだな」
すぐ耳に入ってきたのが、現在宇曽野主任の一軒家に絶賛避難中な筈の先輩の声だった。

え?ナニゴト?
って思ってたら、
私が今まで歩いてた道を、1人2人、すごく慌てた様子で走って、行ったり来たりして、
「見失った?」とか、「お前そっち探せ」とか。
まるで、スパイ映画か刑事ドラマのワンシーンだ。

「探偵だ。お前の行動調査だよ」
先輩が小道の奥に奥にって私を促しながら言った。
「職場の後輩のお前が、私の居場所を知っていると踏んで、加元さんが依頼を出したんだろうさ」
多分お前が昨日食ったメシも、寄ったコンビニもバレてるよ。私のせいで。
先輩は自虐的で、すごく申し訳無さそうで、
私の腕を掴みっ放しの手なんか「加元さん恐怖症」で少し震えちゃってるけど、
反対側の手に、小さな小さなきらめきを、ひとつ、強く、しっかり握ってた。

小瓶だ。私が贈った香水だ。
8月31日、先輩の心が少しでも癒えればと思って渡した、先輩の故郷の木が香るガラスのお守りだ。

「なんで、」
「先々月、7月の18日だか20日だか付近、私とお前が一緒に居たのを加元さんが見ていたんだ」
「そうじゃなくて。加元さんの狙いは私じゃなく先輩でしょ?その先輩が探偵さんの近くまで出てきちゃってどうするの」
「勝算があるからに決まっているだろう?」

私の腕を離して、小さなお守りを握りしめて、先輩は私が来た方の道に、つまり探偵さんが私を探してるだろう真っ只中に、歩いてった。
「ダメだよ、先輩、行っちゃダメ」
追いかけようと思った私に、先輩はポケットからカードケースを、その中のプラチナ色のきらめきをピッと取り出して、ゆっくりプラプラ振ってみせた。
あっ(察し)
はい、把握です(もしかして:買収)

「場合によっては、警察にもお手伝い頂く」
先輩が言った。
「悪かったな。あの日私と一緒だったばっかりに」
それから探偵さんが私に付きまとうようなことは、パッタリ無くなった。

9/4/2023, 3:05:49 AM

「8月4日あたりのお題が少し似てた。『つまらないことでも』だったかな」
それこそ、区切り線『――――――』の上の300字程度で、せめて些細なことでも誰かに執筆の種を提供できたらとは思ってるわな。
某所在住物書きは過去作を辿り、呟いた。
「あのときは、『「つまらないこと」でも、その人にとっては大事なんです』みたいなのを書いたわ」

今回も、「些細なこと」「でも」だから、何かひっくり返す必要があるんだろうな。
物書きは首を傾け、悩む。
「些細な言葉に、些細な気遣い、些細なすれ違いに些細な味のバラつき、他には……?」

――――――

9月の第2週、最初の月曜日が始まった。
私の職場の先輩が、当分、約2週間程度、リモートワークで職場から離れることになった。
理由は、私と、先輩の親友である宇曽野主任以外、誰も知らない。というか誰も気にしてない。
残暑残る東京で、なおかつ、コロナの静かに忍び寄る東京だ。理由なんて、勝手に予想しようと思えばゴロゴロ出てくる。
些細な理由、大きな理由、何か壮大な裏が潜む理由。ありとあらゆる想像を、しようと思えば、できる。
でもきっと、全部不正解だ。

種明かしをすると、先輩は今、親友の宇曽野主任の一軒家に絶賛避難中。
先輩の前に、8年前の恋人さんが今更現れて、その恋人さんがなんと、ほぼストーカー数歩手前。
加元っていう人で、先週この職場に突然来た。
「この人に取り次いでください」って。

この加元さんから8年間、名字と職場と居住区を変えてまで、逃げ続けてきた先輩。
そんな先輩の、今の住所までバレないようにって、3人暮らしの宇曽野一家が避難場所を提供した。
それが先週。そして今週。

「嫁と娘には大好評だ。何せ、あいつの得意料理は低糖質低塩分の、ほぼダイエットメニューだからな」
先輩今頃どうしてますか。
隣部署勤務の宇曽野主任に近況聞いてみたら、なんか避難生活満喫してそうな回答が返ってきた。
「レトルト使った雑炊だの、サバ缶でトマトリゾットだの、あいつの故郷の冷やし麺だの。
加元からは『低糖質メシ作るとか解釈違い』と不評だったのが、今は『美味しい』、『面白い』だ」

遠くでは、それこそ今話題に出してる元恋人さん、加元さんが、先週に引き続き今日もご来店。
「この名前の人物がここに居るのは調べが付いてるんです」からの「お調べしましたけど居ません」で、受け付け担当さんの営業スマイルが引きつってる。
だって先輩改姓したから、加元さんの知ってる名字じゃないもん。残念でした。

「解釈違いなんなら、早く次の恋に行けば良いのに」
「どうせ次を食って、食って、何度か繰り返して、一番まともだったのが……、だったんだろう?」
「なら些細なことでいちいち『地雷』とか『解釈違い』とか言わなきゃ良かったのに」
「加元にそれができれば、あいつは今頃8年も逃げたりしちゃいないし、ここにも居ない」

「それ困る」
「ん?」
「ダイエットメニュー、私もお世話になってる。バチクソこまる」

結局、今日も収穫ナシでご退店の加元さん。スマホ取り出して、何かいじって、帰ってった。
「また来るかな」
「知らん。加元に聞け」
加元さんに対応してた受け付けさんは、相当疲れたらしくって、加元さんが見えなくなった途端大きなため息吐いて背伸びして。
丁度パッタリ、「さっきの人見てた?」ってカンジで私と目が合ったから、
私も、ねぎらいの心をこめて、「見てた。お疲れ様」ってカンジで、小さく頷いてみせた。

「そうそう。お前も用心しておけ」
「なんで私?」
「加元にお前の存在がバレてる。おととい『あの人誰』と、わざわざダイレクトメールを寄越してきた」

「まじ……?」

9/3/2023, 3:40:15 AM

「『四つの署名』に、たしか、『自分の中に秘め持つ小さな不滅の火花』みたいなセリフがあったわ」
多分「心」そのものに関してじゃねぇし、ぶっちゃけ「心の灯火」のお題にカスリもしてねぇけど。
某所在住物書きは自室の本棚を行ったり来たり。
なんとか今回配信分の題目を書き上げようと、ネタ収集に躍起になっている。
「『心の火が燃え上がる』とか『恋心の火が消える』とかは、多分表現としてメジャーだろうな。
……で、それをどう物語に落とし込むって?」
たとえば「自分の親友と後輩を守るため、ひねくれ者は住み慣れた東京を離れ、ひとり去る決断をしました」とか?「絶対、大切なひとに危害は加えさせないと、ひねくれ者の心の灯火は十数年ぶりに、ごうと燃え盛りました」とか?
物書きは物語を仮組みし、その書きづらさに敗北して、ため息をひとつ吐いた。

――――――

童話風の神秘7割増しなおはなしです。トンデモ設定てんこ盛りなおはなしです。
最近最近の都内某所、某稲荷神社敷地内の一軒家に、人に化ける妙技を持つ化け狐の末裔が暮らしておりまして、
そのうち末っ子の子狐は、善き化け狐、偉大な御狐となるべく、稲荷神社のご利益豊かで不思議なお餅を作って売って、絶賛修行の真っ最中。
1週間に1〜2回の訪問販売。1個200円で高コスパ。ひとくち食べればストレスやら、疲れやらで溜まった汚毒にひっつき、落として、心の灯火の保守保全をしてくれます。
たったひとり、唯一の固定客、お得意様もできまして、3月3日のファーストコンタクトから早くも6ヶ月。長く長く、お付き合いが続いておりました。

「おとくいさん、心のおかげん、わるい」
「何故そう思う」
「キツネわかる。キツネ、うそつかない」
「だから、何故私の精神状態が悪いと思う」

さて。
今日もやって来ました。不思議なお餅の訪問販売。
しっかり人間の子供に化けて、葛のカゴと透かしホオズキの明かりを担ぎ、
アパートの一室から親友の一軒家に諸事情でお引っ越し避難中の、唯一のお得意様のところへ向かいます。
避難理由は割愛です。要するに先月28日投稿分あたりから、このお得意様は昔々の初恋相手に付きまとわれて、ちょっと騒動発生中なのです。

人界のあれやこれや、常識や仕組みなんかは、まだまだ勉強中のコンコン子狐。おヨメかおムコか知らないけど、お得意様は結婚して、「家庭に入る」をしたに違いないと、トンデモ解釈をしております。
ゆえに神前結婚式のパンフレットを見せては、お得意様をチガウ・ソウジャナイさせておったのでした。

「おとくいさん、前のアパートに居たときと、『家庭に入る』した後で、ニオイちがう」
「何度も言っているが、親友の家に一時的に身を寄せることを『家庭に入る』とは言わない」
「おとくいさん、疲れちゃったんだ。おとくいさん、イロイロあって、心にススとか汚れとか付いちゃって、灯火がちゃんと燃えてないんだ」
「『灯火』?」

「だからおとくいさん、おもち、どうぞ。
スス落とし、汚れ落とし。心の灯火のホシュホゼン。おもちどうぞ」
「あのな子狐?」

「心の灯火」のお題に従い、問答無用で不思議なお餅を食わせにかかる子狐と、
子狐によって、そこそこのデカさのお餅を1個、口の中に押し込められるお得意様。
噛んで飲み込もうにも口内にスペースが足らぬ。
お茶淹れて、唇に両手を重ねて当てて、モゴモゴ、もちゃもちゃ。
なんとかお得意様が不思議なお餅を食べ終わったのは、それから10分後のことでしたとさ。

心の灯火を癒やす子狐のお餅と、そのお餅に四苦八苦させられる人間のおはなしでした。
おしまい、おしまい。

9/1/2023, 3:13:35 PM

「『あけない』、『ひらけない』。その後のアルファベット4文字はまぁ、ドチャクソ捻くれて読めば、回線・接続・釣り糸・方針・口癖等々の英単語よな」
今回配信分の題目をチラリ見て、某所在住物書きは相変わらず、ガリガリ頭をかいた。
「Line」に多々和訳が存在する。英単語1個を全部大文字表記するのは、一種の強調表現でもある。
よって「開けないLINE」を「ひらけない『その』接続」や「あけない『特定の』回線」と曲解することも、まぁ、まぁ。
問題はそれで実際物語が書けるかどうか。
「うん。俺にはムズいわな」
そもそもアプリを入れてないので「開けない」。いっそこれで書いてやろうか。物書きはまた頭をかく。

――――――

最近最近の都内某所。藤森という雪国出身者が、諸事情により、親友の家に身を寄せ隠れている。
解説し始めれば長い長い、色恋沙汰の小さな騒動と共にドッタバッタで駆け抜けた今週も、とうとう週末。
少しだけ豪華な夕食を、家主の宇曽野とその嫁と、一人娘と、それから居候中の藤森とで囲み、
明日の朝食の仕込みとして、藤森お得意の低糖質低塩分なダイエットメニューの料理教室が始まり終わり、
ようやく、1日の終わりとして、ひと息ついた頃。

「……来た」
ピロン。
リビングでソファーに座り、宇曽野が淹れたコーヒーを飲む藤森のスマホに、
突然、見覚えのあるアカウントから、個人用チャットのダイレクトメッセージが届いた。

『久しぶり。加元です。附子山さんだよね?』

アプリは敢えて開けない。既読マークを付けず、通知画面でのみ到着メッセージの内容を確認している。
「『今の名字』はバレてないのか」
目を細め唇をかたく結ぶ藤森の隣に腰掛けて、一緒に画面を見る宇曽野がポツリ呟いた。
「アカウントID、実名にしなくて良かったな」

『言葉が凶器って、附子山さんが居なくなってから分かったの。SNSで色々言って、附子山さんのこと傷つけてごめんなさい』

『でも、だからって勝手に居なくならないで。一方的に突然消えないで。せめて話をさせて』

『それで叶うなら、もう一度だけ、仲直りさせて』

「なかなおり!仲直りだとさ!」
ピロン、ピロン、ピロン。
立て続けに届いたメッセージに、宇曽野は静かな怒りとも僅かな軽蔑ともとれる笑いで吐き捨てた。
「よく言えたもんだ。それこそSNSで散々言って、『附子山』を傷つけたくせに!」

これこそ「藤森」が親友の家に身を寄せている「諸事情」であり、「色恋沙汰の小さな騒動」であった。
元々旧姓を「附子山」といった藤森。かつて、ダイレクトメッセージの送信元である相手に惚れられて、自分も後から相手を好きになり、
恋したと思ったら、SNSで「あれが地雷」、「ここが解釈違い」、「頭おかしい」と、言いたい放題、書き散らされていたことが発覚。
藤森の心はズタズタに壊された。

改姓して転職して、居住区もスマホの番号もアカウントも全部変えた藤森の職場が、
先日、とうとうバレてしまった。
ゆえに、アパート等の住所まで知られぬよう、宇曽野の提案で彼の自宅に招かれたのである。

執着の強かったらしい、藤森の恋愛相手。今度はメッセージアプリのアカウントを特定したらしい。

「宇曽野。私は、」
不安になったら使ってみて。
事情知ったる職場の後輩から贈られた「お守り」を握りしめ、藤森が何か決意したらしいトーンで言った。
「私は加元さんが、こわい。
でも私のせいで、お前や、あの後輩に何か危害が及ぶのは、もっと、……もっと、嫌だ」

ピロン。藤森のスマホに再度、アプリを開かないために既読のつかぬメッセージが届く。
『それと、先々月、7月18日だったか19日だったかに一緒に居た人、誰?』
藤森はただ息を吐き、目を細めて画面を見ている。

9/1/2023, 4:07:30 AM

「不完全な、ボク、しもべ、やつがれ。読み方が指定されてねぇから、下僕の話も書けるし一人称が『やつがれ』な誰かの話も書けるワケだ」
下僕っつったら、猫飼ってるひとの、飼い主のことを「猫の下僕」って表現する場合があるわな。某所在住物書きは猫の画像を見ながら呟いた。
「不完全、ふかんぜん……
逆に『完全な僕』って、『何』についての『完全』なんだろうな。『不完全体僕』と『完全体僕』?」
何か複数の資格等を取る目標があって、道なかばの状態を言う、とかはアリなのかな。物書きは考え、すぐ首を横に振る。
「多分書けねぇ」

――――――

リアル法則ガン無視のおはなしです。不思議8割に申し訳程度の現代をトッピングしたおはなしです。
最近最近の都内某所、某稲荷神社敷地内の一軒家に、人に化ける妙技を持つ化け狐の末裔が、家族で仲良く暮らしておりました。
その内末っ子の子狐は、稲荷神社の祭神様、ウカノミタマのオオカミサマの、まだまだ未熟で不完全な僕(しもべ)。
善き化け狐、偉大な御狐、なにより一人前の神使となるべく、ご利益豊かなお餅を売り歩いて修行をしておったのでした。

そんなコンコン子狐には、たったひとり、3月3日のひな祭りからずっとお取り引きしてもらっている、優しいお得意様がおりました。
アパートの部屋にお邪魔して、1個200円のお餅を売って、少しお話もして、たまに余り物のお揚げさんを貰ったりして。
それはそれは、平和に取り引きしておりました。

お得意様は、雪国出身の自称ひねくれ者。藤森といいました。
ただこの藤森、前回・前々回投稿分あたりから、諸事情で自分のアパートを離れ、親友の一軒家に身を寄せているのです。
解説すれば長くなるこの騒動。要するに、昔々の初恋相手と、色々ゴタゴタあったのです。
ありふれた恋の暗い部分。しゃーない、しゃーない。

「もうっ。おとくいさん、おうち持つなら、言ってくれれば良かったのに」
そんな人間同士の揉め事など、コンコン子狐はガキんちょなので、まだまだ、ちっとも知りません。
お得意様のお引っ越し先が、自家用車持ちの一軒家であることを、自慢の鼻と御狐のチカラで探し出し、
無事「お得意様が家を持った」と勘違い。
紅白二色のお餅を持って、藤森が身を寄せる部屋に、突撃訪問します。
「おとくいさん、おとくいさん、持ち家、おめでとーございます」
コンコン、コンコン。子狐はうやうやしく、お餅を葛のカゴから出して、藤森に無料で手渡しました。

どうしてこんな事になったのでしょう。
今回のお題が「不完全な僕」だからです。
どうしてこんな事になったのでしょう。
物書きが「不完全な僕(ぼく)」のエモいエモい物語を、一度二度書こうとして大失敗したからです。
すべてはエモネタ下手な物書きの苦し紛れ。
しゃーない、しゃーない。

「あの、子狐、これは私の家ではなくてだな」
「おとくいさんの、実家?おとくいさん、里帰り?」
「実家は都内に無いし里帰りでもない。どこから説明すれば良いか、いや、そもそも説明不要か、」

「じゃあ、おとくいさん、ここのおうちの家族になったんだ。おヨメさんかおムコさんだ」
「は?!」
「おヨメさん、おムコさん、ごケッコン、おめでとーございます」
「待て。私が誰と結婚するって?」

どこからともなく神社での挙式&宴会プランのパンフレットを取り出す子狐に、
どこから間違いを指摘して、どのあたりまで経緯を説明すべきか頭を抱える藤森。
コンコンコン、待て待て違う。
ひとりと1匹のおしゃべりは、その後だいたい30分程度、続きましたとさ。
おしまい、おしまい。

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