yuhi

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9/30/2022, 10:50:09 PM

昨日机の中に置き忘れた宿題をやろうと思って、いつもより早く家を出た。

教室のドアを開けると、そこには話したことのないクラスメイトがいて、わたしは声をかけた。

「おはよう。もしかして宿題忘れた?」

「忘れてないよ」

と彼女は真顔で言った。

「そうなんだ、早いんだね」

彼女は「あの……」と声を出して、それから「友だちになってくれない?」と続けた。

わたしは「そうだなあ」と空に目をやる。彼女に目をやると不安そうにしているのがわかる。

「明日もこの時間に会えたら」

友だちになるなら、少しずつ近づきたい。そう続けると、彼女は大きく何度も頷いた。

「明日も、明後日も、その次も、ずっとずっと来るから!」

もう友だちだな。とわたしは思っているが、なんとなく言わないでおいた。

9/29/2022, 10:30:57 PM

職場でパソコンをカタカタと鳴らしていると、周りの景色が変わった。

そこは教室で、エンピツの音だけが聞こえる。
テスト中だとわたしは気付く。

エンピツのリズムは心地よく、しばらく目を閉じていると徐々に音が消えていった。

教室は静寂に包まれる。

わたしがいなくなった。

それがわかったとき目を開けた。

カタカタとまた音が聞こえた。

「あれ? なんか雰囲気変わった?」

と気になっていた同僚に声をかけられる。

「それはデートのお誘い?」

自分でも思っていない言葉が自然に出て、とっさに「あ、なんでもない」と否定する。

「なんでもなくなければよかったのに」と同僚は答えた。

また音が消えていく。

心だけがここにある。

9/28/2022, 10:07:16 PM

この道を右に行けば彼女の家で、左に行けば私の家だ。
そこで彼女は別れ際、いつものように「じゃあ」と言ってさっさと帰ろうとする。
いやいや、じゃあ、じゃないでしょ。と慌てる私に彼女はきょとんとしている。卒業式の後なんだよ、もうちょっと余韻があってよくない?

「え、でも近所だし、明日も会う予定でしょ?」

なんて言われる始末。まあ、そうなんだけど、ゴニョゴニョと言う私。

「じゃあめんどくさいから」と言って彼女は私の頭を撫でた。そして「じゃあね」と足早に背を向けた。

ますます余韻が必要になってしまった。 

9/27/2022, 8:59:34 PM

ベランダでタバコをふかして見る空に、雨の境い目がはっきり映る。過ぎ去ったところには虹が出ている。おそらくここにも通り雨がきて、それから虹をかけるのかもしれない。

なんだそうか、世界はただそうやって今の景色を浮かべているだけか。

なんて美しいんだろう。

わたしは今、死ぬのをやめた。

9/26/2022, 9:38:59 PM

「秋生まれの秋です」

と、そのアイドルは自己紹介している。

6歳のころから変わらない。

少し胸がぎゅっとなるのは、秋のせいだ。

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